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CMの研究

第19回 こんなご時世だからこそ
夢を見させてくれるCMがいい
ギャツビー・スゴ落ちスクラブ


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 素直に笑えて、男性には夢を与えてくれるCMが目を引いた。それがマンダムの「ギャツビー・スゴ落ちスクラブ」だ。ギャツビーといえばここのところ木村拓哉が出演して画面の中で踊ったりするものが続いていた。今回はお笑いコンビのフットボールアワーの岩尾望との共演となっている。といってもからむシーンはなく、CMの内容は極めてシンプルだ。岩尾がこちらを向いて「スゴ落ちスクラブ」で洗顔して、顔を上げたらキムタクになっていたというものだ。「変身願望」をテーマとする内容で、決して目新しいものではない。しかしキムタクと岩尾という対極のキャラクターの共演がなんともいえないいい味を出しているのだ。キムタクはいまさら説明の必要はないが、岩尾についてはご存知ない人も多いだろう。中堅お笑い芸人としてはとても実力があり、相方の後藤基輝といっしょに、2000年以後さまざまなお笑い関係の賞をとり続けている。若い人に人気がありテレビドラマにも何度も出演している。そしていちばんの特徴は「イケメン」ではないということ、もっといえばキムタクとはいわゆる「真逆」の存在だ。そんな岩尾が顔を洗ったとたんにキムタクになるのだから強烈なインパクトがある。
 CMをもっと詳しく伝えると、カメラが洗面所の鏡という設定で、白いシャツの岩尾がこちらを向いてスゴ落ちスクラブを顔に塗り泡立てる。女性用のパックみたいに顔が覆われて誰だかわからなくなったところで、下を向いて水で洗い、顔を上げたらキムタクに変わっているというもの。15秒と30秒ものがあるが、30秒ものではキムタクに変身する岩尾の映像をモニターで見ながら岩尾が「ウソでも嬉しい」と言う。
 男性の多くはキムタクみたいにかっこいい男になりたいという願望を密かに持っているだろう。そんなところをうまく突いたのがこのCMだ。そして見逃せないのは、この商品を使えばしっかり顔が隠れるほど泡が立つという商品特性がはっきり打ち出されていることだ。ともあれ、さまざまな社会不安や若者の未来への不安などが渦巻いているご時世。単純であってもスカッと気持ちが明るくなって、15秒あるいは30秒だけでも夢が見れるCMはやはり貴重ではないだろうか。