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CMの研究

第10回 CMで省エネ、省予算を語り始めた
トヨタの新たな「省費用型」コマーシャル
・・・「トヨタ3年ぶん下さい!」

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 金融危機の真最中であるこの時期、CMの世界もなんだか元気がない。テレビCMのフラッグシップだった自動車業界が出稿を減らし、高級車が外国の風光明媚な場所を疾走するといういかにも「自動車立国」日本を象徴するようなCMがすっかり減ってしまっている。「日産のCVTで低燃費」とかトヨタの「今、燃費を語る」というような、かつてのイケイケでは考えられないものばかりである。

 そういう状況下であってもちょっと目立ったのは「トヨタ3年ぶん下さい」というCMだ。売れっ子の女優・水川あさみを使った独身向けのものと、プロレスの佐々木健介と北斗晶を使ったファミリー向けの二つのものがある。「トヨタ3年ぶん下さい」というのは残価設定型プランのこと。CMを見ているだけではよくわからないが、通常車をローンで買うときには買値の全部を支払う設定をするが、この残価設定型というのは、新車の3年後の残存価値を引いた価格にローンを組むということになる。例えば300万円の車に3年ローンを組むなら通常は300万円に対する月々の支払いということになるが、残価設定型にすると例えば3年後の下取り価格が100万円なら、3年間の毎月支払額は200万円に対するものとなる。当然月々の支払額は通常のローンより大きく減少する。

 CMではよくわからないので、後はトヨタのウェブサイトにアクセスさせるという。この残価設定型のものは、CMそのものが「省費用型」となっている。ウェブサイトでは「これまで手に届かない高級車」とか「余った予算でショッピングやレジャー」みたいなことを薦めている。そして3年経ったら車を返却して新車を買うか、その車に新たなローンを組んで乗り続けるという方法がある。なるほどと思わせる。従来ならこの部分は他のバージョンのCMを作って訴求していたはずだ。持論今後この「トヨタ3年ぶん」は新作CMが出るかもしれない。しかし、この最初のものだけでも十分新しい試みが見えてくる。

 省エネ、省予算を語り始めた自動車業界、この「トヨタ3年ぶん」というのは、CMの背後にある情報へたくみに誘導するという手法の試みではないだろうか。つまりこれまでの情報はCMで完結していたが、CMをウェブサイトでのセールスのポータルにすることで、費用対効果の効率をさらにアップするという試みだろう。そしてその成功の鍵はいかに視聴者が「食いつくか」ではないだろうか。車に詳しい人はすでに残価設定型のことは知っているだろうが、「トヨタ3年ぶん」はごく一般の人に、「もっと負担の少ない買い方がありますよと」教えてくれている。こういうCMは競合他社のみならず、さまざまな企業が取り入れていく可能性が大だろう。ただ、問題はその作り方だ、15秒や30秒で以下に消費者を引き込んでいけるかという、まさに「CM力」が問われるからだ。そうなるとスポンサーから代理店、クリエーターまで一体となって考えなければならなくなるだろう。失敗すれば「なんか小難しいこと言ってるね」という感じになってしまうだろう。
 ダチョウ倶楽部ではないが、まさに「つかみはOK!」でなければならない。
 そしてそんな作品を作った企業が費用対効果の勝者になるはずだ。「省費用」型CMは時代のキメテであろう。