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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年4月)

「東京都・大阪府・京都府・兵庫県に3度目の緊急事態宣言発出」「菅総理大臣・2030年までに温室効果ガス46%削減表明」

今月の特徴は1.3度目の緊急事態宣言発出、2.菅総理大臣・2030年までに温室効果ガス46%削減表明、3.日銀の動向、4.感染爆発インド・日系企業にも打撃、5.原発再稼働となった。

                                                                                                

1.3度目の緊急事態宣言発出

25日、東京都・大阪府・京都府・兵庫県に3度目となる緊急事態宣言が発出された。今回は人流を抑え込むことを目的に5月11日まで、広範囲にわたって休業要請が出されている。酒類やカラオケ設備を提供する飲食店のほか、床面積が1000平方メートルを超える施設に休業を要請。百貨店も生活必需品以外のフロアは休業を強いられている。松坂屋上野店では4月25日から食料品など一部売り場を除き臨時休業となった他、21日から開催されていた「初夏の北海道物産展」も中止となった。個人消費への影響は1度目の時が4.4兆円減、2度目は0.9兆円減、3度目は0.5兆円減と計算されている。第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストは「今回の損失が少ないのは期間が短いから。宣言が長引くと当然損失は増える。できるだけ短くなるような行動をすべき」と指摘した(日テレ)。

 

2.菅総理大臣・2030年までに温室効果ガス46%削減表明

米国・バイデン大統領が主催した気候変動サミットで菅総理は2030年度の温室効果ガスの削減目標を「46%削減する」と表明した。ただ、実現は簡単ではなく、あらゆる対策を総動員しなければならない。太陽光などの再生可能エネルギーの普及、原子力発電所の位置づけ、脱炭素の取り組みも必要となる。こうした中、ホンダが2040年に販売するすべての車を電気自動車、燃料電池車にすると発表し、三部敏宏社長は「全力で取り組んでいきたい」と意気込みを見せた(NHK)。

 

3.日銀の動向

日銀は金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持することと、新型コロナウイルスの影響を受けた企業への資金繰り支援策を継続することを決めた。2日目の金融政策決定会合で日銀は、短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導する大規模な金融緩和政策の継続を決定した。ETF(上場投資信託)は年間12兆円を上限に買い入れを継続していく。日銀は、2021年度の物価上昇率見通しを0.1%に引き下げた。一方で日銀・黒田総裁は「(物価上昇率)2%の実現は時間がかかっていて残念」と述べ、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標は8年経っても実現できていない状況となっている(テレ東)。

 

4.感染爆発インド・日系企業にも打撃

インドでは変異ウイルスが流行し、新規感染者は9日連続で30万人を超え、死者数も過去最多となっている。現地の日系企業にも影響が出ており、インドの自動車市場でトップのシェアを誇るスズキは、インド国内の3工場を一時停止する(5月1日~9日)。ホンダも二輪車を生産する4工場(5月1日~15日)を、パナソニックは白物家電の生産拠点(4月27日~5月3日)をそれぞれ一時停止する。インドに進出した企業はこの10年で倍増したが、現地の日本企業を支援するジェトロ・村橋靖之所長は、日本経済に与える影響は限定的だと指摘している(テレ東)。

 

5原発再稼働

梶山経済産業大臣は28日、運転開始から40年を超えた関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1、2号機の再稼働について福井県・杉本達治知事から同意すると伝達されたことを明らかにした。これを受けて関西電力は近く工程を公表し準備ができた原発から燃料装填など具体的な作業に着手する。早ければ5月中にも再稼働する可能性がある(テレ東)。国はエネルギーの安定供給と温暖化対策には原発は必要だとしているが、原発事故の教訓は忘れてはならないだろう(NHK)。

 

 

●新潮流

「政府・ワクチン大規模接種へ」

総理は高齢者の接種を7月末までに終えることを目指すとしている。ワクチン接種を国として後押しするとして、政府は1日あたり1万人規模で接種できる会場を、東京と大阪に開設する方針を固めた。東京では5月24日から大手町にある政府合同庁舎に新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターを開設する。自衛隊の医官、看護官らを中心に運営し、1日1万人規模での接種を目指す。大手町のセンターで接種の対象となるのは東京、神奈川、埼玉、千葉の高齢者。会場の密をいかに回避するかや、高齢者への配慮、接種人材の確保などが課題として挙げられている。大阪の大規模接種会場についても防衛省、自衛隊が協力するという。大規模接種センターで使用するワクチンについては、すでにそれぞれの自治体がファイザー社製を使用しているため、現場での混乱を避けるため、5月21日に承認される見通しのモデルナ社製を使用する方針。政府は2つの大規模接種センターを有効活用することで接種を速やかに進めたい考え。政府はこれまでワクチン接種の実務を、地元の自治体に委ねてきたが、首都圏や関西圏の急激な感染拡大を受け、国が直接接種に関わる方針を打ち出した形(TBS)。

 

 

●注目点

「菅総理・2030年までに温室効果ガス46%削減目指すと表明」

候変動サミットで菅総理大臣は2030年までに温室効果ガスの46%削減を目指すと表明した。米国は2030年までに50%から52%の削減、カナダは40%から45%削減、EUは55%削減を打ち出した。これまで日本の目標が2030年までに26%削減だったことを考えると大幅な変更である。これはひとえに菅総理の政治判断によるところが大きい。パリ協定で合意された2050年実質ゼロだが、これによって気温の上昇を産業革命前の1.5度までにとどめるという目標を達成することが計算上、可能となる。この長期目標との整合性が今回のサミットで取られた形である。政府の温暖化対策としては2020年年末に自動車の電動化や水素の大量導入などグリーン成長戦略というべき政策が打ち出されている。急がれるのが再生可能エネルギーの導入で、中でも太陽光発電の大量導入である。洋上風力発電より建設や導入に時間がかからない。温暖化対策推進法改正案で自治体が導入促進区域を指定し、新たな補助金で住宅用太陽光+電気自動車などを後押しし、新築住宅などに太陽光設置義務化を検討する動きもある。再生可能エネルギーを大量に導入してもその分、化石燃料の使用を減らさないとCO2は減らないため2030年46%削減の実現にはエネルギー基本計画の全体の見直しが不可欠でコスト負担の議論も避けられない(NHK)。 

 

 

4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・FOOD&LIFE COMPANIES、第2位・セブン&アイ・ホールディングス、第3位・くら寿司」

4月度におけるテレビ露出CM価値換算ランキングでは「FOOD&LIFE COMPANIES」が45億3100万円で第1位に輝いた。「スシロー」のタイ1号店出店の話題や社名変更、さらにはコロナ禍での過去最高の売上げの更新などの話題が大きく寄与した結果だった。第2位は「コンビニ商品・ロボットが配送」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第3位は「密着!くら寿司大改革・客の心を魅了する仕掛け」などの報道で「くら寿司」、第4位は「コロナ禍・ファミレス進化・ガスト・1人専用BOX席・お持ち帰り専門店」などの報道で「すかいらーくホールディングス」、第5位は「ローソン・中国で店舗3倍=1万店に」などの報道で「ローソン」、第6位は「激安&大容量の業務スーパー・回数を減らして“まとめ買い”」などの報道で「神戸物産」、第7位は「無印良品・ペットボトルをアルミ缶に」などの報道で「良品計画」、第8位は「伊藤忠・“SDGsのお店”オープン」などの報道で「伊藤忠商事」となった。第9位は「330円なのに高見え…梅沢も仰天!新生活をハッピーに!キッチン&ランドリー」などの報道で「パルグループホールディングス」、第10位は「国内初のeスポーツジム・メトロ・新事業で収益狙う」などの報道で「東京地下鉄」となった。

 

 

4月の人物ランキング

「第1位・テスラ・イーロンマスクCEO、第2位・AMAZON・ジェフベゾスCEO、第3位・アキダイ・秋葉弘道社長」

第1位・テスラ・イーロンマスクCEO29件(世界長者番付発表・コロナ禍でも富豪急増など)、第2位・AMAZON・ジェフベゾスCEO29件(宇宙・世界2位の富豪が1位を挑発・背景にNASAの“資金不足”など)、第3位・アキダイ・秋葉弘道社長24件(総額表示・義務化で対応追われるなど)、第4位・東京電力・小早川智明社長19件(処理水・濃度薄め・海洋放出へなど)、第5位・ソフトバンクグループ・孫正義社長18件(ソフトバンクグループ・コロナ禍もどん底からの急回復のワケなど)、第6位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長13件(家族殺到!“ユニクロ公園”アパレル世界一を支えた男など)、第7位・トヨタ自動車・豊田章男社長13件(“東京モーターショー中止へ”日本自動車工業会・豊田章男会長・方針明らかになど)、第8位・楽天グループ・三木谷浩史社長9件(楽天グループ・三木谷社長・テンセントからの出資問題ないなど)、第9位・ホンダ・三部敏宏社長7件(ホンダ“2040年には新車すべてEV・FCV”など)、第10位・アサヒビール・塩澤賢一社長6件(売れすぎて販売休止…話題の“生ジョッキ缶”など)。

 

 

●テレビの窓

「上海モーターショー開幕・脱炭素の流れ加速」

界最大の自動車市場の中国で上海モーターショーが始まった。EV(電気自動車)の普及が進んでいる中国では大手IT企業が新たに参入を表明するなど、EVを巡る競争がさらに激しくなっていて、各社が電動化戦略をアピールしている。各国の自動車関連企業およそ1000社が参加し、去年の販売台数がEV分野で中国でトップとなった中国の自動車メーカーは新たに小型のオープンカーなどを披露した。日系メーカーもトヨタ自動車が、EVのSUV多目的スポーツ車のコンセプトカーを初めて披露し、中国市場では2025年までにEVやハイブリッド車などを含む電動車を20車種以上導入する方針を示すなど、各社が電動化戦略をアピールした。EV市場への参入を表明している中国のネット検索最大手のバイドゥが初めて単独で出展した他、通信機器大手のファーウェイも自動運転システムなどの新商品を発表した。世界最大の自動車市場の中国では、政府の後押しを受けてEVなどの新エネルギー車の普及が進んでいて、IT業界など他の業種から新たに参入する動きも出ていて競争は一層激しくなっている(NHK)。

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