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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年4月)

日銀・金融政策現状維持」「止まらない円安一時

160円台に・政府日銀・覆面介入か?」

今月の特徴は1.日銀・金融政策現状維持、2.円安の動き、3.2024年問題の動向、4.景気の動向、5.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀・金融政策現状維持

日銀は金融政策を決める会合で政策金利を据え置くとともに、国債の買い入れを続ける方針を維持した。日銀による決定会合の結果を受け、外国為替市場の円相場では、追加の利上げには時間がかかるとの見方が広がり、日米の金利差が意識されて円を売ってドルを買う動きが加速した(フジ)。

 

2.円安の動き

29日、1990年以来34年ぶりの歴史的な水準となる160円台に一時、突入した円安だが、上場企業の決算にも影響を与えている。商船三井の今年3月までの決算は、円安効果で経常利益がおよそ160億円押し上げられた。さらに30日、三度目の下方修正を発表した住友化学は円安が追い風となるものの、最終赤字は3000億円を超える見込みとなった(テレ東)。こうした中、政府・日銀が5兆円規模の為替介入に踏み切った可能性があることがわかった。政府・日銀は一昨年10月、過去最大規模の5.6兆円の為替介入を実施したが、この時に匹敵する規模だった可能性も浮上している。市場では介入した事実を明らかにしない「覆面介入」との見方も出ている(TBS)。

 

3.2024年問題の動向

物流の2024年問題でトラックドライバー不足への懸念が高まる中、全日本トラック協会によると、全国のトラック運送業者およそ2500社のうち、57%が赤字経営となることが分かった。2019年度以降、半分以上のトラック運送業者で赤字の状況が続いているという。全日本トラック協会は「燃料費などのコスト上昇を価格転嫁することが難しい」とみている。物流業界をめぐっては、この4月からトラックドライバーの時間外労働の規制が始まり「2024年問題」への対応が大きな社会課題となっている(TBS)。

 

4.景気の動向

日銀が3か月ごとに企業の景況感を調査する短観で、大企業製造業の指数が4期ぶりに悪化した。3月の日銀短観では景気がよいと答えた企業から悪いと答えた企業の割合を引いた指数は、大企業の製造業で2ポイント下落し、4期ぶりの悪化となった。自動車メーカーの一部が性能検査の不正で出荷を停止したことなどで関連業種の景況感を押し下げた。一方、大企業非製造業は34ポイントと8期連続で改善し、約33年ぶりの高い水準となった。インバウンド需要の拡大などにより不動産や小売り・運輸・郵便などが堅調だった(テレ朝)。

 

5.エネルギーの動向

イタリアで行われたG7(主要7か国)気候エネルギー環境相会合は、二酸化炭素の排出削減対策がなされていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意した。G7の共同声明に石炭火力廃止の期限を明記するのは初めて。期限については、「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標に沿ったスケジュールで」とも記されていて、石炭火力の一定の活用を維持する方針を示す日本などに配慮した形となった(TBS)。

 

 

●新潮流

「生成AIめぐり米国IT大手が日本に進出」

成AIの普及のきっかけとなったChatGPTを開発した企業、オープンAIが、東京に新たな拠点を設立した。米国・サンフランシスコに本社を置き、海外拠点は英国、アイルランドに続き、東京が3か所目となる。オープンAIは、おととし11月にChatGPTを発表し、世界での生成AI拡大のきっかけとなった。東京を拠点に日本での事業を強化し、企業向けの生成AIサービスを展開するとともに、日本語や日本文化に特化したモデルの開発を強化する方針。生成AIをめぐっては、米国のIT大手が日本国内で巨額の投資を打ち出している。マイクロソフトは今後2年間で日本での事業におよそ4400億円を投資する計画を発表。AWSアマゾンウェブサービスは2027年までの5年間で2兆2000億円余りを投資する計画である。さらにグーグルは今年までの4年間に、およそ1000億円の投資を決めていて、各社は日本を有望な市場と見て、事業の強化を加速させている。一方、日本企業は、業種や分野に特化する形で、大規模なデータセンターを必要としない、小回りが利く戦略を進めている。NTTNECは、それぞれ、自社開発した生成AIの企業向けサービスを3月、相次いで開始。KDDIは4月、国産の生成AIを開発するスタートアップ企業を子会社化し、企業や自治体向けの事業に新たに参入する。さらに、ソフトバンク楽天グループも、開発や事業化に向けた準備を進めている。オープンAIの日本進出により、国内での生成AIを巡る競争は、さらに激しさを増す可能性がある。オープンAI・ブラッドライトキャップCOOは「日本の指導力と技術に期待している。AIは産業・政府・社会を飛躍させる重要な次の波だ」と述べた(NHK)。

 

 

●注目点

「事業費約9000億円・築地に5万人スタジアム」

018年に83年の歴史に幕を下ろした築地市場だが、その跡地の開発計画が明らかになった。東京都は、再開発を担当する事業者に三井不動産読売新聞グループなど11社の企業連合を選んだと発表した。総事業費はおよそ9000億円に上る。計画では、5万人を収容できる屋根付きの多目的スタジアムを中心に商業施設やホテル、住居棟などが建設される予定。スタジアムは野球やサッカーに加え、コンサートなどで使われることも想定している。更に、敷地内には空飛ぶクルマの発着場も計画されている。東京都が保有する市場跡地は19ヘクタールで、おととし11月から公募を始めていた。計画について、小池都知事は「広大な面積をどう生かしていくかというのは、これからの東京の良さを発信する最高のところ」とコメント。事業者によると、2025年度に着工し、2030年代前半以降に開業したいとしている(TBS)。戦略コンサルタント・立教大学ビジネススクール・田中道昭教授は「事業予定者となる三井不動産は、東京ドームを買収して子会社にしたり、ららぽーと東京ベイのららアリーナ東京ベイを建設したり、スポーツとエンターテイメントにかなり力を入れている。三井不動産の本拠地は日本橋だが、日本橋の商店街の予算を生かした不動産開発をしている。今回も築地の跡地を生かした再開発を期待したい」と述べた(テレ朝)。 

 

 

4月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東武鉄道、第2位・三井不動産、第3位・ローソン」

2024年4月度のテレビ報道CM価値換算ランキング第1位は78億9239万円で「東武鉄道」となった。具体的には、「東京スカイツリー・天空の大工事~世界一の電波塔に挑む~」「東武動物公園で・ヒツジの毛刈り」「江戸情緒満載のスペーシアXの美に迫る」等によるものであった。第2位は「築地市場跡地で三井不動産などの再開発計画」等の報道で、「三井不動産」となった。第3位は「2024年問題に対応・ファミマとローソン共同配送」などの報道で「ローソン」。第4位は「JR東日本がネット銀行参入」などの報道で、「東日本旅客鉄道」となった。第5位は「東京スカイツリー・天空の大工事~世界一の電波塔に挑む~」などの報道で「大林組」、第6位は「業務スーパー横浜いずみ店を取材」などの報道で「神戸物産」、第7位は「ヨーカ堂“新ブランド”独占取材」などの報道で「セブン&アイ・ホールディングス」、第8位は「H3ロケット3号機・6月末に打ち上げへ」などの報道で、「宇宙航空研究開発機構」となった。第9位は「H3ロケット・失敗からの再起・技術者たちの348日」などの報道で「三菱重工業」、第10位は「弱小タッグが世界を変えた~カメラ付き携帯反骨の逆転劇~」などの報道で「シャープ」となった。

 

 

4月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長、第3位・テスラ社・イーロンマスクCEO」

第1位・日本銀行・植田和男総裁179件(日銀の金融政策維持決定などを受け・円安加速など)、第2位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長35件(家計直撃・天候不順などで出荷減・野菜高騰いつまで?名物社長が生解説など)、第3位・テスラ社・イーロンマスクCEO34件(AIに1兆5000億円投資へなど)、第4位・SMILE-UP.・東山紀之社長33件(SMILE-UP.が英国BBCに抗議文送付など)、第5位・オープンAI社・サム・アルトマンCEO20件(オープンAIが東京にアジア初の拠点開設など)、第6位・小林製薬・小林章浩社長18件(小林製薬の紅麹サプリメントの健康被害問題についてなど)、第7位・NTTドコモ・井伊基之社長18件(ポイント経済圏拡大へ・ドコモとアマゾンが連携など)、第8位・経済同友会・新浪剛史代表幹事14件(良い円安?悪い円安?円下落で暮らしは・経済界から懸念の声もなど)、第9位・アマゾンジャパン・ジャスパーチャン社長13件(NTTドコモとアマゾン・ネット通販で協業など)、第10位・日本航空・鳥取三津子社長12件(JAL新社長安全こそ事業目的など)。

 

 

●テレビの窓

「北京モーターショー開幕」

国北京で世界最大規模のモーターショーが19日から始まった。中国ではEVなど新エネルギー車の販売台数が全体の3分の1を占めていて、各社とも新エネ車の最新モデルを展示し、アピールしている。このうちEVに参入したスマートフォンメーカーのシャオミは、先月販売を始めたEVを披露し、受注が1か月足らずで7万5000台を超えたとアピールし、来場者の関心を集めていた。またトヨタ自動車は最新のEVを発表するとともに、中国のIT大手のテンセントと提携し、EVなどに搭載するソフトの開発を進める方針を示した。ただ、中国では都市部を中心にEVの普及が急速に進んだことや、航続距離への不安などもあってEVの販売の伸びが鈍化し始めていて、中国の新興EVメーカー「ハイファイ」は今年2月半年間の操業停止に追い込まれ、店舗の閉鎖が相次いでいる。中国では新興メーカーが乱立し、激しい値下げ競争となり販売が伸び悩んでいるという。その一方でガソリンエンジンを搭載し、より長い距離を走ることができるプラグインハイブリッド車の人気が高まっている。日産自動車が2種類のプラグインハイブリッドのコンセプトカーを披露したほか、中国大手の吉利自動車グループが充電や給油なしに最大で2000キロを走ることができるとするモデルを発表するなど、最新のプラグインハイブリッド車の発表が北京モーターショーでも相次いだ(NHK)。

 

JCC株式会社