> CMの研究 第11回

logo.gifテレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

HOME > TV allcover free > CMの研究 > CMの研究 第11回

会社概要MAP採用プライバシーお問い合わせ

CMの研究

第11回 昨今のCM作りとタレント個性の傾向
・・・花王のCMからみる
カワイイはつくれる!! そうです椿姫さん

j0430872.jpg


椿姫をご存知だろうか。オペラではなく椿姫彩菜というモデル兼タレントの女性だ。それだけなら、話題にすることもないが「彼女」が「わたし、男子校出身です。」という本を上梓しているとなると話が違ってくる。そう、彼女は「元彼」なのだ。幼いころから性同一性障害に悩み、大学を休学して新宿のショーパブで働いて女性になるための費用を稼いだ。そして3年前に見事に本懐を遂げて(?)、全面的に女性となった。しかも戸籍上も正式に女性になった。手術に当たっては生命の危機もあるということで、両親に遺書をしたためて臨んだのだった。

本題はここからで、そんな彼女が雑誌のモデルを経てメジャーなクライアントのCMに登場したのだ。花王のエッセンシャル・ダメージケアのCMで、15秒と30秒の2バージョン。あのショコタンこと中川翔子や、南海キャンディーズの山崎静代にその髪の美しさを誉められるという設定。長い髪とミニスカートで、どこから見ても美しく元男性なんて誰も想像できないだろう。しかもCMの中に出てくるスチール写真の撮影はあの篠山紀信というところにも、花王の力の入れ方がわかる。さらにウーンと思わせるのは、「カワイイはつくれる!!」というコピーだ。含蓄があるじゃないですか。

それにしても、最近ではいわゆるいわゆる「おネエMAN」と言われる人たち、例えば假屋崎省吾やIKKOがカリスマとして大活躍している。かつては必死で隠しただろうことを、今やカミングアウトして大衆も差別しないで受け入れている。彼らは女性の間で大人気なのだ。見る側に、美しくセンスがよければ性別はどうでもいいという意識が芽生えているのは確かだ。

だから、元男性だった椿姫彩菜がカリスマ・ファッションモデルになっても「いいじゃない、キレイなんだから!」と若い女性たちは圧倒的に彼女を支持している。花王はそんな時代の雰囲気をしっかり読んだことになる。もし「大人の偏見」が作用すればこのCMは拒否されたかもしれないが、時代はもう変わっていたし、上層部もOKを出したことになる。花王は生活者研究センターが「エスノグラフィー」と呼ばれる手法で消費行動を調査するなど、調査活動に積極的に取り組んでいることが業界で知られている。今回のCMもそんなさまざまな市場調査で裏づけになっているのだろう。男性か女性かがあいまいなニューハーフではなく、椿姫が完全な女性として生まれ変わった人という判断があったと思われる。

そういえば、CMで見ない日がないという感じの高好感度の上戸彩。どのCMでも明るい笑顔を見せているが、初期に出演した「金八先生」で性同一障害に悩む女性とを見事に演じたが、番組はタメ息が出そうになるほど暗いトーンだった。もし、あのイメージを本人がひきずり視聴者もそのイメージから離れなかったら今の成功はなかっただろう。確かに今も以前の役のイメージが強く残るということもあるが、若い力はそれを乗り越え、それを受け入れる側の若い力もしっかりとその変化を受け入れることができるようになっているようだ。CMは時代を映す鏡といわれるが、これからは対象が鏡に入る前にその姿をキャッチするレーダーのような能力が要求されてきそうな気がする。