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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年6月)

「日銀・大規模金融緩和維持」「大企業景況感2期ぶりプラス」

今月の特徴は、1.日銀・金融緩和維持、2.株主総会の動向、3.外国人観光客の動向、4.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀・金融緩和維持

日銀は19日、大規模な金融緩和策を維持することを決めた。2%の物価安定の目標を賃金の上昇を伴う形で持続的、安定的に実現することを目指している。植田総裁は「海外の経済動向や今後のウクライナ情勢など、わが国経済を巡る不確実性は極めて高い」と述べ、粘り強く金融緩和を継続していくとしている。一方で米国の中央銀行に当たるFRBは、金融引き締めを継続する構えで、日米の金利差を背景とした円安の動きが強まっている(NHK)。

 

2.株主総会の動向

東京電力は28日、株主総会を開催し、「処理水放出処分は先送りできない」として株主に理解を求めた(TBS)。27日に日産自動車が開いた定時株主総会で内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)を中心とする取締役体制が決まった。総会後の取締役会では意思決定を速くするために最高執行責任者(COO)を置かないことを決めた(テレ東)。ことしの株主総会は株主の動きがかなり活発になっているのが大きな特徴で、株主が自ら提案する株主提案があった企業が90社と過去最多(三菱UFJ信託銀行調べ)となっている。特にアクテイビスト(モノ言う株主)の動きが活発で、取締役の過半数を社外取締役にしてほしいとか、取締役にも株式を保有するなどガバナンス(企業統治)のあり方そのものを改善することなどを求めている。日本型経営というのは創業家や社長に権限が集中、経営の安定を重視して成長を追求せず、株主を軽視する傾向にある。改善の余地が大きいため、海外のアクティビストがこぞって今、日本型経営をターゲットにしている(NHK)。

 

3.外国人観光客の動向

外国人観光客の利用が多いクルーズ船の日本への寄港回数が回復している。国土交通省によると、ことし1年間に国内外のクルーズ船が日本に寄港する回数は1825回の予定で、去年の2.5倍に増える見通し。コロナ禍前のピークだった2018年と比べても6割程度まで回復すると見られている。海外のクルーズ船は各地の港での買い物や観光など地域への経済効果も期待され、クルーズ船で日本を訪れる外国人観光客を2年後にコロナ禍前と同じ水準の250万人に増やす目標を政府は掲げている(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

政府関係者によると岸田総理大臣は7月中旬、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、カタールの3か国を訪問し、各国首脳との会談などを行う方向で調整を進めている。それぞれの首脳会談で岸田総理はエネルギー政策をめぐり意見交換し、ウクライナ情勢も背景に、先行きの不透明さも指摘される国際石油市場の安定化に向けた対応を呼びかける見通し。また産油国で再生可能エネルギー導入の動きが広がっていることを踏まえ、日本として取り組みを支援していく姿勢を示し、連携を確認したい考え。原発についても動きがあった。関西電力は、運転開始から49年となる福井県にある高浜原子力発電所1号機について、7月28日にも再稼働する方針を明らかにした。再稼働すれば、2011年以来となる。運転開始から40年を超えた原発としては、国内で2例目となる。関西電力は、高浜原発2号機についても、9月15日に原子炉を起動させる方針を示した(NHK)。

 

 

●新潮流

「物流2024年問題・解決策はライバル会社との連携」

ラック運転手が不足する2024年問題は食品の物流にも迫っている。解決策のカギは、ライバル同士の協力にありそうだ。福岡市では新たに誕生した倉庫で異例の取り組みが行われている。この倉庫はライバル6社(味の素カゴメ日清製粉ウェルナミツカンハウス食品日清オイリオ)が共同で在庫を保管。手を組むのは加工食品ならではの事情がある。味の素物流企画部・川田圭介シニアマネージャーは「この業界はドライバーに嫌われている業界と言われていて、深刻に考えている。食品ならではの日付のチェックとか、検品作業というものが荷届け先であるため、長期間待機するということが起きている」と話す。午前10時に到着したトラックが荷物を下ろすのに7時間待たされていた。加工食品は荷待ちの発生件数が物流業界トップだが、共同配送によってトラック台数は2割減り、他の対策も合わせ車両の滞在時間は半分に減ったというデータもある。ライバルの協力の動きは、ほかにも出てきた。大手スーパー・ヤオコーマルエツサミットライフの担当者が都内で「物流研究会」を開催。これまで物流面でも激しい競争を繰り広げてきたスーパー各社が、非効率な物流の改革に乗り出している。この研究会が決めたのが「特売」ルールの統一。各スーパーがしのぎを削る特売用の商品は、追加発注が繰り返され物流への大きな負担となっていたが、発注は6日前までに済ませ、それ以降は追加発注しないルールを取り決めた。ここに西友カスミも新たに加わった。食品を食卓までどう届けるか。業界を超えた改革が急ピッチで進んでいる(TBS)。

 

 

●注目点

「産業革新投資機構・JSRにTOB」

民ファンドの産業革新投資機構は半導体素材の世界大手で日本のJSRに対して、ことし12月下旬をメドにTOB(株式の公開買い付け)を行うことを決めた。必要な資金はおよそ9000億円に上る見通しで、JSRはこの買収を受け入れるとしている。JSRは半導体素材の一つで、基板の上に回路を作る工程に使うフォトレジストを手がける世界大手。先端半導体の分野では、日本は世界に出遅れているが、半導体素材の分野では強みもあり、JSRが手がけるフォトレジストの分野では日本企業5社で世界のシェアのおよそ9割を占めている。官民ファンドによる買収でJSRはいわば国策会社となるが、会社にとっては株式の上場をやめることになり、さまざまな株主の利害に左右されずに長期的に事業の強化を目指せることになる。一方でそのことは経済安全保障の観点から半導体産業の強化を図る政府にとっても大きな意味を持つ。JSRトップ、エリックジョンソン社長は26日の記者会見で「業界の再編を主導して、長期的に国際的な競争力を維持できるようにしたい」と述べており、強みをさらに伸ばすためにほかの日本企業も交えた再編が起きるかが今後の焦点になる(NHK)。

 

 

6月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・三井不動産、第3位・王将フードサービス」

2023年6月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、33億8423万円で、「オリエンタルランド」が第1位に輝いた。具体的には、「TDRワンデーパス『1万円超』に」「東京ディズニーリゾート40周年・JALの特別塗装機を取材!」等によるものであった。第2位は「三井不動産が公開・最新ロボット駆使で自動化物流センター」等の報道で「三井不動産」となった。第3位は「餃子の王将マニアが集結 激ウマ!!最強メニュー決定戦!」などの報道で「王将フードサービス。第4位は「マ・マーvs超一流イタリアンシェフ」などの報道で、「日清製粉グループ本社」となった。第5位は「ELLYとLIKIYAが吉野家の厨房に入って、現グランドチャンピオンの角将侑から吉野家120年のワザを伝授」などの報道で「吉野家ホールディングス」、第6位は「劇的進化にマツコ驚愕!水分逃さないバルミューダ」などの報道で「バルミューダ」、第7位は「油井飛行士2度目の宇宙へ・24年ごろISS長期滞在」などの報道で「宇宙航空研究開発機構、第8位は「パナソニック・マツダにEV電池供給へ」などの報道で「パナソニックホールディングス」となった。第9位は「東武の新型特急スペーシアX来月登場 優雅個室コックピットスイート」などの報道で「東武鉄道」、第10位は「松坂屋上野店・シンシン子育て・写真展・パンダまみれイベント」などの報道で「J.フロント リテイリング」となった。

 

 

6月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長、第3位・オープンAI・サムアルトマンCEO」

第1位・日本銀行・植田和男総裁76件(日銀総裁「インフレ持続なら政策変更も」など)、第2位・アキダイ・秋葉弘道社長38件(鈴木福の社長!教えてください!・アキダイ社長に密着!など)、第3位・オープンAI・サムアルトマンCEO27件(アルトマンCEOが日本の学生と対談など)、第4位・アップル・ティムクックCEO27件(Apple・ゴーグル型端末発表・49万円・今後開発競争が激化かなど)、第5位・ジャニーズ事務所・藤島ジュリー景子社長16件(性加害問題・初会見防止チームなど)、第6位・テスラ・イーロンマスクCEO16件(米国テスラ・インド進出を確信など)、第7位・ソフトバンクグループ・孫正義社長16件(ChatGPTトップ孫正義氏と協業模索など)。第8位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長10件(トヨタ総会・新体制の選任承認など)、第9位・東芝・島田太郎社長10件(東芝・島田社長ら再任可決など)、第10位・東京電力HD・小早川智明社長8件(柏崎刈羽原発のテロ対策など)。

 

 

●テレビの窓

「Japan Drone2023・最新ドローン集結」

6日。およそ240の企業や団体が集結したドローンの展示会「Japan Drone2023」が幕張メッセ(千葉市)で開かれた。去年12月操縦士の目が届かない“目視外”かつ、地上に人がいる場所で飛行可能な「レベル4」が解禁され、そのレベル4を想定した最新ドローンが並んだ。KDDIと、その子会社が発表した遠隔飛行システムは、衛星通信システム「スターリンク」を使用して遠隔で操作しているため、山間部など電波が届かなかった場所でも使用が可能になり、建設現場での作業や災害時などでの利用を見込んでいる。ベンチャー企業・ブルーイノベーションが開発した離着陸設備「ドローンポート」情報管理システムは、複数のドローンを一括管理することで実用性を加速できるとしている。人が入れない狭い場所でも搭載カメラで内部の状態を点検できるドローンは、老朽化が進む社会インフラの点検や人手不足の解消につながるとして期待されている。ブルーイノベーション・熊田貴之社長は「世界で初めて国際標準化をとり、規格化され準じたドローンポートのシステムで日本の生み出した色々な製品が世界のスタンダードになっていくことが極めて大きな意味を持っている」と語った(フジ)。水中ドローンはこれまで潜水士が目視で確認していたダムや水道などのインフラ設備の点検を代わりに行う。「IBIS2」は人間が入りづらい空間を飛ぶためにおよそ20センチの手のひらサイズで設計された。飛行しながらデータを収集して、3Dマップを作ることができる。この3Dマップを基に、カメラでは確認できない小さなヒビなども見つけることも可能で、すでにJR東日本などの駅などで利用されている(テレ東)。

 

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