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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年12月)

「オミクロン株流行・先が読めない景気」「日銀・大規模金融緩和策を維持」

今月の特徴は1.オミクロン株流行・先が読めない景気状況、2.日銀・大規模金融緩和策を維持、3.新たな脅威・オミクロン株とは、4.新薬・ワクチン接種の動向、5.エネルギーの動向となった。   

 

1.オミクロン株流行・先が読めない景気状況

年末の株価は終値としては32年ぶりの高値を記録したが、市場に高揚感は全く感じられない。今の株高は大規模な金融緩和や財政出動によって底上げされたもので、日本経済の体温計ともいわれる株価が実体とかい離しているという指摘が根強くある。さらに原油高や部品の供給制約などといった不安要素に加え、オミクロン株の感染が世界中で拡大し、先行きが見えないまま年を越す形になった。来年も長期化するコロナの影響を抑えながら、いかに経済を着実に成長させられるかが問われる1年となる(NHK)。一方で、気になるのは米国・FRBの利上げの動きである。米国の経済専門家・マッケイシールズ・スティーブンフリードマン氏は「(物価上昇率を考えれば)来年のFOMC会合では、毎回利上げを行うことも強いていえば妥当といえる。ただ、インフレ抑制と経済成長、労働市場は常に天秤にかけなければならない。重要なのは景気後退することなく、インフレを抑制し、適度な速さで利上げできるかどうかにかかっている。FRBは景気後退のリスクがあるからこそ、利上げのペースに少し慎重になるとみられる。オミクロン株が経済の回復を妨げない場合、来年3月から3~4回利上げを行うだろう」と予測した(テレ東)。

 

2.日銀・大規模金融緩和策を維持

日銀金融政策決定会合では今の大規模な金融緩和策を維持することが決まった。短期金利をマイナスにするとともに金利が0%程度で推移するよう長期国債を買い入れて、市場に潤沢な資金を供給する今の大規模な金融緩和策を維持することを賛成多数で決めた。オミクロン株の影響が懸念される中、来年3月末までが期限となっている新型コロナ対応の資金繰り支援策について、大企業向けの支援を縮小する一方、中小企業への融資を後押しするため、金融機関に資金を供給する仕組みについて一部を見直し、来年3月末までとしていた期限を来年9月末までの6か月間延長することを決めた。大企業が発行するCP(コマーシャルペーパー)と社債の買い入れを増やす措置については予定どおり3月末で終了し、その後、買い入れの枠の規模を今の20兆円から感染拡大前の水準となる5兆円まで徐々に引き下げていく(NHK)。

 

3.新たな脅威・オミクロン株とは

欧州や米国では新たな変異種・オミクロン株の感染拡大に歯止めがかからない状況になっている。ジョンズホプキンス大学のまとめによると、米国で1日に報告される感染者の1週間平均が過去最多の28万人余となり、米国CDCは、これらの感染はオミクロン株によるものとみている。外務省によると米海兵隊基地・キャンプハンセンでは、これまでに300人近くの新型コロナの感染が確認されているが、検体の半数近くの47%がオミクロン株と見られることが分かった。厚生労働省によると今月17日~25日にかけて日本に入国した113人がオミクロン株に感染していることが新たに確認され、空港の検疫所などで受けた新型コロナの検査で陽性反応が出ていた。オミクロン株について、これまでの新型コロナウイルスに比べ症状を引き起こす力が弱い可能性があるという実験結果を東京大学などのグループが発表した。ウイルスをハムスターに感染させるとデルタ株や従来の新型コロナウイルスでは体重の減少や肺炎の悪化などが見られたがオミクロン株では体重に大きな変化はなく、肺炎になっても悪化しなかったという。こうした結果に対し北海道大学大学院医学研究院・福原崇介教授は「警戒を完全に解いていいことには単純につながらない」と指摘した(NHK)。

 

4.新薬・ワクチン接種の動向

政府は、3回目の接種について医療従事者や重症化リスクが高い高齢者施設の入所者などについて接種間隔を原則の8か月から2か月前倒しし、6か月に短縮するとともに、そのほかの一般の高齢者については来年2月以降、接種間隔を7か月に短縮する方針を示している。これについて後藤厚生労働大臣は、医療従事者や高齢者施設の入所者などの接種が終わる見込みが立った自治体では一般の高齢者のさらなる前倒しも認める方針を示した。一方、モデルナのワクチン1800万回分を追加購入することで合意したことも踏まえ、医療従事者と高齢者以外の前倒しは今後の国内の感染動向やワクチン供給力などを踏まえつつできるかぎり進める方向でやっていきたいと述べた。一方、後藤厚生労働大臣は国内初の新型コロナの飲み薬として、米国の製薬大手メルクが開発した新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」について正式に承認し、27日から医療機関、薬局への発送が始まった。この飲み薬は軽症から中等症の患者のうち18歳以上で重症化リスクがある人が対象で発症から5日以内に服用する。自宅で受け取り可能で、医療機関が薬局に処方箋を送り、薬剤師が患者に服用方法など指導後、届けることになる。新型コロナウイルスの治療に詳しい専門家は「飲み薬の普及が、今後の治療では重要なポイントになる」と話している。愛知医科大学・森島恒雄客員教授は「オミクロン株に(モルヌピラビルが)どのくらい効くかは、実際の流行の中でしか効果確認ができない部分がある。大きな流行に備える意味では経口薬(飲み薬)が普及していくことが大事」と述べた(NHK)。

 

5.エネルギーの動向

福井・敦賀市は原子力に並ぶ新たな産業として、水素エネルギーの研究、開発に取り組んでいる。今回、関西電力と協力して原発で深夜に発電した余剰電力を水素ステーションに送り、水を電気分解して水素をつくるエネルギーに活用する実証事業を行う。これによって製造過程で二酸化炭素を排出しない「ゼロカーボン」が可能か確認したいとしている。原発で発電した電気で水素を製造するという取り組みは全国で初めてとなる。原子力発電について、2050年までに脱炭素化を目指すEUでは、原子力を持続可能なエネルギーとして投資の対象とすべきかどうか、EUを二分する論争となっている。原子力大国・フランスが原発の新規建設を表明した一方、ドイツは全ての原子力発電所を来年中に廃止する予定(NHK)。

 

 

●新潮流

「トヨタ・年350万台・EVシフト加速」

れまで電気自動車一本に絞らず、ガソリンエンジンとモーターを搭載したHVハイブリッド車、水素と酸素の化学反応で作った電気でモーターを動かすFCV燃料電池車も開発するなど“全方位”戦略をとってきたトヨタ自動車だったが、14日、豊田章男社長は、「世界販売のうち350万台をEVにする」と宣言し、EVシフトを鮮明にした。今回のトヨタのEVシフトについて経済ジャーナリスト・井上久男氏は「世の中が予想以上にEVに転換する中、トヨタは“遅れている”と思われているとの危機感があった」と分析した。他社の動きを見てみると2035年までの目標として、ゼネラルモーターズは「新車販売のすべてをEVなど、排ガスなしの車にする」、2040年までの目標として、ホンダは「世界販売をすべてEVかFCV」、フォルクスワーゲンは「主要市場の販売のほぼ全てをEVなど排ガスなしの車」にするとしている。法政大学大学院・真壁昭夫教授は「トヨタは世界のトップ会社。そういう会社がEVに対し、消極的という印象を持たれるのはあまり良いことではない。地球温暖化に対応するために重要なのは世界でルール作りすること。そのときに本当にEVで良いのか。豊田社長がいろいろ考え、賢い方法を選ぶべきと言うのは正論だと思う」と指摘した(テレ朝)。 

 

 

●注目点

「半導体大競争時代・日本の戦略は?」

術覇権の鍵を握る存在として重要性が高まっている半導体。各国は熾烈な開発競争に乗り出し、日本政府もこれまでにない政策を打ち出した。多額の税金を投じて海外企業を呼び込み生き残りを図ろうとしている。スマートフォンの頭脳にあたるCPU、カメラのセンサー、通信をつかさどるこれら全ては半導体であるが、日本製の半導体は減少の一途をたどっている。日本の半導体の自給率は約27%(経済産業統計協会調べ)で、大半を輸入に頼っている。半導体不足をもたらしたのが新型コロナウイルスの感染拡大だった。半導体を日本国内で自給できる体制をつくれないか、経済産業省は水面下で戦略を進めていた。海外の民間企業を誘致するため、大臣自ら交渉に乗り出すなど積極的に動いた。相手は台湾のTSMC。半導体の製造で世界トップの技術を持つ巨大企業である。日本は国内で使用する半導体のおよそ11%を中国から、33%を台湾からの輸入に依存している。米中の対立が激化したり、台湾周辺で緊張が高まったりすれば半導体の確保が難しくなると政府は危機感を強め、経済安全保障の観点からも台湾メーカーの誘致は不可欠だと考えた。日本は新しい技術を作るのは得意だが、そこから国の収益につなげていくことは得意ではない。リチムイオン電池も日本が作ってノーベル賞を取ったが、作っているのは中国。スマート家電も日本の考えたものだが、米国や欧州のスマート家電は韓国のメーカーが出している。官民ともイノベーションの問題を単に技術の問題やエンジニアの問題とするのではなく、戦略やマーケティング、営業すべての知識を総合して戦っていくことが何よりも重要である(NHK)。

 

 

12月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・セブン&アイ・ホールディングス、第3位・トヨタ自動車」

2021年12月のテレビ報道CM価値換算ランキングでは、「オリエンタルランド」が52億9500万円で第1位に輝いた。具体的には、「ディズニーライトザナイトの公演を12月1日から再開する」「千葉県浦安市が成人の日に参加者を4回に分け、密を避ける対策をとり開催予定」「ニューイヤーズイブを実施しない方針」等、東京ディズニーランドやリゾート、そしてディズニーシーに関する情報発信によるものであった。第2位は「手軽に豪華なXmasパーティを!MAX美味しいオードブル&ケーキ」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第3位は「トヨタ・年350万台・世界メーカー・EVシフト加速」などの報道で「トヨタ自動車」、第4位は「宇宙計画の工程表改定・日本人の月面着陸2020年代後半に実現へ」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第5位は「東洋水産・やよい軒!人気番付SP」などの報道で「東洋水産」となった。第6位は「ヤフコメ・誹謗中傷・違反投稿対策を強化」などの報道で「Zホールディングス」、第7位は「日本ハム・新球場まで80m・フリーパス付き物件人気」などの報道で「日本ハム」、第8位は「業務スーパー・本部スタッフ・買ってよかったTOP10」などの報道で「神戸物産」となった。第9位は「三井不動産・海外投資7000億円」などの報道で「三井不動産」、第10位は「格安・しまむらで高見えコーデ対決」などの報道で「しまむら」となった。

 

12月の人物ランキング

「第1位・トヨタ自動車・豊田章男社長、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO、第3位・ミキツーリスト・檀原徹典社長」

第1位・トヨタ自動車・豊田章男社長34件(トヨタ・電気自動車・新戦略を発表・2030年・世界販売350万台になど)、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO34件(米国誌「タイム」今年の人選出・テスラCEO・イーロンマスクなど)、第3位・ミキツーリスト・檀原徹典社長22件(HIS子会社GoTo不正利用かなど)、第4位・日本銀行・黒田東彦総裁16件(日銀の金融政策決定会合・日本物価が“上がらない”ワケなど)、第5位・三菱電機・漆間啓社長15件(不正検査問題で社長ら経営陣処分など)、第6位・カインズ・高家正行社長11件(カインズ・東急ハンズを買収・将来的な名称変更もなど)、第7位・日本経団連・十倉雅和会長10件(岸田首相経済界に賃上げ求める・経団連“一律での音頭はとらない”など)、第8位・JHAT・平林朗社長9件(給付金“最大6億円”返還へ・追及・HIS子会社のGoTo不正認めるなど)、第9位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史社長8件(みずほ・システム障害の“真因”など)、第10位・KDDI・高橋誠社長7件(5000円で車ちょい乗り・KDDIデータで快適になど)。

 

 

●テレビの窓

「大納会・“コロナ禍”の1年・株価はどう動いた?」

京証券取引所では2021年最後の取引が行われた。2020年に続きコロナとの闘いに翻弄された1年となった。2度目の緊急事態宣言とともに始まった今年の東京市場。夏には感染拡大で欧州や東南アジアなどで人やモノの流れが停止した。日本でも半導体などの供給が滞り、車や電化製品の生産が停止し8月には年初来安値となる2万7013円となった。その後、1か月ほどで株価は3000円以上回復した。菅総理が総裁選に出馬しないことを表明したことで新しい総裁への経済対策に期待が高まり感染者の数が減ったことも株価上昇の後押しとなった。9月半ばには3万670円となり、31年ぶりの高値となった。世界的にみると日本の株価は出遅れ感があるとの声がある。今年1年間のNYダウ平均株価は19%上昇した。日経平均株価は6%と低い水準。米国はGoogleアップルなど巨大IT企業が株価をけん引している一方で、日本ではそうした成長企業が出ていない。技術革新や人材への投資を増やし、実体経済を伴った株価上昇となるのか、来年は日本の実力が試される1年となる(日テレ)。

 

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