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CMの研究

第18回 注目度抜群! 崖っぷちのCM対決

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 「崖っぷちのCM」というキーワードだと企業業績の低迷でCMの減ったテレビ業界の話と思うかもしれないが、今回取り上げるのはそんな暗い話ではなく、もっと明るく楽しい話。

 CMは目立つことが大事だから訴求効果が高く、かつ作品としてもコケないものが求められる。その意味で常にひとつのパターンとして定着しているのが人気の映画やドラマなどをテーマにしたパロディCMだ。著作権の侵害にならないように気を使いながら作られるがよくできた作品はオリジナルの魅力をじゅうぶんに伝えながら、新しい世界を創造していく。

 最近目を引いたのが「崖」をテーマにしたふたつのパロディCMだ。まず最初が、7月13日からオンエアされた化粧品やサプリメントのメーカーであるDHCの「海洋深層水」のCM。崖の上で刑事が犯人を追い詰め説得するというもので、おなじみの2時間ドラマや、サスペンス劇場の定番のシーンである。刑事を演じるのは柳沢慎吾で、追い詰められる女将風の女性は神保美喜だ。ひと目でドラマのパロディとわかる作りだ。しかも柳沢慎吾は警察関係のドキュメント番組が好きで、よくパトカーでの取締りの絶妙なマネをよく披露しているし、実際に刑事の役をいろいろやっている。

 一方、このCMに対抗するかのように「真打」が登場したのだ。それが8月20日からオンエアになった、TOTOのトイレ「ネオレスト」のCMだ。演じるのは「2時間ドラマの帝王」とか「サスペンスドラマの帝王」と呼ばれる船越英一郎となれば2時間ドラマファンならずとも見てしまうはずだ。その内容は、女性を崖に追いつめた船越が、動機を解明する途中で崖の下に打ち寄せる波を見て「話は変わるけど、こんな大波が必要なのか!」と突然言う。すると波がいきなり小さくなってしまうというものだ。このネオレストというトイレは水の使用量を従来の13リットルから4.8リットルへ抑え、これまでの節水便器と比べても約68%も節水できるというもの。波の大きさでトイレで使用する水の量を具体的にイメージさせるという、商品訴求の面では実に優れた作品だ。しかも、あの船越英一郎に崖に立たせて演技をさせるとなると、注目度の点でもなかなかのものになる。

 ただ、ちょっと気になるのは、ほぼ同じ時期に同じようなコンセプトのCMがオンエアされるということ。もちろん制作はスタートからクランクアップまで数ヶ月かかるから企画を盗用したとは考えにくいけど・・・。それにしてもこの崖っぷちCM、視聴率の高い番組をベースにしているものだけに、「のれん代」も払わず(?)CM視聴率を稼いでるようで、まさにクリエーターの企画力の勝利といえるだろう。クライアントもさぞお喜びのことと思える。パロディにしてもこれくらいきっちりした作品なら見るほうも楽しめるのが嬉しい。

 ちなみにかつて2時間ドラマのプロデューサーに取材をしたとき、なぜ崖に追いつめるのか聞いたら「現地でのタイアップの関係とかであまり場所を特定したくないことが多いので、海と崖ならよくある風景でなので使い易いし、犯人の暗い心を暴くシーンだけに青い海と空の下のほうが見ている人の心が重くならないからです」との返事をもらったことを思い出す。