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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年10月)

「日本のGDP世界4位に」「日本銀行大規模金融緩和策を再修正・長期金利1%メドに拡大」

今月の特徴は、1.日銀・金融政策決定会合、2.日本のGDP世界第4位に、3.人手不足の影響、4.緊迫する中東情勢となった。

 

1.日銀・金融政策決定会合

日銀は金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を再び修正することを決めた。日銀は10年余り続く大規模金融緩和策の柱であるマイナス金利は維持した上で、長期金利の上限をこれまでの「0.5%程度」から「1%をめど」に引き上げた。長期金利が1%に迫る中で大量の国債の買い溜めによって市場の健全性をゆがめるとの指摘に配慮したとみられる。市場では既に日銀の政策修正は織り込み済との声も出ている。円相場は一時150円台を超え、日銀の発表後は円安が続いた(テレ朝)。

 

2.日本のGDP世界第4位に

今年、55年ぶりに日本の名目GDPは、人口が日本の3分の2程度のドイツに抜かれ第4位に転落する見通しとなった。各国のGDPをドルに変換して比較しているため、円安で実質的に目減りした形。更に、ドイツでの急激なインフレも影響した。ドイツのインフレ率は今年初めには8%を超えるなど日本よりも大きく、物価上昇がドイツの名目GDPをかさ上げしたとみられる。その他、ドイツでは日本を上回るペースで経済成長や賃上げが進んでいたことも要因。西村大臣は「日本の成長力の低下は事実だ」と指摘。政府が促す企業の生産性向上や持続的な賃上げがどこまで実現できるかが今後の日本の経済の行方を左右しそうである(TBS)。

 

3.人手不足の影響

愛媛・松山市で親しまれてきた観光列車“坊ちゃん列車”が人手不足のため当面の間運休することになった。2001年から観光列車「坊ちゃん列車」として運行が始まった。運休について、運行する伊予鉄グループは「人手不足で通勤、通学の生活路線の減便まで追い込まれている。まずは生活路線を守ることが使命」としている。一方、訪問介護の現場でも、人手不足が深刻化してきており、厚生労働省はこうした状況を解消するため、新たな介護サービスとして、地域の高齢者が住み慣れた環境で介護を受けられるよう、地域密着型とし、質を維持するため、利用者に定員を設け、29人以下とするとしている。1つの事業所が訪問と通所の両方のサービスを担うことで、利用者の体の状況やニーズなどに関する情報がスムーズに共有されることが期待されている(NHK)。JR東海・東海道新幹線の「のぞみ」と「ひかり」で行われてきた車内ワゴン販売が、31日の最終列車をもって終了した。コロナ前の2018年時点で売り上げが2008年度から半減となっていた。パーサーの人手不足などもあり、車内ワゴン販売終了に踏み切ったという(日テレ)。

 

4.緊迫する中東情勢

イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が激化する中、イスラエルに進出している日本企業87社が退避を完了させた。西村経産相は「引き続き在留邦人の安全確保に万全を期していきたい」と述べた。また、イスラエル・ハマスの軍事衝突を受け、原油価格が上昇基調にあるとして「物価高を含む日本経済への影響を緊張感をもって注視する」と懸念を示した一方で、エネルギー主要消費国などと連携し、産油国に増産などを働きかけていきたいとしている(日テレ)。

 

 

●新潮流

「イスラエル情勢・日本企業への影響は」

間の調査会社「帝国データバンク」によると、イスラエルには今年9月時点で92社の日本企業が進出している。最も多いのがテルアビブ地区で39社となっている。激しい衝突があったガザ地区周辺への進出は確認されていない。進出企業の安全が懸念される中、西村経済産業大臣は17日「引き続き、わが国としては在留邦人の安全確保に全力を尽くしていきたい」と述べた。イスラエルは“中東のシリコンバレー”とも呼ばれて関心が高まっていたが、先行きが不透明になっている。名古屋市守山区に本社を置く和食チェーンを展開する「サガミホールディングス」は、人工肉などの開発技術に強みのあるイスラエルのスタートアップ企業との協業を目指しており、今月22日から27日までイスラエルへ社員3人が渡航して現地の企業を訪問する予定だったが、情勢の悪化を受けて渡航の延期が決まり、当面はメールやオンライン会議を通じて協議を進めることになったという。イスラエルとは日本政府も投資環境を整備して企業の進出を後押ししてきたが、しばらくは投資を控える動きは避けられない見通しとなっている(NHK)。

 

 

●注目点

「三菱自動車が“中国撤退”世界最大“EV市場”」

菱自動車は、24日の取締役会で中国市場から撤退する方針を正式に決定した。関係者の間では、中国市場での日本の自動車メーカーの先行きに不安が高まっている。上海の自動車販売店では以前は三菱自動車のロゴと合弁会社のパートナーである中国メーカーのロゴが並んでいたが、販売不振から工場が生産をストップした今年3月、三菱のロゴが外されたという。一方、6年前から中国で三菱重工業に部品を納入してきた日系の部品メーカーは、今年7月の時点で部品の注文はストップしていたといい、今回の撤退という事態を重く受け止めている。中国ではEV(電気自動車)の販売が伸びる一方、日本の自動車メーカーは軒並み販売台数を減らし、苦戦を強いられている。その一方で中国政府が補助金を出すなどして、EV普及に力を入れてきた結果、EVメーカーやEVをシェアする会社が乱立した。このため、採算が合わず撤退した事業者が車をそのまま放置し、各地で「EVの墓場」と化している。激しさを増す中国のEV競争の中で「日本の自動車メーカーの巻き返しはそう簡単ではない」とする日系の自動車部品メーカー「RTC」清水利浩社長は、「EV自体は中国も日本も変わらないと思うが、中国の場合は安い車から高級車まで色々なバラエティーがあり選択肢も多い」などとその理由を述べた(TBS)。

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・FOOD & LIFE COMPANIES、第3位・日本テレビホールディングス」

2023年10月度のテレビ報道CM価値換算ランキングで、第1位に輝いたのは38億520万円で「オリエンタルランド」となった。具体的には、「ディズニー・ハロウィーン2023・徹底攻略」「ディズニーシー新エリア・来年6月6日にオープン」「TDL・モバイルオーダー導入」等によるものであった。第2位は「スシロー×超一流寿司職人!」等の報道で、「FOOD & LIFE COMPANIES」となった。第3位は「日本テレビ開局70年特別番組・THE MIYSTERY DAY」などの報道で「日本テレビホールディングス」。第4位は「秋のドンキホーテで何を買う?」などの報道で、「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」となった。第5位は「ファーストリテイリング決算・売り上げ・利益過去最高」などの報道で「ファーストリテイリング」、第6位は「ゴジラ生誕70周年記念『ゴジラ-1.0』」などの報道で「東宝」、第7位は「映画『おまえの罪を自白しろ』中島健人×堤真一SP対談」などの報道で「松竹」、第8位は「晴海フラッグ賃貸エリア・初公開」などの報道で、「三井不動産」となった。第9位は「寺島しのぶ・初の歌舞伎座・“女人禁制”の壁乗り越え」などの報道で「歌舞伎座」、第10位は「ホンダ・3年後に無人タクシー」などの報道で「ホンダ」となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・ジャニーズ事務所・東山紀之社長、第2位・日本銀行・植田和男総裁、第3位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長」

第1位・ジャニーズ事務所・東山紀之社長356件(ジャニーズ事務所が会見・ジャニーズ事務所を解体など)、第2位・日本銀行・植田和男総裁73件(日銀・金融政策決定会合へ・円安・長期金利上昇での対応はなど)、第3位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長43件(政府支援策の効果と課題・アキダイ社長が厚労相に直談判など)、第4位・経済同友会・新浪剛史代表幹事41件(注目会見・経済同友会・ジャニーズ対応は?)、第5位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長24件(競争・EV戦略・日本メーカー強化へ・次世代モビリティ続々など)、第6位・ホンダ・三部敏宏社長21件(ホンダ・3年後に無人タクシーなど)、第7位・スペースX・イーロンマスクCEO11件(スペースX・EU衛星打ち上げ契約獲得か?など)、第8位・経団連・十倉雅和会長9件(経団連トップ・社会全体で反省をなど)、第9位・オニゴー・梅下直也社長8件(新たな収益モデルを模索・企業向けマーケティングなど)、第10位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長8件(ファーストリテイリング決算・過去最高益など)。

 

 

●テレビの窓

「開幕・ジャパンモビリティショー・空飛ぶクルマ・EV・自動運転」

5日、ジャパンモビリティショーがメディアに公開された。空飛ぶクルマやロボットなど、これまでのモーターショーになかった未来の乗り物が数多く展示された。一方、世界各社がEVで激戦を繰り広げる中、自動車世界販売1位のトヨタが今回初めて公開したのが、高級車ブランド「レクサス」の次世代EV。2026年に投入されるこのEVは、1回の充電で航続距離は1000kmとなる。目玉はクルマの知能化。AIにより、運転席のカメラでドライバーが指さす方向を検知し、音声で場所を尋ねると、GPSで認識してAIが説明する。自動車産業調査会社のマークラインズによると、EVの世界販売台数は米国・テスラや中国・BYDが大きくリードしている。トヨタは2026年までに150万台の販売を目指し、反転攻勢を急いでいる。一方、今回自動運転をアピールしたのがホンダ。2026年に都内で「自動運転タクシー」をスタートする。レベル4と呼ばれる特定条件のもとにおける完全な自動運転が可能な車両であるため、運転席はない。EVシフトに自動運転、クルマは100年に一度と言われる大転換期を迎えている。トヨタの豊田会長はTBSの単独インタビューに応じ、「勝たなきゃいけない、でも何をもって勝つか。単に販売台数で勝つということも一つの世論だと思う。我々日本のメーカーは世界の道で移動手段である自動車でいろんなものを運んでいる。情報も運ぶし、幸せも運んでいる」と述べた。世界をリードしてきた日本メーカーには生き残りをかけ、次の戦略が求められている(TBS)。

 

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