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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和2年1月)

「新型コロナウイルスショック・日本のGDPにも大きな影響か?」

今月の特徴は1.新型コロナウイルスの影響、2.日銀の動向、3.米中貿易摩擦の動向、4.決算の動向、5.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスが日本経済に与える影響について、SMBC日興証券チーフマーケットエコノミスト・丸山義正は「(中国人)観光客の数が減れば、日本経済に対し0.1ポイントくらいの下押しとなる。中国経済の活動が止まると0.3ポイントくらい効いてくる」「中国のサプライチェーンは世界に組み込まれており1つの工場が止まるとすぐに他の工場に影響が出る。その結果、世界経済、日本経済の停滞につながる」と指摘した。試算では、ことし1月~3月までの日本のGDPの伸び率を0.4%程度、約5000億円押し下げる可能性があるとしている(NHK)。

 

2.日銀の動向

日銀は21日に行われた金融政策決定会合で、現状の金融緩和策の維持を決定した。米国と中国が通商協議をめぐり「第1段階」の合意に達したことに加え、金融市場も安定していることから、日銀は景気悪化の懸念は後退したと判断した。去年12月に政府が決めた経済対策で景気が上向くとして、2020年度の実質GDP(国内総生産)の成長率見通しをこれまでより0.2ポイント高い0.9%に上方修正した(テレ東)一方、日銀は紙幣や硬貨に代わる電子的な通貨・デジタル通貨の研究に本格的に乗り出すため、ヨーロッパ中央銀行やイングランド銀行など6つの中央銀行(カナダ、スウェーデン、スイス)で共同グループを設立した。世界の中央銀行がデジタル通貨を共同研究する枠組みは初めてのこととなる(NHK)。

 

3.米中貿易摩擦の動向

長期化していた米中貿易交渉だが、ようやく米中が第1段階の合意文書に署名した。部分的な合意という妥協点で折り合い一時休戦の形となった(NHK)。一方、財務省が発表した貿易統計によると、米中貿易摩擦の影響で自動車部品などの輸出が減少し去年1年間の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆6438億円と2年連続の赤字となった(テレ東)。

 

4.決算の動向

企業の決算発表では新型肺炎の影響を懸念する声が相次いだ。日本を含む海外への団体旅行が中止となった影響で三越伊勢丹ホールディングスは春節期間中の売り上げが減少し、中国人客の減少が続くと見込まれることなどから業績見通しを下方修正した。ことし3月までの1年間の最終的な利益は予想の半分の70億円に減るとしている(NHK)。日立製作所は現時点での業績への影響予想は難しいとしている(フジ)。ANAホールディングスは去年4月から12月までの決算を発表した。米中通商摩擦の影響で航空貨物の輸送が減少したことに加え、企業の経費削減で国際線のビジネスクラスの需要が低調だったことが響き、純利益は1年前と比べて19%減った。一方、好調な企業もある。アマゾンドットコムの2019年10-12月期の決算は増収増益で1株利益は市場の予想を大きく上回った。有料のプライム会員向けのサービスを強化したことで会員数が1億5000万人を突破し、クラウドサービスのAWSの売上高も市場予想をわずかに上回った(テレ東)。

 

5.エネルギーの動向

福島第一原発の事故からまもなく9年を迎え、国は「原発の新設は考えていない」としているが、瀬戸内海に面する町で建設計画が進められていたことが明らかになった。瀬戸内海に面する山口・上関町では、獲れたての魚が地元の店に並ぶ、のどかな瀬戸内の町。海を埋め立て山林を切りひらき、巨大な原発2基を建設する計画だという(NHK)。一方、経済産業省は1月中旬に新たに設立する環境技術の研究機関のトップに、ノーベル化学賞受賞の吉野彰を起用すると発表した。再生可能エネルギーやCO2削減技術などの研究を行う方向(TBS)。

 

 

●注目点

「新型コロナウイルス肺炎感染拡大・日本企業に影響広がる」

型コロナウイルス肺炎感染拡大の影響が、中国に生産拠点がある日本企業を直撃している。中国の地方政府が、春節に合わせた連休を延長するよう要請。工場の再開を延期する企業が増加している。工場の再開を延期したのは製造業ではトヨタ自動車ホンダ日野自動車スズキヤマハ発動機ダイキン工業日立製作所パナソニックなど、食品業界では明治江崎グリコ森永製菓カルビーハウス食品など。明治は、菓子やアイスクリームを製造している工場を、ハウス食品はカレールーを作る工場の操業再開をそれぞれ延期した。決算発表に臨んだ日本郵船・山本昌平常務経営委員は会見で「短期的な荷動きは影響が避けられない」と述べた。中国以外から部品を調達したり、代替生産を検討したりするという企業も出ている。三菱自動車工業・池谷光司副社長は「必要な代替生産も含めて対応していきたい」と語った。また、LIXILグループ・瀬戸欣哉CEOは「中国だけでなく東南アジア、ベトナム、タイ、日本にも工場がある。場合によってはそこで対応することはBCP(事業継続計画)としてはあり得る」と述べた(NHK)。マネックス証券・広木隆は「いまや中国の経済規模が大きくなっているため、世界景気への影響は甚大なものがあることは間違いない。かといって中国自体が一段と下振れするかというと、一時的には下方プレッシャーが強まるものの中国は景気対策を出しやすくなり、ペントアップデマンドなどと合わさって盛り返してくる可能性もある」と分析した(テレ東)。

 

 

●新潮流

「アルファベット・時価総額1兆ドル超」

ーグルの持ち株会社、アルファベットの時価総額が1兆ドル(日本円で約110兆円)を超えた。これは、日本企業で首位のトヨタ自動車のおよそ4倍。米国企業で時価総額が1兆ドルに到達したのはアップルアマゾンマイクロソフトに次いで4社目となる。背景には、自動運転技術の開発で先行していることなどに加え、株式市場に資金が流れ込みやすくなっているということもある。時価総額1兆ドルはどんな規模なのか。国別の株式市場全体の時価総額ランキング。米国が35兆ドルでトップ、中国、日本と続く。アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾンの時価総額を合計すると4位の香港の次、英国より上。アップルだけでも台湾市場を超え、オーストラリア市場に迫るいきおい。アルファベットは広告ビジネスを柱にクラウド、自動運転、スマートコンタクトレンズなどのイノベーションで世界をリードしている。去年12月、ピチャイCEO就任で新たな戦略や株主還元などへの期待が高まり株価を押し上げた(テレ東)。

 

 

1月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・三井不動産、第2位・くら寿司、第3位・王将フードサービス」

020年1月度のテレビ報道価値換算値ランキングでは34億149万円で「三井不動産」が第1位に輝いた。具体的には「東京ミッドタウン日比谷」での各種イベントや三井ガーデンホテルの開業等と三井アウトレットパーク木更津の紹介などが寄与した。第2位は「くら寿司・観光と食事と同時に体験・グローバル旗艦店が浅草に新オープン」などの報道で「くら寿司」となった。第3位は「餃子の王将の人気の秘密を徹底解剖」などの報道で「王将フードサービス」、第4位は「帰れま10」などの報道で「串カツ田中ホールディングス」、第5位は「つぶれない店」などの報道で「ホットランド」、第6位は「JR原宿駅“新駅舎”公開・生まれ変わるトレンド発信の街」などの報道で「東日本旅客鉄道」、第7位は「海なし秘境でお寿司屋さんを探す旅」などの報道で「東武鉄道」、第8位は「後発から業界1位へ・メルカリ大逆転の軌跡」などの報道で「メルカリ」となった。第9位は「日本人帰国へ今夜チャーター機派遣」などの報道で「ANAホールディングス」、第10位は「今年は新アトラクション続々・美女と野獣にミニチュア」などの報道で「オリエンタルランド」となった。

 

 

1月の人物ランキング

「第1位・楽天・三木谷浩史社長、第2位・経団連・中西宏明会長、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁」

第1位・楽天・三木谷浩史社長37件(“楽天”送料無料に三木谷社長がこだわる背景は?など)、第2位・経団連・中西宏明会長34件(焦点は日本型雇用の見直しなど)、第3位・日本銀行・黒田東彦総裁32件(日銀・金融緩和策を維持・経済成長率見通し上方修正など)、第4位・トヨタ自動車・豊田章男社長29件(トヨタが実証都市建設・垣根超える日本連合など)、第5位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長16件(“環境一色”ダボス会議・日本企業・リーダーの本音など)、第6位・ローソン・竹増貞信社長14件(企業トップが語る2020年働き方や給与など)、第7位・大和証券グループ・中田誠司社長13件(恒例・新年祝賀パーティー・企業トップ達の中に…など)、第8位・ANAホールディングス・片野坂真哉社長11件(五輪後は5Gが救世主?企業トップ語る“見通し”など)、第9位・メルカリ・山田進太郎社長11件(日本発メルカリの野望・米国から世界へなど)、第10位・日産自動車・内田誠社長11件(日産・三菱・ルノー・連携強化策発表へなど)。

 

 

●テレビの窓

「トヨタ社がスマートシティを推進・実証都市開発へ」

ヨタ自動車は、あらゆるモノやサービスがつながる「スマートシティ」の開発を来年から開始すると発表した。豊田章男社長はラスベガスCES直前に控えた記者発表で、あらゆるモノやサービスがインターネットなどでつながる実験的な都市、「スマートシティ」を来年初頭から静岡県裾野市で作り始めると発表。トヨタが開発を進める自動運転の電気自動車を走行させるほか、燃料電池の発電システムなどのインフラは地下に設置したりAIやロボットなどを活用する計画である。静岡・裾野市で来年初頭から着工し、初期段階ではプロジェクトの関係者ら約2000人が住むことを見込んでいる。豊田章男社長は「バーチャルとリアルの両方で将来の技術を実証することで、人、建物、車などモノとサービスがつながるポテンシャルを最大化できる」と述べている(TBS)。このプロジェクト名はトヨタ「ウーブンシティ」といい、将来的におよそ71万平方メートルの街づくりを行うという(テレ東)。

 

 

JCC株式会社