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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和4年10月)

経済・1月

「止まらない円安・政府・29兆円大規模総合経済対策決定」「日銀・大規模金融緩和を維持」

今月の特徴は、1.政府・29兆円大規模総合経済対策決定、2.日本銀行・大規模な金融緩和策を維持、3.インバウンド回復の動向、4.エネルギーの動向となった。                                  

 

1.政府・29兆円大規模総合経済対策決定

政府は物価高や円安に対応するため、家庭や企業の電気料金の負担緩和策などを盛り込んだ「新たな総合経済対策」を決定した。財政支出の総額は39兆円程度、補正予算案の一般会計29兆1000億円程度と異例の規模となる。「新たな総合経済対策」は「円安を逆手にとる」との位置づけで、外国人観光客の需要、いわゆるインバウンド需要を喚起するための対策、農林水産物の食品の輸出拡大に向けた事業が盛り込まれた。石川・能美に本社がある金属製品の工場では自動車部品などを販売。電気料金は同じ使用料で1.5倍と収益を押し下げる要因となっている。企業向け電気料金の補助は来年1月から1キロワットアワーあたり3.5円。自動車部品販売企業は「支援はありがたいが、タイムラグが無くずれない形でお願いしたい」と述べた。補正予算案の財源の大半は赤字国債で賄うことになり、財政の悪化は避けられない形となる。野村総合研究所・木内登英エグゼクティブエコノミストは「賃金が上がる環境を支える成長戦略はひいては物価高対策にもなっていくだろう」と分析した(NHK)。

 

2.日本銀行・大規模な金融緩和策を維持

日本銀行は現在の大規模な金融緩和策を維持することを決めた。一時150円台に突入するなど、歯止めがかからない円安を招いているという批判もある日銀の金融緩和だが、黒田東彦総裁は28日の会見で「今すぐ金利引き上げとか、出口が来るとは考えていない」と断言し、緩和を続ける姿勢を示した。金融緩和が円安を招いているという指摘に対し、黒田東彦総裁は「最近の為替動向を説明することは一面的ではないかと思っている」と反論した。止まらない円安で物価も高騰し、東京23区の10月の消費者物価指数が去年より3.4%上昇し、40年4か月ぶりの大きな伸び率となった(TBS)。一方、財務省は、政府日銀が10月に行った為替介入額が6兆3499億円にのぼったことを明らかにした。1か月の円買い介入としては過去最大となる。政府は10月に入ってから為替介入を行ったかどうか、明らかにしてこなかったが、覆面介入していたことが明らかになった。日米の金利差拡大による円安局面での介入額は9月からの累計で9兆1881億円となった(テレ東)

 

3.インバウンド回復の動向

岸田総理は19日、感染症危険情報を全世界レベル1に引き下げると発表したが、水際対策が大幅に緩和された効果があらわれはじめ、街で外国人観光客をよく見かけるようになった。水際対策や行動制限などが緩和される中、鉄道航空業界が31日、決算を発表し、ANAホールディングスが発表した4月から9月までの最終損益は195億円と、3年ぶりに黒字に転換した。水際対策の緩和などを受けた旅客数の増加が実績の回復を押し上げた。あわせて、来年3月までの純利益の見通しを400億円に上方修正した。また、JR東日本の4月から9月までの最終損益も、271億円の黒字に転換した(テレ東)。ことし5月に発表された世界観光魅力度ランキングで、日本は初めて1位に輝いており、ここに来てようやく観光客が戻り始めている。ただ以前とは異なり慎重さも垣間見える。今年7月にオープンした民泊の戦略は、外国人にだけ頼らないリスクを分散した民泊となっている。1階はリビングや寝室がある普通の民泊だが、実は全てバリアフリーの設計となっている。バリアフリーを求める外国人観光客向けに設計されているが、他の使い道も考えられている。インバウンドがなかった空白の3年の教訓が生かされている(TBS)。

 

 

4.エネルギーの動向

日本のエネルギー政策は、電力のひっ迫などを受けて岐路に立っている。特に原子力発電について、政府は最大限活用する方針を打ち出し、東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、「想定しない」とし続けてきた原発の新設について、次世代炉の開発や建設を検討するとしている。次世代炉で政府が示しているのは大きく分けて革新軽水炉、小型軽水炉、高温ガス炉、高速炉、核融合炉という5つのタイプがある。海外で開発が先行し、実用化が近いとされているのが小型軽水炉小型炉で、開発には日本のメーカーも乗り出している。一方、再生可能エネルギー導入拡大のカギが風力発電と言われている。これまで陸上を中心に建設が進み、2500基余の風車が稼働している。今、発電量を大幅に増やすため熱い視線が注がれているのが洋上風力発電。陸上と比べ、風車を大型化することが可能であり、政府は全国8か所で重点的に整備することを決めている。拡大を見込んで事業に乗り出した大手電機メーカーの東芝が組み立てようとしているのは、発電設備などが入った高さ10mの装置。必要な部品は約2万点で、早ければ3年後に134基の組み立てを予定している。しかし部品のほぼすべてを海外製に依存しているため、国内経済への波及効果は限定的になるという(NHK)

 

 

●新潮流

「山手線・営業列車で自動運転検証」

R山手線で11日午後から乗客を乗せた営業列車での自動運転の実証実験が始まった。列車は通常と同じ11両編成で、JR東日本が独自に開発したATO(自動列車運転装置Automatic Train Operation)が搭載され、車両の先頭などにATOという文字が入っている。運転士は各駅を出発する際にボタンを押すだけで加速や減速、停車は自動で行われる。山手線での自動運転は4年前から終電後の深夜に、ことし2月以降は日中に乗客を乗せない形で走行試験を行ってきたが、乗客を乗せた営業列車で実証運転を行うのは11日が初めてとなった。今後2か月間で装置を搭載した2つの列車を計1000周ほど走行させ、運転機能や安全対策、省エネ性能などのデータを集めることにしている。JR東日本では2028年ごろの山手線の全車両への自動運転の導入を目指している。山手線の自動運転は、人口減少などを背景にした運転士不足への懸念から開発が進められてきたが、山手線の1日の利用客は平均76万人。ラッシュ時には3分に1本の過密ダイヤで、ホームドアがない駅や踏切もあり、線路内への侵入などにも今後自動運転で対応できるかが問われる(NHK)。

 

 

●注目点

「ソニーグループ・ホンダ・EV新会社・3年後に販売開始へ」

ニーグループホンダソニーホンダモビリティを設立した。EVを開発し、2025年前半から注文を受け付け、2026年から米国や日本で引き渡す計画である。自動運転の機能を搭載するほか、車内にはモニターや音響機器などを備え、映像や音楽などを楽しめるようにする。ホンダ出身のソニーホンダモビリティ・水野泰秀会長は「お客様との新しい関係性の構築にチャレンジしていきたい」としている。ガラスメーカー・AGCが新たに開発した車の窓ガラスは、表面に特殊な加工を施されておりプロジェクターを使って映像を投影することもできる。このガラスを使えば将来的に自動運転走行中、車のすべての窓をスクリーンにして映画やゲームを楽しみ、仕事の打ち合わせも可能だとしている。また車の内装デザインを手掛ける住江織物が次世代に向けて開発中の車のインテリアを発表した。車内が自宅やホテルの一室のようなくつろぎの空間になると想定し作られている(NHK)。一方、三菱自動車も宅配便の配送などに使われる商用軽EVの販売を再開していて、日本勢がどこまで巻き返しをはかれるか注目されている(TBS)。

 

 

10月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・オリエンタルランド、第2位・日本KFCホールディングス、第3位・ファーストリテイリング」

2022年10月度のテレビCM価値換算ランキングは、46億3692万円で「オリエンタルランド」が、第1位となった。具体的には、「東京ディズニーシーの新エリア・ファンタジースプリングスの最新映像を公開」「イベント割・東京ディズニー・1デーパスポート2割引きに」などの露出が大きく貢献した。第2位は「ケンタ“サンド”を“バーガー”に」等の報道で、「日本KFCホールディングス」となった。第3位は「ユニクロの新店舗・新宿三丁目店のオープンに密着」などの報道で「ファーストリテイリング」、第4位は「注目・鉄道開業150年・歴史と魅力に迫る」などの報道で、「東日本旅客鉄道」となった。第5位は「東京スカイツリーなど・各地でハロウィーンのイベント」などの報道で「東武鉄道」、第6位は「NY摩天楼に日本の不動産企業が活発進出」などの報道で「三井不動産」、第7位は「餃子の王将VSローカル町中華」などの報道で「王将フードサービス」、第8位は「3年ぶり“自粛要請なし”ハロウィーンで渋谷は…MEGAドンキホーテ渋谷本店を取材」などの報道で、「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」となった。第9位は「丸亀製麺SP年間2700万食売れるうどん弁当!ロンドン店舗も大行列!」などの報道で「トリドールホールディングス」、第10位は「ソニー&ホンダの新型EV・2025年から受注開始」などの報道で「ソニーグループ」となった。

 

 

10月の人物ランキング

「第1位・日本銀行・黒田東彦総裁、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO、第3位・KADOKAWA・夏野剛社長」

第1位・日本銀行・黒田東彦総裁176件(日銀・大規模緩和を継続・物価見通し2.9%に引き上げなど)、第2位・テスラ・イーロンマスクCEO36件(イーロンマスク・ツイッター・買収大詰めの段階になど)、第3位・KADOKAWA・夏野剛社長14件(KADOKAWA社長・会見で謝罪など)、第4位・ファーストリテイリング・柳井正社長11件(円安・物価高にアパレル業界は悲鳴・ワークマン・ユニクロもなど)、第5位・日野自動車・小木曽聡社長11件(データ不正問題・日野自動車再発防止策・報告書を提出など)、第6位・ひまわり市場・那波秀和社長10件(八ヶ岳山麓に1日1万人も!?客を呼ぶ極上寿司に絶品総菜など)、第7位・日本経団連・十倉雅和会長10件(経団連統合20年で記念シンポなど)、第8位・サントリーホールディングス・新浪剛史社長9件(歴史的円安で日本経済はなど)、第9位・温泉道場・山崎寿樹社長8件(赤字施設がV字回復!“脱・お風呂戦略”の舞台裏など)、第10位・日本ケンタッキーフライドチキン・判治孝之社長8件(ケンタが定番品の名前変更・「サンド」から「バーガー」になど)。

 

 

●テレビの窓

「日本最大級IT見本市・CEATEC3年ぶりリアル開催」

ジタル技術の見本市CEATEC(千葉市美浜区・幕張メッセ)が18日から始まった。562の企業や団体が出展し、海外からも27の国や地域から出展している。三菱電機の遠隔操作でロボットアームを動かすシステム「進化型遠隔操作サービスプラットフォーム」は、グローブやキーボードなどの機器を使わないため、誰でも簡単に使うことができる。すべてを自動化するロボットではなく、遠隔操作で人が補う仕組みにしているため、早期の実用化が可能だといい、3年後の販売を目指している。京セラの「リアルタイム食事管理システム」はおぼんの上におかれた食事をカメラが認識し、AIが健康的な食事のとり方をアドバイスするシステム。食べた量や速さ、順番を解析し、健康的な食事管理をしてくれる。高齢者施設などに向けて開発を進めていて2年後の実用化を目指すという(テレ東)。今回のCEATECでは、ネットを利用した3次元の仮想空間、メタバースをより生活に密着した形で体験できるものとなっている。血圧や心拍数を測定できる超小型バイタルセンサーに、幼児を残して車を降りると警報が鳴り、置き去り事故を防ぐコンセプトカー「EMIRAI×S Drive」は、赤外線カメラで骨格や体形を検知して年齢を判断している。またカメラやセンサーで運転手の体調変化や眠気を検知し休憩所をアナウンスするなど、事故防止機能もついている。居住空間「WHOLE EARTH CUBE」は電気や水の浄化装置を完備し、外部インフラに頼らず生活・移動が可能なトレーラーハウスで、屋根に降った雨水を回収・循環させて使用する。太陽光パネルで発電し、足りない場合はLPガスを使った発電機で電気を賄う(フジ)。

 

JCC株式会社