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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成30年11月)

「GDP7-9月・年率マイナス2.5%」「貿易収支4493億円の赤字」

 

今月の特徴は1.GDP2四半期ぶりマイナス2.5%、2.貿易収支4493億円の赤字、3.徴用工問題、4.外国人労働者雇用問題、5.エネルギーの動き、6.カルロスゴーンショックとなった。

                                                                                                

1.GDP2四半期ぶりマイナス2.5%

内閣府の発表によると、ことし7月から9月までのGDP(国内総生産)の改定値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス0.6%。年率換算でマイナス2.5%となった。GDPの伸び率がマイナスになるのは2期ぶりで、内閣府は「設備投資の落ち込みは前の期に好調だったことの反動が出たと見ている。相次いだ自然災害も消費や輸出を引き下げており、景気の基調自体としては緩やかに回復しているという認識に変わりはない」としている(NHK12/10)。

 

2.貿易収支4493億円の赤字

財務省の発表によると、輸出から輸入を差し引いた先月10月の日本の貿易収支は4493億円の赤字となった。貿易収支の赤字は2か月ぶり。一方、今年9月の経常収支は1兆8216億円の黒字だった。経常収支の黒字はこれで51か月連続だが、黒字幅は前年同月と比べて4367億円縮小した。原油価格の上昇で原油や液化天然ガス、石油製品の輸入額が増加し輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の黒字幅が縮小したことが主な要因。旅行収支は1145億円の黒字となったが、北海道地震や相次いだ台風の影響で海外から日本を訪れる旅行者が減少したため、去年3月以来1年半ぶりに前年同月を下回った。一方、海外との利子や配当のやり取りを示す、第一次所得収支は日本企業の海外子会社の収益が増えていることなどから1兆6945億円の黒字となった。今年4月から9月までの上半期の経常収支は10兆6473億円の黒字となったが、黒字幅は9576億円縮小した(NHK)。

 

3.徴用工問題

元徴用工をめぐる裁判で韓国の最高裁判所が日本の企業に相次いで賠償を命じたことを受け、河野外務大臣は「日韓関係に桁違いの影響を及ぼす」と強く抗議した。韓国最高裁は三菱重工業に賠償を命じる判決を出し、三菱重工は「極めて遺憾」とのコメントを出した。日本政府は「日韓請求権協定ですでに解決済み」との立場だが、韓国最高裁は「個人の請求権は消滅していない」としている。韓国最高裁は先月、新日鉄住金に賠償判決を出している。韓国で12件の訴訟で被告になっている日本企業約70社にも賠償判決が出るのは確実な情勢となっている(テレ朝)。

 

4.外国人労働者雇用問題

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案が成立した。介護分野のニチイ学館(介護)では外国人労働者を受け入れていないが、「介護スタッフには高いコミュニケーション力と専門知識が必要で研修体制が整い次第、受け入れを拡大したい」としている。また松屋フーズ(外食)では現在、アルバイトの約2割が外国人労働者だが、「より優秀な外国人に活躍してもらえるのはありがたい」としている。さらにリーガロイヤルホテル(宿泊)は「働ける部門が限定的で期限もあるのが課題だった。期待はしているが、制度は不明瞭な部分も多く、今後の動きを注視していきたい」とした。全国建設業協会(建設)は「日本人の待遇が下がらない事が前提。人手不足は間違いないので前向きに検討していきたい」、ローソン(小売)では外国人クルーは約1万1000人で、全体の約6%を占めているが、「期待している。知識や技能を制度化し、外国人に伝えられる仕組みを作っていきたい」と期待感を示した(テレ東)。

 

5.エネルギーの動き

国の制度に基づく、家庭用の太陽光発電の電力の買い取りは来年11月以降、順次終了することになっていて、余った電力は今よりも安く、場合によっては0円で電力会社が引き取ることになっている。こうした中、伊藤忠商事は余った電力を自宅で消費するため蓄電池のニーズが高まるとみて、英国のベンチャー企業と組んでAI・人工知能を活用した家庭用の蓄電システムを来月から売り出す。AIで天気予報や家庭の電力消費の傾向などを分析することで、電力を効率よくためられる。また、京セラはマンションに設置できる小型の蓄電池の販売に乗り出している。蓄電池は価格が普及のネックになっているが、買い取りの対象から外れる世帯は来年だけで50万戸に上るとされるだけに、市場拡大を期待する企業の間でビジネスを強化する動きが相次いでいる(NHK)。

 

6.カルロスゴーンショック

日産自動車・カルロスゴーン前会長が逮捕された事件。日産に続き、三菱自動車もゴーン会長の解任を決めた。しかしルノーではゴーン容疑者が今も会長のまま。ルノーの筆頭株主であるフランス政府のルメール経済財務相はルノーに対し、不正の有無について監査を行わせる責任があるとした。しかしルノーでトップを務めるゴーン容疑者の対応については「まだ罪状が確認できる証拠は何も示されていない」と話した。ルノーは取締役会でゴーン容疑者の会長解任を見送り、日産、三菱自動車との間で対応が分かれている。さらにルメール経済財務相は「3社連合のトップはルノーが務めるべき」と強調した(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「過去最大規模・ソフトバンク・上場承認」

京証券取引所は11月12日、ソフトバンクグループの通信子会社・ソフトバンクの上場を承認したと発表。資金調達規模は最大で約2兆6000億円。これまでで最も大きかった約30年前のNTTを上回るとみられる。通信子会社・ソフトバンクの時価総額は7兆円を超える見通し。調達する資金の使い道についてソフトバンクグループ・孫正義社長は「上場した結果、ソフトバンクグループには潤沢な資金が手元に入る。潤沢な資金を使って更なる成長のため、ビジョンファンドの資金供給に回したい」と話す。今後、親会社のソフトバンクグループは、投資会社としての性格を一層強め、傘下のファンドなどを通じてAI(人工知能)分野への投資を加速させる。上場で得た資金は、有利子負債の返済にも充てたい考え。現在、ソフトバンクグループはソフトバンク株式の99.99%を保有。今回、このうちの4割弱を売却する。残り63%の株式は引き続きソフトバンクグループが持ち続ける。ソフトバンクグループも上場していることから親子上場となる。新規上場では過去最大の資金調達。カブドットコム証券・河合達憲投資ストラテジストは、「同じセクターのKDDINTTドコモを売って、上場するソフトバンクに資金を手当てする動きは事前に注意する必要がある」と話す。ただ、政府が携帯料金の値下げを求める中、市場関係者からは業績を懸念する見方も出ている(テレ東)。

 

 

●注目点

「カルロスゴーン解任・どうなる日産ルノー三菱自動車の3社連合」

産自動車前会長・カルロスゴーン容疑者は有価証券報告書にみずからの報酬を50億円余り少なく記載していたとして金融商品取引法違反の疑いで今月19日、東京地検特捜部に逮捕された。日産では社員に対し、本社をはじめ工場など国内外の拠点を中継でつなぎ西川社長が報告を行った。この中で西川社長は、ゴーン前会長が主導して自身の報酬を有価証券報告書に実際よりも少ない金額で記載したことや、私的な目的で経費を支出したことなどが内部調査で確認されたという重大な不正行為について説明し、その上で22日の臨時取締役会でゴーン前会長を解任したことも報告し、前会長らの不祥事について従業員に対し申し訳なかったと陳謝した(NHK)。今後の日産についてATカーニー・梅澤高明は「まず自動車産業はT型フォード以来、100年に1度の大変革の時代と言われていて、自動化、電動化、シェア化と色々波が襲ってきている。自動車業界の中だけでの競争ではなく、グーグルソフトバンクも絡んだ大競争となっている。その大きな構図の中で考えると、アライアンス内の権力闘争や日仏間の綱引きとかをやっている場合ではなく、なるべく合理的なアライアンスの再構築を早く実現し、市場と競争にエネルギーを向けられる態勢を作っていくべき」と指摘した(テレ東)。

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・三井不動産、第2位・宇宙航空研究開発機構、第3位・すかいらーくホールディングス」

11月度の、テレビ報道CM価値換算値ランキングでは、三井不動産が41億400万円で第1位に輝いた。具体的には、「ニューヨークでの5000億円超の再開発事業」「東京五輪選手村跡地での計画発表」のほか、東京ミッドタウン各アウトレットパークでの新しい動き等の紹介や、「東京ミッドタウン日比谷の来場者が1年間の集客予定目標1200万人を突破した」との報道などがあった。第2位は「種子島宇宙センター初の打ち上げから50年」などの報道で宇宙航空研究開発機構となった。第3位は「有吉弘行のダレトク!?」などの報道ですかいらーくホールディングス。第4位は「没メニューレストラン」などの報道でリンガーハット、第5位は「引退・名物電車ラストラン・鉄道会社vs撮り鉄」などの報道で東京急行電鉄、第6位は「早くもクリスマスモードに…都内各地でイルミネーション」などの報道で森ビル、第7位は「夢の共演・錦織&大坂」などの報道で日清食品ホールディングス、第8位は「自動掃除ロボット・ソフトバンクが開発」などの報道でソフトバンクグループとなった。第9位は「中部電力とイオンが新サービス」などの報道でイオン、第10位は「“いつもそこに歌があった”」などの報道で日本テレビホールディングスとなった。

 

 

11月の人物ランキング

「第1位・日産自動車・カルロスゴーン前会長、第2位・日産自動車・西川廣人社長、第3位・三菱自動車・益子修CEO」

第1位・日産自動車・カルロスゴーン前会長1288件(激震!ゴーンショック・日本総理とフランス大統領が協議へなど)、第2位・日産自動車・西川廣人社長653件(日産・ルノー・三菱3社連合・“合議制”に転換へなど)、第3位・三菱自動車・益子修CEO110件(ルノー・日産・三菱“一強”から3社の合議制に)、第4位・ルノー・ティエリーボロレCEO代理79件(フランス「日本と話し合いを」首脳同士の協議要請など)、第5位・ソフトバンク・孫正義代表取締役会長兼社長48件(素顔!世界の有名企業「役員報酬トップ5」など)、第6位・スタートトゥデイ・前澤友作社長33件(ZOZO前澤社長を単独取材など)、第7位・トヨタ自動車・豊田章男社長20件(トヨタ自動車・役員ポスト大幅削減など)、第8位・NTTドコモ・吉澤和弘社長19件(携帯料金・本当に“4割安く”?値下げの「波」行方など)、第9位・経団連・中西宏明会長18件(日本政府は強く抗議・徴用工問題・三菱重工にも賠償命令など)、第10位・KDDI・高橋誠社長16件(KDDIと楽天が提携・au回線を使い携帯事業など)。

 

 

●テレビの窓

「広がる信用スコアビジネス」

、年齢や年収だけでなく、性格や生活スタイルなどから人の信用を数値化し、スコアを出すという動きが加速している。この信用スコアを活用してビジネスに繋げようと動き出した企業がみずほ銀行ソフトバンクが共同出資する「J.Score(Jスコア)」。信用スコアをもとに個人向け融資を行っている。信用スコアは、年齢、年収などの基本情報だけでなく、購買データ、性格、生活スタイルなど様々な個人情報をもとにAI・人工知能が分析して算出する。Jスコアの場合、スコアに応じたランクが決められている。追加の質問に答えることでスコアが上がる仕組みで、スコアに応じて特典を用意している。今日から特典を提供する企業を25社に増やした。特典を用意する企業の1つ、JTBではダイヤモンドランクの客向けに人気ギタリストのコンサートが楽しめる旅行プラン「1日限りの村治佳織クラシックギターの夕べ」を10組限定で用意。こうしたニーズを踏まえ、LINEドコモなど信用スコアビジネスに参入する企業が増えている。Jスコアは今後、信用スコアを企業に提供することで収益化することを考えている(テレ東)。

 

 

JCC株式会社