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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成30年12月)

「いざなぎ超える景気回復・戦後2番目の長さに」

 

今月の特徴は1.日銀短観、2.いざなぎ超える景気回復・戦後2番目の長さに、3.ファーウェイショック、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀短観

日銀が発表した短観・全国企業短期経済観測調査では景気の先行きに関しての判断が大企業・中小企業そろって悪化し、米中の貿易摩擦をはじめとする海外経済の不透明さに懸念が深まっていることを示すものとなった。大阪府吹田市に本社のある液晶パネル・半導体製造装置メーカーでは今年前半まで中国向けの大型受注が相次いでおり、今年度は過去最高の売り上げの見込みだが、秋以降は受注が鈍り来年度の液晶関連の売り上げが30%減の見通しになっている。このほか半導体関連の生産計画を見直す可能性も出ている。淀川ヒューテック・小川克己社長は「貿易戦争やそれに伴う社会不安、半導体・液晶の仕事が売り上げの70%となり、与える影響は非常に大きい。多角化することで変化に対応する選択肢を増やしている」と話した(NHK)。

 

2.いざなぎ超える景気回復・戦後2番目の長さに

景気動向を検証する内閣府の研究会が「昭和40年代、高度経済成長期のいざなぎ景気を超えて戦後2番目の長さとなったことが確認された」と発表した。一方でこのような実感は少ないとの声も上がっている。現在の景気回復は日銀の大規模な金融緩和を背景にした円安で、輸出産業を中心に業績回復が続いた結果生じたものである。有効求人倍率も今年に入り昭和49年以来の高い水準になるなど雇用環境は改善している。調査会社によると「個人消費」の伸びは平均で0.4%に留まり、「実質賃金」は物価の上昇もあって、平均で0.5%減少した。景気回復が来年1月まで続くと戦後最長を更新するが、米国と中国の貿易摩擦の影響や米国の景気回復が息切れすることも懸念材料となっている(NHK)。

 

3.ファーウェイショック

世界中でファーウェイショックが広がっている。ファーウェイ製品などを販売する携帯ショップでは、ここ数年順調に売り上げを伸ばしていたが、今回の騒動で暗雲が立ちこめている。携帯ショップテルルランド春日部店埼玉広域エリアマネージャー・小川貴法は「お客様から『本当にこれを使っていて大丈夫なの』と不安の声を頂いているが、明確な情報がないために回答に困ってしまう」と語った。中国人観光客は「米国は巨大になったファーウェイが、自国市場に影響を与えるのを心配している。彼らのやり方は少し卑怯だ」と話している。米国政府が安全保障上のリスクを懸念しているのは間違いないが、ITに詳しい専門家は「ノートパソコンやスマートフォンなどではメーカー側が意図すれば、ユーザーの情報を収集することは可能。ファーウェイは今現在、全くやっていないと宣言しているが、中国の国家情報法では、国の命令で民間企業から情報を吸い上げることが可能だ」という(テレビ朝日)。

 

4.エネルギーの動向

国内の原発では使用済み核燃料を青森・六ヶ所村にある再処理工場に運び、プルトニウムなどを取り出すことにしているが、再処理工場の稼働が大幅に遅れ、燃料プールに使用済み核燃料がたまり続けており、一時的な保管場所の確保が課題となっている。関西電力は使用済み核燃料を保管する「中間貯蔵施設」について、福井県外で候補地を探し、今年中に県に示す予定だったが、候補地として想定している自治体との交渉が未だに続いているなどとして年内の提示を断念した。関西電力は大飯原発と高浜原発の4基が再稼働し、残り3基の再稼働の計画が進められている(NHK)。

 

 

●新潮流

「配車サービス戦国時代・DeNAの新戦略・0円タクシー・ウェイモ・無人タクシー配車を開始」

eNAがタクシー配車アプリ「MOV」のサービスとして東京都内で0円タクシーを開始した。日清食品の「どん兵衛」がスポンサーとなり、都内の対象エリアで50台が走行している。配車アプリ「MOV」を起動して空車で走行中の「0円タクシー」があれば即、配車依頼が可能。運行期間は今月31日まで。配車アプリをめぐってはトヨタドコモが出資する「Japan Taxi」が先行しているが、ソニーも配車アプリ新会社を設立するなど市場参入が相次いでいる。後発組のDeNAは配車アプリ「タクベル」を神奈川県内で開始し、今回の東京進出を機にアプリ名を「MOV」に変更し、新サービスとして「0円タクシー」を投入した(フジ)。一方、グーグルの親会社・アルファベット傘下の自動運転開発会社・ウェイモが、米国南西部・アリゾナ州で無人タクシーの配車サービスを開始した。ウェイモは2016年から実証実験を繰り返していたが、実際に利用者から運賃を徴収し本格的な商用サービスを展開する。いまのところ利用できるのは事前登録した数百人に限られ、車の台数は明らかにされていない(テレ東)。

 

 

●注目点

「日立製作所・英国原発建設計画を凍結へ」

い電源ではないとして原発に世界的な逆風が吹いている。英国で進めてきた原発2基の新設計画について日立製作所・中西宏明会長は「もう限界で、計画の凍結は避けられない」との認識を示した。福島原発事故後、原発の安全基準が引き上げられ、安全対策などの費用が増加し、建設費は当初の1.5倍の3兆円にまで膨らんだ。日立は国内の電力会社などに出資の要請をしたものの、巨額な投資に理解を得ることはできず、このまま日立が原発を断念した場合の損失額は最大で2700億円にも及ぶ。原発輸出は、安倍政権が成長戦略に掲げるインフラ輸出の柱だったが、暗礁に乗り上げた格好だ。トルコは断念の方向で、ベトナムでも白紙。民間企業主導の原発計画もリトアニアや台湾でもそれぞれ凍結となっている(TBS)。そんな中、原発輸出に力を入れている国が中国で、今年に入り、新たに7基が稼働を始め、原子力発電所の数は46基と日本を抜いて世界第3位の原発大国になった(国際原子力機関IAEA調べ)。中国広核集団・黄暁飛報道官は「“華龍1号”は私たちの重要な科学技術であり、中国を代表する名称だ」とコメントしている。中国の国有原子力企業などが開発した国産初の原発技術・華龍1号の特徴の1つは導入コストの安さで、すでにパキスタンで建設を進めていて、アルゼンチンや英国などへの輸出を予定しているという(テレ朝)。

 

 

12月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・楽天、第2位・東日本旅客鉄道、第3位・三井不動産」

018年12月の月間CM価値換算の第1位には「楽天」が41億7318万円で輝いた。具体的には「楽天Pay」の紹介や「2019年に携帯電話市場への参入に関する情報」に加え、「ウォルマート通販サイトの開設」などの露出が貢献した。第2位は「自動運転の試験・山手線で・年末年始の深夜実施へ」などの報道で東日本旅客鉄道となった。第3位は「江戸の活気を取り戻せ!日本橋再生計画とは?」などの報道で三井不動産。第4位は「大規模投資の狙い・TDL開発中の新エリア公開」などの報道でオリエンタルランド、第5位は「カワイイ・キャラ・なぜ・世界で人気なのか?」などの報道でサンリオ、第6位は「スシローVS一流寿司職人」などの報道でスシローグローバルホールディングス、第7位は「ペイペイ・不正被害を全額補償へ」などの報道でヤフー、第8位は「博多華丸大吉の午後から日帰り旅」などの報道で東武鉄道となった。第9位は「GTプラス・カーオブザイヤー2018」などの報道でホンダ、第10位は「“2019年福袋”注目3ジャンル」などの報道でビックカメラとなった。

 

 

12月の人物ランキング

「第1位・日産自動車・カルロスゴーン前会長、第2位・日産自動車・西川廣人社長、第3位・スタートトゥデイ・前澤友作社長」

第1位・日産自動車・カルロスゴーン前会長1411件(日産・経営主導権めぐる対立・ルノーの対応が焦点など)、第2位・日産自動車・西川廣人社長282件(日産自動車・全従業員へ指示など)、第3位・スタートトゥデイ・前澤友作社長84件(ZOZO前澤社長・緊急生出演・視聴者の疑問に答えます!など)、第4位・産業革新投資機構・田中正明社長65件(産業革新投資機構・取締役9人・年内に一斉辞任へ)、第5位・ルノー・ボロレ暫定CEO63件(ルノーが株主総会を再要求)、第6位・ソフトバンク・宮内謙社長34件(ソフトバンク魂で頑張っていく・宮内謙社長)、第7位・ソフトバンクグループ・孫正義社長31件(2兆円手にしたソフトバンク・通信から投資会社に“変身”など)、第8位・日立製作所・中西宏明会長20件(日立会長「新原発はもう限界」など)、第9位・三菱自動車・益子修CEO18件(逮捕後初…トップ会談か・3社連合がオランダで協議など)、第10位・楽天・三木谷浩史社長10件(機密情報が通信機器で筒抜け!?日本も“ファーウェイ排除”の方針など)。

 

 

●テレビの窓

「4K8K放送がスタート」

K8Kテレビ放送は12月1日午前10時から開始された。4K8K推進キャラクターを務める深田恭子らが、開始ボタンを押した。4K8Kテレビ放送は、従来に比べ画素数が4倍から16倍となることで、立体感と臨場感のある滑らかな映像が体感できる。年末商戦真っ盛りの家電量販店内には白黒テレビのようなレトロなデザイン、DOSHISHA「20V型ハイビジョンLED液晶テレビ(4万550円)」が販売されている。チャンネルを変えるつまみもあり、昔を懐かしむ世代だけではなく、若い世代にも人気を集めている(テレ朝)。一方、東京ビッグサイトではNTTドコモが主催する展示会「DOCOMO Open House2018」が行われた。凸版印刷とNTTドコモが共同開発した「IoA仮想テレポーテーション」は遠隔操作により映し出された4K映像でリアルタイムに遠隔地にいる臨場感を味わうことができる。この装置を使うとまるで瞬間移動している感覚になる。手元のコントローラを操作することで分身ロボットを動かし、例えば、東京にいながらにして九州にある水族館の中を自在に動き回れるという。さらに技術が進めば宇宙へのテレポーテーションも可能だという。こうした疑似体験をよりリアルなものにしている技術が5Gである。5Gの特徴は高速通信の100倍も早く、多数の回線を同時に接続できること。さらに送信と受信で生じるタイムラグも少ないことが特徴としてあげられる。5Gを使えばクリアな画像で高速のテレポーテーションが可能となる(テレ東)。

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