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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年8月)

「4~6月期GDP・年率3.5%増」

今月の特徴は、1.4~6月期GDP・年率3.5%増、2.FRB議長・金融の引き締め強調発言、3.貿易収支・赤字1兆4000億円余・7月では過去最大、4.新型コロナ第7波の動向、5.エネルギーの動向となった。           

 

1.4~6月期GDP・年率3.5%増

内閣府は、ことし4月から6月までのGDPの改定値を発表し物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてプラス0.9%となったと発表した。これを年率に換算するとプラス3.5%となり、速報値のプラス2.2%から上方修正され3期連続のプラスとなった。内訳を見るとGDPの半分以上を占める個人消費が前の3か月と比べてプラス1.2%と速報値のプラス1.1%から上方修正された。3月にまん延防止等重点措置が解除され、外食や旅行などのサービス消費が回復したことに加えて、最新の統計を反映させた結果、速報値の段階よりも自動車や衣服の購入が増えたことが主な要因。また企業の設備投資はソフトウエア投資が伸びていることからプラス1.4%からプラス2.0%に引き上げられた(NHK9/9)。

 

2.FRB議長・金融の引き締め強調発言

米国FRB・連邦準備制度理事会のパウエル議長は金融政策に関するオンライン討論会に出席し、物価の抑制を優先し、金融の引き締めを改めて強調した。「(インフレ)対策に強く関与し、仕事が完了するまで続ける」と述べた上で「時期尚早な金融緩和はリスクだというのが過去の教訓だ」と指摘した。さらに労働市場は引き続き堅調との見方を示した。国内のインフレ対策を最優先とし、大幅な利上げを継続する姿勢を示した形。市場では今月20日から開かれるFOMC・連邦公開市場委員会で3会合連続となる0.75%の利上げも予想されている(9/8テレ東)

 

3.貿易収支・赤字1兆4000億円余・7月では過去最大

先月の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が1兆4368億円の赤字と、7月としては過去最大の赤字額となった。貿易赤字は12か月連続となる。輸出額は自動車や半導体の製造装置がけん引し、去年の同じ月と比べて19%増加した一方、輸入額は原油や石炭、LNG(液化天然ガス)などのエネルギー価格が上昇したため、47.2%の大幅な増加となった。外国為替市場で円安が進んでいることも背景にして輸入額が輸出額を大きく上回る状況が続いている。財務省はエネルギーなどの市場価格に貿易収支が大きく影響される状況が続いていると分析している(NHK)。

 

4.新型コロナ第7波の動向

岸田総理は記者会見を開き、オミクロン株に対応したワクチン接種の開始時期を、当初予定していた10月から前倒しする方針を明らかにした。感染の第7波の後を見据えた新型コロナ対応について専門家や現場の意見も踏まえながら、全数把握や陽性者の自宅療養期間の見直しなどを進めている。水際対策については9月7日から、一日当たりの入国者数の上限を2万人から5万人に引き上げるとともに、観光目的の外国人の入国についても、すべての国を対象に添乗員を伴わないツアーを認めるなど、さらなる緩和を表明した(NHK)

 

5.エネルギーの動向

福島第一原発の事故以降、「脱原発」の流れが続いた日本だが、24日、政府は次世代原発の建設検討を指示した。世界的に天然ガスの供給が不安定となるなど、エネルギー危機の懸念が高まる中、原発政策に大転換する格好である。次世代原発のカギは「安全性」で、開発中のものは、地震や津波など自然災害への耐性を強化したほか、万が一の際、放射性物質を閉じ込めることが可能で、政府は、来年夏以降に新たに7基の原発の再稼働を目指す方針も表明した(日テレ)。一方、脱炭素の実現に向けて政府が導入に力を入れている洋上風力発電について、政府は入札で事業者を選ぶ基準を見直す方針である。電力の安定供給を確保するには早期の稼働を促す必要があるとして、新たな基準では稼働時期の早さに重点を置くとしている。一方で過度に早さを重視し過ぎると事前の開発活動が誘発され、公正な競争が行われなくなる可能性もあるのではとしている(NHK)。

 

 

●新潮流

「世界が注目・アフリカ市場・課題解決にスタートアップ」

8回アフリカ開発会議では日本からアフリカに対して官民合わせ総額300億ドルの資金投入を行うことが表明された。投資の促進や人材育成のほか、食糧危機への支援も行う。アフリカの人口14億人は2050年には約25億人規模になると国連は推定している。そのため人口ボーナスで消費市場が拡大し、再生可能エネルギー分野のビジネスチャンスも生まれている。アフリカは近年では貿易や投資などビジネスのパートナーと見られており、固定電話より先に携帯電話、銀行口座より先にモバイルマネーが普及する「蛙飛び現象」という一足飛びの技術革新が起きている。デジタル技術で躍進するスタートアップ企業が世界中から投資資金を集め始めユニコーン企業も続々と生まれている。国連貿易開発会議アンクタッドによると世界のアフリカへの直接投資額は830億ドル(2021年)となっている。中国はアフリカに対して巨額な融資をしていが、財政の悪化で借金返済に苦しむ国もある。返せない時に資源や重要なインフラの権益を失う恐れがある。中国は巨額融資を伴わないPPP・官民連携の契約でケニアの高速道路を建設した。これに対し日本は人材育成や質の高いインフラ整備に重点を置いている。TICAD8で34の企業や団体が92本の覚書をアフリカ側と交わした。豊田通商はエジプトと物流の脱炭素化を目指す調査を進めることで合意し、伊藤忠商事はグリーンアンモニアの開発で南アフリカの企業と協力することになった。最新技術の実験の場として使い、成功を自分の国やグローバルに展開するビジネスにつなげていく手法を「リバースイノベーション」というが、その有望な機会がアフリカにある(テレ東)。

 

 

●注目点

「大企業の設備投資計画・高度経済成長期以来の大幅増”」

本政策投資銀行が発表した調査によると今年度、大企業が計画している設備投資額は19兆6000億円あまりで、昨年度と比べプラス26%と、半世紀ぶりに高い伸びが見込まれている。これは高度経済成長期の1970年度以来の高い伸び率であり、コロナ禍で先送りしていた投資の再開に加え、脱炭素やデジタル化への投資が全体を押し上げた形となっている。このうち製造業は半導体やEV(電気自動車関連)などがけん引し、30.7%増える計算となる。その半導体に、過去最大の投資を進めているのがソニーグループ。現在、世界シェアのおよそ4割を占めている画像センサーの増産に向けて2023年度までの3年間で、9000億円の設備投資を計画している。今年度はおよそ3500億円を投資する見込みである。日本政策投資銀行・宮永径産業調査部長は「米国の景気が後退し、ヨーロッパもウクライナの影響を受けている。流れが日本に及んだ場合、企業も下方修正していく可能性はある」と語った(テレ東)。

 

 

8月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東武鉄道、第2位・ミニストップ、第3位・三井不動産」

2022年8月のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「東武鉄道」が32億2717万円で第1位となった。具体的には、「リアル桃鉄・東武鉄道とコラボ」「東武池袋×ベビースター・コラボメニュー販売」「スカイツリー“縁日&盆踊り”」等によるものであった。第2位は「ミニストップの従業員が選んだ商品を、超一流スイーツ職人が値段に見合った味かどうかをジャッジ」等の報道で「ミニストップ」となった。第3位は「三井アウトレットパーク横浜ベイサイドに密着」などの報道で「三井不動産」、第4位は「ディズニーの歴史を体験・展示会」などの報道で「オリエンタルランド」、第5位は「高級志向続く・ペット用も登場・早くも来年のおせちお披露目」などの報道で「そごう西武」となった。第6位は「特急ひだ・新型車両・魅力を公開」などの報道で、「東海旅客鉄道」、第7位は「アマゾン・ルンバ買収を発表」などの報道で、「アマゾンジャパン」、第8位は「ブラッドピット・日本が舞台・新作映画の撮影秘話明かす」などの報道で、「ソニーグループ」となった。第9位は「デコホーム・秋の新商品・大人かわいいペイズリー」などの報道で「ニトリホールディングス」、第10位は「百花・完成披露・長澤まさみ&菅田将暉・思い出」などの報道で「東宝」となった。

 

 

8月の人物ランキング

「第1位・あおい交通・松浦秀則社長、第2位・日野自動車・小木曽聡社長、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長」

第1位・あおい交通・松浦秀則社長38件(バス横転炎上・運行会社が会見「心よりおわび」など)、第2位・日野自動車・小木曽聡社長38件(日野自動車・不正データ問題で記者会見へなど)、第3位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長24件(ソフトバンクG・創業以来最大の赤字など)、第4位・トヨタ自動車・豊田章男社長13件(不正データ提出問題・商用車の技術開発会社“日野自動車除名”など)、第5位・ペッパーフードサービス・一瀬邦夫社長13件(“いきなり!ステーキ”社長辞任など)、第6位・日本銀行・黒田東彦総裁10件(日銀当座預金・みずほ銀にマイナス金利適用など)、第7位・KDDI・高橋誠社長8件(KDDI大規模通信障害・緊急対応・空白の11年など)、第8位・東京電力・小早川智明社長8件(原発の処理水“放出”設備着工を県など了解など)、第9位・藤倉コンポジット・森田健司代表取締役社長6件(複合化を得意とする藤倉コンポジットなど)、第10位・TESS・鈴木堅之社長6件(驚きのエピソードが続々!足こぎ車いすの実力とは…など)。

 

 

●テレビの窓

「脱炭素に向けて注目集める混燃技術」

界的に温室効果ガスの排出削減「脱炭素」に向けた取り組みが求められる中、燃料としてのアンモニア利用に期待が高まっている。ロシアからの天然ガス供給が減っているヨーロッパやLNGの調達が課題となっている日本では、石炭火力発電への依存を強めざるを得なくなっており、「脱炭素」と「エネルギーの安定供給」の一石二鳥を狙い、石炭にアンモニアを混ぜて石炭火力発電所で燃やす「混燃技術」に注目が集まっている。アンモニアだけではない。実は水素もまた二酸化炭素を出す量を減らせる「混焼技術」で使われている。関西電力は姫路第一発電所と姫路第二発電所で2030年に燃料のLNG(液化天然ガス)に水素を混ぜて燃やす方法での発電を検討していることを明らかにした。こうした「混焼」と呼ばれる方法での発電を可能にするため、今後、水素を使った発電に対応した設備に切り替えていく他、発電所の周辺にある企業と協力して、水素の受け入れ基地や、パイプラインなどの整備を進めたい考え。年間で10万トン程度の水素を調達する予定であり、ここには再生可能エネルギーを使って作り出した「グリーン水素」を活用する。関西電力は「他の火力発電所でも水素を混ぜて発電することを視野に入れる他、将来的には水素だけを燃料にして発電することも目指していく」としている(NHK)。

 

JCC株式会社