テレビ報道に見る産業・経済月報(平成24年8月)

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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成24年8月)

●今月の特徴

「日本企業・歴史的な円高活用し生き残りかける」

 

今月の特徴は1.円高・株価の動き、2.エネルギー関連の動き、3.震災の影響・復興の動きとなったが、特に日本企業による円高を生かした企業買収、提携の動きが目立った。

                 

1.円高・株価の動き

 

【日銀・金融緩和見送り】

31日の日経平均は、8900円を割り込み約3週間ぶりの安値水準になった。8月のユーロ圏の景況感指数が約3年ぶりに低水準となり前日のNYダウを約100ドル下げた流れが続いたほか、日本の7月鉱工業生産指数が市場予想に反してマイナスに転じたことも売り材料視された。マイナスは2か月ぶり(テレ東)。2日、古川経済財政担当大臣は、外国為替市場での円高是正に向けて日銀に一段の金融緩和を期待する考えを示したが、日銀は9日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送り現状維持とすることを全会一致で決めた(フジ)。こうした中、貿易収支は半期としては過去最大の赤字5100億円余となった。財務省によると、今年6月までの上半期の日本の経常収支は原油やLNG液化天然ガスの価格が高騰して輸入額が増えたことなどから3兆円あまりの黒字にとどまり、昭和60年以降、黒字額が上半期として最も少なくなった(NHK)。歴史的円高による輸出の採算の悪化などで、保有する製鉄所などの価値が大幅に目減りした為。今年10月に合併する新日本製鐵住友金属工業は、9月の中間決算で両社合わせて2400億円を特別損失として計上する事になった。(NHK)。

 

【円高を生かした企業買収、提携の動き】

日本貿易振興機構は、昨年の日本の対外直接投資が一昨年の2倍を超える1157億ドルだったと発表。円高を追い風にした日本企業による海外企業のM&Aが活発になり、3年ぶりの増加となったとみられる(テレ東)。こうした中、政府は国際協力銀行を通じた日本企業への円高対策の融資枠の期限を半年間延長させたことに象徴されるように、歴史的な円高を活用し、国際的な事業展開を強化しようと海外企業を買収する動きが日本企業の間で活発化している。このうちクラレは水に溶ける特殊なフィルムを作る米国企業を約300億円で買収、旭化成は救急医療で使われるAEDを作る米国の企業を1800億円で買収した。フマキラーはインドネシアとマレーシアの殺虫剤メーカー2社の買収を決定(NHK)。空調機器メーカー・ダイキン工業は、米国の家庭用エアコン最大手・グッドマングローバルを約3000億円で買収すると発表した。これまで手薄だった米国での事業を拡大し、急成長する中国メーカー(珠海格力電器、広東美的電器)に対抗したい思惑がある(テレ東)。新日本製鐵は新興国での建築用鋼材事業を強化するためオーストラリアの会社・ブルースコープ・スチールと共同で新会社を来年3月までに設立することで合意した。新会社への出資比率は50%ずつで、新日本製鐵はグループ全体で443億円を出資、日本国内の製鉄所で生産した鋼材を新会社に供給し、そこで建築用に加工された製品を主に東南アジアで販売する。東南アジアでは、経済成長に伴って建築用の鋼材の需要が高まっているため、新日本製鐵はブルースコープ・スチールがこの地域に持つ販路を使いながら新興国での需要の取り込みを急ぐねらいがある(NHK)。

 

2.エネルギー関連の動き

 

【原発の動き】

枝野経産相はベトナム・クアン科学技術相とベトナムで建設計画中の原発の安全向上と事故時における損害賠償制度の整備などの両国間協力に合意した。そんな中、米国・NRC(原子力規制委員会)では使用済み核燃料の処分問題への対応ができるまで米国内での原発の新設や運転延長を許可しないと発表(TBS)。原発の停止により、日本の商社は天然ガスの利権獲得など資源確保に動き、利益を拡大しており、商社5社の4-6月期決算で純利益は日経225企業(銀行除く)の5分の1に相当する(テレ東)。

 

【再生可能エネルギーの動き】

今、世界のエネルギー事情が急速に変化している。米国ではシェールガス、カナダではオイルサンド、ヨーロッパを中心に再生可能エネルギー、メタンハイドレートや電気自動車の開発も進んでいる(テレ東)。環境省は将来の原発依存度を減らす為に必要な再生可能エネルギー(洋上風力、地熱、バイオマス、海洋エネルギー)の導入戦略をまとめた。2030年時点で2010年度の6倍以上に増やす。環境省は最重要課題として研究開発費を来年度予算の概算要求に盛り込む予定。こうした中、再生可能エネルギーの需要拡大が見込まれるとして、ソフトバンクの子会社・SBエナジー三井物産が共同で新会社を設立し、来年7月に鳥取県に大規模な太陽光発電所「メガソーラー」を建設する(NHK)。国内の原子力発電所の運転停止で、燃料として天然ガスの需要が高まる中、日本の電力会社などが現在、主に輸入している中東やアジアより価格の安い米国の天然ガスの獲得に乗り出す動きが本格化している。中部電力大阪ガスは米国・テキサス州から天然ガスを輸入する計画で、担当者を派遣して必要な液化施設の建設予定地の視察や、輸送ルートの確認作業などを進めている。大手鉄鋼メーカー・JFEホールディングスと大手機械メーカー・アイエイチアイマリンユナイテッドが今年秋に合併して発足する新会社・ジャパンマリンユナイテッドが、造船だけでなく海底の石油や天然ガスの採掘プラントなどの海洋開発事業を強化することになった(NHK)。ところで、再生可能エネルギーの中でもバイオエタノールの原料となるトウモロコシの生産量世界一の米国で生産が大幅に落ち込んでいる。記録的な猛暑と干ばつによるもので、世界的な穀物価格上昇をもたらしている。国連は穀物をバイオエタノールの生産に使うことを見直すよう呼びかけているが。米国では燃料消費の5%はバイオ燃料で、エタノールの生産を減らせば原油価格高騰になりかねない(テレ東)。

 

3.震災の影響・復興の動き

 

震災の復興需要などの影響で4~6月までのGDPの伸び率の速報値は、実質で前の3ヶ月に比べてプラス0.3%と4期連続のプラスで、年率換算ではプラス1.4%だった(NHK)。こうした中、三菱商事が復興支援の為に設けた財団などの支援を受け、岩手県陸前高田市のホテルが再建を目指す事になり16日、調印式が行なわれた。新ホテルは高台に建設され、来年6月から営業再開予定で復旧工事関係者の宿泊先としても期待されている(NHK)。東芝は東日本大震災復興支援として、住宅用太陽光発電システムを提供した。(テレ東)。

 

●注目点

「シャープ・鴻海・交渉難航」

営状態が悪化しているシャープだが、台湾の鴻海精密工業との資本提携交渉が難航する中、株価は31日、大幅に下落し200円を割り込んだ。シャープとの出資交渉のために来日していた鴻海精密工業・郭台銘会長が日本を離れたと伝わり、資本提携の行方は一気に不透明になっている(テレ東)。急速な韓国勢などの追い上げで世界的な供給増加により液晶価格が下落し始めた頃、シャープは液晶の大型化に活路を見出し、4200億円を投資し堺工場を稼働させたが、大型テレビ販売が伸び悩み、多くの在庫を抱え、稼働率は50%を切る状況になった。太陽光パネルの分野も安い海外製品に押され、赤字になった。そんな中で持ち上がった世界最大の電子機器を受託・製造する台湾・鴻海精密工業との提携。鴻海は受注の約4割がアップル社のiPhoneやiPad。従業員は96万人、売上高は9兆3000億円。シャープとの提携を巡り鴻海側は1株550円でシャープ株を9.9%取得、669億円を出資する予定だったが、シャープの株価が急落、鴻海側は出資条件の見直しを求めていた。鴻海精密工業・郭台銘会長は出資比率を変えずに出資する金額を下げる方向で調整しているとみられる(テレ朝)。鴻海はこのままでは割高な価格でシャープの株を取得する事になりかねないことを危惧している。一方シャープにとっては鴻海が出資金額を維持すれば、出資比率が上がり主導権を奪われかねない状況。鴻海としてはシャープの中小型液晶パネル技術が欲しい。シャープとしては、鴻海との合意を成立させスマートフォンなどを大量生産できる鴻海に部品を納入するメーカーとして再建を目指したい思惑がある(NHK)。そもそもなぜシャープが苦境に陥ってしまったのか、駒沢大学経済学部准教授・エコノミスト・飯田泰之は「直接的な原因は堺工場に代表されるように、液晶テレビの需要を過大に見積もり、過剰な設備投資をしたこと。構造的な原因では1つのテレビ事業というものに特化しすぎたこと。環境の要因としては円高がじわじわと足を引っ張ったことがある。日本製品が1.5倍ぐらい高くなってしまった。それをひっくり返すぐらいの質の良さはなく、韓国製品の方に消費者が行ってしまった。今後の鴻海精密工業との交渉について一番の焦点はどの程度のリストラが可能かということ」と指摘した(テレ朝)。

 

●新潮流

「アップルVSサムスン・史上最大の特許戦争の行方・アップル時価総額・49兆7800億円・史上最高額に」

ップルの株価が20日のニューヨーク株式市場で史上最高値を更新した。これまでiPhoneやiPadなど発売ごとに話題を呼んできた。時価総額は約48兆円でトヨタの5倍の価値(フジ)。ところがアップルと韓国・サムスン電子によるスマートフォンなどの特許をめぐる米国での裁判結果で時価総額は約49兆7800億円とさらに最高値を更新した(日テレ)。

今、スマートフォンなどの特許を巡って、アップルとサムスンの間で史上最大の「特許戦争」と呼ばれる裁判が世界各地で争われており、その結果が販売戦略にも影響を及ぼす可能性がある(NHK)。訴訟はほかにも韓国、オーストラリア、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ、英国、EUで起きている。両社の世界シェアでは、サムスン32%、アップル16%(フジ)。米国カリフォルニア州連邦地裁は、サムスンによる特許の侵害を認め825億円の賠償を命じ、アップルのほぼ全面的な勝訴となった。判決直後にアップルの株価は過去最高値を更新し、サムスンの株価は一時8%も下落、両社は法廷の外でも明暗を分けた形となった(NHK)。特許権侵害をめぐり争われた日本での判決では、東京地裁はサムスンによる侵害を認めず、アップルの訴えを退けた。発端は去年4月、デザインをまねたとしてアップルがサムスンを米国の裁判所に提訴したこと。サムスンはiPhoneのデザインはソニーのアイデアを基にしたものと主張している(NHK)。

 

          8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東日本旅客鉄道、第2位・東武鉄道、第3位・三井不動産」

月は鉄道会社のランクインが目立った。その中でも、東日本旅客鉄道がCM価値換算43億9300万円でトップの座を射止めた。トピックスとしては、「東京駅復元工事関連」「山手線や中央線などの耐震補強工事」「期間限定のワンピース号の運行」などであった。第2位は、「“スカイツリー開業100日”臨時電車が祝う」「東京スカイツリーを支える最先端技術」などの報道で東武鉄道が獲得した。第3位は、「三井不動産・商業施設が好調」「三井不動産が都内初分譲・長期優良マンション」などの報道で三井不動産が輝いた。第4位は、「東急東横線・渋谷駅・開業から85年記念イベント」などの報道で東京急行電鉄となった。第5位は、「神奈川・箱根・名湯・秘湯をめぐる癒し旅」などの報道で小田急電鉄になった。第6位は、「No.1ハンバーガー24時間密着SP」などの報道で日本マクドナルドホールディングス、第7位は、「ローソン・12年ぶり株価6000円台」などの報道でローソンになった。第8位は、「シルシルミシルさんデー3時間スペシャル・タカラトミー」などの報道でタカラトミー、第9位は、「JAL再上場・東証が承認」などの報道で日本航空、第10位は、「星出彰彦・宇宙で船外活動」などの報道で宇宙航空研究開発機構が獲得した。

 

●8月の人物ランキング

「第1位・鴻海精密工業・郭台銘会長、第2位・シャープ・奥田隆司社長、第3位・鴻海精密工業・戴正呉副会長」

第1位:鴻海精密工業・郭台銘会長44件(シャープ×鴻海・きょうも資本提携協議など)、第2位:シャープ・奥田隆司社長30件(シャープ5000人のリストラ、シャープ・鴻海と最終交渉へなど)、第3位:鴻海精密工業・戴正呉副会長13件(シャープ再建へ向け…台湾企業トップの決断は?)、第4位:日本航空・植木義晴社長12件(JAL・来月19日再上場決定など)、第5位:エアアジアジャパン・岩片和行社長10件(エアアジアジャパンが就航など)、第6位:トヨタ自動車・豊田章男社長9件(トヨタ・ブラジル新車両工場が完成など)、第7位:ソフトバンク・孫正義社長8件(ソフトバンクと三井物産・“メガソーラー”建設へなど)、第8位:スズキ自動車・鈴木修会長3件(スズキ・インド子会社工場再開)、第9位:新日本製鐵・樋口眞哉副社長2件(新日本製鐵・オーストラリアメーカーと新会社・新興国事業・強化へ)、第10位:ジェットスタージャパン・鈴木みゆき社長1件(関西空港を第2の拠点に)。

 

●テレビの窓

「オリンピック経済効果は予想以上?」

ンドン・ボリスジョンソン市長が、ロンドン五輪の成果をアピール。日テレは、「運営側によると期間中に国内外から640万人が訪れ、経済効果は数年で1兆6000億円に及ぶと説明し”過去最も偉大な大会だった”と強調した」と報じている。TBSは、「電通総研はロンドン五輪の日本国内での経済波及効果について、当初の予想は8037億円だが、実際には8451億円に達する可能性もあるとしている」と「オリンピックの経済効果は予想以上」と報じているのに対し、テレ朝は、「英国の大手銀行がまとめたオリンピックの経済波及効果2兆600億円という数字だが、建設工事が8割以上ということで、効果のほとんどは大会前に出てしまっており、経済効果は限定的」との見方を報じている。

 

 

 

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