テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成29年3月)

「日銀短観・景況感2期連続で改善・先月の完全失業率2.8%・22年ぶり2%台に改善」

 

今月の特徴は1.景気の動向、2.米国利上げ前倒し、3.春闘の動き、4.エネルギー関連の動きとなった。

                                                                                                

1.景気の動向

日銀が3月の短観を発表、業況判断指数は2四半期連続で改善した。これは円安・株高や海外の経済の回復により、輸出関連企業を中心に景況感が改善した結果。ただ、先行きの景況感はトランプ政権の通商政策や欧州の政治情勢の不透明感などでやや低下している。人手の過不足を表す数値はマイナス15で1992年2月以来のマイナス幅(テレ東4/3)。一方、今年2月の有効求人倍率は前の月と同じ1.43倍で、5か月連続ですべての都道府県で1倍以上になった。厚生労働省は「緩やかな景気の回復により雇用環境は着実に改善が進み、引き続き高い水準で維持されている」としている(NHK)。

 

2.米国利上げ前倒し

米国FRB・連邦準備制度理事会は公開市場委員会(FOMC)で、当初の予定よりも早く政策金利の引き上げに踏み切った。1回目が前倒しになったため、あとの2回も前倒しになるのではという見方や、4回目もあるのではとの見方もある。一方、黒田総裁率いる日銀は金融政策決定会合で、マイナス金利政策を含む異次元の金融緩和を堅持する方針を確認し、今後、より高い金利が得られるドルが買われ、円安ドル高が進みやすい状況になるとみられる。トランプ政権は日本との貿易赤字を減らそうと、円安の動きをけん制しているが、今のところ日本への直接的な影響は限定的で、むしろ米国が新興国から資金を吸い取り新興国の経済が揺らぐことが懸念される(NHK)。

 

3. 春闘の動き

春闘は3月15日に経営側が労働組合に一斉に回答を示す集中回答日を迎えた。焦点は賃金引き上げ、働き方改革。一斉回答では円高による業績悪化やトランプ政権発足などで経済の先行きが不透明になっているとして賃上げの勢いに陰りが見えている。自動車業界はベースアップやそれに相当する賃金として月額3000円を要求。トヨタ自動車1300円(去年比200円減)、日産自動車1500円(去年の50%)、ホンダ1600円(去年比500円増)。自動車総連・相原康伸会長は「要求額に届かなかったことは現実で、昨年の実績を下回る状況も大変残念」とコメント。電機業界では日立製作所パナソニックなど大手5社(東芝シャープ除く)がベースアップ月額3000円の要求に対して、経営側の回答は1000円(去年比500円減)。トヨタ自動車・上田達郎常務は「取り巻く環境、今回の収益見通し、将来の不安を考えた場合、昨年並みのベースアップは難しい」とコメント。残業を減らすとか休みを増やすだけでなく、短い時間で成果を上げるということが今後求められる。労使が賃上げだけでなく、働き方についても真剣に議論するスタートラインに立った(NHK)。

 

4.エネルギー関連の動き

東京電力中部電力は一昨年共同で新会社JERAを設立し、火力発電に関する事業を段階的に統合してきた。今回、これまで統合していなかった国内の火力発電所の運営も2019年度前半を目標に統合することで基本合意した(TBS)。一方、福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について大阪高等裁判所は去年、大津地方裁判所が運転停止を命じた仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めた。現在、全国の原子力発電所のうち、鹿児島県・川内原発2基と愛媛県・伊方原発1基が稼働中でこれに加え高浜原発の2基が再稼働する見込み(NHK)。その他のエネルギー関連の動きについて。4月から都市ガスが自由化されるが、これまで都市ガスは地域ごとに独占提供が認められてきた。来月以降はその他の企業も参入できるようになる。大阪ガス関西電力は「仁義なき戦い」「大阪の陣」と呼ばれる激しい値引き合戦をしており、大阪ガスが電力市場に参入し25万件の契約を獲得した。関西電力は来月の自由化でガス市場に参入し顧客を奪い返そうとしている(NHK)。

 

 

●注目点

「東芝子会社ウェスチングハウス・連邦破産法を申請」

が決算発表を再延期し、東京証券取引所は東芝の株式を「監理銘柄」に指定した。東芝の格付け(格付投資情報センター、S&P)は下がり続け、資金繰りは綱渡り状態。一方、米国の原子力事業で多額の損失を出すことになった東芝の子会社ウェスチングハウスは日本の民事再生法にあたる連邦破産法11条の適用を申請。東芝は、ウェスチングハウスの株式の過半数の売却などによって連結決算から外しリスクを遮断、米国の原子力事業から撤退を目指す方針を明らかにした(NHK)。30日に開かれた臨時の東芝の株主総会では、稼ぎ頭の半導体メモリー事業を別会社にして売却することが了承された。東芝は米国の原発事業の失敗で今年度1兆円超の赤字に陥る見込みで、この損失の穴埋めのため、半導体フラッシュメモリー事業を売却し資金を得る考え。これについて株主の理解を得るため臨時の株主総会を開き、綱川社長が謝罪したが、株主からは経営陣を厳しく追及する怒号が飛び交った(日テレ)。東芝の半導体メモリー事業売却入札だが、関係者によると外資系ファンドなどが応じ、2兆円を提示したところもあったという。ただ、中国や台湾などの企業や投資家が売却先になった場合、技術流出を懸念する声もあり、政府は厳格に審査する方針(テレ朝4/1)。

 

 

●新潮流

「1000人集結!ユニクロ新拠点・“同時進行”でアパレル革命」

ニクロを運営するファーストリテイリングが東京・有明の新オフィスを公開した。新設した倉庫の最上階のワンフロアには約1000人の社員が集結。これまでは六本木の同じビルにいたが、階が違うなどの理由でバラバラな作業だった。しかし有明本部では同じフロアで同時に作業を行う事が可能になり、商品の開発から販売にかかる時間の大幅な短縮を目指すことができる。通常、販売の半年前には商品企画を終えるためトレンドを捉えるのは容易ではなかった。こうした縦割り作業から客のニーズを常に取り込める並走型へと変える事でより売れる商品を見極めようという試み。また今回の改革のもう1つの柱はデータから分析した売れる服作り。有明にネットやITの担当者を集め、顧客データを基にした商品作りを目指す。柳井正会長兼社長はそれを「情報製造小売り」とした上で「同じものではなくて毎日ブラッシュアップしたもの、毎日顧客の要望に沿ったものを作っていく。今までの我々の商売は散弾銃で撃っていたようなものだったが、それをライフル銃で撃つようなものにしていく」と話した(テレ東)。

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・三井不動産、第3位・東急不動産」

月のCM価値換算Goodランキングではオリエンタルランドが、31億3000万円で第1位に輝いた。その内容は「東京ディズニーシー15周年特別企画」や「非正規従業員2万人を組合員にして待遇改善を進めた」等の報道露出が貢献した。第2位は「建物内でも案内するアプリ」などの報道で三井不動産になった。第3位は、「東急不動産・東急プラザ銀座開業1周年記念イベントBLOOMPARTYを開催」などの報道で、東急不動産が獲得した。第4位は「JR東日本・乗客専用ラウンジ・プロローグ四季島報道公開」などの報道で東日本旅客鉄道、第5位は「トワイライトエクスプレス瑞風・豪華列車が福を呼ぶ?」などの報道で西日本旅客鉄道となった。第6位は「世界一と言われる地下鉄!東京メトロ」などの報道で東京地下鉄、第7位は「ヤマト運輸の宅配ロッカー・セブンイレブンに設置」などの報道でヤマトホールディングス、第8位は「芸能人が行ってみた!最安値ツアー」などの報道でエイチ・アイ・エス。第9位は、「ユニクロ・米国撤退を示唆」などの報道でファーストリテイリング、第10位は「東京・渋谷・街の“財産”を掘り起こせ」などの報道で東京急行電鉄となった。

 

 

3月の人物ランキング

「第1位・てるみくらぶ・山田千賀子社長、第2位・東芝・綱川智社長、第3位・ソフトバンク・孫正義社長」

第1位・てるみくらぶ・山田千賀子社長122件(経営破綻の「てるみくらぶ」内定取り消し学生に求人殺到!?)、第2位・東芝・綱川智社長86件(東芝・臨時総会で株主に謝罪など)、第3位・ソフトバンク・孫正義社長47件(世界長者の1位はビルゲイツ・日本トップは孫正義など)、第4位・経団連・榊原定征会長44件(どうなる?働き方・“長時間労働是正”など政府が実行計画など)、第5位・日本銀行・黒田東彦総裁20件(金融緩和継続へ・黒田日銀総裁の本音など)、第6位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長19件(「ユニクロ」新オフィス公開など)、第7位・東京電力エナジーパートナー・小早川智明社長17件(東京電力・新体制・新会長に川村・新社長に小早川氏など)、第8位・日産自動車・カルロスゴーン社長13件(日産ゴーン社長退任・後任に西川氏など)、第9位・レオスキャピタルワークス・藤野英人社長10件(“投資”としてのふるさと納税など)、第10位・セブン&アイHD・井阪隆一社長8件(セブン&アイホールディングス・一足早い入社式など)。

 

 

●テレビの窓

「ヤマト運輸・セブンイレブンに専用ロッカーを設置へ」

配業界では、特に従業員への負担が大きい「再配達」を減らしていくことが課題となっている。ヤマト運輸は従業員の負担を減らすため「セブンイレブン」の店舗で荷物が受け取れる「宅配ロッカー」の設置を決めた。4月中旬から順次、都内30店舗に試験的にロッカーを設置する。利用者はネットを通じて再配達の店舗を指定し、通知を受けた暗証番号でロッカーを開けることができる。ヤマト運輸はこれまで駅を中心にロッカーを設置してきたが、コンビニに設置するのは初めて。両社は今後ロッカーの設置店舗拡大やほかの宅配業者の荷物の受け取りも検討している。大手コンビニ各社は来店客の増加につながるとして、レジで宅配大手の荷物を渡すサービスも行っているが、荷物探しや本人確認などに手間や時間がかかる上、レジの混雑につながっている為、セブンイレブンでは宅配ロッカーによって従業員の負担の軽減につなげたいと考えている(NHK)。

JCC株式会社