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『第3の目』
ドキュメント・アナライザー による分析

参議院選挙大敗から首相辞任発表までの軌跡

 7月29日の参議院選挙で安倍自民党はまさかの大敗を喫した。
その結果参議院で、公明党の議席を入れても与党は過半数割れとなった。それにもかかわらず、安倍首相は選挙結果が固まる段階で拙速にも「首相続投」宣言をしてしまった。
 自民党内部にさえこの宣言に対して数多くの批判があったが、「本人がやるということを決めた以上、それを支えるしかない」という姿勢に変わり、『内閣改造』によって新たな求心力を得ようとした。
しかしその内閣改造から1週間もしない段階で遠藤農水相が早くも辞任に追い込まれた。
 安倍首相は9月10日に臨時国会で所信表明演説をするも、参議院では野党の野次に押され大事な個所を読み飛ばしてしまうといった大失態を演じた。
 9月12日昼、いよいよ野党の代表質問が始まるという直前に安倍首相はついに「辞任表明」をする決意を固めた。

 参議院選挙大敗から首相辞任までの軌跡を「テレビというメディアがどう描いてきたか」『JCCのドキュメント・アナライザー』を用い、秒単位の精度で検証してみた。

 調査期間は7月29日から9月13日までとした。
 対象とするテレビ局は、東京地区のNHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京、とした。

(調査レポート)
1.自民党の参議院選挙大敗北から安倍首相辞任発表までのテレビ報道の局別総時間(日別)

2.自民党の参議院選挙大敗北から安倍首相辞任発表までのこの問題に関する局別総回数・総時間(日別)

3.報道内容の変極点についての考察

① 選挙開票し、自民党37議席、民主党60議席と自民党大敗北決まる。
安倍首相続投宣言する。(7月30日)

② 臨時国会が召集された。
臨時国会が始まった昨日、自民党代議士会で閣僚経験もあるベテラン議員が次々と退陣を要求。
自民党小林温議員秘書ら逮捕。
安倍晋三総理は麻生太郎外務大臣を自民党幹事長に起用する方向で最終調整に入った。
政治資金規正法・「1円」領収書問題(8月8日)

③ 臨時国会の召集が与党内の反対を受けて9月に先送り。
小池防衛相は米国・ライス国務長官と「姉妹のような関係」と親密さをアピールした。山崎拓前副総裁は国会会期中の小池百合子防衛大臣の訪米を批判した。また許可をした安倍晋三総理についても指導力の欠如、と厳しい政権批判を展開した。
安倍晋三総理は長崎市の平和祈念式典に出席した。
自民党・野田聖子衆院議員事務所で不審火。(8月10日)

④ 森元総理が人事を言いたい放題。
内閣改造、自民党役員人事、安倍晋三総理休み返上。
人事は麻生外相を重要ポストで処遇することを念頭においている。また人事に臨む方針について、派閥の推薦を受けずに内閣改造を行う方針に変わりはないとくり返している。
民主党・小沢代表は幹部会議に菅代表代行、鳩山幹事長に輿石参院議員会長を加えて4人による協議にしたいという考えを伝えこれを菅代表代行らは了承した。(8月13日)

⑤ 安倍晋三首相はあいまいなコメントで参拝を見送った。
防衛省事務次官人事をめぐる小池百合子防衛大臣vs守屋武昌事務次官の対立が再び激化している。
猪瀬副知事・生出演・参院宿舎建設に待った。(8月16日)

⑥ 小池大臣VS守屋次官・防衛省"人事騒動"・「痛み分け」舞台裏。
青木参院議員会長の後任に尾辻元厚生労働大臣が無投票で選ばれた。
塩崎官房長官・事務所職員が政治資金を私的流用。
金子元行政改革相・資金管理団体・事務所の無償提供受ける。(8月20日)

⑦ 総括原案、政権の危機管理能力の不足。地方に対する政策が不十分。地方組織の弱体化。これが参院選大敗の要因と指摘。
パキスタン訪問中の小池防衛相は、ムシャラフ大統領と会談。テロ特措法延長の必要性強調。防衛省・守屋事務次官との人事をめぐる騒動で、大臣としての指導力を問う声が上がり、留任は微妙。
自民党、議員の携帯番号調査。
閣僚就任を敬遠するムードさえある。
インド・コルカタで安倍晋三首相は東京裁判で判事を務め、唯一被告全員の無罪を主張した故パール判事の長男・プロシャントパールとの面会した。
内閣改造・調整が本格化。
参院選惨敗の原因が、「年金問題が浮上した際の初期の対応の遅れ」、「政治とカネの問題や閣僚の失言」、「危機管理能力が欠如」、「候補者の事前の運動が不十分」、「年金の逆風も敗因に」などとする報告書をまとめる。きょう午後、官邸で自民党・谷津選対総局長は、塩崎官房長官に報告書手渡す。
インド・ニューデリーで小池防衛大臣は続投しない意向を明らかにした。一方、社会保険庁の村瀬清司長官は辞任を表明。(8月24日)

⑧ 安倍内閣改造・幹事長に麻生外務大臣を起用へ。
27日・安倍改造内閣発足。
政調会長は、石原伸晃幹事長代理、総務会長は、二階俊博国対委員長、幹事長は、麻生太郎外務大臣が決定。
安倍首相は17人の閣僚を決めた。改造内閣はまもなく正式発足。
厚生労働相には政権運営に批判的だった舛添要一参院議員を起用し、挙党態勢にも配慮。(8月27日)

⑨ 参議院選挙買収問題・小林議員の出納責任者ら2人を起訴。
安倍改造内閣・副大臣も決まる。
世論調査では内閣支持率が上昇している。
自民党・玉沢徳一郎元農水相が支部長を務める自民党・岩手県第4支部で政治資金収支報告書の改ざんがあった。領収書は5重計上していた。
小林参議院議員・秘書を起訴。
臨時国会、来月10日召集。(8月28日)

⑩ 経済産業大臣政務官に就任した荻原健司参議院議員は、自宅の電気代を自民党支 に計上していたことを謝罪。
農水省所管の独立行政法人から補助金を受けている農業団体から遠藤農水大臣が 金を受けていたことがわかり謝罪した。
緊急世論調査で、安倍内閣の支持率は前回より16.2ポイント上昇し41.1%。支持する理由は「閣僚の顔ぶれに期待できる」が24.%、活躍する大臣は「舛添厚労相」55.8%、「期待する大臣はいない」13.3%、「高村防衛相」7.3%。「安倍内閣を支持しない」は41.8%で理由は、「リーダーシップがないから」が最も多く、内閣のイメージは「以前の自民党に戻った」28.8%、「未熟さ、軽さが目立つ」15.2%。
民主党の小沢代表は、8月31日執行部人事を行い、菅代表代行と鳩山幹事長を留任させたほか、輿石参議院議員会長を党の代表代行と兼任させた。また副代表には岡田元代表を留任させたのに加えて、新たに前原誠司前代表を起用した。新しい政策調査会長に、与野党の勢力が逆転している参議院から初めて、元参議院幹事長の直嶋正行氏を、国会対策委員長には前副代表の山岡賢次氏を、選挙対策委員長に副代表の赤松広隆氏、広報委員長に元国会対策委員長の野田佳彦氏がそれぞれ起用された。小池前防衛相と激突の末退陣となる、守屋武昌事務次官の防衛省顧問就任に関して、高村大臣に報告があがってこなかったため、再び防衛省を舞台に騒動が起きている。
坂本政務官が会議費不正計上。(8月31日)

⑪ 玉沢元農水相・5重計上で自民党離党。
補助金不正受給問題・遠藤農水相が辞任。
安倍晋三総理、蚊帳の外。
自民党・小林温参院議員・辞職の意向固める。
「政治とカネの問題」・存在感増す麻生・与謝野氏。
小林温議員が議員を辞職。
新農水大臣に若林正俊が就任。
不祥事次々・安倍首相責任論・閣僚からも(9月4日)

⑫ 【"継続できない場合・内閣総辞職も"】
明日召集される臨時国会で、最大の焦点になっているテロ特措法延長問題について安倍首相は、職を賭して取り組む考えを示した。首相は訪問国のオーストラリアで海上自衛隊がインド洋で行っている給油活動を継続出来なかった場合は、職責にしがみつくことはないと延べ、内閣総辞職を含め自ら責任を取る構えを示した。(9月9日)

⑬ 民主党、海上自衛隊の支援継続に反対。
政治とカネ、増田寛也総務大臣、佐藤ゆかり衆院議員も。
共産党の選挙区絞込みで民主期待広がる。
自民党の2005年に衆議院選挙で初当選した議員のうち13人が新グループを結成へ。安倍改造内閣の人事(派閥の有力者を登用した人事)を改革への逆行だと批判している。
秋の臨時国会が今日から始まる。テロ対策特別措置法の行方を焦点に衆議院で与党、参議院で野党が多数をしめるねじれ国会での攻防となる。
今日から波乱必死の臨時国会。
平沼赳夫氏復党・自民党新人が反発。
ねじれ国会が開幕・「職を賭す」総理が所信表明。
安倍晋三総理の所信表明演説中に野党からのヤジが止まらず大荒れの展開となった。参議院の演説では一部を飛ばしてしまった。新法案・国会の事後承認なし・調整へ。(9月10日)

⑭ 民主党・解散・総選挙・準備急ぐ。
海上自衛隊の給油活動映像。政府与党は参議院で否決されても、衆議院で3分の2以上で可決することも視野。野党は参議院で安倍総理大臣の問責決議案提出を検討。
安倍首相・辞意表明へ。
【安倍首相辞任会見】
「職辞するべきと決意」「総理の職を辞するべきと決意」「新たな総理のもとテロとの戦いを継続を」「自らけじめをつけ局面を打開しないといけない」「辞任の決断時期」「辞任した後の給油活動」「辞任は無責任では」「後継について」「政策の停滞」「続投明言が日曜日なのに何故事前の水曜日に辞任」「辞任決断の最大理由」「今日までの反省点」「党首変更で党首会談可能」「現在の心境」について安倍首相辞任会見でのコメント。(9月12日)

⑮ 安倍首相・機能性胃腸障害で入院。
自民党総裁選挙・後継は誰に。(9月13日)


4.まとめ
(再浮上を模索する安倍首相に襲いかかる次々の難問、そして辞職表明へ)
 この報道は、7月29日の参議院選挙で歴史的な大敗を喫したにもかかわらず、自らの首相続投にこだわり、僅か46日で所信表明演説をおこなった直後に辞職表明をするといった無様な状態に陥った安倍晋三を巡って何が起き、どう報道されたかを追跡し、分析した。

 安倍首相の政治手法は、攻撃型で自ら強いリーダーシップを取り、強い姿勢で議会での実績を作ってきた。そうした政治姿勢と国家主義的志向が影響して参議院選挙での大敗の一因になったにもかかわらず、大敗の原因は「社会保険に対する国民の不満」と「相次ぐ閣僚の不祥事による辞職問題」にあると曲解してしまったところにこの悲劇の根本がある。
 安倍首相就任以来約1年のデータを見ると、防御に回った時の弱さが特徴で、その際もやたら強気でしかも正論で押してゆくようなところがあった。
 結論的にいえば、参議院で野党に多数を取られたところから今回の悲劇は始まり、それにもかかわらず続投の意志を曲げず、「テロ特措法」の対応でも海外で米国大統領に出来もしない当法律の延長を確約するなどの強気一辺倒の姿勢が自らを制御不可能な状態に至らしめたといえよう。
 決定的な変極点としては、9月8日午前中にオーストラリアから「安倍首相はブッシュ米大統領と会談した。首相は、テロ対策特別措置法延長によりインド洋での海上自衛隊の給油活動継続に最大限努力すると表明、大統領も強い期待を示した」という報道と、9月9日国内で「テロ特措法が継続できない場合・内閣総辞職も」といった決意表明であろう。
 その布石となったのが、9月4日の遠藤農水相辞任劇であった。そして12日安倍首相の突然の辞任表明に続いていった。
 既に自民党総裁選の幕が上げられ舞台は次の展開へと進んでいる。

【統計資料より抜粋】


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