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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成30年10月)

「日銀・大規模な金融緩和策維持決定」

 

今月の特徴は1.安倍総理が中国を訪問・日中新時代スタート、2.日銀・大規模な金融緩和策維持決定、3.政府・消費税率10%引き上げを発表、4.TPP・12月30日発効へ、5.太陽光発電電力の買い取り順次終了となった。今月はこの他、韓国人徴用工の問題をめぐり、韓国の最高裁判所が新日鉄住金に4000万円の賠償を命じる判決を言い渡すなど大きな動きがあった。同様の訴訟を抱える企業は約70社あり、新日鉄住金と同じように訴訟される可能性がある。

                                                                                                

1.安倍総理が中国を訪問・日中新時代スタート

安倍総理が中国を訪問し、習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談を行った。今回の首脳会談のポイントの1つ、第三国市場での協力では、日本と中国が東南アジアなど第三国のインフラ投資で協力する方向性が決まった。今回名だたる企業のトップが安倍総理に同行し、日中「第三国市場協力フォーラム」には日中の経済界などから合わせて約1400人の関係者が参加し、両国の企業間で50件以上の覚書を締結した。今後、日中間では更に多くの交流やビジネスが生まれる事になりそうだ。中国が急速に日本に歩み寄った背景には、米中貿易戦争の存在があり、中国としては自由貿易体制を守るという名目で日本と手をにぎることで、日米関係にくさびを打つという中国の狙いも透けて見える(NHK)。

 

2.日銀・大規模な金融緩和策維持決定

日銀は31日、金融政策決定会合を開き、現状の金融緩和策の維持を決定した。背景にあるのは、なかなか上がってこない物価。3ヶ月に1度発表される物価見通しでは、前回7月に示した1.1%から0.9%に、来年度は1.4%に引き下げられた。日銀の行く手を阻み続けているのが世界で渦巻く先行きへの不安。30日に発表されたユーロ圏内のGDP速報値は、年率換算で0.6%と、4-6月期の1.8%に比べ大幅に減速した。米国と中国の貿易摩擦に伴い、自動車産業の業績が落ち込むなど影響が出始めている。日銀・黒田総裁は「米中のみならず、世界経済への下方リスクに一番着目している。欧州経済は回復しているが減速気味で、ブレグジットの交渉が進まないことやイタリア財政政策についての議論など、よく見ていく必要がある」と話した(テレ東)。

 

3.政府・消費税率10%引き上げを発表

安倍首相が、来年10月1日に消費税率を10%に引き上げる予定と発表した。それに伴い、日本で初めて、複雑な軽減税率が導入されることになる。持ち帰りの場合や購入後に店内で食べた場合、コンビニ前のベンチで食べた場合、持ち帰り用のコーヒーを店内で立ち飲みした場合など、それぞれのケースによって適用されるか、されないかが変わってくる。政府の目玉政策は、ポイント還元。中小の小売店を対象に、クレジットカードなどのキャッシュレス決済で購入額の2%分のポイントを還元することなどを検討している(日テレ)。

 

4.TPP・12月30日発効へ

日本など11か国が参加するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、12月30日に発効する運びとなった。TPP協定は、6か国が国内手続きを終えれば、60日後に発効することになっていて、今回オーストラリアが手続きを終えたことで、発効条件を満たした。少子高齢化が進む中で、世界のGDPの13%を占めるTPP協定が発効すれば、日本の成長力を持続的に高める効果が期待できるとして、日本政府は、国内産業の保護を図りながら、工業製品や農林水産物の輸出なども推進していく方針。日本はTPP協定にひき続き、日本とEUとのEPA(経済連携協定)を発効に導き、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉も年内に実質的に妥結させ、各国の保護主義をけん制したい考え(NHK)。

 

5.太陽光発電電力の買い取り順次終了

国の制度に基づく、家庭用の太陽光発電の電力の買い取りは来年11月以降、順次終了することになっていて、余った電力は今よりも安く、場合によっては0円で電力会社が引き取ることになっている。こうした中、伊藤忠商事は余った電力を自宅で消費するため蓄電池のニーズが高まるとみて、英国のベンチャー企業と組んでAI・人工知能を活用した家庭用の蓄電システムを来月から売り出す。AIで天気予報や家庭の電力消費の傾向などを分析することで電力を効率よくためられる。また、京セラはマンションに設置できる小型の蓄電池の販売に乗り出している。蓄電池は価格が普及のネックになっているが、買い取りの対象から外れる世帯は来年だけで50万戸に上るとされるだけに、市場拡大を期待する企業の間でビジネスを強化する動きが相次いでいる(NHK)。

 

 

●新潮流

「日本に根付くのか?キャッシュレス化の現状」

府は、来年10月に消費税を10%に引き上げるのに合わせて、中小の小売店や飲食店でキャッシュレス決済をすれば、2%ポイント還元することを検討している。キャッシュレス決済は、大きく分けて、1.クレジットカードなどに代表される後払い、2.プリペイドカードなどに代表される先払い、3.即時、口座から引き落としされるデビットカード決済などがある。「キャッシュレス・利用しているカードは何?」とのアンケート調査で、都内の男女100人に聞いたところ1位は「Suica」などの交通ICカード、2位は「クレジットカード」、3位は「LINEPay」、4位は「dカード」、5位は「auWALLET」だった。増税対策として発表されたキャッシュレス決済へのポイント還元だが、早くもLINEはLINEPay専用決済端末の申し込みを開始した(フジ)。日本でもキャッシュレス決済の店が増えてきている。東京・台東区を訪れる外国人観光客数は2014年は526万人だったのが、2016年度には830万人に増加した。台東区浅草にある「てんや浅草雷門店」でも今では客の9割が外国人観光客だが、今月2日、こうした動きに合わせて完全キャッシュレスの「大江戸てんや」として新装開店した。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済が使われている。人力車「えびす屋」も客の約4割が外国人観光客のためキャッシュレス化を進めている。クレジットカードは2年前に導入され、今夏、中国で使われるQRコード決済「アリペイ」を導入した(TBS)。

 

 

●注目点

「消費税増税・軽減税率で対応迫られる各企業」

倍総理大臣が来年10月1日に消費税を10%に引き上げる方針を表明。消費税が10%に引き上げられても酒や外食を除く食料品には軽減税率が適用され、税率は8%に据え置かれる。各企業は対応に追われている。東京・足立区のベニースーパーではレジの入れ替えに1000万円かかったという。赤羽の商店街にある菓子店では増税の準備はほとんど進んでいない。中小企業への調査では、現段階で8割を超える事業者が「準備に取りかかっていない」と答えている(日本商工会議所調べ)。大戸屋は「店内で食べきれないとき『差額を返してほしい』と言われたら困るので、政府の方で早く明確な線引き等を決めてほしい」としている(フジ)。スーパーの担当者が頭を悩ませているのが、どの商品が消費税8%でどれが10%になるかの仕分けで、例えば酒と外食を除く食料品には軽減税率が適用され、消費税は8%に据え置かれる。栄養ドリンクも医薬品と書かれているものは消費税10%だが、清涼飲料水は8%のまま。レジの買い替えも店にとって負担となる。中小の小売業が直面する問題はこれだけではない。政府が打ち出している2%分のポイント還元という景気対策への対応でも不安の声が聞こえてくる。政府はクレジットカードなどのキャッシュレス決済を条件とし、キャッシュレス化に対応できるような支援を検討している。東京・足立区の食品店店長は「キャッシュレスだと決済が遅れるし、手数料が引かれる」と苦しい胸の内を明かした(テレ朝)。

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・三井不動産、第2位・ソフトバンクグループ、第3位・トヨタ自動車」

10月度の、テレビ報道CM価値換算値ランキングでは、三井不動産が32億7000万円で第1位に輝いた。具体的には「ららぽーととCOREDO」に関するイベントや「米国ニューヨークで、中核となる2棟のビルの建設」、さらには「東京五輪選手村跡地の利用計画」などの話題が紹介された。第2位は「サウジ投資会議開幕・ソフトバンク孫社長・講演取りやめ」などの報道で、ソフトバンクグループ。第3位は、「トヨタとソフトバンクが新会社」などの報道で、トヨタ自動車が獲得した。第4位は「武蔵小杉に“摩天楼”出現!鉄道で攻めるJR東の新戦略」などの報道で、東日本旅客鉄道。第5位は「激レア・ニトリ社長が明かす“困難を解決する方法”」などの報道でニトリホールディングスとなった。第6位は「東京ディズニーシー・ドックサイドダイナー」などの報道で、オリエンタルランド。第7位は「没メニューに柿安が登場!スナック有吉に長嶋一茂来店」などの報道で柿安本店、第8位は「秋の最先端!織田裕二も納得の家電を探せるか!中島裕翔&新木優子がビックカメラで全力リポート」などの報道でビックカメラ。第9位は、「7年連続業界売上No.1の秘密がわかった!12時・お得&時短!大皿のセットが爆売れ」などの報道で、スシローグローバルホールディングス。第10位は「“平成最後”の福袋・中身は…デパート各社お披露目」などの報道で高島屋となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長、第2位・スタートトゥデイ・前澤友作社長、第3位・トヨタ自動車・豊田章男社長」

第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長120件(孫正義“サウジ講演”取りやめなど)、第2位・スタートトゥデイ・前澤友作社長67件(ZOZO前澤社長・月旅行の同行者は?など)、第3位・トヨタ自動車・豊田章男社長55件(経済界の大物がラジオ番組開始・DJ MORIZOの正体はトヨタの社長など)、第4位・KYB・中島康輔会長兼社長38件(“免震・制振”業界最大手KYB・“データ改ざん”全国で987件!?など)、第5位・経団連・中西宏明会長29件(徴用工判決・日本の経済界から懸念など)、第6位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長21件(ユニクロ会長の息子“2人同時”取締役になど)、第7位・日本銀行・黒田東彦総裁20件(日銀・大規模な金融緩和策・維持決定など)、第8位・NTTドコモ・吉澤和弘社長18件(ドコモ・携帯の通信料金2割~4割値下げへ)、第9位・川金ホールディングス・鈴木信吉社長14件(川金HDも免震不正など)、第10位・KDDI・高橋誠社長11件(携帯料金“4割値下げ”実現できる?など)。

 

 

●テレビの窓

「政府・希望すれば70歳まで働き続けられる制度の検討」

府の未来投資会議で安倍総理大臣は希望する人は70歳まで働き続けられるよう法整備を進める方針を示し、希望すれば70歳まで働き続けられる制度の検討に政府が本腰を入れ始めた。現在の日本企業では希望すれば65歳まで雇用されることになっているが、これを70歳まで引き上げようとしている。高齢者の就労の背景にあるのは少子高齢化。2015年と団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年を比べると、高齢者が530万人余り増える一方で、15歳から64歳までの生産年齢人口は1750万人減ると見込まれている。若手の採用が難しい中、すでに高齢者の雇用を積極的に進めている企業もある。東京都内の建設会社ではおととし定年を65歳に引き上げ、健康面などで条件を満たせばいつまでも働き続けることができるようにした。そこでは高齢者でも作業がしやすいよう装備の軽量化や安全性の高い装備を支給するなど工夫されている。賃金制度もより能力を反映する形に改めた。独立行政法人が平成26年に行ったアンケート調査をもとにした推計では定年後の元の勤務先に勤めていると答えた人のうち、賃金が減ったという人は81%に上った。半数以上は賃金が2割から5割減ったと答えている。高齢者の雇用に詳しい慶應義塾大学・山田篤裕教授は「生産性の高い人が賃金を切り下げられれば見合わない賃金と継続雇用を希望しなくなる。その人の能力に見合った賃金を払える環境を整えることが重要」と指摘した(NHK)。

 

 

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