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テレビ報道に見る産業・経済月報
(令和5年7月)

「日銀・金融緩和策を修正・長期金利0.5%超えを容認」

今月の特徴は、1.日銀・金融緩和策を修正・長期金利0.5%超えを容認、2.最低賃金全国平均初1000円超、3.外国人観光客の動向、4.高浜原発1号機が12年ぶりに再稼働となった。

 

1.日銀・金融緩和策を修正・長期金利0.5%超えを容認

日銀金融政策決定会合で、これまで0.5%程度としてきた長期金利の変動幅の上限について市場の動向に応じ、事実上1%まで容認する方針を示し金利操作をより柔軟に運用することを決めたことにより、市場では金利の上昇圧力が高まっている。市場関係者は、日銀の植田総裁は経済や物価の情勢を反映する形で長期金利が0.5%と1%の間で上がっていくことについては一定程度、市場に委ねる姿勢を示していて、市場は金利の適正な水準を模索している状況だと話している(NHK)。

 

2.最低賃金全国平均初1000円超

中央最低賃金審議会は今年度の最低賃金について全国平均時給1002円を目安に取りまとめた。全国平均は時給961円から41円増額となり引き上げ幅としては過去最大となる。最低賃金は今後各都道府県が金額を決める。10月ごろから適用される見通しとなる。東京都の場合、1072円から1113円になる。業績の改善が伴わないまま人手確保のために賃上げをしている企業もあり、最低賃金の大幅な引き上げとなれば地方の中小企業を中心に負担感がますます高まることが懸念される。企業側からは「年収の壁を踏まえて就業調整が行われることで年末などの繁忙期に人手不足に拍車がかかるだけでなく、最低賃金の引き上げが労働者の実質的な所得向上につながっていない事例も生じている」との声も出ている(テレ朝)。

 

3.外国人観光客の動向

今年の前半に日本を訪れた外国人が1000万人を突破したことがわかった。2019年以来、4年ぶりのことになる。急速に回復しているインバウンドだが、外国人観光客のお金を使う目的や理由がコロナ前とはかなり変わってきているという。1つ目の特徴が1人当たりの旅行支出がコロナ前より4割増加しているが、この背景に世界の富裕層が日本で高額消費をしていることがある。2つ目の特徴として、訪日外国人の6割強がリピーターであることが挙げられる。彼らは日本でしか買えない物やサービスにお金をつぎ込んでいる。3つ目の特徴がコロナ禍で日本に来たかった気持ちを抑えていた人たちがリベンジ消費をしているということがある。訪日外国人の国・地域ランキングは1位・韓国、2位・台湾、3位・米国、4位・香港、5位・中国となっている(出典:日本政府観光局)(テレ東)。

 

4.高浜原発1号機が12年ぶりに再稼働

運転開始から40年を超える関西電力の高浜原発1号機が、12年ぶりに再稼働した。8月2日には発電と送電を開始する。高浜原発1号機は1974年の運転開始から48年が経過した国内で最も古い原発で、2011年1月の定期検査以来、運転を停止していた。当初は6月上旬に再稼働する計画だったが、火災防護対策の追加工事などが必要となり延期していた。40年を超える原発が稼働するのは、美浜3号機に続いて国内2例目となる(フジ)。

 

 

●新潮流

「トヨタ・有人月面探査車・三菱重工とタッグへ」

ヨタ自動車JAXAが共同開発中の有人月面探査車「ルナクルーザー」は全長6メートル、トヨタの燃料電池車の技術を使い、1万キロ以上走れる車を目指している。21日、新たに連携を発表した相手が三菱重工業。この探査車には4畳半ほどの居住空間があるため、2人の宇宙飛行士が船外活動服なしで1か月車内で生活できる設計になっている。ISS国際宇宙ステーションの実験棟「きぼう」などで三菱重工が培った生命維持技術などが役立つ。実は三菱重工自体も、これとは別で無人月面探査車「LUPEXローバ」を開発中で、そこにトヨタの自動運転技術などを利用したい考え。三菱重工業・宇宙事業部・プロジェクトマネージャー・仲嶋淳氏は「(培ってきた)有人宇宙滞在技術を生かして有人与圧ローバー(ルナクルーザー)のシステム開発を支援していく」と話した。トヨタの探査車は米国が主導する月面有人探査プロジェクト「アルテミス計画」での運用を想定している。トヨタ自動車・月面探査車開発プロジェクト長・山下健氏は「協業各社との連携によって自動車産業と宇宙産業を融合してチャレンジしていきたい」と抱負を語った(テレ東)。

 

 

●注目点

「半導体の製造装置・輸出手続き厳格化」

端半導体の製造装置を中国などに輸出する際の手続きが23日から厳しくなった。経済産業省が輸出管理を厳格化したのが先端半導体の材料に回路を焼き付ける露光装置など23品目。国内では10社余りが製造しているが、これらを輸出する際、米国政府や韓国政府などが輸出管理の仕組みが整っていると認めた国や地域へは手続きを簡略化できる。その一方で、中国を含むその他の地域へは毎回、経済産業大臣の許可を取ることが必要になった。このような措置が取られるようになった背景には米国と中国の覇権争いがある。米国からの協力要請に日本も応えた形になっている。これに対し、中国は8月1日から半導体などの材料に使われるガリウムとゲルマニウムの関連品目を輸出管理の対象にすると発表している。日本としては対抗措置とは現時点では受け止めていないが、中国側の意図や運用などを確認して影響を見極めていく方針(NHK)。日中外交筋は軍事転用のおそれがないと確認できれば輸出は許可されるため、中国への影響は限定的としている。ただ、中国側はますます半導体の入手が困難になることから死活問題と捉えており、今回の措置は日中関係の更なる課題となりそうだ(TBS)。

 

 

7月のランキング(企業別テレビ報道CM価値換算一覧全国版より)

「第1位・良品計画、第2位・ミニストップ、第3位・イオン」

2023年7月度のテレビ報道CM価値換算ランキングは、「良品計画」が38億3207万円で第1位に輝いた。具体的には、「熱狂マニアさん!無印マニア集結!カレー&冷食&パスタ-ソースグルメ徹底解剖SP」「無印良品の全国約420店舗・無料で冷たい水を給水できる設備を導入」等によるものであった。第2位は「ミニストップ×超一流スイーツ職人」等の報道で「ミニストップ」となった。第3位は「土用の丑の日今年も高値傾向・超特大”“謎のうなぎも登場」などの報道で「イオン」。第4位は「メタ・生成AIを無償で提供」などの報道で「メタ」となった。第5位は「“びしょ濡れ”イベントで集客へ・レジャー業界も景況感改善」などの報道で「オリエンタルランド」、第6位は「驚き・気になる中身はどう見える?期間限定!・スケスケ展」などの報道で「三井不動産」、第7位は「刷新・東海道新幹線・きょう~新チャイムで出発進行」などの報道で「東海旅客鉄道」、第8位は「コロナ禍を乗り越え・外食チェーン・健康志向新業態」などの報道で「大戸屋ホールディングス」となった。第9位は「羽田空港国際線第3ターミナル直結の羽田エアポートガーデンに密着」などの報道で「東京空港事務所」、第10位は「京急電鉄の陣・京急を築いた歴史的名車」などの報道で「京浜急行電鉄」となった。

 

 

7月の人物ランキング

「第1位・ビッグモーター・兼重宏行社長、第2位・日本銀行・植田和男総裁、第3位・META・マークザッカーバーグCEO」

第1位・ビッグモーター・兼重宏行社長190件(ビッグモーター保険金不正請求・兼重社長・謝罪と釈明など)、第2位・日本銀行・植田和男総裁83件(日銀・金融緩和策を修正・長期金利0.5%超えを容認など)、第3位・META・マークザッカーバーグCEO51件(メタが短文投稿アプリ・Threads開始など)、第4位・損保ジャパン・白川儀一社長25件(指摘された歪な企業風土・車修理不正と損保会社など)、第5位・ソフトバンクグループ・孫正義会長兼社長13件(ソフトバンクに53億円・補助金「生成AI」支援など)、第6位・東京電力・小早川智明社長13件(東電社長安全性や風評に懸念あれば真摯に対応など)、第7位・アキダイ・秋葉弘道社長12件(3500品目超の食品等値上げなど)、第8位・地球の歩き方・新井邦弘社長8件(海外旅行ガイドブックから脱却・国内版に旅の図鑑も大ヒット!など)、第9位・ゼブラジャパン・松山恭子社長8件(リピート販売に郊外型店舗・日本法人の独自戦略で復活!など)、第10位・ツイッター運営会社・イーロンマスク会長7件(ツイッターのロゴ・青い鳥変更?など)。

 

 

●テレビの窓

「TSMC・新しい研究開発センターをオープン」

導体の受託生産・世界最大手の台湾のTSMCが28日、台湾北部の新竹サイエンスパークに新しい研究開発センターをオープンし、米国や日本で工場の建設を進めながらも最先端の半導体の開発では台湾を最重要の拠点とし続ける姿勢を示した。完成した建物は地上10階、地下7階建て延べ床面積は30万平方メートルに及ぶ。研究開発センターではことし9月までにエンジニアなど7000人が働くことになり、世界でまだ量産が始まっていない2ナノメートルとさらに最先端の半導体の製造技術の開発や半導体の新しい材料の研究などに取り組むという。開所式で魏哲家CEOは「TSMCは重点を海外に移したのかという懸念の声が聞かれるが、そんなことはない。私たちの拠点が台湾にとどまっていることをこのセンターの開所が示している」と述べ、米国や日本の誘致に応じ、工場の建設を進めながらも最先端の半導体の開発では台湾を最重要の拠点とし続ける姿勢を示した。首相にあたる陳建仁行政院長も式に出席し「半導体産業は研究開発のスピード競争であり先頭を走り続けなければならない。(台湾)政府が最大の後ろ盾となる」と述べ、高度な人材の育成、電力や水資源の確保などでの支援を約束した(NHK)。

 

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