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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和3年11月)

「過去最大35.9兆円補正予算案・臨時閣議で決定」

今月の特徴は1.過去最大35.9兆円補正予算案・臨時閣議で決定、2.日本政府・石油国家備蓄の一部を市場に放出へ、3.南アの新変異株・拡大懸念で世界同時株安に、4.GDP・7月~9月・年率-3.6%、5.ワクチン新薬の動向、6.石炭火力発電の段階的廃止に日本不参加となった。                              

 

1.過去最大35.9兆円補正予算案・臨時閣議で決定

政府は臨時閣議で新たな経済対策の裏付けとなる今年度の補正予算案を決定した。新型コロナの感染拡大防止には、18兆6059億円を計上した。地域の医療機関の病床確保など、医療体制を整備するための緊急包括支援交付金に2兆314億円、住民税非課税の世帯に対する1世帯当たり10万円の給付金として、1兆4323億円が計上されている。社会経済活動の再開と、次の危機への備えには、1兆7687億円。新しい資本主義の起動には8兆2532億円を計上。防災減災など安全安心の確保は、2兆9349億円。自衛隊の装備品の強化などに7354億円が盛り込まれている。また、農林水産省は、漁港や農地などの施設の災害復旧事業や、軽石の撤去費用などとして、合わせて835億円を計上した。こうした歳出に、地方交付税交付金などを加えた一般会計の総額は、35兆9895億円。補正予算として過去最大となる。財源の不足分を賄うため、22兆580億円の国債を追加で発行する。当初予算も合わせた今年度の予算全体で見ると、新規の国債の発行額は、65兆円を超える規模にまで膨らみ、歳出の46%を国債に頼る状況となる。政府は12月6日に召集する臨時国会に補正予算案を提出し、速やかな成立を目指すことにしている(NHK)。

 

2.日本政府・石油国家備蓄の一部を市場に放出へ

原油価格が高騰する中、日本政府は米国・バイデン政権の要請を受け、石油の国家備蓄の一部を市場に放出する方針を決めた。備蓄の放出は法律で緊急時に限定されているが、余剰分を出すという異例の対応により、米国、韓国、インドなどの各国と協調して取り組むことにしている。石油の放出は法律で「ガソリンなどの供給不足や、地震など緊急時に限定」されており、価格上昇の対応策としては想定されていない。政府は余剰分であれば法律の枠組みの中で放出可能と判断した。石油の備蓄放出は2011年6月にリビア情勢の悪化を受け、民間備蓄から出したのが最後で、国家備蓄からの放出はこれが初めて。日本政府としては各国と協調姿勢をとることで、原油価格上昇を一定程度抑えたい狙いがある(NHK)。

 

3.南アの新変異株・拡大懸念で世界同時株安に

南アフリカで新たに確認された変異株は「オミクロン」と名付けられ、WHO(世界保健機関)によってデルタ株と並ぶ「懸念される変異株」に指定された。感染拡大で景気回復に遅れが出るのではないかという懸念から、ニューヨーク株式市場ではダウ平均株価が今年最大の下げ幅となった。ヨーロッパ市場などでも下落しており、世界同時株安の様相を呈している(テレ朝)。

 

4.GDP・7月~9月・年率-3.6%

内閣府が発表したことし7月から9月までのGDP国内総生産の改定値は年率に換算した実質の伸び率がマイナス3.6%となった。内閣府によると経済統計から季節的な要因を取り除く季節調整の方法を見直したうえで最新の統計を反映させた結果だとしている。10月から12月までのGDPはプラスに転じるという見方が出ているが、原材料価格の上昇や「オミクロン」株の広がりが日本経済の回復に向けた懸念材料となっている(12/8NHK)。

 

5.ワクチン新薬の動向

新型コロナの変異ウイルスなど今後の感染症の流行に備え、政府は国内でのワクチンの生産や開発を後押しするため、新たな補助制度を設けることになった。普段はバイオ医薬品を製造し、感染が拡大した際にはワクチン生産に切り替えられる設備を導入した企業を支援することにしている。工場や生産設備に対して2つの機能を持たせることはデュアルユースと呼ばれ、設備投資費用の9割を補助する。ワクチンの生産に必要な素材などをつくるための拠点の整備も支援し、中小企業に4分の3、大企業に3分の2を補助する。ワクチンを開発するベンチャー企業の資金不足を解消するため、ベンチャーキャピタルが3分の1を出資することを条件に国が残りの3分の2を補助する。こうした支援に充てるため、政府は今年度の補正予算案に2700億円余りを計上。新型コロナウイルスのワクチンは輸入に依存したことを踏まえ、政府は支援を強化することで国内でのワクチンの開発や生産を推し進めたい考え(NHK)。

 

6.石炭火力発電の段階的廃止に日本不参加

気候変動について話し合う国連の会議COP26で少なくとも23の国が温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電を段階的に廃止していくと表明した。ベトナムやインドネシアの他、韓国やポーランドも含まれていて、以前から表明している国も併せると46の国や地域が賛同したことになる。一方で日本、米国、中国は表明を見送っている。COP26の会場のそばでは日本の環境NGOも参加し、ピカチュウの着ぐるみ姿で日本に対し抗議活動が行われた。議長国・英国は石炭火力について先進国は2030年までに廃止するよう求めている。脱石炭火力の流れが加速する中、日本は10月に閣議決定したエネルギー基本計画でも2030年度の電源構成のうち石炭火力が約2割を占めるなど、石炭を使い続ける姿勢を崩していない(TBS)

 

 

●新潮流

「東芝・3社に分割へ・異例の決断」

合電機メーカーとして140年を超える歴史を誇る東芝が電力などの「インフラ部門」、半導体、ハードディスクなどの「デバイス部門」、「そのほか」の3つに分け、それぞれを独立した会社にする方針を発表した。「インフラ部門」は発電所や再生可能エネルギー、鉄道などを扱う会社となり、「デバイス部門」は半導体やハードディスクを手掛けるデバイスの会社となる。東芝本体は半導体メモリー大手、キオクシア東芝テックの株を管理する会社として残る。株主総会で承認されれば2年後をめどに再編を目指す。東芝の創業は1875年で、日本初の電信設備メーカーとして白熱電球から電気冷蔵庫、電気洗濯機、電気掃除機、カラーテレビに至るまで未知の体験を日本の人々に届けてきただけでなく、原発をはじめとする発電所や鉄道車両、エレベーターなど、社会の隅々までインフラを整えてきた。朝日新聞・梶原みずほ編集委員は「東芝は原子力発電や防衛装備に関わる重要な技術を多く抱えている。分割して規模が小さくなればその分買収されるリスクも高くなる。米国には国の安全保障の観点から脅威となる海外からの買収案件は大統領が中止できることになっている。国が日本の技術力をいかにして守っていくかという視点も忘れてはいけない」とコメントした(テレ朝)。 

 

 

●注目点

「脱炭素で注目集めるアンモニア」

力発電の割合が高い日本はこれまでLNGの輸入量が世界1位だった。それが今年、初めて中国に追い抜かれる見通しとなった。中国が大幅にLNGの需要を増やす中、今後LNGが十分に確保できなくなる恐れがあり、その場合、電力不足が懸念される。今、三井物産ではLNG以外にも二酸化炭素の排出量を減らせるアンモニアに注目している。肥料としても使われているアンモニアはクリーンエネルギーとして期待されている水素と同じく、燃やしても二酸化炭素を出さない。-250℃以下で保管しなければならない水素に比べ、常温で輸送や貯蔵ができるため、発電コストは水素の4分の1に抑えられる。これを石炭に混ぜて燃やすことにより、その分の二酸化炭素の排出量を減らすことができる。課題は国内の生産量では賄いきれない分をどこから手に入れるのかということ。三井物産ではアンモニアの生産が盛んなオーストラリアから調達しようと動き出している。脱炭素と電力確保という2つの課題をどう両立させるのか、さまざまな模索を続けていくしかないとしている(NHK)。

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・セブン&アイ・ホールディングス、第2位・ビックカメラ、第3位・幸楽苑」

2021年11月度の企業別テレビCM価値換算ランキングでは「セブン&アイ・ホールディングス」が17億3200万円で第1位に輝いた。具体的には、「イトーヨーカ堂大森店などでブラックフライデーを開始」したことや、「セブンイレブンの宅配サービスの強化策」、加えて「レジ袋エコパック」の商品化等の話題が寄与した。第2位は「電気料金値上げ・省電力の防寒グッズが人気」などの報道で「ビックカメラ」となった。第3位は「値上げラッシュの中・値下げ!」などの報道で「幸楽苑」、第4位は「世界初のコメを…男性の正体は?宇宙のデータを生活に…研究者の思い」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第5位は「ブラックフライデー・冷食半額・TV“3万円引き”」などの報道で「イオン」となった。第6位は「高級食材も“100円おせち”好きなものだけ」などの報道で「ローソン」、第7位は「米国行き路線で・JALアプリでワクチン接種証明運用開始」などの報道で「日本航空」、第8位は「ガガ・日本に愛のメッセージ」などの報道で「東宝」となった。第9位は「社員の平均年収100万円アップの原動力とは?激安な理由は…メーカーに発注数を任せる」などの報道で「ワークマン」、第10位は「コスパ最強!知る人ぞ知る業務スーパーの神アイテム」などの報道で「神戸物産」となった。

 

11月の人物ランキング

「第1位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史社長、第2位・日本経団連・十倉雅和会長、第3位・トヨタ自動車・豊田章男社長」

第1位・みずほフィナンシャルグループ・坂井辰史社長54件(みずほ・業務改善計画提出へ・再発防止徹底が課題など)、第2位・日本経団連・十倉雅和会長36件(入国後の待機措置免除など・経団連が経済活性化へ提言など)、第3位・トヨタ自動車・豊田章男社長19件(EVシフトの衝撃~岐路に立つ自動車大国・日本~など)、第4位・東芝・綱川智社長15件(新中期経営計画・東芝を3社に分割へ・正式発表など)、第5位・日産自動車・内田誠社長15件(日産自動車“EVなど開発に約2兆円投資”など)、第6位・ポピンズホールディングス・轟麻衣子社長13件(親子2代で保育サービス・その戦略は?など)、第7位・塩野義製薬・手代木功社長12件(塩野義・新型コロナ飲み薬“海外でも臨床試験”など)、第8位・北海道日本ハムファイターズ・川村浩二球団社長11件(“ビッグボス”新庄劇場開幕・面白すぎる監督就任会見など)、第9位・テスラ・イーロンマスクCEO11件(マスク・5700億円相当のテスラ株売却など)、第10位・飯田屋・飯田結太社長9件(過剰在庫よし!ノルマなし!“喜ばせ業”を目指す飯田屋など)。

 

●テレビの窓

「岸田総理が進める新しい資本主義」

田総理が経済界に3%を超える賃上げへの期待を寄せる中、経団連の来年の賃上げに関する方針の原案が明らかになった。それによると「収益が高い水準で推移増大した企業については定期昇給に加えてベースアップも含めた新しい資本主義の起動にふさわしい賃上げが望まれる」ことを呼びかける内容となっている(日テレ)。26日、第3回目となる「新しい資本主義実現会議」が開催され、岸田総理は、経済団体のトップらに「賃上げに向け協議し、来年に向け3%超の賃上げに期待する」とした上で、「政府として民間企業の賃上げを支援するための環境整備に全力で取り組む」と述べた。岸田総理は自身が掲げる成長と分配の好循環の実現に向け、分配を重視した政策である賃上げを求めることによって中間層を中心とする所得拡大に力を入れていきたい考えである。経団連・十倉会長は「賃上げ目標に特に数字は設けない」としつつも、「業績回復の企業は前向きに検討すべき」との認識を示している。また「企業が業績の出た成果を適切に配分していくということはやりたい」と述べた。「賃上げ」に対しては一部ネットでは厳しい声も聞かれるが、第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストは「アベノミクスであれだけ景気がよかったときですら賃上げは2%しか上がらなかった。現実問題として厳しいのではないか。3%上がる可能性はゼロだろう」と指摘した(フジ)。

 

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