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CMの研究

第5回  CMに見る品格とマナー


<序>
 『女性の品格』(PHP研究所刊)が300万部を超すベストセラーとなっている。世間に日常的にあふれる行為を、品格という視点から分かりやすく書いた本である。その一方で、オシャレなのか品格のないマナーなのかが問われているテレビCMも流れている。今回はそれらをピックアップしてみたいと思う。

<CMの例と考察>
食事のスタイル マクドナルドのマックラップ
macwrap.gif

 「マックラップ」は、ワンハンドで手を汚さずに食べられるスナックタイプのニュースタイルファストフードである。「チキンシーザー」と「えびサウザン」の2種類があり、昨年11月2日から販売された新商品である。2005年にアメリカで販売されヒットしましたものを国内向けにアレンジし、2007年後半の戦略商品として、日本マクドナルドが10月中旬から稼動させた新総合研究施設「スタジオM」で開発した第一弾商品だ。メーカーによれば「ワンハンドスタイルで食べられるユニークなパッケージも特徴です。手を汚さずにパクッとかぶりつくだけで食べられるので、テイクアウトやドライブスルーでの利用にも最適です」という振れ文句である。
 テレビCMも、昨年から3パターンが流されている。10月31日から最初に流されたバージョンは、国本綾扮するOLがオフィスの通路でスケボーに乗りながら片手でマックラップを食べているという内容である。途中 荷物を台車で押している男性社員をさっとかわす。スピーディーでスタイリッシュという商品コンセプトが色濃く打ち出されている内容である。
 第2弾は、11月7日から流された人気ヒップホップグループ、RIP SLYMEとのコラボレーションである「McWrap Tour!!」篇。新曲「SPEED KING」が使われ、ネット上では全国ご当地版が見られた。
 第3弾は、今年1月9日から流された男性バージョンである。通勤途中とおぼしき若い男性が、マックラップを左手に持ち、歩きながらかぶりつく、というものである。

<考察>
macwrap2.gif
 このスタイルをカッコイイとするか、品がないとするか意見が分かれるところだが、『女性の品格』を読んだ人ならば、「第6章 品格のある行動」に反するとみなすであろう。「歩きながら食べる」というのは行儀悪い、ましてや第1弾のバージョンに至ってはオフィスでスケボーに乗って食べるのであるから尚更であると言うだろう。
 ご存じの通りマクドナルドは、銀座の歩行者天国でファストフードスタイルを提唱した日本初の企業であり、アメリカンスタイルを日本に持ち込むことでスタイリッシュさを売りにしている。アメリカ合衆国という国はファストフード大国であり、ホットドック等を食べながら出勤したりするのが定着している。さらには食文化だけでなく、マナーの概念自体が日本とは違う。上司の前でも机の上に腰を下ろして脚を組んで話すのも親密さを表すものである。上司の前での腕組みも、アメリカのジェスチャーでは単に思案中の意味であるが、日本では上司に対して敬意が感じられないとしてお叱りを受けることにもなりかねない。
 そして先に書いたように、「マックラップ」の商品の原型はアメリカにある。マックラップだからオシャレであって、これがおにぎりだったらどうだろうか。食べながら出勤したら、違和感も増していくかもしれない。

<類似のCM>
 ウイダーinゼリー(森永)
 「あなたには、あなたの十秒メシ。ウイダーinゼリー」というキャッチコピーで売っている「ウイダーinゼリー」も、かつて木村拓哉のバージョンでは、さっそうと歩きながら食べるシーンがあった。現在流れている浜田雅功の「休日のおじさん」編では、マナーを意識してか車中で食している。浜崎あゆみと山下智久のバージョンも歩きながらというシーンはない。
 かつて70年代に、日清食品のカップヌードルのCMでは、集団の若者たちが森の中でカップヌードルを食べながら歩くというシーンがあった。日清食品も現在は、カップヌードルに限らずどのカップ麺も歩きながら食べるシーンのCMは流していない。