テレビ報道に見る産業・経済月報

テレビ報道に見る産業・経済月報(令和6年12月)

今月の特徴は1.日銀・追加利上げ見送り、2.大納会の終値・35年ぶり最高値、3.円安の動向、4.外国人観光客の動向、5.エネルギーの動向となった。
 

1.日銀・追加利上げ見送り

日銀は、金融政策決定会合で現状0.25%程度としている政策金利を据え置いた。会見で植田総裁は「最近の経済物価に関する各種の指標はおおむね見通しに沿って推移している。ただ賃金と物価の好循環の強まりを確認する視点から、もう少し情報が必要と考えた」と述べた。利上げを見送った理由については来年春の春闘による賃上げ動向や、米国のトランプ次期政権の財政や通商政策の影響を見極める必要があるという考えを示した(テレ東)。
 

2.大納会の終値・35年ぶり最高値

ことし最終日の日経平均株価は1年の終値として35年ぶりに最高値を更新。30日の終値は3万9894円54銭で年末の終値として最も高い水準となった。来年は、米国景気の好調さから4万3000円台を期待する声も上がっている(フジ)。

3.円安の動向

為替のリスクは明らかに円高よりも円安になること。ニッセイ基礎研究所・矢嶋康次氏は「日本銀行が1月3月に利上げできないと円安が加速しかねない」と指摘した上で、「円安アタックを市場がかけるのではないかということが今リスクとして出てきている。来年はトランプ政権に揺さぶられる年になる可能性があるが、日本のいい流れを止めないことが非常に重要であり、政治の役割というのもかなり重要な年になる」としている(テレ東)。

4.外国人観光客の動向

18日に発表された今年1~11月までの訪日観光客数は3338万人となり、過去最多だった2019年を既に上回った。一方で日本人の英語力を示す指数は、116の国と地域の中で92位となり、迎える側のおもてなしの準備が求められている(TBS)。

5.エネルギーの動向

2040年を見据え、脱炭素社会と産業振興の両立を目指す国家戦略「GX2040ビジョン」の骨子案が19日、公表された。このなかでは再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素に効果の高い発電設備の近くに産業集積を促していく方針が示された。発電設備からの送電に伴うロスを減らすことなどがねらいで、電力を多く使用する工場やデータセンターなどを誘致することが想定されている。また骨子案では欧米各国で脱炭素の取組みを見直す動きがあることを踏まえ「国内での脱炭素社会への移行も現実的な政策が必要」だと指摘している(NHK)。

●注目点

「年末の空港混乱・JALにサイバー攻撃・狙いは?」
26日、全国の空港で混乱を招いた日本航空のシステム障害。日本航空によると、原因はサイバー攻撃。26日、午前7時半前、社内外をつなぐネットワークがサイバー攻撃を受けシステムに不具合が発生した。全国の空港で手荷物のチェックイン機が作動しづらくなるといった影響などで、遅延や欠航が相次いだ。警視庁には日本航空から「DDoS攻撃をされているかもしれない」という趣旨の相談があった。さらに26日、午後3時頃から三菱UFJ銀行の個人向けのインターネットバンキングで生体認証の利用が不安定な状態になった。この不具合について、三菱UFJ銀行はDDoS攻撃の可能性も視野に確認を続けている。「DDoS攻撃」とはウイルスなどで乗っ取った無関係な人のパソコンを使い、Webサイトやサーバーに過剰なアクセスや膨大なデータを送り大きな負荷を与えるサイバー攻撃のこと。デジタルデータソリューソョンによると、システム管理者が少なくなる年末年始が狙われやすいという。去年から今年にかけて検知された件数は9月から11月が1000件ほどだったのに対し、12月から2月は5000件にものぼる。(日テレ)。NTTチーフサイバーセキュリティストラテジスト・松原実穂子氏は「ウクライナとロシアの戦争でこれまでもウクライナに対して支援をしている国や組織に対し、サイバー攻撃、DDoS攻撃が行われてきた。今回、サイバー攻撃の前日、25日に石破首相とウクライナ・ゼレンスキー大統領が電話会談を行い、その時に日本からウクライナに対して4700億円近い融資を約束している。今回犯行声明は出ていないが、もしかするとそうしたカテゴリーに合致している可能性がある。そうした政治的・安全保障の背景を持った攻撃者がサイバースパイ活動であったり、業務妨害をサイバー攻撃で仕掛けてくる可能性を日本も注意しなくてはならない」と指摘した(フジ)。

●新潮流

「ホンダ・日産・経営統合・来年6月合意へ」
23日、経営統合の協議入りを発表したホンダと日産。会見には三菱自動車も同席した。半年後の来年6月には経営統合に最終合意。再来年8月に両社の上場を廃止し、持ち株会社に移行する。実現すれば世界3位の自動車メーカーが誕生することになる。自動車グループ販売台数:1位・トヨタ、2位・フォルクスワーゲン、3位・ホンダ、日産、4位・ヒョンデ、5位・ステランティス、6位・GM、7位・フォード。経営統合を急ぐ背景は経営不振。日産は全世界で9000人を削減するとのリストラ策を発表。「日産を助けるためではないか?」との質問にホンダ・三部社長は「救済ではない。両社の理念やブランドは変わることなく引き継いで残していく」と強調。「一緒にやるうえで惚れたところはどこか?」との質問には「(日産は)伝統もあるし独自の企業文化もある。過去に名車もたくさん出している名門企業であり、非常に尊敬に値する会社だと思っている」と答えた。日産自動車・内田社長は「どちらが上、どちらが下ではなく、共に未来を切り開く仲間として5年後、10年後に今回の決断は正しかったねと(言えるようにしたい)」。実際には持ち株会社を作る際にはホンダが社長を指名、取締役会メンバーの過半数もホンダが決めるなどホンダ主導による経営統合となる。自動車評論家・国沢光宏氏は「救済にしかみえない。メリットは考えられない」と指摘した。三菱自動車は来年1月末をめどに合流するかどうかを判断するという(TBS)。 

●12月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ホンダ、第2位・日産自動車、第3位・オリエンタルランド」
2024年12月度・テレビ報道CM価値換算ランキングは71億4174万円で「ホンダ」が第1位に輝いた。具体的には、「ホンダと日産自動車・経営統合へ」「ホンダ・新ハイブリッド技術を公開」「経営統合協議・激変の自動車業界」等によるものであった。第2位は「自動車産業の大変革・キーワードは“CASE”」等の報道で、「日産自動車」となった。第3位は「ディズニークリスマス・マイルール」などの報道で「オリエンタルランド」、第4位は「くら寿司が万博特別メニュー」などの報道で「くら寿司」、第5位は「新型アウトランダーPHEV発売記念イベント」などの報道で「三菱自動車」、第6位は「Suica・タッチせずに改札を通過できる機能を追加」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第7位は「業務スーパーにはどんな商品が・業務スーパー横浜いずみ店で調査」などの報道で、「神戸物産」、第8位は「東京スカイツリータウンでこの冬得する場所5選」などの報道で「東武鉄道」となった。第9位は「Snow Man初のオリコン年間1位」などの報道で「オリコン」、第10位は「松坂屋名古屋店のデパ地下を取材」などの報道で「J.フロント リテイリング」となった。

●12月の人物ランキング

「第1位・ホンダ・三部敏宏社長、第2位・日本銀行・植田和男総裁、第3位・日産自動車・内田誠社長」
第1位・ホンダ・三部敏宏社長107件(ホンダ・株価が急上昇・1兆円超の自社株買いなど)、第2位・日本銀行・植田和男総裁102件(来年の日本経済の見通し・今後の金融政策はなど)、第3位・日産自動車・内田誠社長72件(基本合意書を締結・ホンダ・日産・経営統合へ協議入りなど)、第4位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長43件(孫氏“巨額投資”トランプ氏と発表へなど)、第5位・経団連・十倉雅和会長32件(経団連・次期会長に筒井氏など)、第6位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長31件(「106万円の壁」撤廃へ・悲鳴もなど)、第7位・野村証券・奥田健太郎社長30件(野村証券・元社員逮捕で社長会見など)、第8位・テスラ・イーロンマスクCEO13件(脳にチップ“考えるだけ”でPC操作など)、第9位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長12件(サントリー新社長に・創業家など)、第10位・JTB・山北栄二郎社長11件(宇宙旅行にも挑戦・新たな感動体験を届けるなど)。

●テレビの窓

「ラピダス・日本AI大手と協業へ・設計・生産・納入まで国内完結」
次世代半導体の量産を目指すラピダス。製品の主なターゲットをデータセンター向けのAI半導体としている。AIの開発と利用に欠かせないデータセンターの基幹部品がGPU(画像処理半導体)で、米国のエヌビディアが世界シェア9割を占める1強状態になっている。国内のAI開発大手、プリファードネットワークスが設計したAI向け半導体をラピダスが受託生産。その半導体を、さくらインターネットが手がけるAI向けデータセンターに納入する方向で国内3社が協業の検討に入った。ラピダスはこれまで米国のIBMをはじめAI向け半導体設計を手がける米国のテンストレントなど海外顧客との提携を進めてきた。国内ではラピダスに対する1000億円の政府出資を含む金融支援の枠組みの検討が進む中、「国内で作っても国内の誰が使うのか」といった批判が一部で根強く、国内顧客の確保が急がれている。そうした中で、国内大手2社との協業は国内需要の開拓になるほか、国内における半導体サプライチェーンの強靭化にも貢献することになる(テレ東)。ラピダスの今後の課題について、早稲田大学大学院・経営管理研究科・長内厚教授は「生産ノウハウとか技術をどこから得るのかに関しては、ラピダスには不透明なところがある。これを乗り越えなければいけないというのがひとつの壁としてあり、試作がうまくいくかどうか見ていく必要がある。半導体は規模の経済性が効くので(日本企業は)技術で差別化すると言いがちだが、そうではなく半導体に関してはとにかく数、数を追うためにどのような技術を用いたらいいかという発想の転換が必要」と述べた(NHK)。 
 

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