テレビ報道に見る産業・経済月報(平成24年1月)

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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成24年1月)

●今月の特徴

「貿易収支・31年ぶりの赤字・韓国勢の躍進で苦境・日本企業」

今月の特徴は、①貿易収支・31年ぶりの赤字、②円高・ユーロ安、③エネルギー事情、④タイ洪水の影響、⑤韓国勢の動きとなった。

 

①【31年ぶりの赤字・貿易収支】

去年1年間の貿易収支は、東日本大震災や円高の影響で自動車の輸出が減ったことなどから、31年ぶりの赤字となったと財務省が発表。24日付の米国の有力紙「ウォールストリートジャーナル」は、輸出立国日本の時代の終わりというタイトルの記事を一面に掲載し、日本の製造業について、歴史的な円高により輸出の採算が悪化し、生産拠点の海外移転が進むという構造的な変化を取り上げ、「日本は製造業の力と輸出中心の貿易政策で世界に自動車や家電などの製品を次々と投入してきたが、そうした時代は終わった」と指摘した(NHK)。経済界からは先行きを不安する声が溢れた。日本の貿易が赤字になったのは第2次オイルショックの影響を受けた1980年以来。その後85年のプラザ合意などで急激な円高に見舞われ、生産拠点を海外に移す動きはあったが、日本の高い技術力でずっと黒字を保ってきた。日本の赤字のさらなる別の要因として日本の産業が外国に流失してしまっていることも挙げられている(TBS)。日本の輸出数量の伸びが鈍化した最大の要因は、円高。また、リーマンショック以前に比べ日本を除く世界の経済成長率が低下したことももう一つの要因。輸入価格の上昇化(価格面の不利化)は今後も続くと考えられる。輸出入数量も円高水準が大幅に是正されない限り、企業の海外生産シフトが続くと考えられる。価格面の不利化を数量面の増加で補う2007年までの貿易構造は変わらざるを得ず、貿易赤字は拡大する可能性が高い。日本が過去に行った海外投資の収益を計上する所得収支は大幅な黒字になっており、貿易収支と所得収支を合計した経常収支は、当面黒字が続くが、赤字化は時間の問題。経常収支が赤字になるという事は日本が資本の純輸入国になるという事で、日本の財政赤字の一部が海外からの資金流入で賄われる事を意味する。一方で、貿易赤字が必ずしも日本全体の経済力低下を示すものではないという指摘もある。投資による利益などの所得収支は、財務省「国際収支状況」でみると大きく黒字で、7年前に貿易収支を逆転。日本はかつての輸出大国から、投資などによって利益を得る国へ構造的に変化している。国内の空洞化の懸念はあるものの、日本総研・山田久チーフエコノミストは「企業の海外移転が進んでも、国内の雇用は守れる」と指摘した(NHK)。

 

②【円高・ユーロ安】

大手格付け会社・スタンダード&プアーズが仏伊などユーロ圏9か国の国債の格付けを一斉に引き下げたことを受け、17日の東京市場では1ユーロ=97.04円をつけ、11年1か月ぶりに円高ユーロ安を更新した。欧州信用不安は解決の見通しが立たず、当面ユーロ安が進むとの見方が強まっている。1円高(対ユーロ)でソニーは年間60億円の減収となり、キヤノンは50億円の減収になる。中国ではユーロ安の影響でGDP成長率が9.2%に留まった(日テレ)。こうした中、キヤノンは御手洗冨士夫会長兼CEOを社長へ復帰させると発表した。田中稔三副社長はこの人事について、「欧州債務危機問題等先行き不透明の中、ベテランに任せ難局を乗り切ったほうが良いと判断した。人材育成のスピードが会社の成長速度に追いつかなかった。2016年位までは新しい経営陣に舵取りを任せる方針」としている(TBS)。大手製鋼メーカー・神戸製鋼によると欧州信用不安の影響などによる株価の低迷で、株式の持ち合いを行っている「新日鐵」の株価などが大幅に下落したことから、神戸製鋼は去年10月~先月までの決算で134億円の特別損失を計上するとしている。また、今年度決算で200億円の最終黒字を見込むも、今回の特別損失で業績見通しを下方修正する可能性があることを明らかにした。株価低迷を受け、大手鉄鋼メーカー各社は新日鐵が840億円余の損失計上(去年10月~先月までの決算)する他、JFEホールディングス住友金属工業も今年度の中間決算で損失計上しており、株価低迷は企業業績にも影響を与えている。円高ユーロ安が急速に進んでいることについて、電機メーカー各社のトップからは、こうした状況が長引けは経営への深刻なダメージが懸念されるとの声が相次いだ。NEC・矢野薫会長は「欧米の金融・財政の問題から日本円が対ドル、ユーロで歴史的高値を記録し、依然として欧州の金融不安という大きな懸念がある」、富士通・山本正己社長は「日本にとってはものすごく大きなダメージ、インパクトがある。ドルではかなりのリスクヘッジがかかっていて、部品や製品の売り買いで相殺されるが、欧州から買うものはあまりない。だから直接出すものが多いのでユーロ安はものすごく効いている」と述べた(NHK)。

 

③【エネルギー事情】

細野原発担当相は「40年を超えている原発の再稼働はありえない」と明言。4月下旬には全国54基の原発すべてが停止予定で、今後の見通しが立たない中、東京電力が4月から電気料金を平均17%値上げすると発表。電力値上げは上場企業の経常利益を1.5%押し下げる。自動車業界では乗用車の平均的な工場では年間10億円前後の電気料金がかかるとされ、東電管内では1工場あたり年間1億~2億円のコスト増になる。群馬県などに工場を持つ富士重工業は会社全体で数億円増といい、群馬の2工場で自家発電設備を導入し、使用電力の半分を賄うことで対処する。ホンダも埼玉県に建設中の新工場に大規模な太陽光発電設備を設置することで対処。化粧品のコーセーは主力の群馬工場(群馬県伊勢崎市)に7月をめどに数億円を投じて自家発電装置を導入予定。電炉大手の東京製鉄は宇都宮工場(宇都宮市)で夜間の電気料金が2011年12月時点と比べ約4割上昇する見通しで、この幅の値上げが実行されれば生産の一部を西日本に移管することも検討するという(TBS)。経済同友会・長谷川閑史代表幹事は「節電にもつながるスマートメーターについても考える時期にきた」(テレ朝)。電力料金値上げ発表で、スマートメーターに企業からの問い合わせが急増している。スマートメーターは通信機能を持つメーターで使用電力を伝えたり家電とつないで電力を制御することが可能で電力利用の効率化につながると期待されている(テレ東)。一方、イランの核問題で米国が日本、韓国、EUにイラン産原油の禁輸を要請。EUは7月からの禁輸を決定した。イランはホルムズ海峡封鎖をちらつかせている。世界の原油の35%、日本の80%がホルムズ海峡を通過するなどホルムズ海峡はエネルギーの大動脈(TBS)。 この問題で、原油の価格が高騰する可能性があり、野村証券は「原油価格が20%上がると日本の企業の収益は15%減る」と試算している(日テレ)。

 

④【タイ洪水の影響】

トヨタ自動車は震災やタイの洪水の影響で大規模な減産を余儀無くされたことから新車販売台数は790万台に留まるという見通しを示した。この結果、GMが世界一となり、2008年から3年関連続でトップの座を守ってきたトヨタは3位以下に転落する見通しとなった(NHK)。ホンダは2011年4月から12月期の連結決算を発表。タイの洪水被害が大きく影響し、売上高は前年比17.6%減で、営業利益が77.2%も減るなど大幅な減収減益になった。タイのホンダ工場は去年10月から操業を停止し、1055台が水没した。被害額は16億円相当になる(TBS)。タイの洪水などの影響で、NECは今年度、最終赤字に転落する見通しで1万人規模のリストラを行うこととなった(日テレ)。一方タイ政府は4月から最低賃金引き上げを決めた。地域によっては現在の額の倍になる。近隣諸国に向かう企業もありそうだが、自動車などはすぐに流出ということはないとみられる(テレ東)。精密部品メーカー・ミネベアは先月、カンボジアで新工場をオープン。今後こうした近隣各地の工場にタイと同じ部品の製造を行う機能を備え、リスクを分散させる計画。従来は、タイで部品生産から組み立てまで一貫して行い完成品を作っていたが、サプライチェーンの寸断の影響が残る中、今後は完成品だけでなく個々の部品単位でも納入し、顧客ニーズに応えていくという。また、インドネシアにも注目が集まるが、インドネシアでは去年の自動車の販売台数はタイを抜いて東南アジアでトップに躍り出るなど自動車需要が増えている。こうしたインドネシアの旺盛な需要を取り込もうと日本企業の進出が加速しているが、首都ジャカルタ郊外の工業地帯では労働者の大規模なデモが起きて、日本企業を含む多くの工場が影響を受けている(NHK)。

 

⑤【韓国勢の動き】

海外メディアは「日本と似たような品質にも関わらず、より安く生産する韓国や中国との競争がさらに激化している」と伝えている。自動車と家電の分野で日本の優位性が揺らぎ始めている(TBS)。韓国メーカーが世界市場で勢力を伸ばし、日本は市場を次々に韓国に奪われている。薄型テレビは韓国勢に逆転を許し、水をあけられている。自動車も追い上げられ、スマートフォンに至っては韓国企業がトップに躍り出る一方で、日本勢は上位に顔さえ出せない(NHK)。日本メーカーが苦境に追い込まれている。米国で今月、世界最大の家電ショーが開かれたが、そこで注目されたのは韓国が開発した世界初の有機ELテレビ採用の次世代型テレビだった。パナソニックはプラズマテレビの生産を大幅に縮小、日立製作所はテレビ自社生産を断念、ソニーは世界市場での販売目標を半分に引き下げた。日本は4年前にテレビ販売世界シェアトップの座を韓国に奪われたが、シェア第2位の韓国・LG電子の強みの1つは積極的な設備投資だ。東京ドームの約3倍の工場で生産され、輸出されるテレビの台数は年間3400万台に上る。韓国勢のもう1つの強みは、いち早く新興国市場を開拓したこと。新興国の急成長と共に売り上げを伸ばし、世界シェアを拡大してきた。さらにその収益を新製品の研究開発にも注ぎ込み、新製品の投入でも日本の先を行くこととなった。LG電子の研究室では、日本メーカーの製品はもはや研究対象にもなっていない。もちろん韓国の躍進の背景には、急激に進んだ日本の円高(30%)と韓国のウォン安(20%)など、大きな経営環境の変化がある。また、韓国では国からの開発援助などの強い支援があることも要因として挙げられる。ブラウン管から液晶等の薄型テレビに発達したことにより、画質などよりも価格で競争されるようになったことや、日本の技術の流出も背景にある

 

●注目点

「中国、韓国に対抗・世界4位の造船会社誕生へ」

手鉄鋼メーカーのJFEホールディングスと大手機械メーカーのIHIは、それぞれ傘下にある造船会社を今年10月に経営統合すると発表した。合併するのはJFEホールディングス出資の「ユニバーサル造船」とIHI傘下の「アイエイチアイマリンユナイテッド」。合併後の建造量は約370万トンで、国内最大級、世界4位の造船会社が誕生する。造船業界の経営環境は、歴史的円高や中国、韓国メーカーとの競争が厳しくなっていて、両社の合併が更なる再編を引き起こす可能性もある。ユニバーサル造船・三島愼次郎代表取締役社長は「中国・韓国に負けるわけにはいかない。ある程度規模がないと戦えない」と語った(テレ朝)。鉄鋼業界では今年10月に新日鐵住友金属工業が合併を目指すなど規模を拡大する動きが一段と広がっているが、厳しい経営環境の中統合で効率的な経営を迅速に進めることができるかが問われている(NHK)。

 

●新潮流

「企業トップが語る2012年の展望」

済3団体(経済同友会、日本商工会議所、日本経済団体連合会)、の主催する新年祝賀パーティーが都内で行われた。東日本大震災からの復興や円高、欧州債務問題など課題が山積する中企業のトップが2012年の展望を語った。トヨタ自動車・豊田章男社長は「内需拡大で円高リスクを回避する」、ソニー・中鉢良治副会長は「震災需要の本格化と米国景気が上向いてきたことで、後半からの景気回復に期待している」、新日鐵・三村明夫会長は「覚悟を決めて、自分たちの抱えている問題を一つ一つ片付けていくこと」、セブン&アイホールディングス・鈴木敏文会長は「負の連続で先行きは不透明だが積極的に向かっていくことでチャンスをつかみたい」、みずほフィナンシャルグループ・佐藤康博社長は「税金、社会保障、原子力、その他のエネルギーの問題に対し実行力のある形で回答を出していきたい」、ローソン・新浪剛史社長は「経済界も若返りが必要だ」とそれぞれが抱負を語った。

 

●1月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東日本旅客鉄道、第2位・東武鉄道、第3位・よみうりランド」

月は「山手線新駅建設」「インドに鉄道技術売り込み」「東北スタンプキャンペーン」等の話題により、東日本旅客鉄道が第1位に輝いた。第2位は「東武鉄道とアニメの合同記念乗車券が発売」などの話題で東武鉄道が獲得した。第3位は「遊園地3社がプライドをかけて登場!」などの話題でよみうりランドに輝いた。第4位は「JAL再建にも弾み期待・ダルビッシュ効果・260億円?」で日本航空、第5位は「拡大するアウトレット好立地で外国の観光客誘致」で三井不動産、第6位は「ソニー・直感的操作のリモコン」でソニー、第7位は「陰陽師“晴明”めぐりバトル」で角川グループホールディングス、第8位は「国内初!家庭用電源で充電・プリウスPHV発売」でトヨタ自動車、第9位は「錦織選手ベスト8・白熱試合でファーストリテイリング上昇」でファーストリテイリング、第10位は「お一人さま女性が集まるワケ!社長を直撃!驚きの仕掛けとは?」で大戸屋ホールディングスとなった。

 

テレビの窓

「ラスベガス家電見本市・スマートテレビが注目」

本でテレビ本放送開始は1953年。1960年には白黒からカラーへ進化。その後2000年には横に長いハイビジョンテレビが作られた。2011年地デジへの移行により薄型テレビが普及。そしてテレビはスマートなテレビに進化した(フジ)。ラスベガスでコンシューマーエレクトロニクスショーが開幕し、各社はスマートテレビに力を入れた。スマートテレビはインターネットに接続する次世代テレビで、テレビだけではなく、ネット配信動画も楽しめ、アプリをダウンロードすることで自分専用にカスタマイズすることもできる。サムスン、LGはグーグルと提携したアンドロイド搭載のグーグルテレビを打ち出した。ソニーも2年前にグーグルテレビを発売したが、苦戦した経緯があり、今年はリモコンを大幅に改善し、タッチパッド機能も盛り込んだ。パナソニックスマートテレビで今後テレビがコミュニケーションツールになると見ており、スマートテレビ向け新サービスを年内にも開始し、SNSとのつながりを強化する方針(テレ東)。

 

JCC株式会社

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