テレビ報道に見る産業・経済月報

テレビ報道に見る産業・経済月報(令和7年3月)

「日銀・FRBが政策金利据え置き」
 
今月の特徴は1.日銀・FRBが政策金利据え置き、2.1月の経常収支・2年ぶり赤字、3.トランプ関税の影響、4.人手不足の動向、5.エネルギーの動向となった。
 

1.日銀・FRBが政策金利据え置き

日米の中央銀行が、今後の金融政策を決める会議を相次いで開いた。日銀は19日、「政策金利を引き上げず」、アメリカ・FRBは19日「政策金利を引き下げず」、いずれも据え置きとなった。据え置きの理由で共通しているのが、アメリカ経済への懸念。日銀の声明では「新年度にかけて消費者物価は、コメの価格の影響などで押し上げられる方向」と指摘。海外ではトランプ関税の影響など、懸念材料も出ている。こうした状況を受けて、植田総裁は「海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国の経済・物価を巡る不確実性は引き続き高く、金融・為替市場の動向や経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と述べていて、今回は政策金利を据え置いて経済や物価の情勢を見極めるべきと判断したとみられる(NHK)。
 

2.1月の経常収支・2年ぶり赤字

財務省が発表した日本が海外との貿易や投資でどれだけ稼いだかを示すことし1月の経常収支は、2576億円の赤字となった。赤字となるのは2年ぶり。中国の旧正月春節の影響で現地の生産活動が停滞し、日本からの輸出が鈍化したことが要因。さらに、春節を前にふだん中国からの輸入が多い、スマートフォンやノートパソコン、衣類の在庫を確保しておこうと輸入が増えた結果、貿易収支が2兆9379億円の赤字となったことで、赤字幅が拡大した(NHK)。
 
3.トランプ関税の影響
アメリカの自動車への追加関税25%が4月3日から発動する。期限を設けない“恒久的な措置”としている。アメリカが自動車を輸入している国1位はメキシコ、次いで日本、韓国、カナダ、ドイツ、イギリス。2024年にアメリカが輸入した日本車は約137.6万台で、日本から輸出される自動車の約3割に当たり、自動車と自動車部品を合わせた額は約7兆3000億円。自動車関税25%が上乗せされた場合、乗用車は現在の2.5%から27.5%、トラックは現在の25%から50%になり、トランプ大統領は年間15兆円の税収と雇用の増加を見込んでいるという。今回の追加関税は日本の自動車産業に深刻な打撃を与える恐れがある(テレ朝)。
 

4.人手不足の動向

人手不足の中、飲食店ではスマートフォンで注文、会計するシステムを導入する店が増加している。QRコードから手軽に注文でき会計金額のチェックもできる。店側は注文を取りに行く必要がなく、聞き間違えなどのミスも避けられる。スマホ注文はコロナ禍から急激に普及し、データ通信量などの負担額については「数円単位でいくか、いかないかというレベル」だが、無料Wi-Fiや充電器、コンセントなど店側の努力も必要となる(フジ)。
 

5.エネルギーの動向

政府は2月に発表したエネルギー基本計画で2040年度までに再生可能エネルギーの割合を4割~5割程度まで引き上げるとしている。こうした中、注目されているのが既存の川や水路などをそのまま使って発電する小水力発電で、大手企業も次々に参入を表明している。全国の小水力発電所は約600か所。ダムなどの工事が必要なく、山と川が多い日本では開発の余地が大きい発電手段として注目されている(テレ東)。
 
 

●注目点

「春闘・満額回答相次ぐ・焦点は中小企業の賃上げ」
12日に迎えた春闘の集中回答日。今年も大企業を中心に去年を上回る回答が相次いだ。日立製作所は去年より4000円高い月額1万7000円アップの要求に満額回答で、過去最高の水準。またトヨタ自動車川崎重工なども満額回答だったほか、素材メーカーの三菱ケミカルは組合要求を上回る満額超えの回答だった。ただ労働団体からは手放しでは喜べないという声も聞こえている。焦点となるのは中小企業の賃上げ。自動車や建築に使う金属部品に亜鉛のメッキ加工を施す工場では、去年に続いて今年も55人の従業員を対象に3~8%の賃上げを予定している。「2年連続の賃上げで問題なし」と言いたいところだが、生産コストの高騰や、価格転嫁の不安など、悩みは絶えない。例えばメッキ加工で月に300万円以上かかる電気代は、補助金の終了などで来月以降150万円値上がりする見込み。更に原料の亜鉛や薬品も円安などで軒並み高騰。数百ある取引先と交渉をするため、理由を示した文書を作ったものの「2年連続の値上げを受け入れてもらえるか自信がない」と話す。実質賃金のマイナス基調が続く中、働く人全体の賃金を引き上げ、消費マインドを改善できるのか。春闘は景気浮揚にもつながる天王山を迎えている(TBS)。
 
 

●注目点

「中国・日本メーカー業績回復目指す・ホンダ新たなEV専用工場」
国南部・広東省で自動車メーカー・ホンダがEV(電気自動車)の専用工場を新たに作り、公開した。中国・広州市で26日、最新生産設備を導入した「広汽ホンダ」自動車工場の落成式が行われた。工場建設費は日本円で約730億円、年間12万台が生産可能。実現したのは物流要員ゼロ。プレス、溶接の工程で部品搬送を自動化し、AI(人工知能)による溶接システムを採用するなど、効率性の高い生産体制となっている。ホンダが中国で2カ所目となるEV専用工場の建設に踏み切った背景には、中国市場での深刻な販売不振があった。去年一年間に中国で販売されたホンダ車は、約85万台(前年比30.9%減)。9年ぶりに100万台を下回った。苦戦の理由は、ホンダで販売されている車の多くがエンジン車だったことにある。中国では現在、EV購入者に対し国から補助金が出ることなどから需要が急速に高まり、今年EVなど新エネルギー車の新車販売台数は、全体の半分近くまで拡大すると予測している。中国は未だ世界最大の自動車市場となっている中、中国メーカーは多様な車種のEVを販売し、売り上げを急激に伸している。一方、これまでエンジン車がメインだったホンダなど日本のメーカーは、中国市場で苦戦を強いられている。広汽ホンダ・森山克英総経理は「明確に市場に構造の変化がみられることが一番大きなポイントだと思っている。中国市場で言うと明確に政府の後押しもあって電動化がかなり加速化している」と述べた。ホンダは中国で2027年までに10車種のEVを投入し、2035年までに中国で販売する全新車をEVにして業績回復を目指す(TBS)。 
 
 

●3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ニトリホールディングス、第2位・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、第3位・味の素」
2025年3月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは34億2089万円で「ニトリホールディングス」が第1位に輝いた。具体的には、「ニトリ家事グッズ売上個数ランキング」「新生活が快適になるアイテム」等によるものであった。第2位は「MEGAドンキ・爆売れ!・人気のPB商品ランキング」などの報道で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」、第3位は「Cook Do従業員 イチ押し商品TOP10」などの報道で「味の素」、第4位は「“未来の街”・高輪ゲートウェイシティが誕生」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第5位は「ガスト・従業員が・本音ぶっちゃけ!私ならコレ食べる・No.1」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第6位は「森永製菓最新販売個数ランキング」などの報道で「森永製菓」、第7位は「期間限定・スカイツリーでメジャーを体験!」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「世界初の民間気象情報会社! ウェザーニューズに大潜入!」などの報道で「ウェザーニューズ」となった。第9位は「伊藤忠の女子寮が完成」などの報道で「伊藤忠商事」、第10位は「春の新生活を先取り!無印良品の福袋をプレゼント」などの報道で「良品計画」となった。
 

●3月の人物ランキング

「第1位・フジテレビ・清水賢治社長、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO、第3位・セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長」
第1位・フジテレビ・清水賢治社長172件(フジテレビ清水社長会見・人権コンプライアンスを強化など)、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO75件(イーロンマスク氏強烈な人員削減テスラに抗議など)、第3位・セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長68件(セブンに7兆円提案初会見・カナダ企業撤退はしないなど)、第4位・日産自動車・内田誠社長56件(動き出す日産の新体制・先行きはいばらの道?など)、第5位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長42件(最高値更新・備蓄米落札のJAが会見・今後のコメ価格は?など)、第6位・日本銀行・植田和男総裁38件(日銀・FRBが政策金利据え置きなど)、第7位・アリマンタシォンクシュタール・アレックスミラー社長17件(セブン&アイ・買収提案・カナダのコンビニ大手が初会見など)、第8位・日本郵政・増田寛也社長16件(日本郵政・建て直し急務など)、第9位・日本経団連・十倉雅和会長11件(経団連・十倉会長・賃上げ定着「確信に!」など)、第10位・ガーデン・川島賢社長10件(人気ラーメン店誕生秘話・赤字チェーン買収で大勝負など)。
 
 

●テレビの窓

「再生誓うフジテレビ・清水社長が会見」
連の問題をめぐりフジテレビが会見を行った(3/27)。また第三者委員会の会見後、フジテレビの清水社長が会見を行い、再発防止策など組織の再生・改革に向けて語った。フジテレビ・清水賢治社長は「今回指摘されたハラスメント事案に関しては、当社として必要な事実確認をした上で速やかに関係者に対する厳正な処分をする」と語り、さらに「今回の遠因となった企業風土にも躊躇なくメスを入れていかなければならない」と述べた。さらに「広告主が3月27日の人事刷新、きょうの委員会の報告・我々の出した改善策、これらを見てどのように判断されるか、そう簡単に(スポンサーの)判断が下るとは思っていない。どうやって改善策を実行していくか、この改善策は1つ1つ確実に実行していく。継続的にロードマップでお見せしているが、1回やったからではなく確実にやっていくことが必要で、それを開示していくこと、それで初めて皆さまから認めてもらえるものと思っている。それまでに収入が想定を超えて下がっていく場合は、赤字になるのを手をこまねいているのではなく、適切な対応策を考えながらやっていく」と語った(フジ)。 
 
 
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