日本の「地域情報化」はなぜ進まないか、どうしたら進むのか
〜その3〜

国際大学教授 宮尾尊弘

 地域情報化の現状と展望

 いまのところ、日本の地域情報化で注目されている動きは以下のようなケースに限 られる。

 第1は、大分県や高知県のように、どちらかというと民間レベルでは情報化が遅れ ている地域が、知事や県庁の主導で情報化を進めているケース

 第2は、諏訪や浜松のように大都市圏外で、例外的に情報関連の産業や人材が集積 している地域で民間主導の情報化が進められているケース

 第3は、富山県山田村や長野県伊那市のように、伝統的な農村型の人間関係や有線 放送網を使って、高度な情報ネットワーク化を図ろうとしているケース

 つまり、いまのところ大都市圏ではなく、いわば「周辺地域」から地域情報化の動 きが起こっているといえる。これが今後、より大きな都市も含んだ日本全体の大きな 流れになっていくためには何が必要なのだろうか。

 その答えは、上で指摘した5つの変化をさらに加速するような努力を積み重ねるこ と以外にない。特に、地方情報化を推進する主体を自治体だけでなく、住民や企業な ど地域の構成員全員に広げ、お互いにネットワーク関係を持って地域の問題解決にあ たり、その過程で情報ネットワーク化をさらに進めていくべきである。そのなかで若 い世代を巻き込み、各地域の事情を理解すると同時に情報化技術にも長けた人材を育 てる必要がある。

 さらに、コミュニティの誰もが使いやすい情報通信端末のあり方や、誰もがいつで も情報ネットワークにアクセスできるようなインフラや通信サービスのあり方につい ても、各地域ごとにもっと工夫する余地がある。これらの点に関して各地域がお互い の工夫や経験を持ちより情報交換する全国的なプラットホームも必要であろう(実は 国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの公文俊平教授と私が進めてい る、「CAN (コミュニティ・エリア・ネットワーク)フォーラム」がまさにそれを目 指すものである)。
 いずれにせよ、ここで各地域が本気で情報化に取組み、それを日本全体の流れにし ていくきっかけをつかむのか、それとも再び80年代のように、大企業主導の情報化 が都市地域を再編することで、地域主体の動きを押しつぶしてしまうのか、日本は重 要な分岐点にいるといえよう。


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