'98 鈴鹿8耐 奮戦記1

国際A級ライダー 前田淳

 今回は遅れついでのマン島T.T参戦記にはもう少し遅れていただくとして、7 月下旬に鈴鹿で行われた8耐の奮戦記をお送りします。

 ”AC90M”レース好きな人達にはこの響きには聞き覚えがあると思いますが 、世界GPにも参戦し、日本を代表するコンストラクターの一つ、TSR(テクニカルスポーツ)が制作したホンダCBR900RRをベースとしたオリジナルマシンです。今年も同チームから参戦する事になった自分は、このマシンを御輿に8耐という祭りを楽しんだ訳です。 ご存知の通り8耐は試験的な昨年を経て、今年はいよいよOVER750ccのオートバイが本格参戦出来る事になった記念すべき年です。みんなの乗っているオートバイが8耐を走る!と言うやっと正常な8耐になった訳ですね。

ma_0129_03.jpg (9k) 初めてAC90Mに乗ったのは忘れもしない6月下旬、マン島T.T.から負傷 して帰ってきた一週間後の事です。マシン自体も完全なシェイクダウンだったのでかなり重要なテストではあったんだけども、実はその時足が動かない!車イスで成田に帰ってきて必死のリハビリを続けたんだけど足があがらん!(靭帯一部断裂!) しかし本当の事を言ってしまうと第3ライダーのマット・ウェイト(世界選手権GP1参戦中)にシートを奪われてしまう!自分に課せられたテーマはマシンよりシートを守る方が先決!! テスト日前日の電話も全くの平静を装い動かない足を引きずり鈴鹿へと向かいました。 しかしチームは百戦錬磨のGPチーム。マン島帰りのライダーの猿芝居なぞその場で見抜いていたらしいけど、それを知らない自分は懸命に猿芝居を続けていた訳です。祭りのステージと言うよりは、場末の芝居小屋といったところか!

ma_0129_04.jpg (9k)  それでもこの自分を信じて何も言わずにテストをこなしていってくれたチームは凄い!の一言でした。そして、AC90Mの初テストライドの印象は、乗りやすい!の一言。それは昨年のCBR1100XXと比べての話なんだけど、やはり回転馬力のエンジンはレースをするのにはベストな選択だと改めて思った。ストレートも最初の段階からRC45より遥かに速く、順調ではあったんだけどマン島T.T.の市街地コースに慣れてしまった自分は久し振りの大排気量のオートバイで鈴鹿を走っても、スピード感が全く無い。良い事だとは思うんだけど新鮮さはないね。しかし問題が無いと言う事はベースのポテンシャルがかなり高い事を意味するわけで、レースを前に一層気合が入ったのも確かです。結局2分15秒台までタイムを詰めてテストは終了。特筆すべきは大排気量のオートバイで最終コーナーを各ギアで全開できたオートバイは初めての経験だった。(通常は2速は使わず3速位から全開にしていく)しかし予選、決勝は相棒のセッティングに合わせた為通常のシフトポイントになってしまった。監督の目にもテストの時のトップスピードの速さには目を見張るものがあったそうで、来年には皆様にあの速さを決勝でお見せしたいと思います。


注)シェイクダウン
はじめてサーキットでテストすること
  回転馬力のエンジン
文字どおり回転数をかせぐことで馬力があがるタイプ。これと逆はトルク型エンジン。低い回転数でもトルクが出るタイプ。
  シフトポイント
加速も減速もしないポイントが大排気量車にはあるが、大排気量らしからぬシフトアップができて、鈴鹿の最終コーナーをクリアできた。






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