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CMの研究

第3回 新米がおいしい季節!
テレビCMにみる当世炊飯器事情

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<序>
 新米が市場に出回り、それに合わせるかのように各メーカーがそれぞれのジャー炊飯器の特徴をCMでうたっている。家電品売り場に行くと、その種類の多さに圧倒されてしまう。日本人にとっては欠かせない「ご飯」という食品だからこそ、このようにさまざまなタイプのジャー炊飯器が登場していると言える。そこで各社のCMを比較検討してみることで、最近の炊飯器事情を探っていこうと思う。

<総論>
 家庭用の炊飯器の販売台数は年間630万台前後(2006年の統計)であるが、日本人の「米離れ」から、10年ほど前からその販売台数も伸び悩んできていた。それだけに各メーカーは機能や特徴をアピールして消費者ニーズを引き出そうと懸命になっている。そしてご飯がおいしく炊ける機種が増えたせいか、炊飯器の販売台数の減少に見歯止めがかかってきたとも言われている。おいしさと多機能化ということで、最近の炊飯器は価格も高いものが売れている。なかには実質価格10万円を超えるものまで出ている。
 ジャー炊飯器の平均買い換えサイクルは6年と言われる。通商産業省の行政指導による製品の機能を維持するために必要な部品の保有期間(「補修用性能部品の最低保有期間」)が6年となっていることから言われている数値である。このことから、消費者は平均6年おきに商品を買い換えるために売り場に出向くと考えていい。6年経てば当然流行も変わってくる。90年代にあった「ファジー」炊飯器は、今はもう見る影もない。当世はやりの炊飯器は「IHヒーター」である。各社とも主力機種はIHヒーターで、全製品の約6割がこのタイプ。一人暮らし用の小型のものは別として、家族向けのものはほとんどがIHタイプである。IHとは、電磁誘導加熱(Induction Heating)の略で、IHコイルによる磁力線のはたらきで、下から暖める従来のヒーター方式と異なり、内釜自体をヒータのように発熱させる仕組みになっている。ちなみにご飯をおいしく炊くポイントは、高火力で一気に加熱すること。よってIH炊飯器では、高火力に加え、マイコンによる理想的な温度管理を行うことにより、水が対流して、お米のおいしさを引き出し、ムラなく炊き上げることができるのである。最近では「魚沼コシヒカリを炊くと、水分の多いごはんに仕上がってしまう」という消費者の声をきっかけに、これまでの炊飯器の問題点を洗い出した結果、銘柄別炊き分け機能が誕生している。そして若い人たちに人気の無洗米を上手に炊くコースも選択できる機種もできた。
 さらにCMコピーのキーワードも、従来からある「炊きたて」、「かまど炊き風」などに加え、「甘み」、「ふっくら」「粘り」「銀シャリ」「真珠仕上げ」「美白保温」「石のせ本かまど」など、米の美味しさを連想させるキーワードが加わってきた。そして、焚く技術のキーワードも、「遠赤外線」や「圧力」が目立つようになってきた。さらには今年の秋からは、米を寝かせる間や保温時にポンプで減圧する「真空(東芝)」タイプまで登場している。



<参考:各メーカーの炊飯器のシリーズ名の例>

おどり炊き(SANYO)
しあわせ (象印)
極め炊き (象印)
ちょっと炊け (象印)
剛熱かまど炊き (東芝)
圧力極上炊き 、極上圧力炊き (日立)
圧力蒸気極上炊き 甘みふっくら (日立)
大沸騰 (三菱)
炊きたて (タイガー)
こがまる (リンナイ)



 中でも、最近目を惹くようにになったのが「圧力」というキーワードだ。「なぜ、圧力をかけてご飯を炊くと美味しいのか」、これを簡単に説明しよう。圧力をかけると水の沸点が上がる。1気圧での水の沸点はご存知の通り100度である。ところが1.5気圧をかけた場合、沸点は112度まで上昇する。それによって、米の水分浸透度合いも、浸透スピードも高くなる。米を浸水させる時間は短くて済み、さらには炊きあがってご飯になった際の粘りや甘みがぐっと増す、という仕組みである。そして圧力釜を使ってご飯を炊けば、通常よりも短時間でご飯を炊くことができる。しかし圧力タイプのジャー炊飯器のアピールポイントは、炊飯にかかる時間を短縮することよりも、美味しいご飯を炊くことに重点が置かれているようだ。
 加熱の仕方だけでなく、最近は釜の素材にも各社の違いが大きく出てきた。かつてはアルミかステンレスであったが、最近は熱伝導率がいい銅釜がナショナル。そして鉄が日立、タイガーは土鍋。三菱は炭素素材。さらにナショナルは、釜と内ぶたにダイヤモンド微粒子をコーティング、東芝に至ってはダイヤモンドと銀でコーティングのものもある。素材ではないが、魔法瓶の象印は、その技術を使った釜に真空層を持たせた「真空かまど釜」と、各社のこだわりがうかがい知れる。
 これらに加え、多くの炊飯器には、本格料理も手軽に作れる機能を持たせてある。以前はおかゆや玄米、パン焼き機能程度であったが、近年は煮物や煮込み料理、温泉卵ができたりする。コンロや専用鍋を使うことなくスイッチポンで手軽に料理できることから、最近とくに人気で、「炊飯器料理」として本も数多く出版されている。

例)
「簡単!びっくり!炊飯器クッキング 別冊すてきな奥さん」 (主婦と生活社)
「炊飯器で作るからおいしい(地球丸・刊)
「炊飯器でおいしいレシピ―決定版」 (主婦の友生活シリーズ―調理器具活用BOOKS)
「炊飯器におまかせ!おいしいお菓子&ふっくらパン―Very easy!」 (Gakken mook)
「決定版!スゴ技!炊飯器で魔法のクッキング」 (TJムック)
「炊飯器10倍活用レシピ 料理はもちろん、お菓子もパンもお弁当も」(文化出版局)


<CMにみる各社のコピーとアピールポイント>
 現在、国内で販売される炊飯器のメーカーは以下の通り。
(電気炊飯器)
 ナショナル、日立、東芝、象印、タイガー、三菱電機、シャープ 、SANYO、カシムラ、サタケ、EUPA、NDK、ツインバード、ドウシシャ
(ガス炊飯器)
 リンナイ、Paloma
 
 このうち、新米が出回った今年10月の時点で、関東地区でテレビCMを流したのは、ナショナル、日立、東芝、象印、タイガーの5社。三菱電機は2006年12月4日が最後のオンエアーとなっている。その内容を紹介しておく。

1)ナショナル 新・銀シャリ炊飯器 (炎の蓋篇)
 大火力スチーム+蓄熱ダイヤモンド釜で、上からも下からも炊きあげる
 旨み成分オリゴ糖約2.4倍
 銀シャリの決め手は大火力
メーカーのアピールポイント
⇒細かいスチームの粒子が内釜全体にいき渡り、お米一粒一粒に熱を与えるから、でんぷんのα(アルファ)化がさらに促進してお米本来のおいしさを引き出す。
 保温時に高温スチームを自動投入。ごはんのパサつきを抑え、イヤな保温臭を追い出し、潤いを与えて、保温ごはんのおいしさが向上。

2)日立 打込み鉄釜 (「自慢」篇)
 わかるか?鉄釜と打込み鉄釜の違いが!打込みと打込まないのは大違い。
 約2000℃に溶かした鉄を超高速で打込んだ
 発熱性・蓄熱性・断熱性に優れた特別な構造の内釜。
メーカーのアピールポイント
⇒内釜に「溶射打込み鉄」を採用した、その名も「打込み鉄釜」。優れた熱特性が、今までにない、ご飯のおいしさを実現。
   
3)タイガー 土鍋IH炊飯ジャー炊きたて
 上手いご飯を炊くために。完成、土鍋釜、の炊飯ジャー。これがご飯の本当の香り
メーカーのアピールポイント
⇒底面に発熱体を使用することで、IHコイルに反応する土鍋が完成。この技術により、土鍋を使った画期的な炊飯器が誕生。肉厚7mmで保温性の高い土鍋が蒸らし効果を高める。
さらに土や釉薬の持つ遠赤外線効果が加わって、ごはんをふっくら炊き上げる。

4)象印 圧力IH炊飯ジャー 極め炊き(映像化できないおいしさ 登場篇)
 象印史上最高をめざした炊飯ジャーがついに完成しました。見渡せば「釜の素材」で競い合う炊飯器業界。象印は炊飯ジャー専門メーカーとしてあえて「炊き方」にこだわりました。しかし、ここで大きな問題が発生したのです。これまでにない「うま味」と「甘味」を表現するおいしそうなCMがどうしても完成しません。もうしばらくお待ち下さい。賞品はすでに発売中です。
メーカーのアピールポイント
⇒パワー圧力&全面遠赤の最高級モデル
 パワー圧力&真空遠赤釜。
 炊き上がり直後にもう一度圧力をかけるので、しゃきっとふっくらごはんに仕上がる。

5)東芝 IH炊飯器 真空圧力炊きV・VIP 「お釜の中から」篇
天海「ほら、真空でお米ツヤツヤ」
阿部「わあ、まぶしい!さすが東芝の真空」
ナレーター「お米の実力、真空で目覚める東芝真空圧力炊き」
天海「保温も真空」
メーカーのアピールポイント
⇒待機中にふやけたお米を真空で引き締める「真空新鮮予約」
 真空で、短い時間でお米の芯まで最適に吸水。「真空浸透吸水」
 圧力でお米の芯まで加熱。「1.4気圧110℃沸騰」
 おいしさを封じ込めて40時間保温「真空美白保温40」
 IHの強火を逃さず、最大限に伝える「鍛造ダイヤモンド銀釜」

<家電量販店に聞く炊飯器事情>
 秋葉原のヨドバシカメラ家電品フロアで炊飯器の販売事情を伺ってきた。店頭に展示されていたメーカーは、ナショナル、日立、東芝、象印、タイガー、三菱電機 、SANYO。販売員によると、炊飯器がよく売れる時期は、春の引っ越しシーズン、次いで秋の新米が出回ったあたり。メーカーのシェアとしては、抜きんでて売れているメーカーは特になく、敢えて言えば象印はコンスタントに上位をキープしている。数年前にSANYO、昨年あたりに松下でヒット商品があったが、その後は目立ったヒット商品はないとのこと。