テレビ報道に見る産業・経済月報(平成24年5月)

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テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成24年5月)

●今月の特徴

株安に円独歩高・日本企業に激震

今週の特徴は①円高・株安の動き、②エネルギー関連の動き、③震災の影響・復興の動きとなった。

 

1.【円高・株安の動き】

 

①11年半ぶりの円高・ユーロ安

31日の外国為替市場では欧州信用不安が広がることへの懸念を背景に単一通貨ユーロが売られ、円相場は1ユーロ=96円台後半と2000年12月以来、11年半ぶりの円高ユーロ安水準に値上がりしている。円高ユーロ安が進んだ事で、日本の電機や自動車メーカーは業績への影響を懸念している。ソニーでは想定より1円円高となった場合、営業利益が年間で60億円減少、トヨタ自動車では年間50億円、マツダでは年間12億円もの利益が減少する。SMBC日興証券チーフ債券ストラテジスト・末澤豪謙氏は「対ユーロでも円高、対ドルでも円高になってきている。競争力という面でみると厳しい。このまま円高ユーロ安が進んだ場合には産業界は海外でモノを作らざるを得なくなる」と国内の空洞化が進むことを懸念した(NHK)。 

 

②円高を背景に海外企業の買収

一方で財務省が22日発表した去年の12月末時点での対外純資産は前の年に比べて0.6%増え253兆円余となる2年ぶりの増加で、純資産額は2009年に次いで過去2番目の高水準になった。財務省によると日本の対外純資産は主要国で最も多く、21年連続で世界一の債権国となった。円高で海外企業の買収などの直接投資が活発になったことを反映しているという。丸紅は米国穀物取引大手・ガビロンの買収を発表。穀物取引の取り扱い量は年間5500万トンを超える規模となり、米国・カーギルなどと共に世界トップグループの仲間入りをする。今回の買収で丸紅は穀物の調達力を強化し、世界的な穀物需要に対応するとしている(日テレ)。一方、国内のたばこ市場の縮小傾向が続く中、JT・日本たばこ産業は、海外での販売を拡大するため、ベルギーに本社を置くたばこ会社「グリソン」の全株式を約510億円で今年中に買収することで合意したと発表。JTは海外展開を強化しており、海外のたばこ販売は、グループの利益の半分以上を占めている。JTは今回の買収により、海外収益をさらに伸ばしていきたいとしている(NHK)。

 

③円高で連携する動きも

一方、円高で日本の造船業界は厳しい国際競争に晒されている。三菱重工業は業界最大手の今治造船と技術提携する事で合意したと発表。優れた技術を持つ三菱重工と多くの船を効率的に建造できる今治造船が協力し、今後需要の伸びが見込まれる省エネコンテナ船で中国や韓国メーカーからシェアを奪還する狙いがある(NHK)。

 

2.【エネルギー関連の動き】

 

①原発の動向

政府が福井県・大飯原発の再稼働の判断に踏み切った。橋下知事も容認。政府は中長期的な原発政策にも布石を打ち始めた。28日、経済産業省の審議会で2030年に原発の割合をどうするかを巡り4つの案が示された。政府が有望視するのが2030年に原発の比率を15%にするという案(テレ朝)。一方、経済産業省は、電力会社が独占している発電事業と送電事業を2014年度以降に分ける発送電分離の議論を本格的に始めた。電力会社から送電部門を切り離し別会社にする方法や独立した中立機関を新たに作り、送電を任す案が有力になってきている。これにより電力市場への新規参入が活発化し、消費者は電力会社を自由に選べるようになるとしている。北九州市東田地区では九州電力の送電網から独立し、新日鉄の100%子会社である東田コジェネが発電から送電まで担っている。元々はCO2削減などの実証実験が目的の事業だったが、震災後意味合いが変わったという(テレ東)。

 

②再生可能エネルギーの動き

年間の日照時間が全国でもトップクラスの宮崎県でリニアモーターカーの実験施設跡地に太陽光発電所が作られた。高架線の上にはソーラーパネルが約1万3000枚、全長3.9kmにわたり設置され1050kW、300世帯分の電力を賄う。跡地をメガソーラー発電所として生まれ変わらせたのは都内の測量会社・国際航業。年内にメガソーラー7カ所の稼働を目指すという。測量に使う航空写真のデータから土地の広さや凹凸を分析。日照時間や日陰のでき方を予測することで無駄なく電力ビジネスを行う方針。(TBS)。一方で、太陽光発電から撤退する会社も出てきている。大手鉄鋼メーカー・JFEスチールは、岡山県倉敷市にある製鉄所で太陽光パネルに使われる「多結晶シリコン」を製造し、ピークだった平成20年度には180億円を売り上げていたが、欧州信用不安の影響で、太陽光発電設備の主な市場となっていたドイツなど欧州各国での需要が減少するとともに、中国メーカーとの厳しい価格競争で採算が悪化したことから、太陽光パネルに使われる「多結晶シリコン」の製造・販売事業から撤退することを決めた。太陽光パネル向けの原料の製造を巡っては、新日鉄のグループ会社とシャープが共同で出資する「NSソーラーマテリアル」も、今年9月での生産停止を決めている(NHK)。

 

3.【震災の影響・復興の動き】

財務省が発表した貿易統計によると4月の貿易収支は5200億円の赤字と2カ月連続の貿易赤字となった。これは原油価格の高止まりや原発事故により火力発電用の天然ガスの需要が増えていることから輸入額が膨らんだためで4月としては過去最大の赤字になる。震災の影響や、歴史的円高で輸出の採算が大幅に悪化した事などから、今年3月期の決算が626億円の最終赤字に陥ったルネサスエレクトロニクスは経営立て直しの一環として台湾の半導体メーカー・TSMCと提携し、製品の共同開発や一部の生産委託を行うことにしたと28日に発表した(NHK)。東日本大震災やタイの洪水、円高など逆風が続いたトヨタ自動車は2013年3月期の決算で本業のもうけを示す営業利益が前の期の約2.8倍の1兆円になりそうだと発表した。トヨタ自動車の生産台数は国内で340万台、世界で530万台。今後、需要が見込まれる中国やブラジル、インド、タイなどで年間20万台以上の生産能力増強を計画し5年ぶりとなる営業益1兆円を見込んでいる(フジ)。

 

●注目点

「ソニーとパナソニックが連携交渉、ビックカメラがコジマを買収」

11日、家電量販店大手のビックカメラコジマを買収すると発表した。家電量販店業界の競争が激化する中、都市に強いビックカメラと郊外に強いコジマが手を組んだ形。地デジ移行後、家電エコポイント制度の終了によるテレビの販売不振など家電メーカーの業績不振が表面化した形だ。テレビを事業の柱にしてきた日本の大手電機メーカー3社(ソニーシャープパナソニック)は、2011年度決算では3社共に過去最大の赤字を計上。(日テレ)。こうした中、ライバルのソニーとパナソニックが次世代テレビの本命とされる有機ELテレビの分野で先行する韓国勢に対抗するため技術開発などで提携交渉に入っていることが分かった。有機ELテレビについては液晶テレビの世界シェア1位の韓国・サムスン電子と2位・LG電子が年内に55型の投入計画を明らかにしている。有機ELテレビはソニーが2007年に世界初の商品化に成功。当時は液晶テレビに比べ高額だったことからおととしに生産を終了したばかり(フジ)。日本の大手家電メーカーは自社でパネルの基幹部品をすべて生産する自前主義の限界を認め、テレビを中核事業から外すなど赤字解消へさまざまな手立てを講じている(TBS)。

 

●新潮流       

「フェイスブックがナスダックに上場」

世界で9億人が利用するSNS大手のフェイスブックが18日、株式をナスダックに上場し世界中から注目を集めている。フェイスブックはユーザーが今後4か月で10億人突破の見通しで、株価に与えるインパクトが大きい(テレ東)。ただ、上場価格から20%を超える下げとなっていて、フェイスブック株は31日には開始直後に28ドル前半に急落、終値は28ドル19セントだった。企業の成長力への不透明感や、上場前後の混乱などが下げの原因とみられる(フジ)。公募価格を大きく下回る株価の急落で損害を被った投資家たちがフェイスブックや金融機関を提訴した(日テレ)。

 

          5月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東武鉄道、第2位・三井不動産、第3位・宇宙航空研究開発機構」

東武鉄道が東京スカイツリー開業にあたって5月の第1位に輝いた。東武鉄道は、今年2月から4か月連続、しかも換算値は312億円超と桁違いの金額となった。第2位は「不動産株堅調・4月のマンション発売が好調」などの報道で三井不動産、第3位は「スペースX打ち上げへ・宇宙ビジネス格安時代・その秘密」などの報道で宇宙航空研究開発機構になった。第4位は「夏のバーゲンセール“先送り”の動き広がる」で三越伊勢丹ホールディングス、第5位「追跡!世界キティ旋風」でサンリオ、第6位は「東京大改造計画~東武スカイツリーvs東急ヒカリエ~」で東京急行電鉄、第7位は「ビックカメラがコジマ買収」でビックカメラ、第8位「ソニーとパナソニック・次世代テレビで“連携交渉”」でパナソニック、第9位「トヨタが東北で新戦略・復興へ生産“一大拠点”に」「トヨタの逆襲・世界初の“販売革命”とは?」でトヨタ自動車、第10位は「ソニー・5年ぶり黒字見通し」などの報道でソニーが獲得した。ちなみに今月上場を果たしたフェイスブックは第11位で惜しくもベスト10入りを逃した。

 

          5月の人物ランキング

「第1位・NHK・数土文夫委員長、第2位・ビックカメラ・宮嶋宏幸社長、第3位・トヨタ自動車・豊田章男社長」

第1位はNHK経営委・数土文夫委員長26件(東京電力社外取締役就任)、第2位はビックカメラ・宮嶋宏幸社長19件(ビックカメラがコジマ買収)、第3位はトヨタ自動車・豊田章男社長17件(トヨタV字回復見込む)、第4位はソフトバンク・孫社長16件(仰天構想・モンゴルで発電し日本へ)(ソフトバンクが米国大手と提携・スマホ使い新決済サービス)、第5位はDeNA・守安社長15件(コンプガチャ廃止を決定)、第6位は東京電力・広瀬直己常務12件(東電次期社長・広瀬常務が昇格へ)、第7位はコジマ・寺崎悦男社長11件(ビックカメラがコジマ買収)、第8位はグリー・田中社長10件(コンプガチャ廃止を決定)、第9位はパナソニック・大坪文雄社長9件(パナソニックとソニー・有機EL提携交渉など)、第10位は日産自動車・カルロスゴーン社長5件(自動車業界の先行きについて)となった。

 

●テレビの窓

「スカイツリーの経済効果1746億円、金環日食特需は164億円!?」

22日に開業した東京スカイツリー。その経済効果は年間およそ1700億円とみられている。観光業界では完売するツアーが続出し、西日本からの予約も増加。ホテルの宿泊プランも好調。不動産業界もツリー周辺の街の将来性に期待が高いとみており活性化が期待されている。さらに関連グッズの売り上げ増加や株式の関連銘柄の上昇が見込まれていて、経済効果は1700億円からさらなる上積みが期待されている。米国・AP通信は「日本の首都のシンボルだった東京タワーに代わる存在」と紹介。そのほか中国、韓国、台湾などのメディアが伝えた(フジ)。一方、21日に日本各地で観測された金環日食も、日本列島に“日食特需”を生み出した。関西大学大学院・宮本勝浩教授の試算によると今回の金環日食による経済効果は約163億8377万円。日本航空が実施した羽田空港発着ツアーは、窓よりの席2人分で7万2000円からで、111人が搭乗。宮本教授によると飛行機による日食観光ツアーの経済効果は4300万円。記念指輪などで約1億円。静岡県浜名湖などで行われたクルージングをしながら日食を楽しむ企画などの、船舶による日食観察クルーズでは1億円。経済効果で最も規模が大きかったのはプラネタリウムの客の急増分、効果は約40億円。(株)ケンコートキナーによると日食グラスは約150万枚が売れたという(TBS)。

 

JCC株式会社

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