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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和元年10月)

「台風19号・被害額1300億円超」「日銀短観・3期連続で悪化」

今月の特徴は1.日銀短観・3期連続で悪化、2.景気の動向、3.台風19号・被害額1300億円超、4.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀短観・3期連続で悪化

日銀短観(企業短期経済観測調査)で大企業の製造業の景気判断を示す指数は前回の調査より2ポイント低いプラス5ポイントに下がり、3期連続で悪化した。先行きの見方も悪くなっていて、消費税率の引き上げによる景気減速への懸念も表れている(NHK)。一方、日銀は金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の現状維持を決めた。また、物価上昇の勢いが弱まるおそれについては「一段と高まる状況ではないものの、引き続き注意が必要な情勢にある」と判断したうえで、金融政策の新たな先行きの指針を示した。一方で黒田総裁は、必要があればマイナス金利を引き下げる可能性があることを改めて強調した(TBS)。

 

2.景気の動向

内閣府はことし8月の景気動向指数の基調判断を景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に下方修正した。政府の公式な判断を示す月例経済報告では「景気全体としては緩やかに回復している」という判断を続けていて、景気動向指数の判断との違いが再び鮮明になった。消費税率の引き上げによる個人消費の落ち込みも懸念されることから、今後の景気の動向が注目される。一方、財務省の発表によると日本が海外との貿易や金融取引などでどれだけ稼いだかを示すことし8月の経常収支は2兆1577億円の黒字となったものの、輸出額から輸入額を差し引いた先月の日本の貿易収支は1230億円の赤字となった。貿易収支が赤字となるのは3か月連続(NHK)。

 

3.台風19号・被害額1300億円超

台風19号による農林水産関係の被害額は38の都府県で合わせて1310億8000万円に上り、今後浸水の被害が広範囲に及んでいる地域を中心にさらに増える見通し。先月の台風15号と合わせた被害額は1800億円を超えていて、農林水産省は10月25日の大雨の影響を含めた被害の全容の把握を急いでいる(NHK)。

 

4.エネルギーの動向

大学時代から地球温暖化に関心を持っていたという米国・アルゴア元副大統領が来日し、世界中で起きている気候変動の実態について説明した。ゴア元副大統領は「20年前に科学者たちが出した警告が正しかったことが証明された」と演説した。9月に開かれた国連温暖化対策サミットでは60カ国が再生エネルギー導入などを発表したが、一方で日本は新たな対策を表明しなかった。ゴア元副大統領は「京都議定書で日本が世界に示したリーダーシップが弱まっている」と危惧し、「日本は東南アジア諸国に税金を使って石炭火力発電所の建設を支援するのではなく、太陽光や風力発電を取り入れるよう促すべきだ」と日本に注文をつけた(NHK)。

 

 

●注目点

「日立とホンダ・車部門4社統合」

立製作所ホンダは傘下の自動車部品メーカー4社を合併し、新会社を設立すると発表した。合併するのは日立の子会社である日立オートモティブシステムズとホンダグループのケーヒンショーワ日信工業の4社。新会社の出資比率は日立が66.6%、ホンダが33.4%。自動車業界ではEV電気自動車や自動運転など技術開発競争が激化する中、合併により規模を拡大することで競争力を強化する狙い。日立オートモティブシステムズのコッホCEOは、「合併で世界をリードする地位を得ることができる」と抱負を語った。両社合わせた売り上げ高はおよそ1兆7000億円で、トヨタ自動車グループのデンソーアイシン精機に次いで国内3位の規模となる(フジ)。

 

 

●新潮流

「スパコン能力超える量子コンピューター・グーグル開発チームが発表」

世代のコンピューターとして注目される量子コンピューター。これまでのスーパーコンピューターがおよそ1万年かかるとされていた計算問題を量子コンピューターがわずか3分20秒で解いたとする論文を大手IT企業、グーグルの研究者などのチームが発表した。量子コンピューターの能力が実証されたのは今回が初めてとみられる。計算能力はどんな場面で役立つのか。例えば、新薬の開発。がんの場合今は物質の組み合わせについて天文学的な回数の計算を長時間かけて行っているが、短時間でできる可能性がある。また、健康状態の画像診断をする場合でも画像認識の精度が高まり病気などの兆候をより早く見つけられる可能性がある。ほかにも経済や金融分野の予測など現代社会のさまざまな分野で応用が期待されている。一方で懸念もある。インターネットなどで不可欠とされている暗号も量子コンピューターが完成すると簡単に解読されてしまう危険性がある。こうした懸念から論文が発表された23日には、暗号技術に支えられているビットコインなどの仮想通貨・暗号資産の価格が一時10パーセント以上急落した(NHK)。

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・旭化成、第2位・スシローグローバルホールディングス、第3位・セブン&アイ・ホールディングス」

019年10月度のテレビ報道月間CM価値換算値ランキングは127億6500万円で旭化成が第1位に輝いた。名誉フェロー吉野彰氏が「ノーベル賞を受賞」したことが大きな要因となった。また受賞に伴い、東証一部上場の売買代金がトップになり株価が上昇した等の報道もその要因となった。第2位は「冬の味覚・カニを食べつくす」などの報道でスシローグローバルホールディングスとなった。第3位は「食品ロス削減へ・コンビニ各社が本腰」などの報道でセブン&アイ・ホールディングス、第4位は「東京ディズニーランド&シー・12日終日休園」などの報道でオリエンタルランド、第5位は「一流企業がカミングアウト」などの報道で神戸物産、第6位は「20年越しで日本橋を再生!三井不動産の“粋な街づくり”」などの報道で三井不動産、第7位は「大人気・1カ月で1万個売れ続出!無印良品・秋の新作グルメ」などの報道で良品計画、第8位は「フェアリージャパン・東京五輪をかけ熾烈な戦い」などの報道でポーラ・オルビスホールディングスとなった。第9位は「京急みさきまぐろきっぷ旅!」などの報道で京浜急行鉄道、第10位は「東急・儲かりの秘密」などの報道で東急となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・関西電力・岩根茂樹社長、第2位・関西電力・八木誠会長、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁」

第1位・関西電力・岩根茂樹社長275件(追跡・関西電力・金品受領の裏で何がなど)、第2位・関西電力・八木誠会長225件(関電“経営トップ”引責辞任など)、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁41件(金融政策・日本と米国・判断が分かれた背景は?など)、第4位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長26件(甚大・台風19号・各地で被害・市場価格にも影響がなど)、第5位・トヨタ自動車・豊田章男社長19件(大変革でテーマパーク化!?変わるモーターショーとは?など)、第6位・セブンイレブンジャパン・永松文彦社長14件(セブン-イレブン時短営業本格実施など)、第7位・ソフトバンクグループ・孫正義社長11件(経営再建へ・ソフトバンクが約1兆円追加支援など)、第8位・東京電力・小早川智明社長8件(東京電力に2200億円支援要請へなど)、第9位・天童木工・加藤昌宏社長7件(業界の常識を超えろ!技術を結集した驚き自転車など)、第10位・ファーストリテイリング・柳井正会長兼社長6件(世界経営者会議が開幕・柳井氏・カサノバ氏が講演など)。

 

 

●テレビの窓

「大変革でテーマパーク化!?変わるモーターショーとは?」

京ビッグサイトで開催されている東京モーターショー2019。電気自動車を中心に各メーカーが渾身の発表を行なった。東京モーターショーは「車離れ」に伴い集客数が伸び悩む中、転機を迎えており、これまでの自動車ファンだけでなく家族連れでも楽しめるテーマパークのような内容に様変わりした。各社は、例えばオープンロードで超小型モビリティ、電動キックスケーターに試乗することができるなど体験、体感型の展示に力を入れた。トヨタ自動車は未来型モビリティのテーマパークとのコンセプトでモーターショーに参加しているが、トヨタのブースには表情から健康診断をしてくれる車を展示するなど未来社会をイメージできるようなつくりになっている。さらにAIバスケロボ「CUE」を展示したり、「魔法のほうき」という子供も楽しめるアトラクションまで用意した。一方、日産自動車三菱電機がコラボしたブースでは災害などの停電時に電気自動車が電池代わりになり、家庭の電力をまかなえるシステムをお披露目している。このEVがあれば最大4日間、電力を供給できる。この他、会場ではドローンレース、eスポーツイベントなどが展示された(TBS)。東京モーターショーの背後にあるキーワードが「CASE」だ。今、自動車業界の中で生き残っていくためには、この「CASE」に対応できるかが問われている。「CASE」とは車とインターネットがつながるという意味のConnected、自動運転のAutonomous、車を所有せずに使うSharing、電動化のElectricの頭文字をとったものである(NHK)。

 

JCC株式会社