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CMの研究

第12回 小粒でも光る情報を発信する「フジッコ」のCM

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 酢でおなじみの「ミツカン」がお弁当についての調査を発表した。子供が幼稚園か保育園に通っているお父さんのお弁当持参率が5 割以上となり、毎日持参する人は3 割になっている。その理由は昼食代の節約が81.0%とトップだ。そして、子供たちに持たせる弁当のおかずは手作りのものがこれまでより約1割増増えて6割となっている。その背景には「食の安全」ということが大きい。この傾向は、不況の中で弁当箱の売上げが伸びていることでも裏付けられる。

 ただ、主婦の頭を悩ませるのは弁当のおかずをどうするか、限られた容器の中にどれだけの栄養をつめこめるかということだろう。そんな主婦が注目しそうなCMがある。それがフジッコ(株)の「おまめさん」のCMのシリーズのひとつだ。フジッコ(株)といえば、「ふじっ子」ブランドで刻み昆布を作り、76年から「おまめさん」ブランドで加工煮豆を作っている。かつて「しば漬け食べたい!」のCMで山口美江をスターにしたのもこの会社だ。肝心なCMだが、豆のキャラクターが登場して「おまめさん」の栄養価について説明するというもの。はかりにサラダとスプーン1杯の「おまめさん」を載せて比較し、「おまめさんスプーン1本分がせんい1.5gで、レタス6枚、キュウリ1/5本、トマト1/6個が入ったサラダと同じ繊維量です」というのだ。豆の繊維量がこんなに豊富だというのはかなり意外な気がする。

 このような豆の繊維量についてメーカーのホームページではさらに詳しく説明している。このCMを見れば、生野菜の嫌いなパパや子供の繊維質を補うのにこの「おまめさん」を使おうかなという気になりそうだ。不況の時代、母親は少しでも安いものを探してチラシを見てスーパーに駆けつける、父親はなじみの店に行くのをやめたり市販の弁当を買うのをやめて、持参した弁当を食べるということになる。まさに生活防衛時代だ。そしてフジッコ(株)は、昔から食品と栄養について熱心な会社として有名なだけに、この15秒のCMにもその真面目さが感じられる。商品の押しつけでなく、生活のヒントとなる提案をすることを通して印象を与えるという、ある意味小粒でもキラリと光る秀作といえるだろう。

 そして印象的なのは、このCMの中に父と娘がそれぞれお弁当を食べているシーンが挿入されていること。父も子供も同じおかずを食べることである種の家族のきずなが感じられる。かつては「ご飯が冷める、お風呂が冷たくなる」ということでなるべく家族がいっしょに食事をし、続けて風呂に入るというライフスタイルが一般的だったが、保温のできる炊飯器や電子レンジができ、瞬間湯沸かし器が発達するようになって個食化が進み、子供が部屋に閉じこもるようになった。不況のマイナス面を受けるだけでなく、それを機会に失われた家族の絆が新しい形で復活できるようであればいいのではないか。そんなことを考えさせられるCMだ。