日本の「地域情報化」はなぜ進まないか、どうしたら進むのか
〜その2〜

国際大学教授 宮尾尊弘

 90年代に現われた大変化

 情報通信革命が90年代に入って本格的になるにつれて、上で指摘した要因も大き く変わってきた。
  1. 地域情報化を推進する政策主体が、中央省庁から地方自治体に変わり、それ だけ地域のニーズをくみ上げやすくなった。この背景には地方分権の流れがあり、そ のもとで地域間の競争が激しくなったため、地域が情報化戦略を活性化策の主要な柱 に採用したことがある。

  2. 地域やコミュニティのニーズも多種多様になってきた。地域産業の再活性化 問題も、生活にかかわる環境問題も、コミュニティの高齢化問題や教育問題も、どれ を取っても従来の縦割りの発想やアプローチでは解決できないほど複雑になってきた 。地域のすべての構成員が情報と知恵を出し、ネットワークを組んで解決を模索する ことが必要になっているのである。

  3. 地域レベルで人が育ってきた。特に、コンピュータを扱える若者が地域情報 化のために積極的に関与するようになった。NPOやNGOの活動に対する一般の関心が高 まっていることも追風になっている。

  4. 何といってもインターネットのように分散型で双方向性を持つ情報ネットワ ークシステムが普及してきたことが大きい。これが多様で規模の小さい地域やコミュ ニティのニーズによりマッチし、地域による情報発信を可能にした。これこそまさに 地域にとって革命的な変化といえよう。

  5. 情報インフラの整備も進み、通信コストもかなり下がってきたため、地方の ハンデがそれだけ小さくなり、地域が情報化を進める上での障害が少なくなってきた。
 しかし、このような変化にもかかわらず、地域情報化の進展具合はこれまでのとこ ろあまり芳ばしくない。まだ以上のような要因の変化が、全国レベルで地域情報化の うねりを生み出すほどの力をもってきていないようにみえる。


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