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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年5月)

「GDP“戦後最大”の下げ幅・マイナス4.6%」

今月の特徴は1.GDP“戦後最大”の下げ幅・マイナス4.6%、2.緊急事態宣言延長、3.ワクチンの動向、4.決算の動向、5.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.GDP“戦後最大”の下げ幅・マイナス4.6%

今年1~3月期のGDP国内総生産は、年率換算で3.9%のマイナスとなり、3期ぶりのマイナス成長となった。一方、昨年度のGDPは4.6%マイナスで、リーマンショックを超える戦後最大の落ち込みとなった(TBS)。

 

2.緊急事態宣言延長

28日、政府は9都道府県に出されている緊急事態宣言を6月20日まで延長することを決めた。東京都は1000平方メートルを超える映画館や水族館、美術館などについては休業から時短要請に切り替える方針。生活必需品を除いて休業要請が出ていた百貨店などの商業施設は土日のみ引き続き休業とし、平日は営業時間を午後8時までとするよう求めていく。オリエンタルランドは東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの時短営業や入場者数の制限などを来月20日まで継続すると発表した(テレ朝)。

 

3.ワクチンの動向

日本でもワクチンパスポートの導入を望む声がビジネス界を中心に高まっている。コロナで2870億円もの赤字に陥る日本航空では新型コロナ陰性をスマホで表示できるデジタル証明書、コモンパスの実証実験を行った。現在はまだ陰性を証明するのみだが、将来的に入国の要件が必要になった場合、システムとして取り込む必要があるとしている。コモンパスは世界各国の経営者らが連携している国際機関で世界経済フォーラムが推進し、50か国以上が参加している。日本航空は、このほかIATA(国際航空運送協会)が開発するデジタル証明書の実験も予定し、合わせて3種類を試験導入していく。ワクチンパスポートをめぐっては、ワクチンを打たない人に不利益があってはならないという慎重な意見もある(テレ東)。

 

4.決算の動向

ソフトバンクグループは、2020年度の決算を発表。グループ全体の最終的な利益は4兆9879億円で、国内企業としては過去最高となる。世界的な株高を背景に米国のIT企業・ウーバーなど投資先の株価が値上がりし、投資した企業が新たに上場するケースも相次ぎ、保有する株式の評価益が底上げされた。他方で、全国の地方銀行の2020年度の決算は全体の46%が最終損益で、減益または赤字となった。新型コロナウイルスの影響の長期化で、貸し倒れに備えた費用が収益を圧迫した形。一方、成田空港会社の2020年度の決算が2004年の民営化後、初めての赤字となった。コロナの影響で旅客数が前年度比7.8%にとどまったため。最終的な損益は前の年度の244億円の黒字から、714億円の赤字になった(NHK)。感染の拡大により旅行需要が激減した影響で、JTBの2020年度の決算は、過去最大の1051億円の最終赤字となった(テレ朝)。ANAホールディングスの2020年度の決算は、旅客数の大幅な減少により4046億円の赤字となるなど過去最大の赤字となった(日テレ)。

 

5.エネルギーの動向

原子力発電所で使った核燃料から取り出したプルトニウムで作るMOX燃料について、経済産業省は再処理して再利用する技術を2030年代後半をめどに確立する方針で、電力各社に協力を求めた。現在、MOX燃料を使っている原発が4基にとどまっていることから、梶山経済産業大臣は「新たに推進する自治体向けの支援を検討する」と述べた(NHK)。一方、伊藤忠商事は自家消費で余った太陽光発電の電力を一般消費者に供給する事業を始めることになった。自家消費用の太陽光発電は、電力を使いきれないと考える施設や店舗が多く、普及の足踏みとなっていたが、伊藤忠商事は余剰電力を融通する仕組みをつくり、設備の設置を後押ししていく方針(テレ東)。

 

 

●新潮流

「G7気候環境相会合で合意・石炭火力発電への支援停止へ」

ンラインで5月20日から21日まで開かれたG7(主要7カ国)の気候・環境相会合が閉幕した。公表された共同声明では石炭火力発電について、「世界の気温上昇の最大の要因」と指摘した上で、温室効果ガスの排出を抑える対策がとられていない石炭火力発電について、「政府による開発援助や輸出支援といった国際的な支援を終わらせるために、2021年末までに具体的な措置をとる」としている。また、電力システムの脱炭素化を2030年代に大幅に進めるほか、世界の平均気温の上昇を「産業革命前に比べ1.5度以下に抑えることを目指す」などとしている。英国・BBCは「日本が石炭火力への強い制限に反対した」と指摘した上で、「英国政府はCOP26までに日本が態度を変えることを期待している」と釘を刺した。一方、日本政府は、「会合の後、出された共同声明が日本の立場と整合性が取れる内容になっている」とし、「各国の事情に応じた対応も認められている」として、「日本としてはアジアの新興国などに石炭火力発電を輸出する際の支援は妨げられないと考えている」としている。石炭火力発電への支援停止の動きは日本国内にも出てきており、より踏み込んだ対応を取る動きが相次いでいる。このうち、三井住友フィナンシャルグループは、石炭火力発電所向けの融資の方針を厳格化し、6月からは既存の設備を拡張する場合でも融資しないようにする。三菱UFJフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループは一部の例外を除き、融資は行わない方針(NHK)。

 

 

●注目点

「GDP最大の下落・日本経済回復のカギは?」

年1~3月の経済成長率は3四半期ぶりにマイナス成長となった。対面型のサービス産業の苦境が長引く様相を見せる中、経済面での後遺症も懸念されている。緊急事態宣言の対象地域拡大など、事態が一段と深刻化する中、日本経済が持ちこたえるための鍵を握るのはワクチンの接種である。海外では経済の回復は感染状況とリンクする傾向が見て取れる。接種が進む米国は、1月~3月の実質GDP(国内総生産)が3期連続のプラスになった一方で、感染拡大が深刻なユーロ圏は2期連続のマイナスと明暗が分かれている。ただユーロ圏もワクチンの接種が進んできていることなどから、今年の経済成長率の見通しを上方修正した。日本は、緊急事態宣言で飲食や旅行などが制限され、足元の4月~6月のGDPはマイナスが続くという厳しい見方もある。ワクチンの接種が進み、感染の拡大が抑えられれば、消費は一気に上向くと考えられている。外食や旅行などの制限が長引いているだけに、安全・安心に外出できるようになれば、経済活動が急回復する可能性もある。諸外国に比べて遅れが指摘されるワクチンの接種をいかにスピードアップできるかは、経済の面でも重要なテーマとなっている(NHK)。 

 

 

5月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・ローソン、第2位・Zホールディングス、第3位・ワークマン」

2021年5月度におけるテレビ露出CM価値換算ランキングでは「ローソン」が36億9700万円で第1位に輝いた。具体的には「ウーバーによる配達が約370商品で可能になった」「コンビニで指定ゴミ袋をレジ袋代わりに販売、再利用できる取組みを開始した」「ワクチン接種予約?に関する対面での相談サービスを開始」などによる報道が寄与した。第2位は「コロナ禍の株主総会・オンラインだけでの開催・法改正見越し企業が導入検討」などの報道で「Zホールディングス」となった。第3位は「ワークマン最高益更新」などの報道で「ワークマン」、第4位は「2030年度までに・三井不動産・首都圏全施設で再生エネ」などの報道で「三井不動産」、第5位は「西武園が100億円“大変身”・復活請負人が仕掛ける昭和の世界」などの報道で「西武ホールディングス」、第6位は「かっぱ寿司・シャリで勝負」などの報道で「カッパ・クリエイト」、第7位は「開店回転寿司・食品ロス削減・1皿110円食べてSDGs」などの報道で「くら寿司」、第8位は「コロナ禍で売れる!冷凍食品・1年かけたシュウマイ開発の末に…」などの報道で「味の素」となった。第9位は「千葉市の幕張新都心地区に開業・JR京葉線・新駅の名前・来月から公募」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第10位は「ドナルドダック誕生祝い・ストア&ネット・グッズ発売」などの報道で「オリエンタルランド」となった。

 

5月の人物ランキング

「第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長、第2位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長、第3位・経団連・中西宏明会長」

第1位・ソフトバンクグループ・孫正義社長47件(国内企業では過去最高・ソフトバンクグループ・最終利益4.9兆円など)、第2位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長38件(楽天グループ・サッカースタジアムを大規模接種会場になど)、第3位・経団連・中西宏明会長27件(経団連・中西会長が治療で退任など)、第4位・AMAZON・ジェフベゾスCEO17件(アマゾン創業者・ベゾスの企業・宇宙船の搭乗権を“競売”になど)、第5位・テスラ・イーロンマスクCEO16件(ビットコイン・急落の背景は?など)、第6位・日本銀行・黒田東彦総裁12件(日銀・黒田総裁・感染症の経済影響“来年度ごろ収束と想定”など)、第7位・アキダイ・秋葉弘道社長11件(客増で苦慮・スーパーの密対策・新たなサービスなど)、第8位・ビビッドガーデン・秋元里奈社長11件(365日Tシャツ社長・本社は一戸建てなど)、第9位・トヨタ自動車・豊田章男社長11件(世界初・トヨタ・水素エンジン車でレースなど)、第10位・イケアジャパン・ヘレンフォンライス社長8件(原宿・渋谷・新宿…若者熱狂の“都心型店舗”など)。

 

 

●テレビの窓

「半導体世界最大手・台湾TSMC・日本で共同研究開発へ」

界各国で、次世代の通信ネットワークや自動運転などに欠かせない最先端の半導体の研究開発が激しくなる中、台湾のTSMCが日本のイビデン芝浦メカトロニクスといった半導体の材料や製造装置メーカー約20社などと最先端の半導体の研究開発を国内で共同で行うことになった。TSMCは半導体の製造技術で世界最大手。茨城県つくば市に設ける研究開発拠点で、TSMCは複数のチップを積み重ねることで、性能の向上と省エネを両立させる3次元化の技術の確立を目指すことにしている。政府はNEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)に設けられた基金から約190億円を拠出して後押しする方針(NHK)。経済産業省は台湾の世界的半導体メーカーTSMCが新たに日本で設ける半導体開発拠点に約190億円の支援を決定したと発表。開発には旭化成など日本企業の他、東京大学などが参加する(TBS)。 

 

JCC株式会社