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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年5月)

「GDP1月~3月・実質の年率換算+2.7%」「バブル後最高値更新・日経平均株価一時3万2700円台まで値上がり」

今月の特徴は、1.景気の動向、2.コロナ5類に移行、3.外国人観光客の動向、4.エネルギーの動向となった。

 

1.景気の動向

日経平均株価は8日もバブル崩壊後の最高値を4営業日連続で更新(一時3万2700円台まで値上がり)した。しかしその後は売り注文が集まり、一転して終値は昨日より593円安い3万1913円となった。株高の要因について経済ジャーナリスト・後藤達也氏は「一時的に調整があっても株高はある程度持続するのではないかという見方が広がってきている。株高を主導しているのは外国人投資家の買い。日本経済が変わるという期待が海外で高まっている」と分析した(6/8TBS)。一方、ことし1月から3月までのGDP国内総生産の改定値は、年率に換算した実質の伸び率がプラス2.7%となり、先月発表された速報値プラス1.6%から上方修正された。企業設備投資の前の3か月と比べた伸び率が、速報値段階に比べて拡大したことなどが要因(6/9NHK)。

 

2.コロナ5類に移行

新型コロナの5類移行で企業にも変化が出ている。建設業務向けの3Dソフトなどを製作している企業では、ほとんど人がいなかったという開発室のフロアーに人が戻ってきていた。5月から、原則出社にしたという。開発室にはエンジニアなど技術系のスタッフが多く、仕事のほとんどは、リモートワークでも可能である。直接、顔を合わせてマスクなしで会議するのは久しぶりとのこと。シンクタンクなどの調査によると、4月のオフィス出社率はコロナ前のおよそ7割まで回復している(テレ東)。

 

3.外国人観光客の動向

羽田空港第2ターミナル国際線施設のオープンは2020年3月29日で、国際線の増便に対応するため、国内線専用施設の一部エリアを拡張し、出発ロビーなどの新施設を増設したが、新型コロナの感染拡大の影響で、わずか13日で閉鎖された。閉鎖から3年あまりが経ち、今月新型コロナが5類に移行したことや、急速な訪日外国人観光客の回復に対応するために再開が決定した。一方、外国人観光客のインバウンド消費をターゲットにしたユニクロヨドバシAkiba店は、訪れる外国人たちの心をつかむため、さまざまな工夫を凝らしている。店内の至る所にマンガの噴き出しのようなポップを配置。更にサブカルチャーの街、秋葉原らしく、アニメや映画とコラボした商品を並べた。南半球の客向けに店内は極暖のヒートテックなどが目立つところにずらりと置かれている(TBS)。

 

4.エネルギーの動向

原子力基本法など5つの法律の改正案を束ねた「GX脱炭素電源法」が、参議院の本会議で可決成立した。福島第一原発の事故のあと、原発の運転期間は原則40年、最長60年と規定されたが、安全審査などで原発が停止した期間を除外し、60年を超える運転が可能となる(TBS)。国が実用化を目指す高速炉の国内唯一の実験施設、茨城県にある高速実験炉「常陽」。2007年にトラブルを起こして以降、運転を停止しているが、原子力規制委員会は24日の会合で、運転再開の前提となる審査に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめた。今後、一般から意見を募るパブリックコメントなどを経て、正式に合格となる見通し(NHK)。

 

 

●新潮流

「日本の株価上昇をけん引する総合商社」

本株が高騰している。その理由について大和証券・坪井裕豪シニアストラテジストは「インバウンド、外国人観光客が増えていることと、国内ではコロナ禍からの正常化が進んだことでレジャー、観光関連の銘柄が引っ張っている。それとまったく関係ないところで言えば、例えば半導体銘柄、足元の需要の高まり、生成AIなどの需要の高まりを受けて日本企業でその恩恵を受ける企業、そうした企業の株なども物色されている」と話す。特に好調なのが日本の総合商社である。初めて純利が1兆円を超えた三菱商事を始め、高い業績で株価上昇をけん引している。米投資会社パークシャーハサウェイ・ウォーレンバフェット会長は5月の株主総会で「日本には5つの非常に大きな会社(五大商社)があり、きちんとした配当と自社株買いを行っている。彼らは知的なことをしているし、規模も大きい。その進歩にはうれしい驚きを感じている」と述べた。バフェット会長は4月、日本経済新聞のインタビューで「三菱商事、三井物産伊藤忠商事住友商事丸紅の株式保有率を7.4%まで引き上げる」と明らかにしたばかりである。丸紅(2022年度決算)の純利益は過去最高の5430億円となったが、これは資源価格の高騰、海外電力事業が好調なことが背景にある。一方、商社・丸紅は大阪関西万博を見据え、米国リフトエアクラフト社「HEXA」(1人乗り)を日本に呼び込み、日本初となる「空飛ぶクルマ」の屋外での有人飛行実験を成功させた。丸紅・航空宇宙・防衛事業部・航空第三課・吉川祐一課長は「民間航空機ボーイングやエアバスなどの知見をずっと持っている部署なので新しい乗り物を作るといったところに寄与できる」と話した。丸紅・産業システムモビリティ事業部・モビリティ事業第三課・佐倉谷誠課長は「丸紅が出資し販売を担っているのがフォロフライ社のEV車」と語った(フジ)。

 

 

●注目点

「セブン&アイHD株主総会・物言う株主提案の退任要求を否決」

ブン&アイHDは26日、株主総会を開き、“物言う株主”が経営陣の退任を求めた株主提案について否決した。今年の株主総会は去年より187人多い436人が出席し、多くの報道陣が集まるなど注目を集めていた。米国投資ファンド・バリューアクトキャピタルはセブン&アイHDに対し、グループからコンビニ事業を独立させ、経営資源の集中を主張し、井阪社長らの退任を求める株主提案を行った。これに対しセブン&アイHDはコンビニの成長にスーパーの協力は不可欠だとしてコンビニ事業の切り離しに反対し、社長など続投を株主に呼び掛けた。セブン&アイHD・井阪隆一社長は「誠心誠意、株主に説明して安心してお帰りいただけるようにしたい」と総会前に語っていたが、その結果、物言う株主の提案は否決され、井阪社長の続投が決まった。ただ、井阪社長の続投に関する株主の賛成比率は76.36%と、前年の94.73%から大きく低下していたのも事実。井阪社長の第一の課題は低迷するスーパー事業の立て直しである。セブン&アイHDではコンビニ事業がグループ全体の90%以上の利益を稼ぐ一方で、イトーヨーカ堂などスーパーストア事業の割合はわずか2%ほどに過ぎない。イトーヨーカ堂については店舗の大都市圏中心への集客などのリストラ策を発表したが、海外の投資家など株主らが納得する成果を早期に出せるかが焦点となる。第二の課題は「そごう・西武」の売却。すでに海外への投資ファンドへの売却を決定したものの、地権者などとの交渉は難航し、2度の売却延期を余儀なくされた。26日の総会では「譲渡を中止する考えはない」と株主に説明したが、現在も売却完了の時期は示さず「無期限延期」となっていて、先行きは不透明。売り上げで11兆円を誇る国内屈指の流通グループが世界トップクラスに成長できるのか。経営陣の手腕が問われるのはこれからとなる(TBS)。

 

 

5月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・東宝、第2位・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、第3位・三井不動産」

2023年5月のテレビ報道CM価値換算ランキングは、36億5331万円で「東宝」が第1位に輝いた。具体的には、「カンヌ映画祭で脚本家・坂元裕二が是枝裕和監督の最新作『怪物』(東宝、ギャガ)で脚本賞を受賞」「カンヌ映画祭・日本人に喝采・北野武監督『首』世界初披露」等によるものであった。第2位は「MEGAドンキで1番売れている商品を潜入調査」等の報道で「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス 」となった。第3位は「環境債活況再び・三井不動産1300億円」などの報道で「三井不動産」。第4位は「モスバーガーvs超一流料理人」などの報道で、「モスフードサービス」となった。第5位は「駅のロッカー・多機能に『進化』」などの報道で「東日本旅客鉄道」となった。第6位は「ディズニー“40周年パレード”何がスゴい?」などの報道で「オリエンタルランド」、第7位は「台湾祭 in 東京スカイツリータウン2023」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「スーパーに巨大な砂場・遊んだあとはお買い物」などの報道で、「セブン&アイ・ホールディングス」となった。第9位は「回復・三越伊勢丹・売り上げ1兆円超」などの報道で「三越伊勢丹ホールディングス」、第10位は「マツケンサンバ尽くし!コラボカフェ」などの報道で「J.フロント リテイリング」となった。

 

 

5月の人物ランキング

「第1位・ジャニーズ事務所・藤島ジュリー景子社長、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO、第3位・日本銀行・植田和男総裁」

第1位・ジャニーズ事務所・藤島ジュリー景子社長86件(ジャニーズ事務所性加害問題・3つの再発防止策を発表など)、第2位・ツイッター・イーロンマスクCEO53件(ツイッター新CEOにメディア元幹部など)、第3位・日本銀行・植田和男総裁48件(日銀・植田総裁物価基調見極めが重要など)、第4位・オープンAI・アルトマンCEO29件(チャットGPT開発のCEO世界共通のルールをなど)、第5位・セブン&アイホールディングス・井阪隆一社長26件(セブン&アイ・現社長の続投決定など)、第6位・楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長23件(約3300億円の資本増強・楽天グループが発表など)、第7位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長21件(生産効率化で競争力向上・日野自と三菱ふそう・経営統合へなど)、第8位・アキダイ・秋葉弘道社長19件(東京の消費者物価指数・今月の速報値・3.2%上昇・食料品など記録的上昇など)、第9位・近畿日本ツーリスト・高浦雅彦社長14件(近畿日本ツーリスト・最大約16億円過大請求など)、第10位・ディーズプランニング・義元大蔵社長9件(人を育てる重要性を実感・社長自ら新人を研修など)。

 

●テレビの窓

「トヨタ・スーパー耐久富士24時間レースに参加、ホンダはF1復帰へ」

7日、静岡県の富士スピードウェイに集まった沢山のモータースポーツファンの人波を抜けた先にあったのが、トヨタ自動車が開発中の水素エンジン車。この日行われたのはスーパー耐久富士24時間レース。トヨタは2年前からガソリンの代わりに水素を直接燃焼させて走る水素エンジン車を開発してきた。この車は気体に代わり液体水素を燃料として走る。液体水素エンジン車は-253℃と超低温を保つことでよりコンパクトに大量の水素を搭載することができる。満タンに充填するのに必要な時間は気体と同じ約1分半。さらに航続距離は気体に比べ約2倍となった。液体にすることで充填設備の省スペース化が実現し、ピット内でも作業が可能になった。液体水素エンジン車のレース参加は世界初となる。今回ドライバーとして豊田章男会長もハンドルを握り、24時間無事に走り切った(フジ)。一方、ホンダは、自動車レースの最高峰「F1」に2026年のシーズンから復帰することを明らかにした。おととし「F1」から撤退していたが、新たにレーシングチームの「アストンマーティン」にエンジンなどを供給する契約を結ぶことで合意した。復帰の理由について、2026年からの新たなレギュレーションで、脱炭素につながる「合成燃料」の全面使用や、電気エネルギーの比率を高めてエンジンとモーターの出力を同等にすることが決まり、脱炭素を進める会社の方針と合致したためとしている(NHK)。

 

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