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CMの研究

第23回 ブリヂストンが超大物俳優を起用した背景


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 1月23日、ブリヂストンのCMにあのレオナルド・ディカプリオが登場した。商品は同社のタイヤ、エコピア EP100/EX10だ。内容は森林を走る車を運転しながらディカプリオが環境について語るというものになっている。テロップには、「One Team,One Planet 地球のために、ひとつになる。低燃費はもう、あたりまえの性能に」。車やタイヤのCMといえば、大物俳優やレーサーが登場するのがふつうだったが、最近の不況で特に外国の大物俳優を起用するのが珍しくなっている。そのなかでの大物の起用はきわめて「異例」だ。しかし、最近のブリヂストンのCMといえば、「走り」から「環境、省エネ」に大きく転換している。福山雅治を使ったタイヤのCMも転がり抵抗を抑えて省エネと地球環境保護を打ち出している。それは企業姿勢の表れでもある。

 ブリヂストンは昨年11月に2010年限りでF1へのタイヤ供給を止めることを発表してモータースポーツファンを驚かせた。F1にタイヤを供給するというのは世界のトップブランドというあかしであるが、それを維持するためには莫大な開発費用がかかる。自動車の売上の落ち込みとシンクロして業績が芳しくないブリヂストンとしても方向転換をせざるを得ないだろう。何しろ大手メーカーも一昨年にはホンダ、昨年にトヨタがF1から撤退している。まさに時代の趨勢だろう。

 そしてなぜディカプリオかということだが、彼が大物だからというだけではないのだ。一般的には「タイタニック」で船の舳先に立っていた若者というイメージかもしれないが、実は彼は大変な環境保護意識を持っているのだ。幼いころに見た環境関連の映像に啓発されたということで、アカデミー賞授賞式にプリウスを自分で運転して登場したり、自宅の屋上には早くからソーラーパネルを設置しているほどだ。1998年にレオナルド・ディカプリオ基金を設立し、2007年の「11th Hour」という環境問題を題材にしたドキュメンタリーでは脚本、制作プロデュースにも参加、ナレーションも担当するほどだ。

 大物俳優のある一面をしっかりと捉えてCMに起用したブリヂストンの見識は素晴らしいと思う。ただ有名だとか人気があるからということで起用するというこれまでの安易なキャスティングとは明らかに一線を画している。ある意味大きなエポックというしかないだろう。CMの最後でディカプリオが「世界は変えられる」と言う。映画界の「オバマ」みたいだ。