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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年7月)

「日銀・大規模な金融緩和策の維持を決定」「貿易赤字・1-6月過去最大に」

今月の特徴は、1.日銀・大規模緩和策を維持、2.貿易赤字・1-6月過去最大に、3.円安の動向、4.第7波の動向、5.エネルギーの動向となった。                                                       

 

1.日銀・大規模緩和策を維持

日銀は21日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の維持を決定した。2022年度の消費者物価上昇率の見通しはエネルギー価格の高止まりや、足元の円安を反映し2.3%に上方修正され、日銀が目標とする2%を上回った。黒田総裁は「日本銀行として引き続きしっかりと経済を支えるために金融緩和を続けていく必要がある」と述べた一方で、円安については「急速な円安の進行は先行きの不確実性を高め、企業による事業計画の策定を困難にするなど、経済のマイナスであり望ましくない。政府とも緊密に連携しつつ引き続き為替市場の動向やその経済、物価への影響を十分注視していきたい」との見解を示した(テレ東)。

 

2.貿易赤字・1-6月過去最大に

財務省が発表した、ことし1月から6月までの上半期の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が7兆9241億円の赤字と、比較可能な1979年以降、半年間の貿易赤字としては過去最大となった。輸出額は去年の同じ時期と比べて15.2%増えた一方、輸入額も37.9%の大幅な増加となり、輸入の伸びが輸出の伸びを大きく上回った。輸入額が大幅に増えた理由はロシアによるウクライナへの軍事侵攻で原油やLNG(液化天然ガス)などエネルギー価格が高止まりしていることに加えて、円安が進み、全体の金額を押し上げたためで、輸入額は53兆8619億円と、上半期としては初めて50兆円を超えた。一方、先月1か月分の貿易収支は1兆3838億円の赤字で11か月連続の貿易赤字となった(NHK)

 

3.円安の動向

円安が加速する中、日銀・黒田総裁は「円安を止めようとすると大幅な利上げとなり、経済にダメージを与える」との理由で金融緩和を今後も続けるとしており、日本と欧米の金利差が開いていくことによって円安がさらに加速する可能性がある(日テレ)。一方で元日銀の岩田規久男氏は、「米国が利上げを急ぐと景気後退の心配がある為、今後米国が金利を上げていくことはなく、円安が進む心配もない」と分析した(NHK)。

 

4.第7波の動向

新型コロナウイルスの1日の新規感染者数は全国で20万人を超え、東京都内では4万人を超える日も出るなど、連日過去最多を更新している。急激な感染者数増加の要因となっているのがオミクロン株亜種の「BA.5」。ワクチン接種や過去の感染で獲得した免疫をすり抜け、強い感染力を持つという。国立感染症研究所の推計によると「BA.5」の感染状況の割合は約96%に達しているという。さらに感染力が強い、新たな変異株「BA.2.75」(別名:ケンタウロス)が国内で初めて確認された。第7波のピークアウト前にこの株が広がった場合、第8波が起こる可能性もあると専門家は指摘している(テレ朝)

 

5エネルギーの動向

大手企業のトップが集まる経団連のフォーラムで講演した岸田総理は、電力不足が予想される冬までに、現在稼働している原発とあわせ、「最大9基の稼働を目指す」と強調した。これに対し経済界からは歓迎の声が挙がっている。一方で再稼働には大きな課題があると指摘する専門家もいる。今回岸田総理が稼働を目指すとした原発は、もともと運転の再開が見込まれていた福井県の美浜原発や、佐賀県の玄海原発など、全て西日本にある原発であるのに対し、電力不足が不安視される東日本の原発は、地元の同意が得られていないことなどから、再稼働のめどが立っていない(テレ東)。関西電力は電力需給の安定化などにつなげたいとして、一般家庭約1万3000世帯が1日に使う量に相当する電力を貯めることができる蓄電所を和歌山県内に建設すると発表した(NHK)。

 

 

●新潮流

「国内資金が海外逃避・キャピタルフライト・影響は」

本国内の資金が海外に逃避するいわゆる“キャピタルフライト”が進んでいる。これが過度に進めば、さらなる国力低下にもつながりかねない。円安が更に進むと海外に資産を移す企業が増え、企業は国内での資金調達が困難となり、外国から高金利で資金を調達し設備投資を行うことになる。すると企業は高い利払いのため儲けが減り、倒産が増えてしまう恐れがある。その結果、日本企業の衰退、国力の低下につながる可能性もある。今のところは海外が有利なので投資をしようという動きになっているが、日本円が信用できないから海外に逃げるという形になっていくと、良くない循環に陥ってしまう。資金が海外に逃げると、金利を上げて円安を防ぐことになるが、同時に国債が暴落するなどし、すべてが逆方向に回り始める。日本経済が成長軌道に戻ってくれれば全て良い方向に回る。国債が暴落するきっかけは経常収支の赤字で、キャピタルフライトになるといわれている。日本のGDPはずっと変わっていないが米国のGDPはこの30年で倍になっている。岸田首相は国内での投資を促しているが、海外に投資することになれば国内で投資を増やす意味がなくなってしまう(テレ朝)。

 

 

●注目点

「KDDIの回線で大規模な通信障害」

帯大手・KDDIの回線で大規模な通信障害が発生した影響は新型コロナの患者対応に当たる保健所の業務にも及んだ。auの携帯電話を持っている患者とは連絡が取れなくなり、医療機関は患者の固定電話の番号を確認する作業に追われた。中には入院が必要な患者と通話途中でやり取りが途絶え、職員が直接自宅を訪問したケースもあった。物流への影響も大きく、宅配大手・ヤマトホールディングスによると、全国の駅などに設置しているオープン型宅配便ロッカー「PUDO」を利用した荷物の発送や受け取りが一部の地域でできない状況が続いたという。全国に約200店舗を展開する家電量販店には、KDDIの大規模な通信障害を受けて、「いざというときのため別の携帯電話会社の回線も契約したい」といった相談が寄せられているという。KDDIは29日、会見を行い、携帯電話などの利用者3589万人に「おわび」として200円返金すると発表した。総務省は通信障害に備え「ローミング」の導入に向け、NTTドコモソフトバンクなど携帯各社などが参加する検討会を設置することにしている(NHK)。

 

 

7月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・串カツ田中ホールディングス、第2位・オリエンタルランド、第3位・東日本旅客鉄道」

2022年7月度のテレビCM価値換算ランキングは、「串カツ田中ホールディングス」が、28億8781万円で第1位となった。具体的には、「串カツ田中の社員が選んだメニューを超一流料理人に味の鑑定をしてもらう」といった番組などの露出が大きく貢献した。第2位は「スプラッシュマウンテン・水しぶき増量」等の報道で「オリエンタルランド」となった。第3位は「JR東日本“旅ガチャ”9月から先行体験開始」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第4位は「三井不動産・新TVCM・三井のすずちゃん・東京ミッドタウン編」などの報道で「三井不動産」、第5位は「東宝90周年記念・SPトークショー・萌音・大先輩・司葉子と登場」などの報道で「東宝」となった。第6位は「視覚障害者を支援するアプリ実証実験」などの報道で「東武鉄道」、第7位は「ウォーターサーバー事業・ビックカメラ“水宅配”秋にも開始」などの報道で「ビックカメラ」、第8位は「暑さを乗り切るひんやりウェア・組み合わせ99通り」などの報道で「ワークマン」となった。第9位は「ドリンク全サイズを100円で提供するキャンペーン」などの報道で「日本KFCホールディングス」、第10位は「山崎賢人主演『キングダム2』世界初上映」などの報道で「ソニーグループ」となった。

 

 

7月の人物ランキング

「第1位・KDDI・高橋誠社長、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・日本経団連・十倉雅和会長」

第1位・KDDI・高橋誠社長117件(KDDI通信障害・社長が記者会見へなど)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁92件(日銀・物価見通し2%超も・緩和維持など)、第3位・日本経団連・十倉雅和会長35件(経団連と韓国の経済団体・3年ぶりに懇談会など)、第4位・テスラ・イーロンマスクCEO32件(イーロンマスク・ツイッター買収計画を撤回など)、第5位・トヨタ自動車・豊田章男社長16件(トヨタ・新型「クラウン」初披露・セダン路線を転換・SUV投入など)、第6位・サントリーHD・新浪剛史社長12件(10代後半~40代がイノベーションの主役など)、第7位・松竹・迫本淳一社長9件(ズームからメタバースまで・歌舞伎を大ピンチから守れ!など)、第8位・明治・松田克也社長8件(あれもこれも明治!8000億円・巨大企業など)、第9位・ローソン・竹増貞信社長7件(ローソン・売り上げ↑目指す・ブランド米・新おにぎり発売など)、第10位・京都アニメーション・八田英明社長7件(放火事件から3年・京都アニメーション・スタジオ跡地で追悼式など)。

 

●テレビの窓

「CO2削減に期待されるメタネーション」

タネーションとは二酸化炭素と水素からメタンを合成する技術で、24時間稼働させると2700世帯分のガスを作ることが出来る。工場や発電所から出た二酸化炭素と水素で合成メタンを作りメタンを燃料用として工場に送る。燃焼する時に発生した二酸化炭素を再び回収し、再度メタン化すれば炭素の循環利用が出来る。清掃工場の二酸化炭素を利用したメタネーションは世界初となる。アイエイチアイ

は相馬市を循環するバス1台の燃料を合成メタンに切り替え試験運用を開始した。東京ガスでは2030年に都市ガス量1%の合成メタン導入を目指している。牛のげっぷはメタンの排出量の27%を占めているが、全国肉牛事業協同組合では温室効果ガス削減に取り組むことを発表し、そのために導入されたのが牛のげっぷ中のメタンを測定する「温室効果ガス濃度アナライザー」であった(テレ東)。

 

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