テレビ報道に見る産業・経済月報(令和6年11月)
「日銀の利上げ観測で円高・一時149円台」「経常黒字・15.8兆円・過去最大」
今月の特徴は1.日銀の利上げ観測で円高・一時149円台、2.経常黒字・15.8兆円・過去最大、3.貿易収支・4612億円の赤字、4.外国人観光客の動向、5.2040年度電源構成・原発の割合2割維持となった。
1.日銀の利上げ観測で円高・一時149円台
円相場は29日午前から急速に円高が進み、約1か月ぶりに一時1ドル=149円台まで上昇した。きっかけは東京都区部11月の消費者物価指数が市場予想を上回ったこと。市場では日銀が来月の金融政策決定会合で追加の利上げに動くのではないかとの観測が高まり、円を買ってドルを売る動きが強まった。米国ではFRB=連邦準備制度理事会が12月の会合で利下げとの観測から長期金利が低下傾向。この動きも円高を後押しする要因となっている(日テレ)。
2.経常黒字・15.8兆円・過去最大
財務省発表の今年度上半期の国際収支速報によると、海外との総合的な取引を示す経常収支は15兆8248億円の黒字だった。日本企業が海外の子会社から受け取った配当金や、保有する債券の利子などの収支を示す第一次所得収支が22兆1229億円の黒字だったのが主な要因。機関投資家からの投資残高が増える中、金利の高止まりや円安などを背景に証券投資収益が黒字を大幅に拡大した。インバウンドの増加で旅行収支も過去最大の黒字となっている(テレ朝)。
3.貿易収支・4612億円の赤字
財務省が発表した今年4~9月までの貿易統計によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3兆1000億円余の赤字だった。円安やエネルギー価格の上昇の影響で赤字額は1年前から14%増えた。一方、輸出額は6.6%増加し、半期として過去最大となった(テレ東)。
4.外国人観光客の動向
日本人客の取りこぼしが課題となる中、松屋銀座は客の半数近くを外国人観光客が占めるようになり、商品の予約サービスを開始した。来店前にネット上で商品の予約と免税手続きができ、来店時に専用カウンターでパスポートなどを提示するだけで購入が可能となる。これで待ち時間を短縮し、接客時間がとれるようになると期待している。このサービスは日本在住者も利用でき、商品の配送も可能なため、地方に住む人や若年層の取り込みも狙いたい考え(日テレ)。
5.2040年度電源構成・原発の割合2割維持
経済産業省の審議会で日本の電力政策の骨格となるエネルギー基本計画の見直しの議論が進められていて、原子力発電をどう位置づけるかが焦点の一つとなっている。政府は再生可能エネルギーとともに、脱炭素に効果の高い電源として原発を最大限活用することを打ち出す方向で調整を進めている。同じ趣旨は、去年2月に閣議決定されたGX=グリーントランスフォーメーション実現に向けた基本方針にも盛り込まれていて、今回長期のエネルギー政策として明確にした上で、計画で示す予定の将来の電源構成では今の計画で2030年度に2割程度としている原発の割合を、2040年度も同じ2割程度に維持する方針(NHK)。
●新潮流
「日本発の技術・軽くて曲がる?“次世代太陽電池”」
26日、政府は次世代電池、ペロブスカイト太陽電池について2040年に20ギガワットを目指すとする、初めての目標を取りまとめた。これが実現すると、およそ600万世帯分、日本の家庭のおよそ1割分ぐらいの電力が賄えるという。日本で開発されたペロブスカイトは今、世界的に開発競争が激しくなっており、夢と現実が両方見える技術となっている。ペロブスカイトは非常に薄くて軽く曲げられるというのが特徴で、これまで太陽電池が置けなかったさまざまな場所への設置が期待されている。住宅のベランダのガラスにペロブスカイト太陽電池を埋め込んだ発電するガラスの開発も進められている。また、ペロブスカイトは非常に弱い光でも効率よく発電できるという特徴があるため、屋内の照明などの光でも発電する。そのため、リモコンなどの電池で動くようなものにつけることや、災害時に大きなパネルでバッテリーの充電ステーションのような使い方も期待できる。開発を進める産業技術総合研究所の村上拓郎氏によると、そもそも20ギガワットは初夏の昼間、晴れていて条件がいい時に出せる最大瞬間の電力のことで、夜間は発電しないし、雨の日などはどうしても落ちてしまう。「電力として見込めるのは最大発電量の1.5割程度」ということでこれがおよそ600万世帯に当たるという。また、実現にあたっての壁となるのが耐久性とコスト。ペロブスカイトは劣化が早いという弱点があるため、長時間発電し続ける耐久性が重要な課題となる。更にこれまでの太陽電池パネルと比べると現状では割高になるというコストも課題。政府は目標の中で2040年に従来のパネルとほぼ同じ水準で下げるということを目指している(日テレ)。
●注目点
「トランプ次期大統領・関税引き上げ発言・日本への影響は?」
米国・トランプ次期大統領が関税を引き上げる狙いは主に4つある。1つ目は中国への対抗、2つ目は貿易赤字の縮小、3つ目は米国の産業保護、4つ目は税収の増加。トランプ次期大統領は先月のインタビューで「辞書の中で最も美しい言葉は関税だ」と語るなど、関税に強いこだわりを見せている。大統領選挙期間中にも「メキシコからの輸入車に関税200%をかける 」「中国からの輸入品に関税60%」「日本など、他の国からの輸入品に対し10~20%関税を引き上げる」との発言がみられた。今月25日には「メキシコとカナダからの輸入品は就任初日に関税25%をかける」「中国からの輸入品・追加関税10%」と、SNSに投稿した。トランプ次期大統領の関税へのこだわりの背景には「米国への安い製品の流入を防ぎたい」「貿易赤字の縮小で経済状況が回復する」という考えがある(フジ)。経団連・十倉会長はトランプ氏の関税引き上げ表明について「現地(メキシコ)に製造拠点を設けている日本企業も多いので、そうなれば日本企業への影響は甚大になる」と危機感を露わにした。伊藤忠総研・上席主任研究員・高橋尚太郎氏は「今回、本丸の貿易赤字の削減を掲げずに不法移民などを問題視している。メキシコやカナダがそれに向き合えば適用されない逃げ道も作っているようにも見える」と分析した。一方、野村総合研究所・エグゼクティブエコノミスト・木内登英氏は「追加関税で輸入を減らして貿易赤字を減らすことへの強い意欲の表われ」との見方を示した(テレ東)。
11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・オリエンタルランド、第2位・イオン、第3位・良品計画」
2024年11月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは「オリエンタルランド」が44億8786万円で第1位に輝いた。具体的には、「ディズニークリスマス2024・超見どころ徹底ガイド」「ディズニーが新学割プラン」「お台場にディズニークルーズ」等によるものであった。第2位は「イオンのブラックフライデーセール」等の報道で、「イオン」となった。第3位は「無印良品×超一流料理人」などの報道で、「良品計画」となった。第4位は「すかいらーくグループが新業態としてオープンのイタリアンレストラン『ペルティカ』に密着」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「築地銀だこの人気フレーバー『焦がし醤油もちチーズ明太』が期間限定販売」などの報道で「ホットランド」、第6位は「東京メトロ・ロンドンで地下鉄運営」などの報道で「東京地下鉄」、第7位は「クリスマスマーケット2024in東京スカイツリータウン」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「企業と共に広める女性支援の輪・卵子凍結の理解促進へ」などの報道で「伊藤忠商事」、第9位は「ユニクロの40周年記念セール」などの報道で「ファーストリテイリング」となった。第10位は「東宝・撮影スタジオに水素電力・JERAが供給・初の商用利用」などの報道で「東宝」となった。
11月の人物ランキング
「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO、第3位・スペースX・イーロンマスクCEO」
第1位・日本銀行・植田和男総裁65件(追加利上げ・植田総裁「適切に判断」など)、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO52件(米国・テスラ株急伸の背景など)、第3位・スペースX・イーロンマスクCEO43件(トランプ氏・マスク氏と“宇宙船”視察など)、第4位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長29件(トランプショック・再び?物価への影響は?など)、第5位・日本経団連・十倉雅和会長25件(トランプ氏“関税”・経団連会長「甚大な影響の恐れ」など)、第6位・日産自動車・内田誠社長19件(メキシコに関税引き上げ・工場多く日本企業も影響など)、第7位・エヌビディア・ジェンスンフアンCEO16件(米国・半導体大手・エヌビディア・売上・純利益とも過去最高など)、第8位・みずほフィナンシャルグループ・木原正裕社長12件(“みずほ×楽天”提携を強化・新クレジットカード発行発表など)、第9位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長11件(ソフトバンクG・オープンAI株・15億ドル取得へなど)、第10位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長11件(みずほ・楽天が提携クレカなど)。
●テレビの窓
「アジア最大級宇宙ビジネス展示会・日本橋で開催」
東京・日本橋でアジア最大級の宇宙ビジネスイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK 2024」が開催された。江戸幕府の城下町として誕生した日本橋は五街道の起点として定められ、商業の街として発展してきた。その後、金貨の鋳造などを行う金座が置かれたことなどから日本銀行や東京証券取引所が設置され、日本橋は金融の街という顔も持つようになった。今回、その日本橋を創業の地とする三井不動産が主導し官、民、地域が一体となった日本橋再生計画をスタートした。2004年にはCOREDO日本橋がオープンするなど再開発が進められ、近年はベンチャー企業が入居しやすいオフィスの建設や支援事業を進めていて、続々とベンチャー企業が集まっている。特に宇宙事業に力が入れられていて、「宇宙ビジネス共創拠点X-NIHONBASHI」は2018年に開設し、JAXAも入居している。「NIHONBASHI SPACE WEEK 2024」に参加した岩谷技研は今年7月に気球の有人飛行で国内最高記録となる飛行試験を成功させたが、今回のイベントでは2人乗りの気球型キャビンを展示。JAXAは「はやぶさ2」の実寸大模型を、宇宙ベンチャー企業・ispaceは月着陸船の実寸大模型などをそれぞれ展示した。この他、Space BDは新潟県を代表する無形文化財「鎚起銅器」の銅板を国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げ、約3か月間宇宙空間にさらしたものをアート作品として展示した(テレ朝)。三井不動産・宇宙ビジネスイノベーション推進部・渡辺崇史氏は展示会の目的について「世界から宇宙のプレイヤーの方が集まってもらい実際に交流共創する場を作ることを目的にしている」と語った(TBS)。
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