テレビ報道に見る産業・経済月報(令和7年2月)
「10~12月期・GDP3期連続プラス・年率2.8%増」
今月の特徴は1.10~12月期・GDP3期連続プラス・年率2.8%増、2.長期金利14年10か月ぶり高水準、3.一時149円台・円高進む、4.人手不足の動向、5.エネルギーの動向となった。
1.10~12月期・GDP3期連続プラス・年率2.8%増
去年10月から12月の国内総生産(GDP)の成長率は、物価変動の影響を除いた実質で前の3か月と比べて0.7%増加した。3期連続のプラス成長であり、年率換算では2.8%のプラスとなる。半導体製造装置など企業の設備投資が伸びたことや、海外旅行客による消費が好調だった。一方、個人消費は小幅なプラスにとどまった。家電や宿泊は好調だったが、米や野菜など、身近な食料品の物価高が消費の足を引っ張った。また去年1年間の国内総生産の実額は約609兆円で初めて600兆円を超えた(日テレ)。
2.長期金利14年10か月ぶり高水準
18日の債券市場では長期金利の代表的な指標となっている10年ものの国債の利回りが1.4%まで上昇し、2010年4月以来14年10か月ぶりの高い水準となった。10年ものの国債の利回りは、米国の長期金利の高止まりを受け、このところ上昇傾向が続いている。市場関係者は、日銀が早期の追加利上げに踏み切るのではないかという見方から長期金利の上昇が続いていると話している(NHK)。
3.一時149円台・円高進む
全国の企業倒産件数は去年1年間で1万6件となり前年比15.1%増となった(東京商工リサーチまとめ)。倒産が増えた大きな原因の1つとされるのが人手不足。働き手不足の中、円安や物価高などが影響し、賃上げの流れに乗れず、人手が確保できないという負の連鎖で倒産してしまうケースが増えているという。帝国データバンクは今年の見通しについて倒産件数は緩やかに増加するとしている。ただ、帝国データバンク情報編集課・内藤修課長は、「経済全体の成長に繋がる倒産という見方もできる」として現状について悲観する必要はないと指摘している(日テレ)。
4.外国人観光客の動向
中国で春節の大型連休が始まり、日本の意外な場所に大行列ができている。中国政府が、「福島第一原発の処理水放出について海水サンプルを検査した結果、放射性物質の濃度に異常はなかった」と発表したことが、中国人観光客の安心材料になった。小網神社では、普段の倍の中国人参拝客が訪れているという。小網神社は「東京銭洗い弁天」とも呼ばれ、中国のSNSで大きな話題になっている。一方、観光客の増加によって影響が出た場所もある。京都では踏切内で人がごった返す様子が動画に映っていて、JR西日本によると動画が撮影された日のほぼ同時刻に列車に最大約20分間の遅れが発生したという。一方、銀座の海鮮ビュッフェでは春節で客が5割増えたという(日テレ)。
5.エネルギーの動向
電源開発は、福岡県と秋田県の沖合で洋上風力発電の事業を計画している。主に海上に設置される洋上風力発電は、周囲に山や建物がないことから、安定した風力が得られるとされてきた。その事業環境に吹いている逆風が、予想を上回る建設コストの上昇。2017年に事業が始まった福岡県沖の計画では、ことし中の運転開始に向けて工事が進められているが、風車の羽根に使う強化プラスチックや、海に浮かべる台に使う銅やコンクリートなどの価格が3年前よりいずれも40%程度値上がり。さらに、建設業界の人手不足で、人件費も上昇。千葉県銚子市の沖合で計画されている洋上風力発電は、実際にコストの大幅な増加で、計画の見直しが発表された。計画の見直しは、地元自治体の施策にも大きな影響を与えている(NHK)。
●注目点
「ホンダ・日産・経営統合破談」
去年12月、東京・中央区でホンダと日産が歴史的再編劇を発表するも、わずか2カ月足らずで白紙となった。両社はソフトウェア開発などの協業は続ける方針。当初の計画案ではホンダと日産が持ち株会社を設立、両社が傘下に入るという案だった。しかしこれでは時間がかかりすぎるとして日産の子会社化をホンダが提案。この提案に対し日産自動車・内田誠社長は「同意が同じ方向に行けなかったことは非常に残念だ」と述べた。子会社化を拒否した日産は最終損益が4年ぶりに赤字となる見通し。日産の経営体質、問題点について経済ジャーナリスト・井上久男氏は日産の意思決定の遅さ、役員の多さを指摘した上で「ホンダが求めているスピード感に日産が対応できなかったことが経営統合白紙化の大きな原因の1つだ」とし、日産に課された4つのシナリオとしてホンダとの再交渉、アメリカ・テック企業との連携、台湾・鴻海精密工業による買収、鴻海とホンダの2社による買収を挙げた。日産の役員体制についていえば、役員には社内取締役、ルノー、ほかの社外取締役もいて、それぞれに思惑があり意思疎通に時間がかかるといえる。日産の今後について日産自動車・内田誠社長は9000人削減、3工場閉鎖、執行役員2割減のリストラ案を発表した(テレ朝)。
「トランプ大統領・税率25%前後示唆・どうなる自動車関税」
アメリカ・トランプ大統領が自動車関税について「税率25%前後になるだろう」と発言し注目を集めている。日本から輸出される自動車へのアメリカの関税は多くの場合、2.5%で、仮に関税25%が発動されれば、大幅な引き上げとなる。アメリカに輸出される品目で自動車は金額が最も大きく、去年1年間では、輸出額全体の28.3%を占めている。アメリカへの年間の輸出台数(日本自動車工業会)をメーカーごとに見ると、トヨタ自動車が53万台余りと、現地の販売台数の23%を占めたほか、マツダは23万台余りで、現地の販売台数の54%に上る。ちなみにホンダは5379台である。専門家は、日本車に対して25%の関税を上乗せした場合、日本のGDPが0.2%程度押し下げられると試算する。日本政府が最も警戒しているのは自動車への関税措置で、政府としては、トランプ政権に対し、日本企業によるアメリカの経済や雇用への貢献を強調し、関税の引き上げを回避したい考え。野村総合研究所エグゼクティブエコノミスト・木内登英氏は「自動車は裾野が非常に広い産業で、例えば自動車の生産が1兆円落ちると、日本の製造業の生産全体としては3兆円が落ちるぐらいの影響がある。自動車の関税だけで日本経済が失速まではしないかもしれないが、マイナスの影響は出てくるだろう」と指摘した。林官房長官は会見で「我が国への影響を十分に精査しつつ適切に対応していく」と述べた(NHK)。こうした中、トランプ政権による追加関税措置を巡って、経済産業大臣が3月にも訪米することについて、日本商工会議所の小林会頭が、「日本として反対だということを明確に示してほしい」と強調した。小林会頭は、「日本からアメリカへの輸出額の3分の1は、自動車や自動車関連部品が占めているので、追加関税措置は非常に大きな問題だ」と懸念を示している(日テレ)。
●2月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・宇宙航空研究開発機構、第2位・オリエンタルランド、第3位・すかいらーくホールディングス」
2025年2月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは「宇宙航空研究開発機構」が22億9570万円で第1位に輝いた。具体的には、「H3ロケット5号機・打ち上げ成功」「JAXAなどの国際研究グループ・銀河団中心部・高温ガスの流れ詳細観測」等によるものであった。第2位は「ディズニークルーズ・日本郵船が運航管理へ」などの報道で「オリエンタルランド」、第3位は「資さんうどん・東京初進出」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第4位は「ファーストキス 1ST KISS」などの報道で「東宝」、第5位は「大戸屋ごはん処でウワサの芸能人」などの報道で「大戸屋ホールディングス」、第6位は「ドクターイエロー・お掃除イベント」などの報道で「東海旅客鉄道」、第7位は「大阪王将を徹底調査」などの報道で「イートアンドホールディングス」、第8位は「明治の看板商品はどっちだ!?きのこの山vsたけのこの里」などの報道で「明治ホールディングス」となった。第9位は「ソフトバンクがオープンAIと新会社」などの報道で「ソフトバンクグループ」、第10位は「KOMEHYOでウワサのお客さま」などの報道で「コメ兵ホールディングス」となった。
2月の人物ランキング
「第1位・フジテレビ・清水賢治社長、第2位・日産自動車・内田誠社長、第3位・ホンダ・三部敏宏社長」
第1位・フジテレビ・清水賢治社長138件(フジテレビ6つの施策公表・会食・会合ガイドライン策定など)、第2位・日産自動車・内田誠社長117件(ホンダ・日産・統合協議打ち切り・岐路に立つ日本の自動車産業など)、第3位・ホンダ・三部敏宏社長115件(ホンダ・日産・経営統合協議打ち切り・日産は新たな再建策発表など)、第4位・オープンAI・サム・アルトマンCEO82件(孫氏とオープンAIトップ・最先端AIの会社設立で合意など)、第5位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長60件(石破首相が孫社長らと会談など)、第6位・フジメディアHD・金光修社長43件(フジ日枝氏・経営諮問委を辞任など)、第7位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長32件(悲鳴・“強烈寒波”で野菜高騰・キャベツ白菜高・いつまでなど)、第8位・日本銀行・植田和男総裁32件(長期金利15年ぶりの高水準・日銀・植田総裁・発言の狙いなど)、第9位・日本経団連・十倉雅和会長18件(アメリカ大統領“投資で合意”・経団連会長“大いに歓迎”など)、第10位・アップル・ティムクックCEO17件(アップル 株主総会で“DEI廃止案” 否決など)。
●テレビの窓
「大阪・関西万博でお披露目される最先端医療テクノロジー」
日本の最先端医療テクノロジーがもうすぐ大阪・関西万博で世界にお披露目される。心臓に貼るだけで機能を回復させる心筋シートのほか、注目されるのが皮膚細胞から臓器を作る3Dプリンターで、患者が必要な臓器を自分の細胞で作ることができる。京都大学での臨床試験では指の神経を損傷した患者に移植したが、京都大学・池口良輔教授によればこの患者は「最終的に指の感覚の回復があって元々の仕事に復帰した」という。創業15年の医療ベンチャー・サイフューズでは世界初の技術で細胞100%を使った血管など、様々な人工臓器を開発している。通常、手術に使われる人工血管はポリエステルなど化学繊維を使用しており、拒絶反応が起こることがしばしばあった。しかし自分の細胞で作った血管を使えば、拒絶反応は起きにくい。この研究は日本の知的財産を発展させたとして「経済産業省大臣表彰」を受賞している。人工血管の材料は患者の皮膚から取った0.02ミリの繊維芽細胞を培養液につけて1週間かけて増殖させ、さらに細胞が生み出すコラーゲンが接着剤になりくっついて大きくなる。ヒトの細胞から3Dプリンターで作ったミニ肝臓はすでに販売されていて、これは新薬の開発現場で使われ、ヒトの肝臓と同じ機能を持ったミニ肝臓で薬物影響の検証を行うことができるという。膝の軟骨もバイオ3Dプリンターで現在開発中とのことだ(TBS)。
JCC株式会社