> 日曜討論「普天間とこれからの防衛」

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HOME > TV allcover free > あの人のこの一言 > 普天間2010-2/21

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必読・2月21日 NHK「日曜討論」(9時~10時)
『移設先はどこに?・どうする普天間問題』

・政府・与党の議論は  ・陸上案は・稲嶺市長の意向
・在日米軍の抑止力は  ・在日米軍のあり方は  ・社民党の主張

発信者
外交評論家・岡本行夫、元防衛大学校教授・孫崎享、
拓殖大学教授・川上高司、法政大学教授・鈴木佑司

【普天間基地移設問題】

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
(住宅密集地にある普天間基地の移設問題は、)住民対策として始まったもの。米軍は、普天間基地と同等の機能と能力を持ったものを用意してくれたら移設するとの合意。返還ではなく移設の合意。(前政権の)自民党は時間をかけすぎた。民主党は、そのレストランに用意された料理をおいしくないとみんなを連れ出したが、外にレストランがないので戻ってみたら、元々用意されていた料理がまずくて沖縄の人が食べれない状況になったというのが現在の状況。

■元防衛大学校教授・孫崎享(元外務省国際情報局長)
総選挙後、新政権で日米関係を見直すのは当然のこと。普天間問題で日米関係が壊れることがない。普天間問題は、米国の戦略にどうかなうか、(基地)受け入れの人がどう対応するかという2つの問題があるので、鳩山首相が期限とする5月末にこだわらず時間をかけて対応すべき。時間をかけても良い。

■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
今までは、米国の戦略とニーズを考えた後に地元のことを考えたが、今回の交渉は、地元のニーズを吸い上げてから交渉すると今までと逆の姿勢。よって、米国側はある一定の場所しか受け入れないということになり、鳩山政権もこのことが分かったので沖縄県内の移設先をようやく模索し始めた。しかし、この間に沖縄の名護市長選挙結果が出てしまい、米国が防衛戦略で沖縄を重要と位置づけた関係で、(基地移設先の)選択肢が狭まった。米国議会が発言力を強めてきたので、議会対策を考えないといけない。11月の米国・オバマ大統領訪日までできるかが焦点。

■法政大学教授・鈴木佑司
民主党政権が日米双方でできて、普天間問題がうまくいかないと日米関係がおかしくなるという議論は間違え。基地を置く大義と名分はなにか、住民の反対の中移設先を考えるのは、政治的に大変な貧困。国民に支持される安全保障政策を日米両政府が構築する必要がある以上、時間がかかっても、日米で合意を作るのが一番大事。属国が親分に言われてヒーヒーやっているのでは長期的安定は築けない。

【キャンプシュワブ陸上案】

■元防衛大学校教授・孫崎享(元外務省国際情報局長)
(キャンプシュワブ陸上案は)米軍側にも住民側にも良い案になりそうもない。住民側から言えば、北沢防衛大臣は住民の反対は少なくなるかもしれないと言っているが、住宅地により近づくため反対運動はより盛り上がる。米国側から見ると、滑走路が1500m欲しいといっているが、それができそうもないので良い案とは思えない。

■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
(キャンプシュワブ陸上案は)ベターな案であるが、困難性を伴う。(日本)政府が強硬にやる場合は、キャンプシュワブ陸上案と沿岸案の両方が考えられる。日本の抑止力確保という観点では良いが、(政府が強硬的に)できるかどうか疑問。(政府の強硬策というのは)日米同盟を優先し、地元の意向はその次に回さないと日米関係が壊れるという考え方にたっている。

■法政大学教授・鈴木佑司
95年以降、日本政府は、自民党政権下でも嘉手納基地以南の基地返還は確実に進めようとしていた。世論を重視するなら、国外、沖縄県外移転は本来考えるべき選択肢。マニフェスト通り国外移設を(民主党政権は米国に)求めるべき。国の大事のために国民は忍んでほしいという古典的な説得に、もはや理由はない。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
(キャンプシュワブ陸上案は、)宜野湾市の苦痛をそのまま名護市にもっていくだけなので、沿岸部移設案より難しい。(普天間基地)移設合意ができない場合、最悪の事態であるが普天間基地が残ってしまう。

【県外・国外案】

■元防衛大学校教授・孫崎享
(普天間基地移設に関して)私は、鳩山首相に大村案(長崎県・海上自衛隊基地)を提示した。今の官邸周辺は、大村案を含め、航空自衛隊の基地などに普天間基地機能を分散移転をしようと考えている。長期的に在日米軍の現状、基地の規模と米軍基地に対して日本がどれだけ支援をすべきかという大きな問題とリンクしているので、早急に結論を出さなくても良い。

【どうなる安全保障】

■法政大学教授・鈴木佑司
安全保障上の問題(特に抑止力)が日米双方にある。脅威が歴史的に不変あることはあり得ない。冷戦時代のような枠組みで、抑止力を維持し続けるのが唯一の選択であるかのごとくの議論はすべきではない。日米を強化する格好で、(在日米軍)再編をする努力が必要。日本全体で基地を引き受けることと、必要でない(在日米軍)基地の返還を求めるべきだ。在日米軍強化だけでは中国問題には対応できない。中国や北朝鮮の脅威に対して、軍事ではなく非軍事で対応すべき時期がきている。東アジア共同体構築や冷戦構造の解体が必要。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
日本は世界中でただひとつ、周辺諸国(ロシア、中国、北朝鮮、韓国、台湾)と領土紛争を抱えている国。冷戦後、北朝鮮や中国の膨張する海軍力などで日本の脅威は増している。中国は尖閣諸島を中国の領土に編入しているという認識。

■拓殖大学教授・川上高司
脅威にどう対処するか、時間軸という2点の問題がある。東アジア共同体や協調的安全保障は重要であるが、目の前に対する脅威にどう対処するかという喫緊の問題があり、その中で、米軍・海兵隊をどう位置づけるか考える必要がある。吉田茂元首相は「海兵隊は番犬」と呼んだ。海兵隊を手放した場合、防衛費を1兆円程度増額して(日本)自らで守らないといけない。軍事手段がなくて外交ができるのかという問題がある。東アジア共同体という理想に行く前に現実的におさえる必要がある。米国側は台湾危機と朝鮮半島有事に対するシミュレーションをして、そこから脅威を認識した。日本側がこれに対してどう見るかが問題。

■元防衛大学校教授・孫崎享(元外務省国際情報局長)
米国側は、長期的に米国・海兵隊を含め、米国本土に持っていく可能性はあると思っている。アフガニスタンやイラク戦争の中継地として日本が使われているが、将来的には海兵隊が「米国本土で休みたい」という情勢は出てきているので、海兵隊がグアム、サイパンを含む米国本土に行く可能性はあると思う。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
(普天間基地の)県外移設は、過重負担になっている沖縄にとって必要なのでぜひ実現すべき。現在、県外移設を主張している人は、ヘリ部隊だけの移転はできないという認識、(普天間基地を県外移設する場合には)キャンプシュワブを含むすべての沖縄の米軍海兵隊移転をしなければならないということが欠けている。長崎県といったらとたんに、(住民の)反対があったので、社民党は、九州北部(に移設)といったりしてずるいと思う。県外移設は物理的に難しい。ヘリ部隊だけを移すのならヘリの航続距離を考え、沖縄周辺しかない。

【国外移設案】

■法政大学教授・鈴木佑司
住民の立場から考えると沖縄の人が反対しているようにグアムの人が反対することは十分に考えられる。米国政府とグアム住民で決めていく問題で日本が悩む問題ではない。日米間の合意で、8000人の海兵隊を動かすことが決定している。脅威の存在、日米の軍事的協力の問題の中で合意できているのは、8000人兵力削減しても(脅威に)対応できるということでないと、米軍内部は納得しなかったと思う。米国の国務省と国防総省内でも様々な議論があった。沖縄で在日米軍の基地維持は継続するのは無理なので、難しいことであるが、日米(双方)で努力をすべき。米国にイニシアティブを預ける方法も一つの手。政府が変われば政府間の合意が変わることはいくらでもある。合意を全て履行しないといけないのなら、見直しや新たな合意がすべてできなくなる。

■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
沖縄に(海兵隊の)実戦部隊を残し、司令部をグアム移転させるので、十分抑止力は担保できる。現行案は、軍の戸籍だけを沖縄に置いて、演習時以外は沖縄に(海兵隊)がいないという利点がある。国と国とが結んだグアム協定は、履行するのが国の役割。現行案以外でどうやって沖縄の負担を減らすかが国としての役割。キャンプシュワブ陸上案や県外移設にした場合は環境アセスメントを1~2年かけてもう一度しないといけないので、元の木阿弥となる。

■拓殖大学教授・川上高司
鳩山民主党政権は、中国の脅威が出て、米国や日本の力は落ちているが、グアム協定履行をやるべき。(米国と安全保障について)鳩山政権は各論から入ってしまった。そうではなく総論を論ずるべき。

【在日米軍の規模】

■元防衛大学校教授・孫崎享(元外務省国際情報局長)
(沖縄の在日米軍基地の減少は)長期的な問題。日本の脅威や負担能力に応じて見直すべき。普天間基地の県外移設や在日米軍削減を真剣に考えるべき。日本は、世界に比べても在日米軍基地の負担が多い。米国の戦略にマイナスにならない程度に日本の(在日米軍基地)負担軽減をするために、長期的に時間かけてもじっくり模索すべき。米軍の海外展開において、日本は突出して負担をしている。(米国外の米軍)基地に対する経済的負担は、全世界の50%以上を日本が行っている。米軍が世界に展開しているが、それに対し日本は非常に多くの負担をしている。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
沖縄の在日米軍基地減少は継続して行うべき。1998年に国会で決議もされている。当面は、普天間基地周辺の住民の苦痛緩和を実現すべきである。県内移設はベストな案ではないが、住民の苦痛は緩和できる。沖縄の住民の6割の支持がないと混乱する。沖縄県内の移設でも沖縄県民に理解を求める方法はあると思う。普天間基地や、沖縄南部の在日米軍基地がなくなると現在の沖縄の負担は相当減少する。そして、中部の嘉手納飛行場と北部のキャンプシュワブに集約される。よって普天間基地移設は急ぐべき。
■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
沖縄の基地削減のために、ひとまず普天間基地など沖縄南部の基地削減からするのか、一から議論をしなおすのかという問題がある。また、日本の防衛戦略の根本の問題として、日米同盟をどうするか、在日米軍が撤退する場合、他国と同盟し防衛体制を作るのか、日本独自で防衛体制を作るのか、時間軸の問題として日米同盟悪化の場合の手当てをどうするのかなどというのが、鳩山政権の大きな課題となっている。

■法政大学教授・鈴木佑司
在日米軍基地をなくすと言うことをあきらめるべきではない。本土が沖縄化するのが良いことか議論をすべき。日本は自分でどのように防衛政策をすべきか議論がない。日本が(自衛隊など用いて)独自に安全保障政策をとらないと東アジア共同体(構築)は無理。日本は、独自の防衛政策を議論しながら、米国の在日米軍基地を減らすという長期的な目的を実現すべきだ。普天間基地移設問題は象徴的な問題。

【在日米軍のあり方】

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
日本周辺地域は危険だらけ。中国の軍事力増強のペースは凄ましい。世界に比べ、日本のGDP比における防衛費は、かなりの低負担。満額支給になった場合の子ども手当よりも日本の防衛費は低い。防衛費が世界に比べ異常なほど低負担にも関わらず日本が、他国から攻撃されないのは、横須賀の米国軍第七艦隊や在日米軍・嘉手納基地などがあるからだ。米国が周辺諸国に対し、日本に手を出すなとメッセージを発しているおかげである。

■法政大学教授・鈴木佑司
沖縄を本土並みにすべきという意識を我々は持つべき。(日本)国民は、自らの問題で主体的な問題であるという意識を持つべき。こういう議論や国民の目線を持たないと、沖縄化につながる懸念がある。在日米軍基地及び関連施設(演習場など)は沖縄、青森、神奈川、東京の順に多い。

■元防衛大学校教授・孫崎享
在日米軍負担は、日本(全体)が平等に負担すべき。岸首相(当時)と米国・アイゼンハワー大統領(当時)が合意した在日米軍削減が、実態としては沖縄に在日米軍基地を集中させた。

■拓殖大学教授・川上高司
(在日米軍負担は)本土も応分に負担すべき。全国知事会で話し合いが行われたが、引き受けたいという知事は少なかったと聞いている。(技術の進歩で)海兵隊を本土に移さなくても良い状況が生じるかもしれないので、総合的に戦略を練るべき。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
(在日米軍基地が)沖縄に集中しているのは本土側に責任がある。(米国・海兵隊の実弾演習の)受け入れが難しかったのに、普天間基地の沖縄県外移設は困難。フィリピンから米軍が撤退したら、中国がミスチーフ環礁というフィリピンと中国が争っていた地を取り、ベトナムからソ連が撤退したら中国が、パラセル諸島やジョンソン環礁を取得した、沖縄からもし在日米軍が撤退すると、中国が尖閣諸島への領有権主張が大きくなる。

■元防衛大学校教授・孫崎享
軍事力とは、物理的な規模と意志があって脅威が拡大する。中国の意志はかなり変化している。中国の戦略的な考えは変わり、中国の政権安定のためには経済発展が一番重要としているので、そのために近隣諸国との友好関係構築を第一優先にしないといけないと米国・国防総省が述べている。単なる軍事力のみならず、経済的結びつきを作ることが、中国の日本攻撃に対する抑止力を構成する。

【日本の安全保障と中国の脅威】

■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
米国は経済的に関与しながら信頼醸成をして米中間の緊張を緩和をする。それから軍事的に抑止をしていく。米国・オバマ政権は、中国に対して軍事的抑止をするという回答を出した。もし、日本の脅威認識が中国には脅威が少ないと判断したら、尖閣諸島へ中国が台湾の民間の船などを使って上陸する可能性がある。この時に海上自衛隊や海上保安庁が中国艦艇と衝突したときに、米国が救助してくるかという問題がある。政府案に日本の安全保障が大きく影響をする。

■法政大学教授・鈴木佑司
ASEANが、中国に対して非軍事的な対応を示した。外交的にそれなりの成果があった。海賊問題を外交で抑えていった。(軍事力による抑止という)米国のやり方に対し、やや不平等な日米安保条約があるので、日本が巻き込まれる懸念がある。そこで日米関係を対等にすべき。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
日米安保は日本にむしろ有利。中国は、南沙諸島、東沙諸島、澎湖島、台湾、尖閣諸島を中国は、中国領土として国内法上、中国に編入している。尖閣諸島を中国が占領すると米中関係は決定的に悪化する。海兵隊を沖縄から撤退させれば、日米安保が弱くなったと判断して、尖閣諸島を占領するという誘惑にかられる。それを起こさせないのが抑止である。

■拓殖大学教授・川上高司
日本は米国から捨てられる懸念がある。その場合、抑止力はどうするのだという問題がある。日本の防衛政策について、鳩山政権はきちんと話し合って現実的な案を出すべきである。

【日米同盟】

■元防衛大学校教授・孫崎享(元外務省国際情報局長)
日米同盟について、深化という言葉が良く言われている。米国は、自衛隊を含めた日本をグローバルに使っていこうという戦略。米国のグローバル戦略は、イラク戦争やアフガニスタン紛争などを見ると非常に問題。現状の日米同盟の動きを再考するのが現在の日米同盟の一番の問題。

■外交評論家・元総理大臣補佐官・岡本行夫(元外務省北米一課長)
日本は独立国なので、イラク戦争への参戦は断ればよいのであって、平和目的の自衛隊を安全な場所に送っただけ。アフガニスタンにおいても一番安全な給油活動を行った。日本は独自の外交政策を持っている。現在の日米安保は、東アジア地域の安定のための公共財として、東南アジア諸国や韓国が必要である。日本は安心な状況ではない。在日米軍は、日本にとって必要な存在。

■法政大学教授・鈴木佑司
(太平洋戦争後の)日本の新たな外交関係構築で、米国が果たした役割は大きかった。しかし、それは永遠不滅ではなく、日本の自主的な外交のあり方、日本の安全保障を地域と共にシェアしていくのは非常に大きな課題。中国は脅威だけではなく重要なパートナーでもあるので、この矛盾と同居するための政治力を日本は持つべき。政権交代後の日本政府に期待する。イラク戦争が間違っていると主張した米国・オバマ大統領が当選したので、この点で日米両政府は両方が変わって(日米同盟の)見直しをすべきだ。
■拓殖大学教授・川上高司(元防衛庁主任研究官)
自民党は、日米同盟において、自衛隊と米軍の一体化という垂直的深化を望んできたが、民主党政権は日米同盟の水平的深化を望んでいる。その際には、軍事力と非軍事力との組み合わせが非常に大事。ISAFに自衛隊を1~2人を派遣すべき。その上で、非軍事的な援助も必要。(在日米軍)基地問題も総合的な組み合わせが必要。

■元防衛大学校教授・孫崎享
(普天間基地移設問題決着が5月末より延期になっても日米関係に)影響はない

■外交評論家・岡本行夫
(日米関係に)影響が出る。外交と軍事は2者択一ではなく外交が駄目になった場合に、抑止力が必要になる。


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