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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年12月)

「日銀・大規模金融緩和策維持を決定」

今月の特徴は1.日銀・大規模金融緩和策「維持」を決定、2.日銀短観・大企業製造業3期連続改善、3.7~9月期・国内企業の経常利益・過去最高、4.11月・貿易収支・7769億円の赤字、5.エネルギーの動向となった。

 

1.日銀・大規模金融緩和策「維持」を決定

日銀は18日から2日間行われた金融政策決定会合で、現在の大規模な金融緩和策の「維持」を全員一致で決定した。12月7日に植田総裁が国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことなどで市場には一時、日銀が早期に政策修正に踏み切るのではとの観測も出ていた。日銀はこれまでと同様「必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」としている。日銀の発表を受け、円相場は一時1円以上円安が進んだ(日テレ)。

 

2.日銀短観・大企業製造業3期連続改善

日銀の短観(企業短期経済観測調査)は国内の企業9000社余りに3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、大企業の製造業の指数はプラス12ポイントと前回9月の調査を3ポイント上回り3期連続で改善した。自動車の生産の回復が続いていることや、企業間で価格転嫁の動きが進んでいることが主な要因。また、大企業の非製造業の指数はプラス30ポイントと前回の調査を3ポイント上回り7期連続の改善となった。これは1991年11月の調査以来、およそ32年ぶりの高い水準。今回の短観は大企業、中小企業とも幅広い業種で景気が回復傾向にあることを示す結果となった(NHK)。

 

3.7~9月期・国内企業の経常利益・過去最高

財務省が発表した今年7月~9月期の法人企業統計によると、金融、保険業を除く全産業の経常利益は前年同期比で20.1%増え、約23兆8000億円となった。3四半期連続のプラスで、この期間として過去最高となる。コロナの感染状況が落ち着き、行動規制が緩和され、小売業など、非製造業の伸びが目立った。設備投資も伸びており、前年同期比で3.4%プラスの12兆4000億円あまりとなった。自動車メーカーなどでは生産体制を強化するための投資が行われ、10四半期連続のプラス。財務省は「景気が緩やかに回復している状況を反映したもの。海外景気の下振れや物価高の影響を今後も注視していきたい」としている(TBS)。

 

4.11月・貿易収支・7769億円の赤字

財務省発表の貿易統計によると、11月の貿易収支は7769億円の赤字になった。赤字は2か月連続。海外経済の減速を背景に鉄鋼や半導体製造装置などの輸出が減少し、輸出額は1年前に比べて0.2%減り、8兆8000億円あまりだった。また輸入額は資源価格の高騰が落ち着いたことで11.9%減り、およそ9兆6000億円だった(TBS)。

 

5.エネルギーの動向

新潟県の柏崎刈羽原発ではおととしテロ対策上の不備が相次いで発覚し、原子力規制委員会が事実上の運転禁止命令を出すとともに現地で改善状況などを調査していた。原子力規制委員会は27日の会合で、事実上の運転禁止命令の解除を正式に決めた。東京電力HD・小早川智明社長は「私がリーダーシップを発揮し、さらに改善を進めていく」として、柏崎刈羽原発の再稼働に向け、地元の新潟県と話し合いを続けていく考えを示した。(TBS)。政府は公募していた秋田県と新潟県、それに長崎県の3つの海域での洋上風力発電の事業者について大手の発電事業者や商社などを選んだと発表した。今回、新たに秋田県男鹿市、潟上市、秋田市沖の海域については火力発電で国内最大手のJERA伊藤忠商事などの事業体、新潟県村上市と胎内市沖の海域は三井物産大阪ガスなどの事業体、長崎県西海市江島沖の海域は住友商事と東京電力の子会社の事業体をそれぞれ選定したと発表した(NHK)。

 

 

●新潮流

「生成AIで動画分析・日本企業が世界に先駆けて開発」

本の大手企業が生成AIを活用した新たな技術を開発した。NECが開発したのはAIが動画の内容を分析して文章で表現する技術。ドライブレコーダーの動画を例にすると交差点に突っ込んできたトラックと乗用車の衝突事故をAIが認識して右側から来た大型トラックが信号無視をして衝突したことを説明してくれる。ここでAIに「事故が発生した要因を教えてほしい」と質問すると、AIはバイクが黒い車の停止に気付かずに衝突したと考えられると事故の要因まで推定して文章にしてくれる。会社はこの技術によって交通事故の原因を分析して報告書を作成したり、建設現場の動画から作業記録を作成したりといった活用を想定している。生成AIは文字や画像の認識はできても、動画の認識は情報量が多いため難易度が高いとされてきた。そこでNECは信号機、子ども、車などそれぞれを認識する複数のAIを組み合わせて使うことにした。認識したものを信号は赤、車が停車、歩く子どもといったようにいったん文字化し、最後にこれらを自社で開発した生成AIが取りまとめて、赤信号で車が止まり、子どもが横断するといった、意味のある文章に整える仕組みになっている。この一連の流れを実現したのは世界で初めてだという。こうした画像認識技術はNECの強みであり、生成AIでの動画認識は米国の大手IT企業も開発しているが、NECのようなやり方では実現できていないということで今後の展開が注目される(NHK)。

 

 

●注目点

「通信競合3社が異例の共同会見・NTT法廃止で通信料金上がる!?」

DDIソフトバンク楽天モバイルのトップが共同で記者会見を開き、NTT法の廃止に対し反対を訴えた。自民党がまとめた2025年の通常国会をめどにNTT法を廃止するとした提言に対し、181の通信会社が反対を表明した。現在、NTTの巨大な資産、光ファイバー網を、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルなどの通信事業者も利用しつつスマホやインターネットなどさまざまなサービスを開発、提供している。NTT法は、電電公社の民営化に伴い1984年に制定され、固定電話サービスの全国一律の提供や研究開発した成果を公開する義務などが課せられている。また、政府が株式の3分の1以上を持つことや外国人の株式の保有なども制限している。NTT法が廃止になると、NTT東日本NTT西日本ドコモなど、NTTグループ企業の一体化が進むことが懸念されており、巨大化することで、公正な競争が行われなくなるとの声がある。高速通信技術IOWNの研究開発を進めるNTTだが、自民党・甘利座長は「NTTにはポテンシャルがある。IOWNは半導体にも通じていく。ゲームチェンジャーになる可能性がある。」と、改めてNTT法の見直しの意義を強調した(テレビ東京)。

 

 

12月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・セブン&アイ・ホールディングス、第2位・ホットランド、第3位・東宝」

2023年を締めくくる12月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、24億1980万円で「セブン&アイ・ホールディングス」が第1位に輝いた。具体的には、「セブンイレブン・本格&豪華監修も!2024年の注目おせち」「幕張メッセでセブンイレブンが開いた加盟店向けの非公開イベントを取材」「セブンイレブン店内で拡大中・カップデリ」等によるものであった。第2位は「築地銀だこ社長が借金2千万円ラーメン店を立て直す!」等の報道で、「ホットランド」となった。第3位は「『窓ぎわのトットちゃん』全国東宝系にて公開中」などの報道で「東宝」。第4位は「不二家・スイーツおせち&詰め合わせ」などの報道で、「不二家」となった。第5位は「『ユニクロのふだん着フト』キャンペーン記者発表会」などの報道で「ファーストリテイリング」、第6位は「鳥貴族の食べ飲み放題3600円に挑戦!」などの報道で「鳥貴族ホールディングス」、第7位は「アジアの巨大市場に挑むローソン・“目指せ1000店舗”マル秘戦略」などの報道で「ローソン」、

第8位は「東京駅の駅弁店・密着48時間」などの報道で、「東日本旅客鉄道」となった。第9位は「伊藤忠会長・来春に結論・ビッグモーター・支援に意欲」などの報道で「伊藤忠商事」、第10位は「映画『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら。』が公開」などの報道で「松竹」となった。

 

 

12月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・植田和男総裁、第2位・ダイハツ工業・奥平総一郎社長、第3位・STARTO ENTERTAINMENT・福田淳CEO」

第1位・日本銀行・植田和男総裁133件(植田総裁チャレンジングの真意・マイナス金利・解除の時期は?など)、第2位・ダイハツ工業・奥平総一郎社長91件(ダイハツ・全車種出荷停止など)、第3位・STARTO ENTERTAINMENT・福田淳CEO76件(ジャニーズ新会社タレント160人と面会へ・福田淳CEO・電撃就任のウラ側激白など)、第4位・大川原化工機・大川原正明社長59件(大川原化工機訴訟判決・逮捕は違法・国などに賠償命令など)、第5位・東京電力・小早川智明社長22件(東電社長規制委の追加検査に真摯に対応”など)、第6位・経団連・十倉雅和会長21件(経団連会長『早く正常化を』“大規模緩和”解除に期待感など)、第7位・SMILE-UP.東山紀之社長18件(ジャニーズ新会社タレント160人と面会へなど)、第8位・オープンAI・サムアルトマンCEO13件(MSとオープンAI提携を調査など)、第9位・スーパーアキダイ・秋葉弘道社長12件(暖冬&大雪で値動き?年末年始の野菜価格はなど)、第10位・ビッグモーター・和泉伸二社長9件(ビッグモーター・再建への道はあるのかなど)。

 

 

●テレビの窓

「1年の取引を締めくくる大納会」

京証券取引所では1年の取引を締めくくる大納会が開かれた。あいさつに立ったのはWBC日本代表前監督・栗山英樹氏。ことしの日経平均株価は2万5000円台でスタートしたあと上昇傾向が続き、6月にはバブル期以来、およそ33年ぶりとなる3万3000円台を回復した。その後、下落傾向となるが11月、日本企業の中間決算で堅調な企業業績が改めて確認され株価は反転した。29日の終値は3万3464円17銭。2022年年末の終値と比べ7369円余値上がりした。2023年は日米の金融政策などの影響で円安が進み、株式市場では輸出企業などの株価が上昇した。市場が注目するのは日米が金融政策のスタンスを転換するのかという点。その内容次第では、多くの日本企業の業績を支えてきた円安の流れが変わる可能性も指摘されている。さらに、2024年予定される台湾総統選挙や米国の大統領選挙の行方が世界経済に与える影響を警戒する声もある。不透明さが増す中で企業の稼ぐ力など、日本経済の真の力が試されることになる。みずほ証券・小林俊介チーフエコノミストは「過去2年間は円安が続いていた。おそらく(2024年は)米国、欧州が利下げを開始する一方で、日銀は利上げをするかもしれない。一定程度の円高がどれぐらい進むのかがポイントとなる。内需は春闘でどれぐらいの賃金上昇率を達成できるかが、日本経済の足腰を決めてくる最大の要因となる」と分析した(NHK)。

 

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