テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年11月)

「7月-9月期・GDP実質成長率-0.8%」「全国旅行支援・年明けも継続へ」

今月の特徴は、1.7月-9月期・GDP実質成長率-0.8%、2.物価高の影響、3.四半期決算短信・任意化検討、4.全国旅行支援・年明けも継続へ、5.エネルギーの動向となった。   

 

1.7月-9月期・GDP実質成長率-0.8%

内閣府が12月8日に発表した7月から9月の実質GDPの改定値は前の3か月と比べてマイナス0.2%、年率換算でマイナス0.8%。先月の速報値の時点では発表されていなかった統計などが反映され上方改定となった。外食サービスなどの個人消費は下方改定だったが、原油の在庫の積み増しなどが上方改定につながった。年率換算ではマイナス1.2%と3期続いたプラス成長から一転した。一番の要因は、海外の企業に支払った広告費が急増し、サービスの輸入の伸びが過去最大となったこと、GDPの半分以上を占める個人消費は3年ぶりに行動制限のない夏休みとなったものの、感染の第7波もあり0.3%のプラスにとどまったことが大きい。政府としては、マイナスは一時的なものだとして景気は緩やかに持ち直していることに変わりはないとしている(テレ朝)。

 

2.物価高の影響

物価高の要因となってきたのは円安、為替市場の動向である。その為替市場を大きく動かしているのは米国の金融政策。これまで米国・FRB(連邦準備制度理事会)は、インフレを抑えようと0.75%もの大幅な利上げを続けることで金融を引き締めてきたが、これがドル高・円安を招いてきた。しかし、米国の最新の消費者物価指数が市場予想を下回り、インフレのピークが過ぎ去りつつあるのではないかという期待が高まっている。FRBは利上げで景気が一気に冷え込むのを避けるために、12月にも利上げ幅を0.5%に縮小するのではという見方が強まっている。こうした見方を受けて、市場ではここ最近、ドル円相場が10円以上、円高方向に動く形になった。円安が和らげば輸入価格が下がることになり、消費者にはプラスに働く。さらに、政府は物価高対策の目玉として、年明けから光熱費の負担を軽くするための政策を打ち出しているが、この対策には消費者物価の上昇を抑制する効果がある。専門家の大半は、来年の年明けからは物価の上昇幅は抑えられ、今年ほどの急激な変化に直面する可能性は低いのではないかと見ている(NHK)

 

3.四半期決算短信・任意化検討

証券取引所が上場企業に対して3か月ごとに提出を求める四半期決算短信について、金融庁は開示するかどうかを将来的に企業の判断に任せる検討を始めると日本経済新聞が伝えた。25日に開く金融審議会で、「将来的な方向性」として提示する(日経電子版)。四半期決算短信の開示を任意とする代わりに投資家の判断に影響を与えるような重要事項が発生したときに、その都度公表する「適時開示制度」を充実させることを検討する方針(日経電子版)だが、見直しには慎重論もあって実現するかどうかは不透明な状況(テレ東)。

 

4.全国旅行支援・年明けも継続へ

国内の旅行需要を喚起する全国旅行支援について斉藤国土交通大臣は、観光はこれからの日本経済の柱になるべき項目だとして年明け以降も延長する方針を明らかにした。ただ、旅行代金の割引率については現在の40%から20%に縮小し、割引の上限額も、交通費を含む宿泊旅行の場合、1人1泊当たり8000円から5000円に引き下げられる。また、年明け以降の開始時期については現時点で未定となっている。全国旅行支援延長の発表は旅行観光関連の銘柄の株価にも影響し、エイチアイエスはプラス3.4%となった。旅行比較サイトのトラベルコを運営するオープンドアも2.1%の上昇となったほかJR東海ANAホールディングスなど鉄道航空関連の株価も軒並み値上がりした(テレ東)

 

 

5.エネルギーの動向

今注目されている洋上風力。環境省などによると、洋上風力の導入ポテンシャルは約1兆5600億kwhある。長崎県五島市福江島の沖合5kmには、浮体式洋上風力発電施設がある。五島列島周辺は1年を通じて安定した風量が見込めることから建設地となった。発電した電気は海底ケーブルを通し福江島に送電される。この事業の旗振り役が戸田建設。ノウハウを蓄積するため台風の多い海域に設置した。戸田建設は2010年から環境省と実証事業を開始した。戸田建設は2021年10月、ENEOS、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力と「五島フローティングウィンドファーム」を設立し、来年秋までに浮体式洋上風力発電施設を8基建設予定。総事業費は約200億円(テレ東)。

 

 

●新潮流

「サハリン1・ロシア政府・日本側の権益維持を承認」

ハリン1を巡ってはロシアによるウクライナ侵攻を受けて米国の石油大手、エクソンモービルが撤退を表明した。日本からは政府や大手商社などが出資する事業会社、SODECOサハリン石油ガス開発がプロジェクトの30%の権益を保有していたが、ロシア政府は先月、新たに設立されたロシアの会社に事業を移し一時的に権益を管理した。その後、日本側が新会社の事業に参画する方針を示し、国営のタス通信などは、ロシア政府は日本側が従来と同じ30%の権益を維持することを承認したと14日伝えた。これについて経済産業省は「今回のロシア政府の決定は日本の中長期的なエネルギー安全保障上、重要な意義があるものだと受け止めている」とコメントしている。サハリン沖の石油天然ガス開発を巡っては日本の大手商社2社が参画する別の開発プロジェクト、サハリン2でも英国の石油大手、シェルが事業からの撤退を表明したあと、ロシア政府が事業を引き継ぐ新たな会社を設立し日本の商社は従来と同じ比率の権益を維持している(NHK)。

 

 

●注目点

「次世代原子炉の具体化など原子力政策の方向性まとまる」

府は脱炭素社会の実現やエネルギー安全保障に対応するため、既存の原発を最大限活用する他、これまで想定しないとしていた原発の新増設などについても、年内をめどに方向性を示すことにしている。これを受けて経済産業省は今後の原子力政策の方向性について素案をまとめた。原発の新増設については今後、廃炉となる原子炉を次世代原子炉に建て替えることを念頭に、具体化をはかる方向で調整を進めることにしている。このほか原発の運転期間について、最長60年の上限は維持しつつ、原子力規制委員会による審査や裁判所による仮処分命令などで運転を停止した期間は除外し、その分を延長可能にする方向である。さらに現在運転を停止している原発の再稼働については、国が前面に立って地元の理解を得るため、地域の避難計画の策定などを支援する国の職員による新たなチームを創設するなどとしている。経済産業省はこの素案を審議委員会で議論するとともに与党などとの調整を進め、12月に予定されている脱炭素社会の実現に向けた政府の会議で取りまとめた内容を報告することにしている(NHK)。

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・くら寿司、第2位・ロイヤルホールディングス、第3位・オリエンタルランド」

2022年11月のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「くら寿司」が34億1874万円で第1位となった。具体的には、「くら寿司・客が選ぶ本当に好きなメニューベスト5」「円安が前提の事業戦略・国内の希少魚をAI養殖」等によるものであった。第2位は「ロイヤルホストの従業員が選んだイチ押しメニューを、超一流料理人が値段に見合った味かどうかをジャッジする」等の報道で、「ロイヤルホールディングス」となった。第3位は「東京ディズニーリゾート大特集!3年ぶり開催!クリスマスイベント」などの報道で「オリエンタルランド」。第4位は「アバターが接客・ローソンが近未来型店舗をオープン」などの報道で、「ローソン」となった。第5位は「羽田国際線に直結の施設・来年1月開業前に対テロ訓練」などの報道で「東京空港事務所」となった。第6位は「上越新幹線開業40周年・“緑色の200系”再現」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第7位は「コロナ飲み薬・ゾコーバの処方始まる」などの報道で「塩野義製薬」、第8位は「ロヒンギャ難民女性を支援」などの報道で、「ファーストリテイリング」となった。第9位は「魚は作る時代に!開発進む“培養トロ”・2024年頃・日本にも登場!?」などの報道で「FOOD & LIFE COMPANIES」、第10位は「興行収入・約28億円200万人超・新海監督『すずめの戸締まり』の魅力」などの報道で「東宝」となった。

 

 

11月の人物ランキング

「第1位・ツイッター・イーロンマスクCEO、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁、第3位・日本経団連・十倉雅和会長」

第1位・ツイッター・イーロンマスクCEO131件(イーロンマスク・アップル非難「ツイッターアプリを排除と脅してきた」など)、第2位・日本銀行・黒田東彦総裁39件(日銀総裁・金融緩和継続「最も適当」など)、第3位・日本経団連・十倉雅和会長17件(経団連会長・賃上げを呼びかけなど)、第4位・トヨタ自動車・豊田章男社長15件(総理・トヨタ社長らと意見交換など)、第5位・SMBC日興証券・近藤雄一郎社長15件(SMBC日興証券・近藤社長“再建に道筋つけたところで身を引く”など)、第6位・三井住友フィナンシャルグループ・太田純社長13件(相場操縦事件めぐり陳謝・日興証券社長は半年間無報酬)、第7位・Rapidus・小池淳義社長11件(新会社社長が語る・日の丸半導体・生産拠点の構想など)、第8位・ソフトバンクグループ・孫正義社長9件(決算でのプレゼンきょうで最後など)、第9位・クリスピークリームドーナツジャパン・若月貴子社長8件(日本オリジナル商品で再燃・クリスピークリーム復活劇など)、第10位・塩野義製薬・手代木功社長8件(国産初「ゾコーバ」緊急承認・期待と課題など)。

 

 

●テレビの窓

「アマゾン・フェイスブック・巨大ITで相次ぐ人員削減」

マゾンは従業員約1万人を解雇すると発表。対象は小売り部門などで過去最大のリストラ。早ければ11月第3週にも開始される。アマゾンはネット通販の最大手で、映画など見放題の定額制サービス「アマゾンプライム」を提供している。従業員は世界中で154万人。去年の売り上げは過去最高の約54兆円だった。ニューヨークタイムズによるとコロナの感染拡大が落ち着き、ネット通販の売り上げの成長が鈍化していることから、過剰投資や人員拡大によるコスト高に直面しているためだという。メタ(旧フェイスブック)も全社員の13%にあたる1.1万人以上の解雇を発表した。ザッカーバーグCEOは「解雇は苦渋の決断だった」と話している。従業員が8万7000人のメタはフェイスブックやインスタグラムなどのSNSを運営し、近年はメタバース(仮想空間)に巨額な投資を行っている。メタバース事業が不調で広告収入の減少が人員削減に影響しているのではないかといわれている。早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授は「IT企業はこれまで高成長だったため、従業員を大量に採用してきたが、インフレや金利上昇で不景気となり株価も下落している。巨大IT企業は高賃金なので不況に対応するために増やしすぎた従業員を大量解雇している」という。元AERA編集長・浜田敬子氏は「GAFAが人材を独り占めしていた。その調整をしたいというのもあるのではないか。これにより優秀な人材が市場に出てきてスタートアップで新しい産業が生まれるチャンスも出てくる」と分析した(テレ朝)。

 

JCC株式会社