テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和6年1月)

「株価3万6000円台・バブル以来33年11か月ぶり」「日銀・マイナス金利解除見送り」

今月の特徴は1.株価3万6000円台、2.日銀・マイナス金利解除見送り、3.中国景気低迷の影響、4.能登半島地震による志賀原発への影響となった。

 

1.株価3万6000円台

22日の日経平均株価は、先週末より583円高い3万6546円で取引を終え、2営業日連続で、バブル後の最高値を更新した。終値が3万6000円を超えるのは、1990年2月以来、33年11か月ぶりとなる(TBS)。

 

2.日銀・マイナス金利解除見送り

日銀は今年初めてとなる金融政策決定会合で、マイナス金利の解除を見送り、短期金利を-0.1%、長期金利を0%程度とする現在の大規模緩和策を維持することを全員一致で決定した。植田総裁は記者会見で、「賃金と物価の好循環が進んでいる」との認識を示し、「不確実性がなお高い」として緩和の継続姿勢は崩さなかった。マイナス金利解除のタイミングについて「物価目標が実現に至ればマイナス金利を含めた緩和継続の是非を検討する」とした(TBS)。

 

3.中国景気低迷の影響

中国株が“930兆円消失”するなど、中国経済が低迷している。ニッセイ基礎研究所・井出真吾主席研究員によると、原因は「不動産バブル崩壊」と「習近平政権による巨大IT企業への締め付け」。去年8月に大手不動産会社「恒大集団」が破産を申請、去年10月には不動産最大手「碧桂園」が債務不履行、今月5日には「中植企業集団」が破産申請した(ブルームバーグより)。2021年、IT大手「アリババ集団」へ巨額制裁金を課し、先月にはオンラインゲームの規制強化案が出されるなど、習近平政権がIT企業の成長を阻害しているとの懸念が投資家に広がってきており、中国からのデフレ輸出が日本企業のリスクになる可能性がある(テレ朝)。

 

4.能登半島地震による志賀原発への影響

1日、震度5強の地震を観測した北陸電力・志賀原発では東日本大震災があった2011年から1号機、2号機の運転を停止しているが、使用済み燃料プールの冷却などのため電源は欠かせない状態にある。ところが、地震のため外部から電気を受けるための変圧器が壊れ、送電線1系統2回線が現在も使えない状態になっている。完全復旧には半年以上かかるという。北陸電力は2日午前の会見で津波について、「水位監視も有意な変化が確認されなかった」としていたが、その日の夜に「3mの水位上昇を確認した」と訂正した。社内で適切な情報連携が取れていなかったことが原因だとしている。原子力規制委の会合では地震と原発の複合災害の場合の住民の避難が改めて課題として浮き彫りになっている(NHK)。

 

 

●新潮流

「“デフレ完全脱却”なるか・企業100社に聞く」

としの春闘が事実上、スタートした。NHKは国内の主な企業100社にアンケートを行った。今年の賃上げについて「引き上げる」、「引き上げる可能性が高い」と回答したのは45社だった。さらに日本経済の現状について、物価の値下がりが続くデフレを「脱却した」と見ているか尋ねたところ、「脱却した」、「脱却していない」で判断が分かれた。物価は上がっているのに、デフレから「脱却していない」と答えた企業に理由を複数回答で聞いたところ、「物価の上昇に賃上げが追いついていない」が28社、「コスト高による悪いインフレだから」が11社、「物価は上昇しているが、景気がよくない」としたのが7社、そして「デフレに逆戻りする可能性がある」としたのが4社だった。デフレへの意識が企業の間では未だに根強いものがある。アンケートでデフレを脱却したと回答した大手生活用品メーカーが理由の1つとして挙げているのは、深刻な人手不足を背景にした賃金の上昇。この会社では今年4月におよそ5%の賃上げを実施する方針で、日本経済の変化を感じているという。一方、中小企業にとって、人件費の価格転嫁は簡単なことではない。産業用のひもを製造する会社では原材料価格の上昇を説明する資料を示すなど、取り引き先の理解を得る努力を続け、価格転嫁をほぼ受け入れてもらえるようになったという。また人手不足や最低賃金の上昇を背景に、この数年は4%ほどの賃上げにも取り組んでいる。ただ、賃上げ分を原材料の上昇分に加えて、販売価格がさらに上がると、今後の取り引きに影響を与える懸念もあり、賃上げ分の価格転嫁は一部にとどまるという(NHK)。

 

 

●注目点

「トヨタグループで相次ぐ不正・その背景は?」

ヨタ自動車は2023年の世界販売台数過去最高を更新した。そうした中、トヨタグループで不正が相次いでいる。おととし3月には日野自動車がトラックやバスのエンジン性能試験での検査不正が発覚。去年5月には愛知製鋼が顧客と契約した規格を満たさない鋼材を出荷。さらに4月~12月にはダイハツ工業の安全性能の不正が64車種に拡大し、全車種の出荷が停止となった。去年3月~1月29日には豊田自動織機で自動車やフォークリフトのエンジン性能試験で検査不正があったことが発覚している。トヨタ自動車・豊田章男会長はグループで相次ぐ不正について「販売してはいけない商品をお客様に届けた。絶対にやってはいけないことをやってしまった」「日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機の相次ぐ不正により、ご迷惑・ご心配をおかけしていることを深くおわび申し上げる」と謝罪した。斉藤鉄夫国交大臣は「不正の背景としていずれも企業のガバナンスに関する問題が大きかった」と話している。豊田自動織機の不正を調査した特別調査委員会・井上宏委員長は不正の背景として「量産開始予定日から逆算して策定した不合理な開発スケジュール」や「管理職らが問題を把握し、解決のため行動する姿勢を示さなかったため『上にあげても無駄』という雰囲気が蔓延した」ことなどを指摘した。検査の結果次第では、大量生産に必要な型式指定が取り消される可能性もある(テレ朝)。 

 

 

1月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・テレビ朝日ホールディングス、第2位・くら寿司、第3位・ニトリホールディングス」

2024年1月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「テレビ朝日ホールディングス」が83億374万円で第1位に輝いた。具体的には、「ビッグスポーツ賞・2023年を彩ったアスリートが集結」「バンクシーなど貴重作品続々・『MUCA展』都内で3月開催へ」「ドラえもん募金・能登半島地震による被災者支援」等によるものであった。第2位は「くら寿司・利き寿司にチャレンジ!」等の報道で、「くら寿司」となった。第3位は「『ニトリ海外展開に重点』表明」などの報道で「ニトリホールディングス」。第4位は「NTTドコモ・世界初の技術公開・味をデータ化・遠隔地と味覚共有」などの報道で、「日本電信電話」となった。第5位は「日本初月面着陸に成功・世界初『ピンポイント着陸』」などの報道で「宇宙航空研究開発機構」、第6位は「コンビニ・日本に誕生して50年!ファミマの独自新戦略とは!?」などの報道で「伊藤忠商事」、第7位は「川栄李奈と梅沢富美男が出演・からあげクンの新CM」などの報道で「ローソン」、第8位は「パパママが個室で子育て一休み・三井不動産の保育施設」などの報道で、「三井不動産」となった。第9位は「JR東日本社長交代・民営化後入社組で初のトップ」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第10位は「ディズニー新イベント・ミニーのファンダーランド・徹底調査SP」などの報道で「オリエンタルランド」となった。

 

 

1月の人物ランキング

「第1位・経団連・十倉雅和会長、第2位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長、第3位・日本銀行・植田和男総裁」

第1位・経団連・十倉雅和会長83件(日中経済協会4年ぶり訪中・課題解決へ意義強調など)、第2位・トヨタ自動車・佐藤恒治社長66件(トヨタ・10車種で出荷停止・ランクル・ハイエースなど)、第3位・日本銀行・植田和男総裁57件(日銀・緩和維持・地震が出口に影響もなど)、第4位・豊田自動織機・伊藤浩一社長25件(豊田自動織機・認証不正など)、第5位・アキダイ・秋葉弘道社長23件(アキダイが大手傘下に…など)、第6位・ダイハツ工業・奥平総一郎社長20件(困惑・ダイハツ・約32万台リコール・影響拡大?など)、第7位・ローソン・竹増貞信社長15件(能登地震・半導体の工場停止・コンビニ営業再開の動きもなど)、第8位・野村證券・奥田健太郎社長13件(株価・日本株に高まる期待感・失われた30年から復活は?など)、第9位・大和証券グループ本社・中田誠司社長12件(2024年の日本経済はカギを握るのは「賃上げ」など)、第10位・アマゾンジャパン・ジャスパーチャン社長9件(大企業からアマゾンへ・成長のカギは枠を超えるなど)。

 

 

●テレビの窓

「経済3団体“1500人”新年会・給料アップは?中高年に期待も」

岸田総理をはじめ、およそ1500人が参加した経済界恒例の新年会。今回、能登半島での地震などもあり、お祝いムード一色とはならなかった。ローソンの竹増貞信社長は「23年度(の賃上げ)が5%をちょっと切るぐらいだったので、それ以上は上げていきたい。賃金が上がってコストプッシュ型を抜け出して、いいインフレに持っていく。そのためには賃上げが必要だ」と話し、サービスや商品のレベル、また生産性そのものを上げることが賃上げにつながるとした。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は「企業の成長にとって、人というのは非常に重要なので、そういう意味で人的投資・人材投資をしっかりやっていく。(若い人のほかに)55~65歳くらいの方たちが働く意欲・能力があり、貢献していけるのであれば、能力に応じた処遇をしていくことは制度として変えていく」と話し、人材への投資が必要との考えを示した。ANAホールディングスの芝田浩二社長は「社員の頑張りにできるだけ応えたい。賃上げとは継続して実施するもので、ことし上げ、来年も上げ、再来年も上げる」と話した。森トラストの伊達美和子社長は、去年に10%以上の賃上げを行ったため、新たな賃上げについて「調整はしていこうと考えている」と話した。伊藤忠商事の岡藤正広会長は「やっぱり給料はどんどん上げていかないとダメ。去年1年間でいろんなものの値上げが定着した。物価が上がることで企業の売り上げ、利益が上がる。次に賃金に反映する。そこにタイムラグがある」と話し、4月から6%の賃上げに加えて初任給を5万円上げる考えを示した(フジ)。

 

JCC株式会社