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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年11月)

「10月企業物価指数0.8%上昇・伸び率は10カ月連続縮小」

今月の特徴は、1.企業物価指数0.8%上昇・伸び率は10カ月連続縮小、2.貿易収支・2カ月ぶり赤字に、3.人手不足の影響、4.エネルギーの動向となった。

 

1.企業物価指数0.8%上昇・伸び率は10カ月連続縮小

日銀が発表した先月の企業物価指数の速報値は、2020年の平均を100とした水準で119.1となり前の年の同じ月と比べて0.8%上昇した。調査対象となった515品目のうち、405品目で価格が上昇したが、全体の伸び率は去年12月の10.6%をピークに10か月連続で縮小した。政府がガソリン補助金を拡充したことで石油石炭製品の上昇が抑えられたほか、エネルギーや原材料を含む輸入物価が下落したことが伸び率の縮小につながった。企業物価が1%を下回るのはおととし2月以来、2年8カ月ぶりで、価格転嫁の動きが一時より鈍化してきていることがうかがえる。この傾向が消費者物価指数にどのように波及するかが注目される(NHK)。

 

2.貿易収支・2カ月ぶり赤字に

財務省が発表した10月の貿易収支は、輸出が9兆1471億円、輸入が9兆8096億円と、輸入額が輸出額を上回り6625億円の赤字となった。赤字は2カ月ぶり。輸出は、半導体不足の解消などで、米国向けのハイブリッド車を中心に好調となり、過去2位の輸出額となった。一方、輸入は直近のエネルギー価格の落ち着きから、石炭やLNGなどの輸入額が去年の同じ時期と比べ減少したものの、円安や海外依存度の高さから、貿易赤字の要因となっている。また、中国向けの食料品の輸出は、去年の同じ月と比べ55%減少した。福島第一原発の処理水放出を受け、日本産水産物を全面的に輸入禁止にした影響が出ている(日テレ)。

 

3.人手不足の影響

深刻な人手不足になっているのは航空機の誘導、チェックインカウンターでの受け付け、航空機への荷物の出し入れなど、グランドハンドリングと呼ばれる地上業務を行う人たち。空港に関わるさまざまな業務を担っていて、その人手が足りなければ空港の多くの仕事が止まり、飛行機は飛ぶことができない。コロナ禍での航空需要の減少で現場では仕事がなくなって離職が相次ぎ、従業員の数は4年前と比べて全国で15%近く減少した(NHK)。人手不足が深刻化する中、ロボットを使って空中で荷物を自動配送する実証実験が、18日から川崎市の団地で始まった。電柱をワイヤーで結び、ロボットが自動で荷物を運ぶ。ドローンよりも落下の可能性が低く、音も静かだという。荷物はロッカーで受け取ることができる。人が行うのは、商品をロボットに積み込む作業だけで、人手不足の解消に繋げる狙いがある(TBS)。

 

4.エネルギーの動向

運転開始から40年が迫る鹿児島県の川内原子力発電所1号機と2号機について、原子力規制委員会は1日、九州電力が申請していた20年の運転期間延長を認可した。40年を超える運転は福井県にある関西電力の高浜原発1号機、2号機などと川内原発の2基を合わせて全国で6基になる(NHK)。

 

 

●新潮流

「狙われる日本企業運航の船・中東情勢の影響が物流に」

安定化する中東情勢。世界の物流への影響が懸念されている。海運大手の日本郵船が運航する自動車運搬船「ギャラクシーリーダー」が19日、紅海でイエメンの反政府勢力に乗っ取られた。船を乗っ取ったとするイエメンの反政府勢力フーシ派の報道官はビデオ声明で「イスラエルまたはイスラエルと関係がある船舶に改めて警告する」とした。ただ、イスラエル軍は、乗っ取られたのはイスラエルの船ではなく、イスラエル人も乗っていなかったとしている。貨物船が乗っ取られた紅海は、スエズ運河で地中海とつながり、アジアとヨーロッパを結ぶ主要な航路となっている。国際物流の専門家は、海上輸送される世界のコンテナの10%以上が、紅海やスエズ運河を通過して運ばれ、今回乗っ取られたような自動車運搬船も多いと話している。今回、貨物船を乗っ取ったとするフーシ派はおよそ2万人の戦闘員を抱え、イスラエルと敵対するイランの協力によって、軍備を増強してきたという。イスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突が始まって以降、イスラエルに対し、弾道ミサイルや無人機による攻撃を繰り返している。また近年、海上での活動を活発化させていると指摘されていて、国連の安全保障理事会から、航海の安全を脅かす重大なリスクになっていると非難されていた。海上保安庁は、イエメン沖の紅海付近を航行する日本の船舶に注意を呼びかけている他、イエメンの対岸、紅海の出入り口に位置するジブチには、自衛隊の護衛艦と哨戒機が派遣されていて、防衛省が情報収集を進めている。西村経済産業大臣は、「事案が発生したイエメン沖は、日本への原油タンカーなどはあまり航行していないので、日本のエネルギーの安定供給に直ちに影響は生じないと認識している」と述べた一方で、「日本経済に影響を及ぼしうるということなので影響などしっかりとみていきたい」とコメントしている(NHK)。

 

●注目点

「生成AI開発者・アルトマン氏が解任わずか5日でCEO復帰へ」

成AI・ChatGPTを開発したベンチャー企業のCEO・サムアルトマン氏は11月17日に突如解任された。ところが21日、急転直下CEOに復帰が決定した。17日、アルトマン氏は昼のオンライン会議に出席後、いきなり出席していた取締役たちから解任を伝えられた。伝えたのはイリヤサツキバー氏でオープンAIの共同創業者の1人。サツキバー氏はソビエト生まれ、カナダ・トロント大学でAIの権威として知られるアルトマン氏とともに研究を重ねてきた人物。AIの機械学習の専門家として知られている。米国メディアによると社員の9割を超える700人以上の社員が「アルトマン氏が復帰しなければ退社する。すべての取締役の辞任を求める」との書簡に署名したという。サツキバー氏は20日、旧ツイッターのXに「取締役会の行動に参加したことを深く後悔している」とコメントした。21日、オープンAIは「SNSにアルトマン氏がCEOに復帰することで合意した」と明らかにした。解任から僅か5日でCEOに復帰することが決まったアルトマン氏はSNSに「私はオープンAIを愛している」と投稿した。今回の騒動は1つのベンチャー企業内の内紛のようにも見えるが、現代のAIを取り巻く課題があらわになったものだといえる。革新的な技術である生成AIをビジネスとして広げたいアルトマン氏と先端的なAIであるがゆえの危険性を心配するサツキバー氏をはじめとする取締役との根源的な対立が背景にある。生成AIは、インターネットを超えるともいわれる技術の進化で、もたらされる利益もばく大なものになる。開発する企業は責任ある経営でなければならない。新しいアイデアを生み出すベンチャー企業の経営をどう監督していくのか。シリコンバレーに新たな課題が突きつけられたと言える(NHK)。

 

 

11月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス、第2位・阪急阪神ホールディングス、第3位・森ビル」

2023年11月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」が49億1703万円で第1位に輝いた。具体的には、「ドンキマニア厳選4000種からベスト4」「ドン・キホーテマニア10人が集結」「ドンキホーテが今月発売した・やりすぎグルメ『偏愛めし』」等によるものであった。第2位は「阪神タイガース優勝」等の報道で、「阪急阪神ホールディングス」となった。第3位は「高さ日本一・麻布台ヒルズ・オープン初日・家族連れも」などの報道で「森ビル」。第4位は「オリックス優勝パレード」などの報道で、「オリックス」となった。第5位は「大阪王将×超一流中華料理人」などの報道で「イートアンドホールディングス」、第6位は「ディズニー40周年記念・街中パレードに人殺到?」などの報道で「オリエンタルランド」、第7位は「日本最大級・越谷イオンレイクタウン・1日遊べる!週末の楽しみ方を調査」などの報道で「イオン」、第8位は「東京スカイツリータウンドリームクリスマス2023イルミネーション点灯セレモニー」などの報道で、「東武鉄道」となった。第9位は「ヤマト×JAL“クロネコ貨物機”」などの報道で「日本航空」、第10位は「中村獅童・二男“初お目見得”」などの報道で「歌舞伎座」となった。

 

 

11月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・オープンAI・サムアルトマンCEO、第3位・SMILE-UP.・東山紀之社長」

第1位・日本銀行・植田和男総裁60件(金融政策運用さらなる柔軟化望ましいなど)、第2位・オープンAI・サムアルトマンCEO60件(「オープンAI」アルトマン氏・CEO復帰など)、第3位・SMILE-UP.・東山紀之社長49件(SMILE-UP.・補償連絡開始など)、第4位・アキダイ・秋葉弘道社長14件(野菜の価格高騰なぜ値上げ?いつ終わる?「今までに経験ない」スーパー・農家も悲鳴など)、第5位・スペースX・イーロンマスクCEO14件(イーロンマスク・ガザ地区に通信サービス提供で合意など)、第6位・東急不動産・星野浩明社長11件(100年に1度の再開発続く・渋谷に大型複合施設完成など)、第7位・経済同友会・新浪剛史代表幹事11件(経済界トップ「頭が痛い」万博費用さらに837億円など)、第8位・デジサーフ・高橋佳伸社長8件(自分で焼くから楽しい!急拡大ビジネスの舞台裏など)、第9位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長8件(純利益14倍・AI覇者エヌビディアとはなど)、第10位・NTTデータグループ・本間洋社長8件(NTTデータ・全銀ネットのシステム障害で陳謝など)。

 

 

●テレビの窓

「可能性を秘める日本のフードテック食品」

本のフードテック食品は世界に広がる可能性を秘めている。今年5月、スペインで開かれた見本市「Food 4 Future」に日本から16の団体が出展。参加したフードテックの専門家は日本の植物性食品の味が期待を集めているという。外国人のニーズに合わせ、海外展開を視野に開発されたフードテック食品もある。米国や東南アジアにも店舗を構えるラーメンチェーンは宗教上の理由などで豚骨ラーメンを食べられない客がいることが課題だったが、植物性原料の豚骨風ラーメンが打開策になった。植物由来のスープを可能にしたのは60年以上大豆たんぱくの研究を続けてきた油脂メーカーの技術。大豆から豆乳クリームと低脂肪豆乳を分離する技術で特許を取得している。肉の繊維を再現した大豆ミートなどさまざまなフードテック食品の開発を進めてきた。しかし動物性に近い満足感を出せないことが長年の課題だった。突破口を開いたのが大豆で作ったダシの開発。開発チームは大豆たんぱくをアミノ酸の集合体へと分解し、植物性の油脂を組み合わせて豚骨が持つコクや風味を再現、仕上げに昆布やキノコのダシ汁を加えるなどラーメン店の技もコラボし、まるで豚骨ラーメンのような満足感のある大豆由来のスープを作り出せた。油脂メーカーは大豆由来のダシをラーメン以外の料理にも使い世界に展開したいと考えている。筑波大学生命環境系・氏家清和准教授(農業経済学が専門)は、代替肉は大豆たんぱく質が豊富な大豆が使われていることが多い。味は味付け次第で、そのものが肉に近づいているというところにはまだ遠い。フードテックの安全性、代替たんぱく質を何でとるか、開発が進む理由、植物性たんぱく質で補えるかが今後の課題と指摘(NHK)。

 

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