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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年3月)

「日銀金融政策決定会合・マイナス金利解除」「記録的円安」

今月の特徴は1.日銀金融政策決定会合・マイナス金利解除、2.春闘の動き、3.2024年問題の動向、4.価格転嫁の動向、5.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀金融政策決定会合・マイナス金利解除

日銀・植田総裁は日銀金融政策決定会合後の会見で「2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでの「イールドカーブコントロール」および「マイナス金利政策」といった大規模な金融緩和政策はその役割を果たしたと考えている」と述べ、マイナス金利の解除を発表した(TBS)。バブル崩壊後、長らく経済が停滞して「失われた30年」とも言われてきた日本。物価の下落が続くデフレに陥って物価も賃金も上がらない経済が長く続いてきたが、今回の日銀の政策転換はこの流れが変わったというメッセージを示した形になる(NHK)。

 

2.春闘の動き

今年の賃上げを決める春闘は13日、経営側からの集中回答日を迎え、大企業から月額1万円を超える満額回答が相次いだ。春闘の相場をリードする自動車業界ではトヨタ自動車が労働組合の要求に4年連続の満額回答をした。職種などで異なるが、最大で月2万8440円の賃上げとなる。日産自動車も月1万8000円アップの満額回答。また、電機大手では月1万3000円のベア=ベースアップの要求に対し、パナソニック日立東芝三菱電機などが満額回答した。さらに、鉄鋼大手の日本製鉄はベア月3万円の要求に対して月3万5000円と満額を超える回答を出している(テレ東)。

 

3.2024年問題の動向

ネット通販大手・アマゾンは、今月29日以降送料が無料となる基準を引き上げる。Amazonプライムなどの会員は引き続き送料無料。またZOZOTOWNも、4月から送料を値上げする。物流業界でドライバーが不足する2024年問題が、生活に影響を及ぼし始めている(TBS)。労働時間が短くなるため、モノが運べなくなる可能性もある。輸送能力の不足について2024年度は14%不足、2030年度は34%不足との試算もある(フジ)。

 

4.価格転嫁の動向

齋藤健経済産業大臣は日立製作所パナソニックなど大手電機メーカーなどで作る業界団体と会談。トップらに対し、下請企業のコストが上がった分、取り引き価格も上げる価格転嫁を求めた(TBS)。

 

5.エネルギーの動向

資源エネルギー庁・村瀬長官が新潟県・花角知事と面会し、東京電力ホールディングス・柏崎刈羽原子力発電所について、再稼働を目指す政府の方針を説明した。国が再び前面に出て再稼働を受け入れやすい環境を整えていく(テレ東)。円安によるエネルギー価格の高騰や物価高が続く中、政府はガソリンや灯油など、燃料油の価格を抑えるための補助金について4月末までの期限を延長し、5月以降も継続する方針。これは物価高や円安に加え、中東情勢の不安定化による原油価格の高騰を踏まえた判断(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「記録的な円安・日銀の利上げはいつか?」

7日の東京外国為替市場の円相場は一時、2022年10月につけた1ドル151円94銭を下回り、1ドル152円台目前まで円安が進んだ。過去最大の円買い介入が行われた水準を超えて、円安が進んだ。財務省と金融庁、日銀は、緊急会合を開き、為替の動向などについて協議し、「過度な変動は望ましくない」との認識を確認した。外国為替市場では、「3者会合」の情報が伝わると、政府による為替介入への警戒感から円が買われ、1ドル151円台前半まで円高が進んだ(フジ)。日銀は「イールドカーブコントロール」の枠組みと「マイナス金利」を解除した後も、緩和的な金融環境を継続する。市場は(日銀の)利上げをほとんど織り込んでおらず、金利の先行きを低く見過ぎている。日銀は公式には認めていないが、意図的に「ビハインザカーブ」という姿勢を取ってきており、副作用として資産価格バブルのリスクがある。日本で資産価格バブルが生じたのは1980年代後半で、利上げ期待の織り込みなしも80年代に類似している状況。今後企業収益や日本経済の先行きへの期待がさらに強まる場合には資産バブルが発生するリスクも念頭に置く必要がある。今後、円安の輸出促進効果は縮小していくことになる。円安が続くと今度は日本経済にとってマイナス面が目立っていくようになり、交易条件悪化が賃金を押し下げてしまう。円安が続いた場合、実質雇用者所得がこれから増加に転じようとしているときに水を差してしまうことも懸念される。いつから日銀が利上げを始めるかといえば、実質賃金の上昇率がプラスになるのを確認し、物価安定目標の実現に確信を強めたところで今年の10月ぐらいには開始するのではないかとみられる(テレ東)。

 

 

●注目点

「紅麹原料含むサプリによる健康被害・窮地に立たされる小林製薬」

林製薬の紅麹原料を含むサプリメントで健康被害が相次いでいる問題。小林製薬が腎疾患の健康被害を初めて把握したのは1月15日。2か月後の3月22日、小林製薬の会見が行われ「紅麹コレステヘルプ」などの3製品について自主回収を発表、使用中止を呼びかけた。5人が死亡し、入院は114人、相談件数は約1万5000件にのぼっている。被害は台湾でも起きた。台湾当局によると、健康被害を訴えた人の数は31日午後時点で6人で、この中には腎不全と診断された人も含まれている。台湾では小林製薬が自主回収している製品は販売されていないが、小林製薬から輸入した紅麹原料を使いメーカーが独自に製造したカプセルなどが販売されていたという。腎不全と診断された人はこうしたカプセルを服用したという。台湾当局が現在、紅麹関連商品と健康被害の因果関係を調査中。一方、日本国内で紅麹原料を使用している企業は小林製薬からの直卸しで52社、仕入れ企業で173社(厚生労働省発表)。厚生労働省と消費者庁は紅麹を使用した製品に由来する健康被害について、電話相談窓口を設置した。政府は今後機能性表示食品について、国の関与のあり方など、5月末までに取りまとめるよう指示している(テレ朝)。帝国データバンクによると厚労省が今月28日に公表した小林製薬の紅麹原料が供給された企業のリストから取引先を調査した結果、一次加工企業で食品飲料メーカーは1778社に上り、二次仕入れ販売を含めると最大で3万3000社を超える企業に製品が流通した可能性があるとしている。帝国データバンクは、「紅麹は原材料以外にも着色料で使用されることも多く、流通先の特定は難航する可能性が高い。事態の収拾まで対応の長期化が想定される」としている(TBS)。小林製薬は大阪市内の工場で2023年4月~10月にかけて製造した紅麹原料から「プベルル酸」と見られる物質が調査で確認されたとしていて、この物質が原因となった疑いがあるとして調査を進めている(NHK)。 

 

 

3月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東宝、第2位・すかいらーくホールディングス、第3位・西日本旅客鉄道」

2024年3月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは47億4047万円で「東宝」が第1位となった。具体的には、「山崎貴監督『ゴジラ-1.0』アカデミー賞『視覚効果賞』」「宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』アカデミー賞『長編アニメ賞』」等によるものであった。第2位は「ガストvs超一流料理人」等の報道で、「すかいらーくホールディングス」となった。第3位は「北陸新幹線延伸フィーバー」などの報道で「西日本旅客鉄道」。第4位は「羽鳥慎一がJR品川駅構内のエキュート品川を調査する」などの報道で、「東日本旅客鉄道」となった。第5位は「東京お台場に新名所が誕生!世界初テーマパークの舞台裏」などの報道で「三井不動産」、第6位は「アマゾン・ふるさと納税参入検討」などの報道で「アマゾンジャパン」、第7位は「“17年ぶり”キリンの新戦略・日本の風物詩を守るビール」などの報道で「キリンホールディングス」、第8位は「無印良品・生活を変える!新商品・超便利グッズ」などの報道で、「良品計画」となった。第9位は「ユニクロ&カプコンがコラボ」などの報道で「ファーストリテイリング」、第10位は「新生活直前SP・世界一の企業・ニトリvsクイズ王・伊沢」などの報道で「ニトリホールディングス」となった。

 

 

3月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・小林製薬・小林章浩社長、第3位・スペースワン・豊田正和社長」

第1位・日本銀行・植田和男総裁198件(日銀・マイナス金利解除・1月も活発議論など)、第2位・小林製薬・小林章浩社長124件(小林製薬・サプリで健康被害かなど)、第3位・スペースワン・豊田正和社長43件(失敗を糧に宇宙目指すワケなど)、第4位・日本経団連・十倉雅和会長30件(大企業・大幅賃上げ相次ぐ・中小は?など)、第5位・日産自動車・内田誠社長20件(トヨタなど半導体新組織・スズキ参加へ・経済産業省は支援検討など)、第6位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長19件(暖冬・野菜価格に影響・品薄続き・値上がりもなど)、第7位・JR東海・丹羽俊介社長16件(JR東海・リニア新幹線2027年開業を断念など)、第8位・ホンダ・三部敏宏社長12件(日産とホンダ・EV開発で協業検討など)、第9位・LINEヤフー・出澤剛社長12件(LINEヤフー幹部・報酬一部返上など)、第10位・ネジロウ・道脇裕社長7件(新型コロナ対策の希望!発想力で難題を続々解決など)。

 

 

●テレビの窓

「日本車王国タイで中国EV旋風」

7日タイ・バンコク近郊で開幕した東南アジア最大級の自動車の祭典「バンコク国際モーターショー」。中国最大手の電気自動車メーカー「BYD」のブースでは「私たちがタイと協力することで、タイの未来はより環境に優しく、技術はより発展することになるでしょう」とのプレゼンが行われていた。首都バンコクではあちらこちらで中国メーカーのEV車が目に入る。タイで爆発的に広まったきっかけは政府のEV優遇策。これは脱炭素社会を目指し、EVを普及させるため、タイ政府が補助金の支給などを始めたもの。これに目をつけたのが開発で一歩先を行く中国メーカー。優遇策をフル活用し、手頃な価格のEVを大量投入した。タイの去年1年間のバッテリーEVの登録台数は前年比8倍のおよそ7万6000台に急増したが、うちおよそ8割のシェアを中国メーカーが占めている。その結果、タイで9割近かった日本車のシェアは中国勢に少しずつ奪われ始めている。一方、日本のいすゞ自動車トヨタは今回のモーターショーで、タイで人気があるピックアップトラックのEVモデルを披露した。更にハイブリッド車や燃料電池車も備えたフルラインナップで中国勢に向き合う構え。一部の中国メーカーは今年からタイ国内でEVの生産に乗り出すが、充電拠点の整備など、課題も多く残っている(TBS)。

 

JCC株式会社