テレビ報道に見る産業・経済月報(令和7年4月)
「日銀・追加利上げ見送り」
今月の特徴は1.日銀・追加利上げ見送り、2.トランプ関税の影響、3.2月の経常黒字・過去最大の4兆607億円、4.人手不足の動向、5.エネルギーの動向となった。
1.日銀・追加利上げ見送り
アメリカの関税政策で経済の先行きが不透明となる中、日本銀行は利上げを見送った。日銀は、5月1日の金融政策決定会合で、政策金利を現状の0.5%程度に据え置いた。植田総裁は「関税政策による下押し圧力で景気がいったん足踏みする」としたが、「次の利上げの時期は必ずしも遅れるわけではない」とも述べた。こうした発言を受けて市場では利上げが想定より遅れるという見方が広がり、円相場は今朝の1ドル143円付近から144円台後半まで円安が進んだ(5/1テレ朝)。
2.トランプ関税の影響
トランプ大統領は「日本の会社を含むアメリカ国内で自動車を生産するメーカーに対する3.75%分の関税負担を免除する」と突如、発表した。しかし、貿易赤字を根拠にアメリカ側が一貫して主張しているのが自動車の非関税障壁。トランプ政権は、日本の急速充電スポット「チャデモ」について「時代遅れの技術に補助金が出ている」と非難。高速道路に「チャデモ」の充電器しかないことが、アメリカ車の販売を妨げている非関税障壁だと問題視している(TBS)。
3.2月の経常黒字・過去最大の4兆607億円
財務省が発表した今年2月の国際収支によると、海外との貿易や投資で日本がどれだけ稼いだかを示す経常収支は4兆607億円の黒字となった。比較可能な1985年以降、過去最大の黒字幅。自動車などの輸出が増え、貿易収支で7129億円の黒字となったことや海外投資の利子や配当などを含む第一次所得収支の黒字幅が拡大したことが主な要因(TBS)。
4.人手不足の動向
人手不足を背景に、再来年春に施行される育成就労制度は、介護や建設、農業などの各分野で外国人材を受け入れ、原則3年で専門技能を身につけてもらうもの。このほど政府が運用指針をまとめ、人材が都市部に集中するのを防ぐため、東京や大阪、愛知など8都府県を大都市圏と定め、過疎地域を除いて一定程度、受け入れ枠を制限する一方、地方企業などにはより多くの枠を設けるとしている。また、外国人材の日本語教育について、基本的なレベルを習得していない人に、就労開始前に100時間以上の講習を行うなどし、費用は受け入れ側が負担する。さらに、多くの外国人が母国の送り出し機関などに支払っている手数料について、過度な負担にならないよう、日本で得る月給の2か月分を限度とする仕組みを設けることなどが盛り込まれた(NHK)。
5.エネルギーの動向
11年あまり再稼働の申請が行われている北海道電力・泊原発について原子力規制委員会は3号機の事実上の審査合格にあたる審査書案を了承した。北海道電力は泊原発の再稼働のため原子力規制委員会に審査申請をしていたが、敷地内を走る断層が活断層でないと証明する大掛かりな掘削調査が必要となるなど、審査が長期に及んでいた。審査申請から11年余りたった30日午前、3号機について事実上の“合格証”となる審査書案が規制委員会に了承された。北海道電力は2027年の早い時期に再稼働を目指す(日テレ)。
●注目点
「世界経済・大幅下方修正・トランプ関税今後の影響」
アメリカ・トランプ政権の一連の政策により、アメリカの関税は100年近く前の大恐慌以来の高い水準になる計算で、その影響の広がりが心配されている。また、トランプ関税の影響は長期化するとの試算もある。JETRO(日本貿易振興機構)のアジア経済研究所によると、トランプ政権が主張する相互関税が実施された場合、2027年には世界全体で1.3%も成長が押し下げられるとしている。日本にはそれほど直接的な影響が出ないという見立てに対し、皮肉にも最も打撃を受けそうなのがアメリカ。関税で物価が再び高くなり、GDPが5.2%も押し下げられると予想される他、中国、ベトナム、タイといったアジアの国々もマイナスの影響を受けると見られている。今後は為替や物価の急激な変動も予想され、世界経済全体が景気の急減速や景気後退を余儀なくされる可能性もある。トランプ政権は今後、日本、イギリス、韓国といった同盟国とは、アメリカへの投資の積み増しや企業の現地生産への切り替えなどを条件に、夏には2国間交渉の決着を目指す可能性もありそうだ。ただ、日米の間では関税措置の見直しをめぐってかなりの隔たりがあり、先行きは予断を許さない(NHK)。
●新潮流
「値上げラッシュの中、注目集めるプライベートブランド」
値上げの波が押し寄せる中、特に注目されているのがプライベートブランド商品。東武ストアなどが扱うプライベートブランドは「Vマーク」。東武ストアだけではなく、7つの会社で共同開発したプライベートブランド。こうした商品は1500品目もあり、この4月から4000品目以上値上げしているが、プライベートブランド商品はここ1~2年で段階的に値下がりしてきている。プライベートブランドで有名なところではイオンの「トップバリュ」、ドンキホーテの「情熱価格」などがある。いずれも自社で開発し、生産コストを低く抑えていることが安さの理由。メーカー商品とPB商品で晩ご飯を同じようなものを同じ量で買いそろえると、メーカー価格は3581円なのに対し、プライベートブランド商品「Vマーク」は2908円だった。実に700円ぐらいの差が出てくる。今年1月のデータによると、プライベートブランド商品の購入理由は「価格が安い」が72.2%、「メーカー商品に劣らない」が26.9%、「おいしい」が25.3%。東武ストア・浦野浩治郎商品本部長によれば価格は今後も安くなる可能性があるといい、プライベートブランドにはまだ伸びしろがあるといえそうだ(フジ)。
4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)
「第1位・オリエンタルランド、第2位・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、第3位・パルグループホールディングス」
2025年4月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは「オリエンタルランド」が56億6438万円で第1位に輝いた。具体的には、「ディズニー・ドナルドが主役のパレード・ダッフィー20周年」「東京ディズニーランドに“二足歩行ロボ”」「快挙・ミセス日本人初ディズニーテーマソング」等によるものであった。第2位は「ドンキホーテ・ヒット商品大賞2025を発表!」などの報道で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」、第3位は「忖度なし新商品ジャッジ・3COINSお悩み解決グッズ人気ランキング」などの報道で「パルグループホールディングス」、第4位は「東京メトロ有楽町線・東武線と直通へ」などの報道で「東京地下鉄」、第5位は「走れ挑戦の魂~F1 30年ぶりの世界一~」などの報道で「ホンダ」、第6位は「スカイツリーの台湾祭・夜市グルメ&屋台スイーツ」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「次世代型“エキュート秋葉原”公開」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第8位は「すし屋の未来体感・スシロー未来型万博店」などの報道で「FOOD & LIFE COMPANIES」となった。第9位は「餃子の王将 MAX鈴木vs元力士vs大食い芸人 三つ巴の爆食バトル!」などの報道で「王将フードサービス」、第10位は「セブン6年ぶり社長交代」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。
4月の人物ランキング
「第1位・フジテレビ・清水賢治社長、第2位・SBIホールディングス・北尾吉孝会長兼社長、第3位・フジメディアホールディングス・金光修社長」
第1位・フジテレビ・清水賢治社長205件(激震・揺れるフジテレビの主導権争いなど)、第2位・SBIホールディングス・北尾吉孝会長兼社長123件(“物言う株主”ダルトン・フジメディアHDに取締役候補を提案など)、第3位・フジメディアホールディングス・金光修社長86件(フジ親会社・金光社長退任へ・初の最終赤字見通しなど)、第4位・テスラ・イーロンマスクCEO80件(テスラ決算・70%減益など)、第5位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長43件(スーパーアキダイ・秋葉弘道社長へインタビューなど)、第6位・日本銀行・植田和男総裁39件(GM決算・日銀会合にも影響が?など)、第7位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長23件(ファストリ・純利益過去最高・柳井氏・トランプ関税批判など)、第8位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長14件(ソフトバンクグループ・オープンAIに追加出資など)、第9位・スーパーイズミ・五味衛社長14件(備蓄米どこへ?家庭内買いだめもなど)、第10位・オープンAI・サムアルトマンCEO11件(オープンAI幹部を単独取材・日本市場・今後の戦略など)。
●テレビの窓
「上海モーターショーが開幕」
上海モーターショーが開幕した。26の国や地域から1000社近いメーカーが出展した。5分で充電できる最新モデルなどが話題となっている。中国ではEVシフトが加速していて、新エネルギー車の販売台数が去年1年間で約1300万台となった。これは自動車販売全体の40%超に相当する。そんな中、EVユーザーの不満の1つだった長時間充電に変化が生じている。BYDの新しいモデルでは5分の充電で約400キロ走行できる。これはガソリン給油なみのスピードという。さらにEV用バッテリーで世界トップシェアを持つ寧徳時代新能源科技(CATL)・高CTOは「われわれは超長距離走行と急速充電という究極のパフォーマンスでこの業界を新たな高みへと導く」とし、5分の充電で500キロ以上が走行可能なバッテリーを発表した。一方、EVで出遅れている日本のメーカーも巻き返しを図る。トヨタ自動車の新型EVはスマートフォンのような使い勝手の良さを実現。本田技研工業・五十嵐執行役常務兼中国本部長は「DeepSeekの技術を適用している」とプレゼンしたが、ホンダは中国の新興企業「DeepSeek」のAI技術を導入し、車内温度やBGMなど、ユーザーの好みにあった提案が可能になるとしている。アメリカの関税政策などで不透明感が増す中、各社がしのぎを削る中国市場でどのような戦略をとるのかが注目される(TBS)。
JCC株式会社