『差』




甲田益也子


 北海道から戻って来ました。
なんだか時差がある気がする。気温差はある。高度差もある。そのためか不覚にも体 調を崩して、非常に厳しい生活を送る。’今までの人生で一番辛い’を更新していた 。いかに甘い人生を送っているのかが計りしれることでしょう。乳児と病人。難儀な 組み合わせ。’ついに薬だ’と鼻炎の薬を探したが引っ越しの際に捨てていたので飲 めなかった。翌日購入しようと思っていたら症状が変化したのでいらなくなった。そ れにしても、タフで驚かれていた私も産後めっきり弱っているとみえ、風邪をひきや すい。とても。

 そういう時は気も弱りどんどん孤独に、そして苦しさとただただ対面するだけにな ってしまう。そんなブルーな大雨のある日、訪問者が家のドアチャイムを押した。オ カルトではありません。速達でした。ゴンチチのゴンザレスさんからデモテープが届 いたのです。雪が舞う頃、私のソロアルバムが出ます。初めて。今回はいろいろな人 に曲を依頼しています。先日はサキソフォニストの清水靖晃さんからスリリングな曲 がやってきました。私にはこれから続々と宝物が届くんだった。(きっと)そのこと を思い出して気をとりなおす。病は気から。でもすぐに、病にもどる。厳しい。

 ちなみに私の最近の不調のポイントは、頭というか気持ちと体が違うことを言う時 にあるようです。からだは正直だか寡黙で言い分を聞き逃しやすい。頭やら気持ちは 主張が激しく変わりやすい。そういうアンバランスな日はまず寒暖が分からなくなっ てしまう。(ついでに曜日も間違えて、一日先へ進んでいた。)それでついつい楽な 薄着(身軽だから)のまま、うろうろして風邪に見舞われる。違うと言えば、からだ の左右の差も大きくなっていた。

バランスがとても悪かった。同じになることはない だろうが、いつも重い右側がさらに重く、腫れているようだった。でも時すでに遅し 。休めない生活は初めてなので寝ないで治す方法がわからない。それで、ただただ辛 いことにはまっていた。今、快方にむかってはいるが、油断禁物。昔は、一度ひくと 抵抗力がついてその季節は、というか当分ひかなかったと記憶するが、最近は絶えず 環境やからだに病気を誘発するモノがいるのか、すぐに風邪ワールドにもどってしま ったりする。恐ろしい。

 からだの左右のバランスには、たまに意識していつもの逆にしてみることがよいら しいので、してみるがただでさえ動きが悪いのに、不慣れでより動作が遅くなってな かなか続かない。すぐいつもの動きにもどっている。特に今は、すべきことが多くて 早回しの魔法でもかけたいくらいだから。
 日頃、からだが自然に素直に反応するように心がけているつもりだったけれど、聞 くことに気を配るのを忘れては意味がありませんね。