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CMの研究

第13回 こんなご時世 ゴージャスな安室のCM

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 「このご時世に言語道断!」なんてちょっと頑固なお父さんが怒りそうなCMがここのところ毎日のように放送されている。それは安室奈美恵が出演しているP&G社のヘアケア用品「プレミアムヴィダルサスーン」のCM。宮殿内部を思わせる広い部屋に白い陶器のバスタブが置かれ、その中で入浴中の安室奈美恵が女性従者に髪を梳かせているというものだ。バスタブの向こうには宮廷楽士のような女性の一団がハープなどの楽器を奏でている。そして30秒バージョンのものは、超豪華な部屋でソファに寝そべっている安室をたくさんの従者が取り巻いているというもの。貴族の世界をイメージしているというが、まさにフランス革命で断頭台の露と消えたマリー・アントワネットを想像してしまう。

 しかしこんな華麗なCMをどうして作ったんだろうかとP&Gのサイトを見た。するとこのCMのテーマは「ブルジョワ・ゴージャス」。そして「ヨーロッパの貴族を彷彿させるブルジョアなファッションと、上質なカシミヤのようなヘアで甘美で優雅な世界観を表現したルック」と、それは一目瞭然です。ヴィダルサスーンといえばヘアケア製品の有名ブランドだが、あのツィギーのヘアスタイルを手がけて有名になった美容師のヴィダルサスーン氏が世に送り出したものだ。そのヴィダルサスーン氏は「ファッション、音楽、ヘアスタイルのコラボレーションによって流行は生まれる」と言っている。

 今度のCMもまさにそのコンセプトのとうりで、かっこいい女優がたくさん出るドラマ「セックス&ザ・シティ」などでおなじみのスタイリストのパトリシア・フィールドとマドンナなども手掛ける世界的に有名なヘアスタイリストのオーランド・ピタが組んだのだ。そして、ファッション、音楽、ヘアスタイルのコラボレーションとくれば安室奈美恵がドンピシャということに誰も異論を挟まないはずだ。シングルマザーでいまだに歌姫でファッションリーダー。若い女性のカリスマであり続けているのだから。当然CMのバックに流れるのも彼女の歌だ。パトリシア・フィールドは安室のために鳥の羽根のスカートを用意し、30秒バージョンでそれが見れる。CMからのゴージャス感は見事に伝わってくる。バスタブもいいものを使ってそうだし、従者の衣装も豪華で細かいところまで相当お金をかけていることは間違いない。

 確かにこのご時世と乖離しているように思えるかも知れないけど、今の若い女性にすればそんなことはないと思うだろう。若い女性はファッション、音楽、ヘアスタイルに命をかけていると言っても過言ではない。ファッション誌を念入りにチェックして眉毛一本まで気を使ってメイクし、髪を美しく保つためにはお金も手間隙も惜しまないし、携帯電話でお気に入りの曲をバンバンダウンロードするのだ。確かに不況でモノは売れないが、若い女性の購買パワーには目を見張るものがある。そうなれば、例えば不況下だろうがなんだろうがこういうCMは強烈に女性に訴えるものがあるはずだ。これまでCMの花形だった車や家電のCMがなんとなく元気を無くしている今、こういうCMは暗い話題の多いニュースの中の明るいニュースみたいな存在といえないこともないだろう。他のCMが景気のいいものばかりならこのCMがここまで目立つこともなかっただろう。