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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年2月)

「10―12月実質GDP年率0.6%プラス」

今月の特徴は、1.10―12月実質GDP年率0.6%プラス、2.1月貿易赤字・過去最大3.5兆円、3.春闘の動向、4.外国人観光客の動向、5.エネルギーの動向となった。

 

1.10―12月実質GDP年率0.6%プラス

10―12月の実質GDPが前期比で年率0.6%プラスになった。2022年のGDPは前年比1.1%の増加で、2年連続のプラス成長となった。全国旅行支援で国内旅行の需要が増えたこと、水際対策緩和でインバウンドが回復したことなどが要因。サービス消費やインバウンドの回復が期待される一方で物価高や、海外経済減速による影響で日本経済の回復ペースの鈍化が懸念されている(TBS)。

 

2.1月貿易赤字・過去最大3.5兆円

財務省は今年1月の貿易統計を公表。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3兆4966億円の赤字となった。赤字となるのは18か月連続。1か月の赤字としては比較可能な1979年以降で過去最大。原油など、エネルギー価格の高騰や円安などが原因(TBS)。

 

3.春闘の動向

今年の春闘は、自動車、電機メーカーなど、大手の労使交渉が本格化しているが、中小企業にも賃上げの流れが広がるかが焦点となっている。西村経済産業相は、金属加工、食品製造など、中小企業6社の経営者と意見交換を行った。大幅な賃上げを行う中小企業には、成長分野への事業転換を促す補助金の支給で優遇する他、大手との取引価格にコスト上昇分を適切に転嫁できるよう環境整備を進めていく考えを改めて示した(NHK)。

 

4.外国人観光客の動向

日本に来る外国人観光客の滞在中の消費額はコロナ前の2019年、平均で15万9000円だったが、これを今から2年後の2025年には20万円にアップさせる計画案を政府が打ち出した(日テレ)。東京・秋葉原のゲームショップにはレトロでレアなゲームを買いに、多くの観光客が訪れている。客の7割ほどが外国人観光客だという。上野公園では日本特有の文化、侍や忍者などを海外の人に広める「SAMURAIフェス」が3年ぶりに開催された。実際に侍の甲冑を着ることができ、侍気分を味わうことができるという外国人観光客に大人気のイベントである(TBS)。去年1年間に国内のホテルや旅館などを利用した宿泊者は速報値で、延べ4億5397万人と新型コロナの感染拡大前の7割の水準まで回復した。去年10月以降、日本人の宿泊者に対して旅行代金の割引が受けられる全国旅行支援が始まったことや、外国人の宿泊者への水際対策の緩和によって宿泊者が大幅に回復したためとみられる(NHK)。

 

5.エネルギーの動向

福島第一原発事故の後、最も長くて60年としてきた原発の運転期間を実質、60年を超えて運転できるようにする法案が閣議決定された。「脱炭素電源法案」は、「原子炉等規制法」や「電気事業法」など5つの法律の改正案を束ねたもの。「原則40年、最長60年」とする原発の運転期間は維持されるが、規制委員会の審査などで運転を停止した期間の分を延長できるようにする規定を新たに盛り込み、実質的に60年を超える運転を可能にした。政府は今国会に提出、経年劣化などを巡って野党との間で、論争になることが予想される(テレ朝)。

 

 

●新潮流

「日銀新総裁に植田和男氏」

4日、政府は国会に経済学者・植田和男氏を日銀総裁に起用する人事案を提示した。植田氏は、静岡出身で東京大学卒業、米国・マサチューセッツ工科大学博士課程修了の71歳。1998年~2005年に日銀審議委員を務めた。現在、東京大学名誉教授・共立女子大学教授を務めている。これまでの日銀総裁は日銀出身者、財務省出身者がたすき掛けで就任するのが慣例となっていた。植田氏の起用が決まると、戦後初の学者出身となる。日銀は物価の番人、物価の安定を図り、国民の生活を守る役割を持ち、年8回行われる「金融政策決定会合」の議長を務めるのが日銀総裁である。日銀・黒田東彦総裁はアベノミクスの根幹を成していた異次元の金融緩和を行っている。データを重視する植田氏は、現状では金融緩和の継続が必要であると考えている。野村総合研究所・木内登英エグゼクティブエコノミストは「植田氏は黒田総裁の金融緩和にやや否定的。混乱を起こさないよう、慎重に修正していくのではないか」と予測した。新総裁はこの春に着任する見通しである(TBS)。

 

 

●注目点

「EV戦国時代到来・各社の戦略は?」

等な資本関係などの新たな提携で合意した日産自動車ルノーは、インド市場での具体的な協業を明らかにした。両社は合弁で運営するインド南部チェンナイの工場と研究開発会社に6億ドル、日本円でおよそ790億円を投資し、インド市場では初めてとなるEV2車種を含めた6車種の新型車を共同で開発する。インドだけでなく、周辺の国や地域へも輸出し、工場の稼働率を80%にまで高める計画。インドは去年、日本を抜いて世界第3位の自動車市場となり、さらなる拡大が見込まれている。インドでは大気汚染が大きな課題になっており、政府もこの乗用車に30%という目標を掲げてEVシフトを後押ししている(NHK)。一方、今年4月、トヨタ自動車社長に就任する佐藤恒治次期社長は「機が熟した今、従来と異なるアプローチでEVの開発を加速していく」と述べ、現在取り組んでいるEV開発を見直し、さらに加速させていく姿勢を示している。具体的には足元でのラインナップを拡充すると共に、2026年を目標に電池、車の骨格であるプラットフォーム、車の作り方など全てをEV最適で考え、高級車ブランド「レクサス」で次世代EVを開発していくという。EVをめぐり、欧州や中国を中心に市場が拡大する中、米国「テスラ」や中国「BYD」が販売台数を伸ばしており、各社のEV戦略に注目が集まっている(TBS)。

 

 

2月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・イオン、第2位・王将フードサービス、第3位・宇宙航空研究開発機構」

2023年1月のテレビ報道CM価値換算ランキングで第1位に輝いたのは、33億9395万円で「イオン」となった。具体的には、「アップルレザー使用・環境に優しいランドセル・イオンがお披露目」「パート40万人の時給7%引き上げ」等によるものであった。第2位は「餃子の王将の従業員が選んだイチ押しメニューを、超一流中華料理人が、値段に見合った味かどうかをジャッジする」等の報道で、「王将フードサービス」となった。第3位は「14年ぶり日本人宇宙飛行士・倍率は2千倍超」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」。第4位は「日本橋に宇宙関連産業拠点」などの報道で、「三井不動産」となった。第5位は「映画『わたしの幸せな結婚』目黒蓮・今田美桜語る撮影裏側」などの報道で「東宝」となった。第6位は「ニトリ・配送無料で新生活応援」などの報道で「ニトリホールディングス」、第7位は「JR東と東急不動産連携・“まちづくり”まず千葉から」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第8位は「ヤクルト村上&青木がビックカメラで爆買い!」などの報道で、「ビックカメラ」となった。第9位は「羽田空港の新施設ウラ側・密着!出店者たちの戦略」などの報道で「東京空港事務所」、第10位は「ヤマダデンキとビバホームが提携した新業態店舗を訪れる」などの報道で「ヤマダホールディングス」となった。

 

2月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長、第3位・日産自動車・内田誠社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁165件(日銀総裁どれだけスゴい?など)、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長40件(物価上昇を上回る賃上げは・中小企業経営者の本音など)、第3位・日産自動車・内田誠社長16件(日産・ルノー・対等関係へ・悲願達成?内田社長・生出演など)、第4位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長15件(楽天グループ・資本提携も検討など)、第5位・経団連・十倉雅和会長14件(賃上げへ「政労使会議」来月開催で調整など)、第6位・ラピダス・小池淳義社長14件(半導体新会社ラピダス・北海道に工場建設検討など)、第7位・Zホールディングス・川邊健太郎社長13件(ヤフーとLINEなど3社合併など)、第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長9件(創業家ではないトヨタ新社長・どんな人?など)、第9位・テスラ・イーロンマスクCEO9件(人型ロボット・まもなく市販へ・脳のチップから指令もなど)、第10位・三菱重工業・泉澤清次社長9件(三菱重工・国産ジェット撤退など)。

 

 

●テレビの窓

「相次ぐ迷惑動画・企業側の対策は?」

転すしチェーンをはじめ、外食チェーンに対する迷惑動画の投稿が相次いでいる。この1か月だけでもイトーヨーカドーカラオケまねきねこはま寿司吉野家資さんうどんなどの企業が被害を受けた。こうした顧客の迷惑行為が今、企業の新たな経営リスクとなり、企業側にも大きな変化が起こっている。客離れの懸念は企業の株価にも表れており、例えば迷惑動画が話題になった翌日、スシローを運営するフード&ライフカンパニーズの株価が急落し、時価総額は1日でおよそ170億円減少した。被害にあった、うどんチェーンは被害の翌日に、希望する客に対し、個別に包装されたトッピングを提供する取り組みを始めた。コストは増えるものの、店側は必要な取り組みだとしている。今回の件を受け、あきんどスシローはすでに警察に被害届を提出し、吉野家ホールディングスも同様に警察に被害届を出すことを検討している(テレ東)。こうした中、「SNS投稿」を調査する企業が増加している。東京・飯田橋の「企業調査センター」は企業から依頼を受けて学生らのSNSを調査するサービスを提供している。裏アカも含めたアカウントの特定と悪質性を4段階で評価している。過去には「アルバイト先の飲食店で閉店後に全裸」の投稿を見つけ、企業に報告したこともある。「企業調査センター」担当者は「“裏アカ”であっても約9割は特定が可能であり、学生であってもリスクを考慮してSNSを使うべき時代になっている」と話している(TBS)。

 

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