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CMの研究

LinkIcon第26回連休に向け目立つ映画のCM
LinkIcon第25回企業広告が目についた・・・ソフトバンク,JT,ANA,SONY,キリン・・・
LinkIcon第24回最近目に付くCM
LinkIcon第23回 ブリヂストンが超大物俳優を起用した背景
LinkIcon第22回 今年放送のCMを振り返って
LinkIcon第21回 チラシあるいは啖呵売の口上のような作品が増えるデフレ下のテレビCM
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LinkIcon第19回 こんなご時世だからこそ夢を見させてくれるCMがいい・ギャツビー・スゴ落ちスクラブ
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LinkIcon第14回 主婦に大歓迎となるか?液晶テレビ・ブラビアの新しい節電方式
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LinkIcon第8回 読売新聞は冒険したのか? そして日本の家族を映すCMが興味深い。
LinkIcon第7回 CMの放送事故
LinkIcon第6回 デアゴスティーニ社に見る分冊百科のCM考
LinkIcon第5回 CMに見る品格とマナー
LinkIcon第4回 2007年、多発したお詫びCM考える
LinkIcon第3回 新米がおいしい季節! テレビCMにみる当世炊飯器事情
LinkIcon第2回 秋の新作公開シーズン到来!映画のテレビCM考
LinkIcon第1回 「続きはウェブで・・・」Web誘導型CM

LinkIconJCCのCM情報サービス

第1回 「続きはウェブで・・・」Web誘導型CM

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<序>
『太陽と風の家の冬物語』
「夜洗いをしていたきこりんは、いぬのきもちになって考えてみた。そうだ!クリエイトでオール電化にトライしよう。麺づくりで晩パスタをつくるしかない。その手があったか! 」
 この文章は、テレビCMの最後に出てくるキーワードを寄せ集めて作ったものである。最近ではこんな具合に、CMのキーワードで文章が作れてしまうほどである。近年はこのようなインターネットと連動した「Web誘導型CM」と呼ばれるテレビCMが増えている。ネット連動型CM、ウェブ検索CM、Web誘導型CM 検索誘導CMなどと呼ばれている。

<定義>
 Web誘導型CMとは、断片的なドラマなどで興味を惹きつけておき、CMの最後に「検索窓」を登場させ、視聴者に商品名などのキーワードを入力して検索するように促すものである。URLを単に見せるのではなく、インパクトのある単語を頭に焼き付けていく。視聴者が、検索サイト経由で誘導されたサイトを訪れると、テレビCMの続編が視聴できたり、詳細な商品情報やキャンペーン情報が入手したりできる。つまりテレビでは伝えきれない詳細な情報をネットで提供するのである。
 日本では2年前、「冬物語」やオダギリジョーの「ライフカード」で口火を切った形のこの手法は、「AISAS」というマーケティング用語で呼ばれる。もともと消費行動の法則は、「AIDMA」(Attention=注意→Interest=興味→Desire=欲求→Memory=記憶→ Action=購入)と呼ばれていた。その後、インターネット時代の新法則として提唱されたのが「AISAS」(Attention=注意→Interest=興味→Search=検索→Action=購入→Share=共有)だ。ウェブ誘導型CMの狙いは、まずテレビCMで獲得した「注意」や「興味」を「検索」へと導くことにある。

<一般的な手法>
「続きはwebで」で使用されているキーワードの分類
1)商品名・企業名を含むキーワード
ユーキャン、限定のデル、農林水産省、など
2)商品に関連する言葉を含むキーワード
確かにうまい、キタ顔、家は窓から、など
3)タレント名を含むキーワード
ウサタク、教えて釈ちゃん、ユリゲラー?、など
4)商品名と異なる言葉を使用するキーワード
地底人は誰?、(^^)、親密グッズプレゼント、など

「続きはwebで」で使用するキーワードのポイント
1)一目で覚えやすいキーワードにする。
記憶に残るもの。
キーワードの文字数は、短くする。5~7文字くらい。
2)標準のIMEで誤変換しないキーワードにする。
ひらがな、カタカナ、漢字、英字などの混在は注意。
3)その商品・企業でしか使用できないキーワードにする。
ライバル会社と競合させない。

<現状>
 CM総合研究所の調べでは、2007年1-6月のこのパターンのCMの本数は725本で、前年同期の71本に比べて10倍強。同期間中に放送された全CMに占める割合も、前年同期の0,6%から6,4%に急増している。
 業種別に見ると、携帯電話キャリアなど「通信・サービス」や食品、ゲームソフトなどが積極的に利用している傾向がある。
2007年1月の調査では、検索誘導CMを見たことがある人は4ヶ月前よりも増えて、全体の5割強に達し、そのうち約3割が実際に検索したとの報告がある。

(CM総合研究所、インターネットコムとGooリサーチの共同調査より)
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調査 2006/9/29~10/1
全国20代~50代のインターネットユーザー200人

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2006/11/17~11/19
18歳以上のパソコンインターネットユーザー200人


<メリット>
1)情報の補足とコスト削減
テレビにはオンエアー費用や放送枠、尺(時間の長さ)など規定などがあり、CMも様々な制約を受ける。一方、ウェブは回線速度やPCの処理速度、データ圧縮技術が進化したため、尺(時間の長さ)は気にせず制作できるようになった。そのため、テレビCMでの情報を少なくし、Webで詳しい情報を与えることで、コストが抑えられる。
2)クリエイターの自由度
 テレビが倫理規定が厳しいのに対し、Webの方が制約が少ないので、制作に自由度が高く、クリエイターも苦労しないで済む。
3)テレビを見逃してもネットで見られる

<デメリット>
1)クリエイターの質の低下を招く
 クリエイターが15秒、30秒で収める能力がなくなってくる。
 Web誘導型CMを作ればウケると過信し、オリジナリティが欠落していく。
2)検索する煩わしさ
 Web誘導型CMで、実際に検索しているのは、「ながら視聴」タイプが主流。ネット接続型テレビやTVパソコンで見ていた人ならCMに触発されて即検索するが、わざわざ新たにPCを立ち上げて検索するのは煩わしい。このように煩わしさを感じる視聴者を意識したテレビCMも登場している。キンチョーの除菌洗浄剤「ティンクル」がその代表である。URL表示やWebサイトへ誘導するCMに対して、テレビのCM登場人物が「今言うたらええやん」とツッコミを入れ、安易なWeb誘導型CMに一石を投じている。⇒資料2参照
3)Webは見ている途中で止められる危険が高い
 おもしろくなかったり、飽きたら即ストップボタンを押される可能性がある。Webだからといって安心して長尺を作っているケースもあるが、最後まで見ている人がどのくらいいるかは疑問。
4)目新しさがなくなるとメリットが消える
 Web誘導型CMは物珍しさもあって、検索キーワードが生きる。飽和すればキーワードは覚えてもらえない。
 世界的に見れば、アメリカからはやや遅れている感がある。
 Web誘導型CMが飽和してしまえば、そのキーワードが検索サイトで上位にヒットしなくなる危険がある。
5)ネットの画像の質
 テレビとネットでは画質が違う。ネットで認知度を上げて、テレビに逆誘導を図るという逆パターンの出現してもおかしくない。
6)対象者の限定
 Webをしない人もいるので、PCを所有していない高齢層はメインの対象とされない。よって高齢者がターゲットの商品には不向き。


資料編
<資料1:検索数の時系列パターン>
 これだけ多くのテレビCMで検索ワードを目にするようになると、やみくもに検索ワードを露出するだけでは、もはやサイトへの誘導効果は期待できないのではないだろうか。すでに目新しさを失いつつあるのではないか?Google Trendsを使って実際に時系列で検索数を検証してみよう。
Google Trendsでは、一定の検索数がない場合はデータが表示されない。しかし、検索誘導CMに登場したキーワードのうち多くは、残念ながら検索数の推移を表すグラフが表示されなかった。つまり、こうしたケースは、広告主が期待したほどの効果は得られなかったとも推測できる。ただしGoogle Trendsでは直近のデータが表示されないため、最近CMが流され始めたばかりのケースでは、データの蓄積不足のためにグラフが表示されない可能性もある。今回は、これを『計測不能型A』としている。これを含めパターンを分類してきた。

計測不能型A
検索数が少なくて、表示出来ないパターン。
ex)全員集GO、あやたか、誰でも割、ファミ割、晩パスタ、夜洗い、プロの選択(新しいCMの例)…

計測不能型B
検索数の多い一般名詞や、広く知られている社名やブランド名など、すでに検索ワードとしてかなりの検索数があるため、テレビCMの影響による検索増が計測できないパターン。
ex)クリエイト、ノート(日産)

短期集中型
テレビCMのオンエアーとともに一気に検索数が増えるパターン。
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長期継続型
長期にわたって一定の検索数を保ち続ける。シリーズものを流すとこの傾向がある。オール電化」を検索ワードとした東京電力の検索誘導CMは、鈴木京香を中心としたキャスティングで何作にもわたってシリーズ化されている。万人受けしやすいタレントを採用しているのが一つの特徴。
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復活型
最初に一気に増加した検索数が落ち着いた後、再度、検索数が増加に転じるパターン。CMキャラ(オスカーにノミネートされた菊地凛子の富士通FM-Vがその例)が突然ブームになったり、新しいCMバージョンが流れるとこの傾向がある。季節モノもこのパターンになる。このパターンでは、一度CMを集中して出稿し、一定期間出稿を控えた後、再度CMを集中して出稿する手法などが挙げられる。例えば、1回目の集中出稿で、潜在顧客へのブランド認知を浸透させる。そして、消費者の潜在的なニーズが顕在化するころを見計らって2回目の集中出稿を行い、顧客の具体的な行動を喚起するという具合だ。こうした場合、あえて検索ワードは変更せず、テレビCMの内容と誘導先ページのコンテンツを変えるのが通常。
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<資料2:視聴者の感想調査結果>
 日経BPNETマーケティングが、リサーチ会社マクロミルの協力を得て、昨年10月にリサーチした結果を抜粋する。
 「(PCの操作をし)ながら視聴」をしているかどうかが、Web誘導型CMを見ての検索にどう影響しているかのデータがある。
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 上記のように検索誘導と「ながら視聴」は大いに関係している。当然PCを開いているのだから、検索しやすい条件である。逆にいえば、わざわざPCを立ち上げてまで、CMに誘導されて検索する人は少ないということだ。
 さらに、検索をしたタイミングがいつかという点も気になる。
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 上記のようにCMを見た直後と答えた人は、意外に少なく25.9%で、しばらくしてからという人がこの倍以上の60.3%。ということは、視聴者の頭に残るようなインパクトのあるキーワードでないと、忘れられてしまうということが分かる。
 さて、実際に検索しても、ヒット数が多すぎて検索のトップ画面出てこなかった場合には、検索を諦めることにつながる。
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 上記のように、毎回必ず目的のサイトにたどりつけるとは限らないことが分かる。この理由は、どの検索サイトを使っているかということが一因であると考えられる。実際にコカコーラがコラボCMで『(^^)』をキーワードに使った際、Googleではヒットできなかったという事例もある。
 さて実際の視聴者が、Web誘導型をどう思っているかというデータも気になる。肯定的な質問に対する結果は以下の通りである。
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これに対して、否定的な質問に対する結果は以下の通りである。
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