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CMの研究

第4回  2007年、多発したお詫びCM考える


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<序>
 大量のリコールなど、メーカーが自社の製品に関する不祥事起こした場合、通常はそのメーカーのCM自体が自粛されるが、死亡事故が発生するなど重大なケースでは事故の発生を謝罪し、該当製品の修理・取り替えなどを視聴者にお願いするCMが流れることがある。これを俗に「お詫びCM」または「謝罪CM」という。2007年は例年になく製品リコールのTVが多く流れていた感がある。そこで、製品リコールのTVCMの歴史を振り返りながら比較していきたいと思う。

<お詫びCMの歴史>
 個人的に、悪い意味で頭に焼き付いている製品リコールのTVCMがある。それはサンヨーの石油ファンヒーターCFH-S-221F型の「お詫びCM」である。これは国内最初のお詫びCMとされている。1984年秋から数ヶ月間販売されたサンヨー石油ファンヒーターCFH-S-221F型は、1985年1月~12月にかけて合計18件の一酸化炭素中毒事故を起こし、そのうち4人が死亡、41人が中毒になった。調査によればこの石油ファンヒーターは、合計59700台が生産され、空気取入口が上を向いたデザインになっていたためにゴミが詰まり、これにより不完全燃焼を起こしやすい構造だった。このリコールで1986年1月から流していたTVCMがいささか怖かったのである。「人命に及ぶ重大事故の恐れ」を明示し、男性ナレーターの冷ややかな口調と相まって相当緊迫した雰囲気であった。
 このように、"怖い"お詫びCMとなったのには、それまでのいきさつが関係している。この製品の補修・点検を呼びかける新聞広告が初めて出たのが1985年7月1日。ところが、この広告は見出しが小さい上に「予熱ヒーターの切れ、燃焼不調となる恐れあり」程度の事しか 触れていなかった。 さらに1985年11月19日の新聞広告は「お礼とお願い」との見出しで「皆様の多大なるご協力を頂き円滑に点検・補修を致しておりますが一部お客様のお名前が不明であり点検漏れがございます」との婉曲な文章だったため、後に東京消防庁からクレームが付く。メーカーでは本来この時点でもっと突っ込んだ内容の謹告を出したかったのだが、製造販売部門から抗議があったため避けたようである。当時の人気番組「兼高かおる世界の旅」などでCMを流し出したのもこの頃だったが、やはり内容は「補修交換のお知らせ」程度の内容だった。しかし1985年12月末に起こった同製品によるCO中毒事故をきっかけに新聞広告・テレビCMの回数を増やした。この時点での補修・回収率は70%。この頃、補修済みの製品も回収し、新品に交換する旨を発表している。こうして翌1986年1月にはテレビCMにおいて「人命に及ぶ重大事故の恐れ」を明示した"怖い"CMを流したのである。この時点で4.5%の商品の行方が不明だった模様。なおこの頃、三洋電機社長以下役員全員が辞任の意向を表明した。
 次に印象におわびCM残っているお詫びCMは、2003年の三菱ふそうトラック・バスである。同社のリコール隠しを受けてお詫びCMを流したのである。それまで、自動車に関しては、三菱ふそうに限らずリコールは数多くあったが、大きな事故に直接結びつくことはなかったことから、新聞紙上でのお詫びとリコールのみであった。三菱ふそうのリコールに関しては、隠蔽と度重なる不具合とで、大きな社会問題となった。

<今年流れたお詫びCM>
ナショナル FFファンヒーター
⇒CO中毒事故(オンエアー:2005年12月からの継続)
パロマ工業 ガス給湯器
⇒CO中毒事故(2007.3.1~)
リンナイ ガス給湯器
⇒CO中毒事故(2007.2.23~)
サンヨー 扇風機
⇒発火事故(2007.9.1~)
日本生命保険
⇒保険金不払い問題(2007.4.28~)
日立ハウステックおよび日立アプライアンス ミニキッチンユニット用電気こんろ
⇒スイッチ設計不良(2007.7.14~)
サンウエーブ工業 電気こんろ
⇒スイッチ設計不良(2007.7.13~)
淀川製鋼所、ヨドコウ
⇒ヨド物置 閉じ込め事故及びヨド倉庫強度不足(2007.3.9~)

 ナショナルのFFファンヒーターに関しては、2005年の死亡事故から続けてお詫びCMが流されている。"史上最大のリコール"と呼ばれ大々的な広告費用と回収費用は200億円にのぼっていると言われる。ナショナルのホームページによれば、
 最初の12月10日から19日まで、全てのテレビCMを中断し「お知らせとお願い」の告知広告に差替え、
・テレビスポット CM差し替えによる告知(15秒CM:全国16500本)
・テレビ提供番組CM差し替えによる告知(60秒CM:全国350本、30秒CM:350本)
・寒冷地での追加スポットCM(30秒CM:1000本)
上記のCM時間を総合計すると、なんと85時間50分となる。言いかえると「3日と13時間50分」にもなる。これは10日間での数字なので、単純に計算すれば、1日あたり8時間35分が全国の民放局で流されていることになる。ナショナル劇場であるTBS系「水戸黄門」ではCMワクを5分30秒持っているので、この番組内ではお詫びCMがたくさん、しかも連続で流れた。元々は商品のCM枠として取っておいた枠を、お詫びCMを流すことで、ナショナル商品の売上は低迷するかと思われていたが、むしろこの松下の真摯な姿勢が共感を呼んだのか、松下の商品、特にプラズマテレビのビエラは売上が伸びるという現象が起きたとされる。事故の責任はともかくとして、対応の迅速さと方法論に関しては、一応の評価を得ている。そのため、以降、どの会社の「お詫びCM]も、これを参考にしているようで、パターンが似ている。(下記参照)
 ニッセイに関しては、単純にお詫びCMを流すことにより、他の生保会社に先駆けてCMを流すことでむしろ好感度アップを狙っている感がある。結果的には、ニッセイ以外には「お詫びCM」を流した生保会社はなかった。
 選挙のタイミングで流された政府広報の年金記録問題のCMも、ニッセイと同様に政治がらみのイメージアップを図った「お詫びCM」とみていいだろう。

<お詫びCMのパターン>
 今年流れた「お詫びCM」でおおよそ共通しているパターンがある。
 ・フリップが画面に現れ、これをナレーターが淡々と読んでいく。
 ・色のイメージは白が基調
 ・BGMは流れない。

<今後の予想>
 2007年の世相を表す漢字が、「偽」と決まったこのご時世、今後はリコールだけでなく、日本生命保険のように不手際を詫びながらイメージ挽回を図るものが増えたり、さらには食品偽造を謝罪するCMが出てきそうな気配である。