テレビ情報のデータベース化、知識化、ネット情報の収集、多角的分析が現実世界を浮き彫りにします

テレビ報道に見る産業・経済月報
(平成31年1月)

「日銀・金融政策決定会合・海外リスクを懸念」

 

今月の特徴は1.日銀・金融政策決定会合・海外リスクを懸念、2.景気の動向、3.外国人労働者受け入れ拡大、4.英国EU離脱の影響、5.消費増税関連、6.エネルギーの動向となった。

                                                                                                

1.日銀・金融政策決定会合・海外リスクを懸念

日銀は31日、今月22日と23日に開いた金融政策決定会合の主な意見を公表し、この中で委員から海外経済への懸念が相次ぎ、「米中貿易摩擦をはじめとする海外経済のリスク」を懸念する意見が一段と強まった。2%の物価上昇率の実現は一段と不透明になっているが、今の大規模な金融緩和策は据え置かれた。これについて委員からは「何か大きな危機が起きるまで行動しないという態度は望ましくない。状況の変化に対しては追加緩和を含めて、迅速、柔軟かつ、断固たる対応を取る姿勢が望ましい」などの声が出た(NHK)。

 

2.景気の動向

財務省の発表によると、日本が海外との貿易や金融取引などでどれだけ稼いだかを示す去年11月の経常収支は7572億円の黒字となった。経常収支が黒字になるのは53か月連続となる(NHK)。一方政府は公式見解を示す月例経済報告で「今の景気回復が戦後最長の長さになったとみられる」と発表し、アベノミクスとともに2012年12月から始まった今の景気回復は、6年2か月となり、いざなみ景気を超えて戦後最長になった可能性が高いとしている。就業者数はバブル期並みに増加。企業収益は過去最高になったと政府は胸を張っているが、景気回復の実感があるか、街で100人に聞いたところ「景気回復の実感がない」と答えた人は100人中85人と、圧倒的な多さだった。第一生命経済研究所・新家義貴主席エコノミストは「企業の業績は非常にいいが、それが消費者に波及していない。それが景気回復の実感のなさにつながっている」と説明した(TBS)。

 

3.外国人労働者受け入れ拡大

4月から施行される改正出入国管理法では、深刻化する人手不足を背景に一定の技能を持つ外国人の就労業種や在留期間を拡大していき、5年間で約34万5000人の外国人労働者を受け入れるとしている。これを受け、安倍首相は「外国人のみなさんが日本で、そして地方で働いてみたい、住んでみたいと思えるような制度の運用、社会の実現に全力を尽くしてください」と述べた。受け入れ態勢をどう整えていくかが課題となっている(NHK)。

 

4.英国EU離脱の影響

3月末に英国がEUから離脱することになっている。英国がEUから離脱した場合、日本企業も業績への悪影響などが避けられない情勢となっている。三菱UFJモルガンスタンレー証券が2020年3月期の影響額を試算したところ、英国に生産拠点を置く日産自動車トヨタ自動車ホンダには合計で年間1500億円の関税負担が生じる見通しとなることが明らかになった。この額は利益の4%にあたる規模になる(テレ東)。

 

5.消費増税関連

10月に予定している消費増税。増税の幅は前回より小さい上、増えた税金は景気対策に使うので、景気にはあまり影響はないと見られるが、米中による貿易摩擦の影響が日本に影響を及ぼす可能性がある(テレ朝)。消費増税対策のポイント還元はキャッシュレス化の呼び水になるのかということが議論されているが、みずほ総研チーフエコノミスト・高田創は「東京オリンピックや万博があるので重要だが、時限措置。なかなか難しい部分はある。反動減も不安」とコメントした(テレ東)。

 

6.エネルギーの動向

風力発電の国内大手メーカー・日立製作所は風力発電機の生産の中止を決定した。この分野では海外のメーカーとの競争が激しく、“今後も収益の拡大は期待できない”というのがその理由。風力発電機を生産している茨城・日立の工場については“生産終了後の工場の体制は決まっていない”としている。日立では今後、提携関係にあるドイツの風力発電機メーカーとともにIoT技術を使った設備の故障予測、遠隔操作でメンテナンスなどのサービスを中心に事業を行っていく方針(NHK)。

 

 

●新潮流

「経済3団体が新年祝賀会・企業トップに聞く…2019年の注目は?」

団連日本商工会議所経済同友会の3団体が7日、都内で新年祝賀パーティーを開き、安倍総理も出席した。安倍総理は「今年は消費税の引き上げもあり、しっかり経済の足腰を強化していくことが求められる。対策しながら、消費税引き上げを乗り越え、デフレ脱却を確かなものにしていきたい」と語った。東芝・車谷暢昭会長は「総理は経済運営に対してリスクを抑えた上で、自信に満ちた話をしていたので、今年は明るい年にできるのではないか」と強調した。サントリーホールディングス・新浪剛史社長は「全般的に日本のファンダメンタルはそんなに悪くない。じわじわと景気はいい方向にいくのかなと思っている」と予想した。不確定要素も多い中、今年、日本の景気は横ばい程度に留まるとの声もある。西武ホールディングス・後藤高志社長は「2019年は先行きが不安定で、不透明な1年になるだろう。ポジティブ、ネガティブな面をトータルすると、ほぼ横ばいから若干のプラスになるかもしれない」と予想した。三菱商事・垣内威彦社長は「AIやIoTが様々な産業に浸透してきて非常に強い状況。昨年と最終的にはあまり変わらない結果になるのではないか」との見通しを示した。企業トップの中で1番厳しい見方をしていたのはトヨタ自動車・豊田章男社長で、「年初の株の乱高下を見ても、バーチャルな世界のバブル化が是正されている局面にある。年初だから景気の良いことを言いたいが、今年はくもりではないかと思う」と悲観的な見方を示した(テレ東)。住友商事・中村邦晴会長は「“トランプリスク”は年がら年中あると思う」、野村HD・永井浩二グループCEOは「トランプ大統領が米中問題についてどういう発言をされるかが注目」、経済アナリスト・豊島逸夫は「トランプツイートの一言で日本企業の損益が大きく左右される」とコメントした(TBS)。

 

 

●注目点

「日産自動車はルノー・スナール会長を取締役に選任する意向」

別背任などの罪で起訴されたカルロスゴーン被告の退任を受け、新たにルノーの会長に就任したのがジャンドミニクスナール会長だ。日産自動車は、4月中旬に臨時株主総会を開き、スナール会長を取締役に選任する意向を示している。今後のルノーを代表し、日産との交渉にあたるとされるスナール会長は「私たちは1人でいることはできない。企業連合は不可欠だ」と強調している。スナール会長は、ミシュランガイドで知られるフランスのタイヤ大手・ミシュランのCEOを当面兼務するという。ミシュランは、“フランス政府のお墨付きを得ている”世界的なタイヤメーカーと言われている。実はゴーン被告も元々ミシュラン出身であり、ルノーにヘッドハントされた後、日産の再建を任された。同様のルートをスナール会長も辿っている。ルノーの筆頭株主であるフランス政府は、ルノーと日産の経営統合を求めており、スナール会長を通じてフランス政府が日産の経営に介入するなど影響力を強めることも懸念されている。一方、日産の西川社長は会見で、「ルノーとの経営統合については今は議論すべきではない」と回答を避けた。またスナール会長については「非常に優れたビジネスマンであり、その姿勢も含めてパートナーとして尊敬もできる」と述べ、スナール会長とは電話会談を行い、就任祝いの言葉を贈るとともに連携を確認したことを明らかにした(フジ)。

 

 

1月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・すかいらーくホールディングス、第2位・ZOZO、第3位・ローソン」

019年1月度のテレビ報道月間CM価値換算ランキングでは「すかいらーくホールディングス」が32億4300万円で第1位に輝いた。具体的には「全国のガストでプラスチック製ストローを廃止」「バーミアンの人気メニューの紹介」「?屋がガスト・新作PRイベント」等の露出が貢献した。第2位は「ジュニアの嫁がZOZOSUITを着て踊りまくっている話」などの報道でZOZOとなった。第3位は「セブンとローソン成人誌販売中止へ」などの報道でローソン。第4位は「働き方を選べるオフィスづくりへ・三井不動産の挑戦とは?」などの報道で三井不動産、第5位は「大調査!飲食チェーンのNo.1支店・スシロー・全国513店舗の頂点は…」などの報道でスシローグローバルホールディングス、第6位は「2020年東京大会の期間中に・JR東日本が終電繰り下げへ」などの報道で東日本旅客鉄道、第7位は「東武鉄道大師線・大師前駅前の風景」などの報道で東武鉄道、第8位は「トヨタとパナ中国勢に対抗・EV電池新会社設立」などの報道でトヨタ自動車となった。第9位は「東京會舘がリニューアルオープン」などの報道で東京會舘、第10位は「セブンATMで顔認証→口座開設」などの報道でセブン&アイ・ホールディングスとなった。

 

 

1月の人物ランキング

「第1位・日産自動車・西川廣人社長、第2位・スタートトゥデイ・前澤友作社長、第3位・経団連・中西宏明会長」

第1位・日産自動車・西川廣人社長226件(日産…ルノー新会長と初顔合わせなど)、第2位・スタートトゥデイ・前澤友作社長100件(大手アパレルがゾゾ離脱・前澤社長はどう答える!?など)、第3位・経団連・中西宏明会長39件(トップは経団連・中西会長・大阪万博に向け協会設立など)、第4位・ルノー・ジャンドミニクスナール新会長33件(日産・ルノー・ついにトップ会談へ・“ゴーンショック”第2幕など)、第5位・日本銀行・黒田東彦総裁29件(日銀・金融政策決定会合・海外リスク懸念する意見強まるなど)、第6位・三菱自動車・益子修CEO18件(三菱自CEO・連携を確認など)、第7位・ファーウェイ・任正非CEO16件(ファーウェイ創業者“顧客利益に危害与えない”など)、第8位・トヨタ自動車・豊田章男社長15件(北米国際自動車ショー開幕・トヨタ「スープラ」17年ぶり復活など)、第9位・東芝・車谷暢昭会長12件(経営トップに聞く2019年のキーワードなど)、第10位・セブン&アイHD・井阪隆一社長12件(トップ直撃・2019日本経済のゆくえはなど)。

 

 

●テレビの窓

「デトロイトで今年最初のモーターショーが開幕」

国・デトロイトで今年最初のモーターショーが開幕した。今年は好景気を背景にしてエコカーより高級車、大型車の発表が相次いでいる。このモーターショーは100年以上の伝統があるが、激しい変化に直面する自動車業界を反映するかのように今回はいつもと様子が違っている。毎年40を超えるブランドがブースを構えていたが、今年は30程に減少した。その背景にあるのは同時期にラスベガスで開かれているテクノロジー見本市CES。自動運転やITとの融合が進み、自動車メーカーは歴史あるモーターショーよりもCESの出展に力を入れるようになっている。創業102年のホットドッグ店は、この時期のモーターショーに出店することで売れ行きを伸ばしてきたが、今後に不安を抱えている。ひときわ大きなブースを構えたゼネラルモーターズも自動運転やIT化への対応で巨額の投資や研究開発を迫られ、厳しい決断を下し、北米の5つの工場を閉鎖する大規模なリストラ策を発表した(NHK)。今回のモーターショーでは企業の出展が減ったため、空いてしまった展示スペースをフードコートで埋めている。来年はCESと時期をずらし6月に開催を変更するという。キャデラック・スティーブカーリスル社長は「時期をCESとずらして開催すればチャンスも大きくなるだろう」とコメントしている。こうした中、ゼネラルモーターズは国内工場を一部閉鎖し中国向けの電気自動車に力を入れると表明した。フォードフォルクスワーゲンとの連携を強化するなど自動車業界が地殻変動を起こしていることは間違いない(TBS)。トヨタ自動車は17年ぶりに復活した「スープラ」を世界初披露した。ガソリンエンジンならではの走りや音にこだわった。直列6気筒エンジンや後輪駆動、4.3秒で時速100キロに到達する。全て8速のスポーツオートマチック。米国販売価格は4万9990ドル~。日本での価格は未定だが、今年の春ごろ販売予定。新型「スープラ」はBMW(ドイツ)との共同開発プロジェクトにより誕生した。トヨタが企画やデザイン、BMWが設計や開発を担った。スポーツカーの復活は他にも。「シェルビーGT500」(フォード)を発表した。2014年に生産終了して以来の復活となった。最大出力はスープラの2倍以上となる700馬力。SUBARUも子会社STI(スバルテクニカインターナショナル)が開発した「STIS209」を初公開した(テレ東)。

JCC株式会社